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農場奴隷編
第12話 モンスター素材
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スライムの魔石を回収し、さらに東へと進む。
農場からこれだけ離れるのは初めてだ。
「──おっ?」
平原をちょこちょこと動き回っている魔物がいたが、そいつがこっちに向かって一直線に走ってきている。
「俺に気付いたのか?」
最初に張った隠密結界は、とっくに割れてなくなっている──
人間の匂いとかで寄ってくるのかもしれない。
「返り討ちにしてやる──」
こちらに向かってきているモンスターの姿が見える。
でかい兎型のモンスターだ。
高さは俺より少し小さいくらいで、頭の先端に大きな角が生えている。
あのスピードと重量で攻撃されれば、一撃で致命傷を負うだろう。
俺はこん棒から短剣に装備を切り替えて、敵を待ち構える。
正面からこん棒で叩きたいところだが、あの角が厄介だし、敵の重量とスピードを考慮すると、まともに受け止める気にはならなかった。
俺を突き刺そうとする大兎の突進を、ギリギリまで引き付けて直前で躱し、スピードに乗って突っ込んできた大兎の身体に、短剣を押し込んだ。
大兎の重量が短剣を介して、俺に伝わってくる。
俺は押し負けない様に、魔力で身体能力を強化して耐える。
俺に短剣で腹を掻っ捌かれた大兎は、瀕死で横たわっている。
それまで様子を見ていたスラ太郎が、体当たりで攻撃した。
大兎は動かない。
──息絶えたようだ。
俺は短剣を装備したまま、大兎の死体に近づいていく。
これから大兎から魔石を取り出すが、それと同時にモンスター素材を入手する為の『解体』を行おうと思う。
クサンゴさんとの会話から入手した、この世界の冒険者情報を思い出す。
この世界のモンスターは討伐すると、極まれにドロップアイテムとして装備品や服飾品を落としていくことがある。
だがそれとは別に倒したモンスターを解体して、素材や肉を取り出し利用することも行われている。
「まずは、角や爪……」
クサンゴさんから聞いた情報によると、動物タイプのモンスターの角や爪、牙はほぼ間違いなく素材として有用なので、冒険者ギルドなどで買い取って貰えるそうだ。
肉は獲物にもよるが、新鮮であれば買い取って貰えることもある。
毛皮は状態にもよるがこちらも、素材として売り物になるそうだ。
冒険者ギルドが買い取った魔物は、解体されて用途によって売り分けられる。
肉は食用として売られ、それ以外は加工品として利用されるか、『錬金術師』によって凝縮されて、『モンスター素材』として武器や防具の強化や補修の材料として利用される。
建築物や家具などの補強などにも、使われることもあるらしい。
この話を聞いた時に──
その『錬成』って俺にも出来るんじゃないか?
と考えた。
もうすでに薬草を回復薬に錬成しているし、その要領でやれば行ける気がする。
機会があれば試してみたい、と思っていた。
大兎の角と毛皮を、短剣で切り取る。
肉を食べる予定はないので、血抜きはしない。
肉は食えるなら食いたいが、農場には持って帰れないし、ここでは焼くための火が無いので断念する。
解体作業前に少し心配していた、精神面も問題ない。
前世の意識のみだとかなりきつい作業だと思うが、俺にはこの世界に生まれて生きてきた経験と感覚もある。
モンスターとの戦闘で、生物を殺すことも躊躇わずにできている。
それでいちいち悩んでいたら、強くなるのは無理だったな──
解体作業を続ける。
皮ははぎ取って魔力で錬成して、素材として利用したい。
毛皮として使うには、職人に加工して貰う必要がある為、今回は断念する。
(一応、使おうと思えば使えるそうだが、防腐処理とかしてないのをそのまま使う気にはなれない)
この世界で生きている人にとっては、モンスターは居て当たり前の存在であり、誰も不思議には思わないが、前世の記憶がある俺は『モンスターってどこから出てくるんだ?』という疑問を感じたことがある。
その質問をクサンゴさんにしてみたところ女神教の教えでは、混沌と試練の女神、『ヘカテルケーレ』さまが生み出している、という答えが返ってきた。
俺が転生前に会ったメルドリアスは『秩序と慈愛の女神』と呼ばれており、この世界の都市や村や町、街道などを女神の加護でモンスターから守っている神様だ。
それ対を成す存在として、混沌と試練の女神がモンスターやダンジョンを生み出しているそうなのだが──その話を聞いた時に俺は『それってメルドリアスが一人で二役をしているんじゃないか?』と思った。
この世界は『自分が創った』ゲームのような世界だと言っていたからな。
そこに他の神様が、ちょっかいを掛けてきているということは無いだろう。
ロールプレイングゲームにモンスターは必要だしな。
魔物はダンジョンから生み出されるのが基本だが、自然繁殖も確認されている。
当然のことながら、魔物の卵や子供も存在する。
魔物使いはそれらを見つけて育成して、自分の仲間にするそうなのだ。
俺も魔物の子供か卵を手に入れることができれば、新しい魔物の仲間を作れるようになるかもしれない。
これも機会があれば、試してみよう。
考え事をしているうちに、解体作業は終了した。
初めてにしては、上手く出来た方だと思う。
俺は解体して手に入れた大兎の角に、魔力を流して圧縮してみる。
ギュッと凝縮されるイメージの通りに、どんどん小さくなっていく。
最後には小さな玉になった。
鑑定してみる。
*************************
大兎の素材 (角)
所有者 ユージ
品質B
*************************
上手くいった。
ちゃんと錬成できたようだ。
同様に大兎の皮も錬成して圧縮する。
小さな丸い毛玉になる。
こちらも上手くいったようだ。
ここまでは回復薬の作成と、要領は変わらない。
成功は想定通りだ。
「さて、ここからだ……」
俺は鉄の短剣を取り出して鑑定する。
*************************
鉄の短剣 (所有者ユージ)
強度 306
耐久値478/600
品質A
*************************
耐久値が少し減っている。
「訓練でも使ってきたからな」
これに先ほどの大兎の角の『モンスター素材』を合成する。
鉄の短剣を、コーティングして補強するイメージだ。
これも上手くいったようで、鑑定してみると耐久値が回復している。
皮素材は短剣の錬成には使えないので、このまま持って帰ることにする。
小さく嵩張らないので、保管しておけるだろう。
魔力をかなり消費していたので、今日の探索はここまでにして農場に引き上げた。
*************************
名前 ユージ
HP 70/72 MP 17/73 FP 44/64
幸運力
058~-011×2
スキル
空間移動 危険感知
所持品
魔石値 0000234
回復薬 6個
借金 金貨42枚 銀貨3枚 銅貨12枚
才能
大魔導士の卵 戦神の欠片 強欲な器
職業
労働奴隷Lv10(従順-5) 農夫Lv08 薬草採取者Lv06
戦士Lv10 剣士Lv06 武闘家Lv06
魔法使いLv08 魔物使いLv04
探索者Lv07 斥候Lv07 隠密Lv09 暗殺者Lv06
遊び人Lv10 ギャンブラーLv06
薬師Lv07 錬金術師Lv01 鍛冶師Lv01
*************************
職業に錬金術師と鍛冶師が増えていた。
農場からこれだけ離れるのは初めてだ。
「──おっ?」
平原をちょこちょこと動き回っている魔物がいたが、そいつがこっちに向かって一直線に走ってきている。
「俺に気付いたのか?」
最初に張った隠密結界は、とっくに割れてなくなっている──
人間の匂いとかで寄ってくるのかもしれない。
「返り討ちにしてやる──」
こちらに向かってきているモンスターの姿が見える。
でかい兎型のモンスターだ。
高さは俺より少し小さいくらいで、頭の先端に大きな角が生えている。
あのスピードと重量で攻撃されれば、一撃で致命傷を負うだろう。
俺はこん棒から短剣に装備を切り替えて、敵を待ち構える。
正面からこん棒で叩きたいところだが、あの角が厄介だし、敵の重量とスピードを考慮すると、まともに受け止める気にはならなかった。
俺を突き刺そうとする大兎の突進を、ギリギリまで引き付けて直前で躱し、スピードに乗って突っ込んできた大兎の身体に、短剣を押し込んだ。
大兎の重量が短剣を介して、俺に伝わってくる。
俺は押し負けない様に、魔力で身体能力を強化して耐える。
俺に短剣で腹を掻っ捌かれた大兎は、瀕死で横たわっている。
それまで様子を見ていたスラ太郎が、体当たりで攻撃した。
大兎は動かない。
──息絶えたようだ。
俺は短剣を装備したまま、大兎の死体に近づいていく。
これから大兎から魔石を取り出すが、それと同時にモンスター素材を入手する為の『解体』を行おうと思う。
クサンゴさんとの会話から入手した、この世界の冒険者情報を思い出す。
この世界のモンスターは討伐すると、極まれにドロップアイテムとして装備品や服飾品を落としていくことがある。
だがそれとは別に倒したモンスターを解体して、素材や肉を取り出し利用することも行われている。
「まずは、角や爪……」
クサンゴさんから聞いた情報によると、動物タイプのモンスターの角や爪、牙はほぼ間違いなく素材として有用なので、冒険者ギルドなどで買い取って貰えるそうだ。
肉は獲物にもよるが、新鮮であれば買い取って貰えることもある。
毛皮は状態にもよるがこちらも、素材として売り物になるそうだ。
冒険者ギルドが買い取った魔物は、解体されて用途によって売り分けられる。
肉は食用として売られ、それ以外は加工品として利用されるか、『錬金術師』によって凝縮されて、『モンスター素材』として武器や防具の強化や補修の材料として利用される。
建築物や家具などの補強などにも、使われることもあるらしい。
この話を聞いた時に──
その『錬成』って俺にも出来るんじゃないか?
と考えた。
もうすでに薬草を回復薬に錬成しているし、その要領でやれば行ける気がする。
機会があれば試してみたい、と思っていた。
大兎の角と毛皮を、短剣で切り取る。
肉を食べる予定はないので、血抜きはしない。
肉は食えるなら食いたいが、農場には持って帰れないし、ここでは焼くための火が無いので断念する。
解体作業前に少し心配していた、精神面も問題ない。
前世の意識のみだとかなりきつい作業だと思うが、俺にはこの世界に生まれて生きてきた経験と感覚もある。
モンスターとの戦闘で、生物を殺すことも躊躇わずにできている。
それでいちいち悩んでいたら、強くなるのは無理だったな──
解体作業を続ける。
皮ははぎ取って魔力で錬成して、素材として利用したい。
毛皮として使うには、職人に加工して貰う必要がある為、今回は断念する。
(一応、使おうと思えば使えるそうだが、防腐処理とかしてないのをそのまま使う気にはなれない)
この世界で生きている人にとっては、モンスターは居て当たり前の存在であり、誰も不思議には思わないが、前世の記憶がある俺は『モンスターってどこから出てくるんだ?』という疑問を感じたことがある。
その質問をクサンゴさんにしてみたところ女神教の教えでは、混沌と試練の女神、『ヘカテルケーレ』さまが生み出している、という答えが返ってきた。
俺が転生前に会ったメルドリアスは『秩序と慈愛の女神』と呼ばれており、この世界の都市や村や町、街道などを女神の加護でモンスターから守っている神様だ。
それ対を成す存在として、混沌と試練の女神がモンスターやダンジョンを生み出しているそうなのだが──その話を聞いた時に俺は『それってメルドリアスが一人で二役をしているんじゃないか?』と思った。
この世界は『自分が創った』ゲームのような世界だと言っていたからな。
そこに他の神様が、ちょっかいを掛けてきているということは無いだろう。
ロールプレイングゲームにモンスターは必要だしな。
魔物はダンジョンから生み出されるのが基本だが、自然繁殖も確認されている。
当然のことながら、魔物の卵や子供も存在する。
魔物使いはそれらを見つけて育成して、自分の仲間にするそうなのだ。
俺も魔物の子供か卵を手に入れることができれば、新しい魔物の仲間を作れるようになるかもしれない。
これも機会があれば、試してみよう。
考え事をしているうちに、解体作業は終了した。
初めてにしては、上手く出来た方だと思う。
俺は解体して手に入れた大兎の角に、魔力を流して圧縮してみる。
ギュッと凝縮されるイメージの通りに、どんどん小さくなっていく。
最後には小さな玉になった。
鑑定してみる。
*************************
大兎の素材 (角)
所有者 ユージ
品質B
*************************
上手くいった。
ちゃんと錬成できたようだ。
同様に大兎の皮も錬成して圧縮する。
小さな丸い毛玉になる。
こちらも上手くいったようだ。
ここまでは回復薬の作成と、要領は変わらない。
成功は想定通りだ。
「さて、ここからだ……」
俺は鉄の短剣を取り出して鑑定する。
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鉄の短剣 (所有者ユージ)
強度 306
耐久値478/600
品質A
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耐久値が少し減っている。
「訓練でも使ってきたからな」
これに先ほどの大兎の角の『モンスター素材』を合成する。
鉄の短剣を、コーティングして補強するイメージだ。
これも上手くいったようで、鑑定してみると耐久値が回復している。
皮素材は短剣の錬成には使えないので、このまま持って帰ることにする。
小さく嵩張らないので、保管しておけるだろう。
魔力をかなり消費していたので、今日の探索はここまでにして農場に引き上げた。
*************************
名前 ユージ
HP 70/72 MP 17/73 FP 44/64
幸運力
058~-011×2
スキル
空間移動 危険感知
所持品
魔石値 0000234
回復薬 6個
借金 金貨42枚 銀貨3枚 銅貨12枚
才能
大魔導士の卵 戦神の欠片 強欲な器
職業
労働奴隷Lv10(従順-5) 農夫Lv08 薬草採取者Lv06
戦士Lv10 剣士Lv06 武闘家Lv06
魔法使いLv08 魔物使いLv04
探索者Lv07 斥候Lv07 隠密Lv09 暗殺者Lv06
遊び人Lv10 ギャンブラーLv06
薬師Lv07 錬金術師Lv01 鍛冶師Lv01
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職業に錬金術師と鍛冶師が増えていた。
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