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農場奴隷編
第19話 森の魔物 B
しおりを挟む敵が動けないのなら──
俺はラフレシアンから五十メートルほど距離を取り、闘気を込めた弓で攻撃する。
相手と距離を取りすぎると弓の威力が落ちてしまうが、近すぎると反撃される危険が増える。
このくらいの距離での攻撃がベストだと判断した。
一方的に攻撃してやる。
弓での攻撃に対してラフレシアンは、自身のツタを使って防御を試みるが闘気を込めた矢はその防御を貫いて、本体の幹や花に突き刺さっていく。
ブフォオオ~~~!!
ラフレシアンは花の中心にある口から大量の吐息を周囲にまき散らした。
かなり距離を取っている俺のところまで、微かに甘い匂いが漂ってきた。
「なんだ? 毒か──?」
俺は警戒して息を止め、後ろに下がる。
広域探知で魔物の位置を把握していた俺は、すぐに異変に気付く。
マークしていたいくつかの魔物が、こちらに向かって近づいて来ている。
「匂いで他の魔物を、おびき寄せているのか──」
俺は素早く隠密結界を張って、木の陰に隠れる。
おびき寄せられたモンスターは、巨大な太った蝙蝠が二匹に、動き回るキノコが一匹、ゴブリン三匹が群れで匂いに引き寄せられるように現れた。
ラフレシアンはモンスターを匂いで操れるようで、集めたモンスターを俺の隠れている場所にけしかけてきた。
敵の戦闘能力は、高くない。
俺は隠れるのを止めて、対応を迎撃に切り替えた。
まずは宙を飛んでいる、蝙蝠二匹に弓で攻撃する。
倒せなくてもいい、動きを止めるために羽を狙って二発ずつ矢を射った。
蝙蝠は狙い通りに、地に落ちる。
俺はそこで弓をしまい、はがねの剣を鞘から抜き放つ。
弓で攻撃していた隙に、ゴブリンやキノコが至近距離に迫ってきている。
ゴブリンは三匹とも、こん棒を装備している。
得物のリーチは俺の方が長い。
俺は焦らずにゴブリンの手首、首、肩を順番に斬っていく。
少し遅れて迫ってきたキノコのモンスターは、真上から一刀両断にする。
キノコの戦闘能力は50前後で弱いが、特殊攻撃があった。
キノコ型のモンスターは切断した瞬間に、胞子のようなものをまき散らして死んだ。
「これは毒──か……」
今更息を止めても遅い……。
吸い込んでしまったが、弱い毒だ。
今は気にせずに、モンスターを殲滅しよう。
俺は致命傷を与え放置していたゴブリンに、止めを刺そうと振り返る。
そこで危険察知が発動した。
空間感知を使い背後からの攻撃を把握。
俺は振り返りざまに、背後から接近してきたものを切り捨てる。
攻撃はラフレシアンのツタだった。
ここまで伸ばせるのか。
ツタの先端には口がついていて、中には鋭い牙が見える。
俺は近くで様子を見ていたスラ太郎に、ゴブリンの始末を任せてラフレシアンの本体へ向かって走り出す。
この距離でもツタが届くのなら、接近して倒した方がいいだろう。
すでにラフレシアンには、かなり手傷を負わせている。
俺は途中に倒れていた巨大な蝙蝠を、ついでに剣で切りつけて走る。
死角から不意打ちを仕掛けてくるラフレシアンのツタの攻撃を剣で捌きながら、本体の側まで近づいた。
ラフレシアンの本体は直径三メートルはあり、ずっしりとしている。
その本体の周りを、ツタが守るように取り巻いている。
俺はツタの攻撃を、切り裂き躱し捌いていく。
ツタに巻き付かれると動きを封じられて、一気に形勢は傾く。
そんな緊張感の中で、俺はラフレシアンを削り続ける。
俺の身のこなしは訓練をくり返し、かなり上達していた。
気が付けばラフレシアンはツタをすべて失い、本体が丸裸になっている。
俺は遠慮なくラフレシアンの本体を切り刻んでいく。
ギぎゃァウウウ──
断末魔のような叫びをあげながら、ラフレシアンは身体を折り曲げて巨大な口で、俺に噛みつこうと試みる。
俺は剣に闘気を纏わせて、ラフレシアンの巨大な花ごと口を切り裂いた。
モンスターの群れを全滅させた。
*************************
ラフレシアンの魔石 (土属性)
所有者 ユージ
魔石値 000271
*************************
*************************
ゴブリンの魔石 (無属性)
所有者 ユージ
魔石値 000012
*************************
*************************
化け物キノコの魔石 (土属性)
所有者 ユージ
魔石値 000051
*************************
*************************
巨大蝙蝠の魔石 (風属性)
所有者 ユージ
魔石値 000037
*************************
回復薬で毒を治療し魔石を回収して、農場へと帰還した。
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