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農場奴隷編

第17話 漁夫の利 B

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 ゴブリンから逃げるスラ太郎は、途中で遭遇した大ナメクジの後ろに、素早く回り込んで身を潜める。
 二匹のゴブリンの放った矢は、小柄で素早く動き回るスラ太郎を捉えることは出来なかったが、大柄で動きの遅い大ナメクジには命中した。

 矢で攻撃されて殺気立っている大ナメクジの方向へと、三匹のゴブリンがスラ太郎を追って走り込んでいく。
 大ナメクジは自分がゴブリンの群れに襲撃されたと勘違いして、その巨体でゴブリンにのしかかった。

 一匹のゴブリンが大ナメクジの下敷きになる。



 仲間を救出しようと、槍と剣を装備したゴブリンが大ナメクジを攻撃するが、大ナメクジの身体は、柔らかく滑っていて攻撃が通りづらい。

 その上、傷が塞がるのも早かった。




 五十メートル後方で、その様子を見ていた弓装備の二匹のゴブリンは、スラ太郎のことを後回しにして、仲間を援護するために大ナメクジを狙い攻撃し出す。



 俺は隠密結界を張ったまま、弓使いのゴブリンの後ろに回り込んだ。
 
「さて、いくか──」

 いや。
 ──少し早いか。


 もう少しゴブリンに、大ナメクジを攻撃させておきたい。
 しかし敵が分散しているこのタイミングで、確実に奇襲しておくのも魅力的だ。

 欲張りすぎて、敵が合流するのは一番避けたいからな。
 俺は二匹いるゴブリンの、左側の真後ろに陣取る。

 そして、はがねの短剣に闘気を込める。

 闘気なしでも行けるとは思うが、ゴブリンは革の胸当てを装備している。
 確実に一撃で心臓を貫きたい。


 二匹のゴブリンが同時に弓を放ったタイミングで、俺は短剣をゴブリンの心臓に突き刺した。

「ガッ!! グッ、ぐぇ……ッ」

 ゴブリンの発した断末魔のうめき声を聞き、もう一匹がこちらを振り向く。
 俺は心臓を貫いたゴブリンの死体を、もう一匹の方へと突き飛ばす。

 とっさに仲間の身体を受け止めたゴブリンの首筋を──
 俺は、はがねの短剣で切り裂いた。

 首を斬られたゴブリンは、血を盛大に噴き出してやがて死んだ。 

「おっ! ──」

 片方のゴブリンが弓をドロップしたようだ。


 大ナメクジと戦っている最中のゴブリンは、こちらの異変に気付いていない。
 今のうちに装備しておこう。


 弓と五十本の弓矢と、矢を入れておく筒状の入れ物がセットで手に入った。

 専用装備にすると、装備時に矢筒を背中に背負うか、矢を異空間から一本ずつ取り出すかを選択できるようだ。

 弓は今まで使ったことも練習したこともないが、戦士の職業補正で多少は使いこなせるようだ。敵との距離も五十メートル程ある。
 ちょっと練習がてらに使ってみるか。

  

 大ナメクジVSゴブリンの戦いは、大ナメクジの方が優勢のようだ。

 大ナメクジを的にするか。

 目標までの距離は五十メートル。
 直線でも行けると思うが確実に届かせるために、俺は少し山なりに弓を射る。
 俺の放った矢はしかっりと大ナメクジに突き刺さった。

「今度は直線でいってみるか──」


 それから俺は連続で弓を射続ける。

 大ナメクジの手前にいるゴブリン二匹は、弓の射線上にいるので当たるかもしれないが、別に構わない。

「フレンドじゃないから、フレンドリーファイヤーにはならない」

 大ナメクジは遠くからくり出される弓攻撃が煩わしいのか、攻撃のターゲットを俺に変更して、こちらに来ようとする。
 しかし目の前のゴブリンが邪魔で、その場から動けずにいる。


 このまま、大ナメクジを始末できるか──?
 ただ大ナメクジを倒すと、その後でゴブリンの相手をしなきゃいけなくなる。

 ……共倒れしてくれないだろうか。

 その時に俺は、ふと思いついた。
 弓に闘気を込めれば強力な攻撃が出来るんじゃないか?

 それで敵を、貫ければ──
 よし、やってみよう。


 俺は弓と番えた矢に、闘気を込めて弦を引き絞る。

「──これはかなりの威力が出そうだ」

 俺は狙いをゴブリンに定めて矢を放った。
 ヒュオッ!! 放たれた矢はゴブリンを貫き、ズボォォン!!!
 大ナメクジの身体にも、深々と突き刺さってダメージを与える。


「もう一発──」

 俺は最後のゴブリンと大ナメクジを射線に入れて、闘気を込めた矢を放つ。
 矢は一直線に飛んでゴブリンの身体を貫き、大ナメクジの身体を抉る。
 一石二鳥。

 これでゴブリン二匹は倒せた。
 もう一匹は大ナメクジの下敷きで、虫の息だろう。


 大ナメクジだけは、まだ生きている。
 邪魔なゴブリンがいなくなったので、俺への殺意を全身に漲らせて、こっちに向かって這い寄ってくる。

 地べたを這っているのに意外と早い、。
 俺は大ナメクジの頭を狙って、闘気を込めた矢を放つ。

 矢は大ナメクジの頭の半分を吹き飛ばした。
 しかし、それでも大ナメクジは死なずに、こちらに向かって這い寄り続ける。

「タフすぎるだろ。あいつ──」


 俺は装備を、弓からこん棒に切り替えて構える。
 大ナメクジの突進を避けながら、その巨体をこん棒で攻撃し続ける。
 二十数回殴りつけた辺りで、大ナメクジは力尽きて息絶えた。

 大ナメクジから取り出した魔石を鑑定する。

*************************
大ナメクジの魔石 (無属性) 
所有者 ユージ
魔石値 000187
*************************

 魔石値は187、ゴブリンの方はどれも120前後だった。
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