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農場奴隷編

第10・5話 ☆ラッキースケベ

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 魔法を再現した俺は、次の段階に移ることにした。
 隠密結果の訓練を兼ねて、効果を実証しようと思う。 



 モンスター相手に、いきなりぶっつけ本番で使う気はない。

 俺は昼の休憩時間に、隠密結界を張って例のメスガキ二人組を探す。
 他の奴隷だと俺が近づいても、特に反応しないから検証できない。



 俺が探していると、あぜ道の向こうから二人組が現れた。
 二人は俺の姿に気付かずに、喋りながら歩いている。

 俺は二人の後ろを尾行することにした。



 二人の会話が聞こえてくる。

 どうやらこの二人はお互いのことを、前世の名前で呼んでいるようだ。
 生意気な方が『アカネ』で大人しいほうが『モミジ』。

 二人はまだ、俺の存在に気付かない。
 試しに二人の前に回って手を振ってみたが、何の反応もない。

 魔法の再現は成功したようだ。
 この魔法は相当使えるだろう。
 俺はまた強くなった。


 俺はそろそろ離れようとしたが、この二人の向かう先に女子トイレが見えた。
 二人は昼に休憩時間にトイレにいくつもりらしい。

 そして俺は今、透明人間だ。


 もう少し付いて行ってみるか──
 もうちょっとだけ魔法の検証が必要な気がする。

 トイレは用を足す個室が複数ある。
 しかし二人は、他が空いていても交替で使用するようだ。
 一人が用足しに入り、もう一人が外で見張りをしている。
 
 最初は『モミジ』が入り、『アカネ』が見張り役だ。
 トイレの仕切りは完全ではない。
 上からも下からも、覗こうと思えば覗ける。

 『モミジ』はいまケツを丸出しにしているはずだ。

 覗いてみるか?
  
 しかし、上から覗くのは無理だろう。結界が割れる。
 では下から覗き込むか?
 
 だがそのためには俺が地べたを這わなければならない。
 それは少し違う気がする。
 
 俺は自分が地べたを這いたいわけではない。
 こいつらを這わせたいのだ。



 それに罪科ポイントのこともある。

 この世界で悪行を重ねれば、加算される数値だ。
 そんなものは、溜めない方がいいだろう。


 まあ──なんか音は微かに聞こえてくるし、今日のところはそれだけでいいか。
 俺がそんなことを考えている間に、『モミジ』がトイレから出て『アカネ』が入っていった。

 さて、生意気なメスガキの恥ずかしい音を聞かせて貰おうか。
 俺が目を瞑り待ち構えると──

「きゃッ……」

 『モミジ』のか細い悲鳴が聞こえた。
 えっ? うそだろ? 気付かれた? 魔法が解けたのか??


 やばいッ!!

 俺が目を開けると、少し大きめの蛇が『モミジ』の足に絡みついている。
 蛇はそのまま、足を伝って『モミジ』の顔に近づいて、首筋に噛みつこうと口を開けて──
 そのタイミングで俺が蛇の喉を掴んで、『モミジ』から引き離した。
 
 モンスターとの戦闘経験を積んだ俺にとって、この程度の蛇など物の数ではない。
 俺は蛇の喉を握り潰し、念のために地面に叩きつけて頭を踏み潰す。


「大丈夫か?」
 
 俺が『モミジ』の無事を確認しようと顔を向けると──
 トイレのドアが開いていた。
 その奥でお尻を丸出しにして座っている『アカネ』がこちらを振り返る。
 俺の姿を目でとらえると、驚愕の表情を浮かべる。
 

 俺に見られていると気付いても、すぐには止められないらしく『アカネ』は排泄物を放出し続けている。

 シャアアァァアアア!!




 どうやら突然現れた俺に驚いた『モミジ』がバランスを崩し尻もちをついて、その時にトイレのドアに頭をぶつけて、ドアが開いてしまったようだ。

 このトイレに鍵なんか無いからな。

 俺は即座に『アカネ』の周囲を覆うくらいの大きさの隠密結界を張った。

 その直後に──
 『アカネ』があらん限りの声量で悲鳴を上げた。


 なんとか隠密結界が間に合い、『アカネ』の悲鳴で騒ぎになることは無かった。
 



 今回に限っては『モミジ』が俺の味方をしてくれた。
 蛇から助けて貰ったと説明してくれて、『アカネ』も渋々矛を収めた。
 
 女子トイレ付近をうろついていたことを、咎められる前に俺はその場から離れた。


 隠密結界の実証実験は大成功だった。

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