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第11話 ハッピーデイ
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あれから数日が経ち終業式の日が来てしまった。クラスの雰囲気は冬休みモードで賑やかだ。しかし、四人の気持ちは晴れやかではなかった。祐羽は美鈴と未だにきちんと話せていない。クリスマスには四人で出かける予定がある。それまでに祐羽は何とかしたかったが難しかった。
終業式の日の帰り道、冬菜は美鈴に尋ねた。
「祐羽くん、みずちゃんと話したいみたいだよ。みずちゃんはこのままでもいいの?」
美鈴は少し困った顔で答える。
「私もね、話さなきゃって思うけど何か怖くて。私が祐羽を傷つけてるみたいで、祐羽のことも好きなのかもわからなくなってきて……」
「……そうなんだ、ごめんね。私、話を聞くことくらいしかできなくて……」
「ううん、聞いてくれるだけで嬉しいよ。ありがと、冬菜」
冬菜は何て答えればいいのか分からなかった。軽くアドバイスなんて出来るような話ではなかった。冬菜は、祐羽にも美鈴にも幸せになって欲しいと思っていた。でも、そう簡単には上手くいくことではなかった。
奏汰と祐羽は終業式が終わった後の誰もいない教室に残っていた。祐羽が申し訳なさそうな顔をして言った。
「ごめんな、奏汰……クリスマスに冬ちゃんに告るって言ってたのに。俺たちこんなんで……」
「ほんと、迷惑~でもねぇよ、俺はちゃんと告るから。たぶん。 美鈴も来るみたいだし、お前もその時話せ!絶対な!」
「そうだな」
奏汰は満面の笑みでいつも祐羽を励ます。
祐羽は奏汰という、いい友達を持ててとても嬉しく思った。
*****
クリスマス当日。
待ち合わせの時に、祐羽と美鈴をいきなり2人きりにするのはかわいそうだと思った奏汰と冬菜は、少し早めに待ち合わせの駅に向かう予定だった。
しかし、冬菜は早く出かけることを忘れていて、のんびり支度をしていた。
ーーピンポーン、ピンポーン、ピポピポーン
インターフォンが連打される音が聞こえた。冬菜は慌てて、インターフォンを出る。
「はーい……っ、奏くん!」
「冬菜ぁぁ!!早く出かけるって言っただろ!!」
「あぁあああ!忘れてた!ごめんなさい!ごめんなさい!今行くから!」
冬菜は慌てて、玄関を飛び出す。奏汰は呆れた様子で待っていたが、玄関から飛び出してきた冬菜をみて息を飲む。奏汰はいつもは下ろしている髪の毛を、後ろで束ねている姿に見惚れていた。
「…………かわ」
「奏くん!?走るよ!!」
奏汰が可愛い、と言いそうになった途端冬菜が奏汰の手を引っ張って走り出した。手を引っ張られて我に帰った奏汰は、自分の言いかけた言葉を思い出し恥ずかしくなった。冬菜に手も握られていると思うと嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
「最高のクリスマスだな」
「ん?なんか言った?」
奏汰が小さな声で呟くと、冬菜が不思議そうな顔をして振り返った。顔がにやける。奏汰にとって冬菜の行動一つ一つが愛おしくてたまらなかった。
終業式の日の帰り道、冬菜は美鈴に尋ねた。
「祐羽くん、みずちゃんと話したいみたいだよ。みずちゃんはこのままでもいいの?」
美鈴は少し困った顔で答える。
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「……そうなんだ、ごめんね。私、話を聞くことくらいしかできなくて……」
「ううん、聞いてくれるだけで嬉しいよ。ありがと、冬菜」
冬菜は何て答えればいいのか分からなかった。軽くアドバイスなんて出来るような話ではなかった。冬菜は、祐羽にも美鈴にも幸せになって欲しいと思っていた。でも、そう簡単には上手くいくことではなかった。
奏汰と祐羽は終業式が終わった後の誰もいない教室に残っていた。祐羽が申し訳なさそうな顔をして言った。
「ごめんな、奏汰……クリスマスに冬ちゃんに告るって言ってたのに。俺たちこんなんで……」
「ほんと、迷惑~でもねぇよ、俺はちゃんと告るから。たぶん。 美鈴も来るみたいだし、お前もその時話せ!絶対な!」
「そうだな」
奏汰は満面の笑みでいつも祐羽を励ます。
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「あぁあああ!忘れてた!ごめんなさい!ごめんなさい!今行くから!」
冬菜は慌てて、玄関を飛び出す。奏汰は呆れた様子で待っていたが、玄関から飛び出してきた冬菜をみて息を飲む。奏汰はいつもは下ろしている髪の毛を、後ろで束ねている姿に見惚れていた。
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「最高のクリスマスだな」
「ん?なんか言った?」
奏汰が小さな声で呟くと、冬菜が不思議そうな顔をして振り返った。顔がにやける。奏汰にとって冬菜の行動一つ一つが愛おしくてたまらなかった。
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