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ホークとロリアン
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ホークとの決闘
ドランの元を去って数週間後、アンドレイは無法地帯として知られる地域を旅していた。ここで彼は、ホークとして知られる悪名高い盗賊の頭領と出食わすことになる。ホークは往来が困難なブラック・ホロウ峠を支配して旅人や護衛兵たちを奇襲することで名を上げていた。アンドレイの一団がこの峠を通る隊商を守るために雇われたとき、ホークが待ち伏せしているだろうことは、アンドレイは覚悟していた。
そして峠に入ると、噂に違わず、ホークは隊商を襲撃してきた。血なまぐさい戦闘が繰り広げられ、気付くとアンドレイは仲間たちから引き離されおり、一人ホークと対峙していた。ホークは、数多の修羅場をくぐり抜けてきた剣士でもあり、アンドレイを挑発してきた。
「なかなかやるじゃないか。どうだ、俺と一対一の勝負をしないか。断るなら、隊商全員の命はないと思え」
アンドレイは、もし罪のない旅人たちが殺されたら、傭兵としての彼の評判は地に落ちるのが明白だったので、ホークの挑戦を受けた。
始まった一騎打ちは、情け容赦もなく過酷で長時間続いた。お互いが限界まで力を出し切って粘る中、アンドレイはドランから学んだ忍耐とバランスを活かして戦った。速攻を仕掛ける代わりに、ホークの動きを慎重に観察し、タイミングを待った。そして、チャンスが見えたとき、それを逃さなかった。アンドレイは正確な一撃でホークの剣を弾き飛ばし返し刀で彼の腿を切り裂いた。
膝をついたホークの喉元に剣の切っ先を当て、アンドレイは静かに言った。「これ以上略奪しないと誓え。この地域の旅人を襲わないと誓え。そうしたら生かしてやる。誓わないなら、この刃を受けろ」
その言葉にホークは驚いた。ホークは誓いを立て、そしてその言質通り、直ちに盗賊団を解散した。以降この地域を荒らすことはなかった。
傭兵仲間ロリアン
ドランの元を去った後、アンドレイはさまざまな傭兵団に加わり、その中でロリアンという仲間に出会った。ロリアンは、後にアンドレイの一番の友人で最も信頼できる同志となったが、彼らの友情はすぐに築かれたものではなかった。共に戦った数々の戦闘、個人的な苦難、様々な窮地を共有するうちに、それが稀有である傭兵の世界で、互いに信頼し合うようになり、友情が生まれていった。
ロリアンはアンドレイより10歳ほど年上の老練な傭兵で、長年傭兵生活を送っていた。彼は鋭い言葉と皮肉たっぷりのユーモアを持ち、虚飾を嫌う生き方をしていた。アンドレイがロリアンの傭兵団に加わった当初、ロリアンは彼に対して懐疑的だった。ドラン師匠の指導と矯正を受けたアンドレイの立ち居振る舞いは、乱雑で実践的な傭兵の生き方とは明らかにかけ離れていたからだ。
アンドレイの静かな厳しさや顕な理想主義は、ロリアンの目には未経験な若者のもののように見えた。彼らが戦っているカオスのような戦場には相応しくないアンドレイの貴族的な雰囲気を揶揄し、彼を「王子」と呼んで冷やかし、訓練された剣技をからかった。
しかし、アンドレイはロリアンの挑発には乗らず、ドラン師匠から学んだ通り、冷静に毅然として受け流していた。この反応にロリアンは興味を持った。傭兵団では、若い戦士たちが些細な鞘当てに殴りかかったり、挑発に乗って食ってかかったりするのを見慣れていたロリアンにとって、アンドレイの姿勢は異例だった。
烏峠の戦い
二人の関係が変化し始めたのは、烏峠での戦いのときだった。彼らの傭兵団は、山岳地帯にある要塞を守るために雇われて、侵略してきた略奪者の軍団と対峙していた。地形は険しく、彼らの軍勢は数では劣っていたが、守備に有利な高所を確保していた。
戦闘の最中、アンドレイとロリアンは峠の特に危険な箇所で共に戦うことになった。一時彼らは他の仲間から引き離され、略奪者たちが攻め込んでくる峡谷を二人で守り抜かなければならなくなった。戦いは熾烈で、アンドレイとロリアンは何度も命の危機に直面した。
戦闘の中で、ロリアンは特にアグレッシブな略奪者の攻撃を受け、地面に倒れ込んだ。敵が最期の一撃を加える寸前、アンドレイが素早く入り込み、ドラン師匠から学んだ、流れるような剣技のタイミングを計った一振りで敵の一撃をかわし、ロリアンを救った。
ロリアンは息を切らし、傷だらけになりながらアンドレイを見上げ、驚きとともに感謝の意を示した。「なかなかやるじゃないか、王子」と彼は呟いて起き上がった。アンドレイは手を差し伸べ、ロリアンを引き起こしながら静かに言った。「あなたもなかなかだ」この瞬間、二人の関係は大きく変わった。
この日以来、ロリアンのアンドレイに対する態度が軟化した。互いの命を預け合ったことで、言葉にならない連帯が生まれた。傭兵の世界では忠誠は稀有だが、誰かに命を救われればその恩義は忘れられず残る。
その後、数々の戦闘や危機を共にくぐり抜ける中で、アンドレイとロリアンは戦場外でも話を交わすようになった。戦闘の合間や夜のキャンプファイヤーや次の仕事の準備で武器の手入れをしているときなどに、彼らは互いの過去について語り合い、次第に心を開いていった。
ロリアンは、普段は見せない複雑な側面をアンドレイに見せた。彼もまた、かつては小さな貴族の家系に属していたが、家が没落し、全てを失った過去があった。彼の貴族嫌いは、金持ちの貴族たちが苦しむ彼の家族の援助願いを無視したことから生まれたものだった。ロリアンが傭兵としての道を選んだのは、生き延びるため、そして二度と無力になりたくないという願望のためだった。彼は多くの裏切りや持ち逃げを見て、容易に人を信じなくなり、自分の尺度で人生を築いてきた。
アンドレイもまた、自分の過去について語った。だが、国王の息子であるという正体を明かさず、彼はただ父の期待や自分の失敗の重さから逃げたことを話した。洞察力があるロリアンは、それ以上のことは追及しなかった。
ある夜、何人かの仲間を失ったとりわけ危険な仕事の後、ロリアンは、アンドレイの心に残る言葉を言った。「俺たちは、みんな何かから逃げているんだ、アンドレイ。その中の何人かは、他の者より必死で逃げているのさ」
そのとき初めてロリアンはアンドレイを「王子」や他のからかう渾名では呼ばず、名前で呼んだ。その瞬間アンドレイは、自分が打ち明けた以上にロリアンが彼を理解していることが分かった。彼らは、二人とも、何か不確かなものを探して、逃げていた。共にそれを受け止めることで、二人の絆は深まった。
雇い主への反抗
二人の友情が最も強固なものとなったのは、ある胡散臭い任務に挑んだ時だった。彼らは腐敗した領主の依頼を受け、係争中の地域を通る武器の輸送を護衛することになった。しかし、任務遂行中に分かったのだが、その武器は奴隷商人に渡り、近隣の村々を襲撃するために使われるものだった。
傭兵団のメンバーは、二つに分かれ、一方は、荷物の目的は彼らには関係なく、彼らは単に護衛するために雇われたのであり、任務を続けるべきだと主張した。アンドレイを含む他方は、倫理的に忌わしいことに加担することを拒絶した。
普段実用的で生き延びることを重視するロリアンが後者側に立ったので、アンドレイは驚いた。ロリアンは、どんなに報酬がよくても、奴隷商人のための任務には加われないと断言した。二人は、同じ志を持つ仲間を集め、静かに隊商を離れ、血が流れない形で武器の輸送を妨害し、荷物が意図する行先に届かないよう図った。
この行動は、彼らを危険に晒すものであった。二人は、この先領主に狙われることを覚悟したが、それは問題ではなかった。このとき、二人は金銭ではなく、それよりも尊い何かを支持する立場を明らかにした。お互いに相手の性格の本質を見て、彼らの友情が決定づけられた。この時から、二人の間に深いリスペクトが生まれた。
相互信頼と忠誠
年月が経つにつれ、アンドレイとロリアンの絆はますます強くなった。彼らは数え切れないほどの戦いを共にし、互いに暗黙のうちに信頼し合った。裏切りや変わり身が当たり前の傭兵の世界で、彼らの友情は珍しく不変だった。
戦場では、互いの動きを瞬時に察知し、無言のうちに支え合うことが出来るようになった。戦闘以外の場面でも、この世界では滅多に経験できない安心感を分け合った。交渉がうまく運ばないときや傭兵仲間の上下関係で摩擦が生じたとき、常に背後を守って助け合った。
ロリアンの最期
アンドレイとロリアンの友情は、傭兵生活の中で揺るぎないものとなったが、それは最終的にロリアンの悲劇的な死で終わりを迎える。彼らがある領主の依頼を受けて要塞を守っていた時、激しい戦闘が勃発した。筋書どおりとでも言うように敵軍の数は圧倒的で、傭兵団は守勢に回ることを余儀なくされる。
その戦いの中、アンドレイとロリアンは要塞の北門を守る重要な任務を任された。いつものように彼らは少人数で敵の猛攻を防いでいたが、敵が圧倒的に多く、次第に追い詰められてしまう。アンドレイは、状況が絶望的であることを読んでいたが、それでもロリアンと共に最後まで戦うことを決意する。
戦闘の終盤、敵が門を突破しそうになった瞬間、ロリアンは最後の賭けに出た。彼は自ら囮となり、敵の注意を引くことで、アンドレイにわずかな突破口を与えたのだ。ロリアンは致命傷を負いながらも奮闘し、アンドレイが守備を整える時間を稼ぐことに成功した。しかし、その代償としてロリアンは命を落とすことになった。
アンドレイは、最も信頼していた友人を失ったことで深い悲しみと罪悪感に襲われた。ロリアンは、命を賭してアンドレイを助けたが、その犠牲はアンドレイにとってあまりにも重かった。彼はロリアンの死を受け入れることができず、しばらくの間、自分を責め続けた。
しかし、苦悶の中でアンドレイが知らされたのは、友情とは単なる戦場での結束ではなく、時に命を掛けた選択をする覚悟を持つことであり、互いの信頼を裏切らないことだった。アンドレイはその教えを胸に抱き、彼の犠牲を無駄にしないためにも、自分の道を歩み続ける決意を固めた。
ドランの元を去って数週間後、アンドレイは無法地帯として知られる地域を旅していた。ここで彼は、ホークとして知られる悪名高い盗賊の頭領と出食わすことになる。ホークは往来が困難なブラック・ホロウ峠を支配して旅人や護衛兵たちを奇襲することで名を上げていた。アンドレイの一団がこの峠を通る隊商を守るために雇われたとき、ホークが待ち伏せしているだろうことは、アンドレイは覚悟していた。
そして峠に入ると、噂に違わず、ホークは隊商を襲撃してきた。血なまぐさい戦闘が繰り広げられ、気付くとアンドレイは仲間たちから引き離されおり、一人ホークと対峙していた。ホークは、数多の修羅場をくぐり抜けてきた剣士でもあり、アンドレイを挑発してきた。
「なかなかやるじゃないか。どうだ、俺と一対一の勝負をしないか。断るなら、隊商全員の命はないと思え」
アンドレイは、もし罪のない旅人たちが殺されたら、傭兵としての彼の評判は地に落ちるのが明白だったので、ホークの挑戦を受けた。
始まった一騎打ちは、情け容赦もなく過酷で長時間続いた。お互いが限界まで力を出し切って粘る中、アンドレイはドランから学んだ忍耐とバランスを活かして戦った。速攻を仕掛ける代わりに、ホークの動きを慎重に観察し、タイミングを待った。そして、チャンスが見えたとき、それを逃さなかった。アンドレイは正確な一撃でホークの剣を弾き飛ばし返し刀で彼の腿を切り裂いた。
膝をついたホークの喉元に剣の切っ先を当て、アンドレイは静かに言った。「これ以上略奪しないと誓え。この地域の旅人を襲わないと誓え。そうしたら生かしてやる。誓わないなら、この刃を受けろ」
その言葉にホークは驚いた。ホークは誓いを立て、そしてその言質通り、直ちに盗賊団を解散した。以降この地域を荒らすことはなかった。
傭兵仲間ロリアン
ドランの元を去った後、アンドレイはさまざまな傭兵団に加わり、その中でロリアンという仲間に出会った。ロリアンは、後にアンドレイの一番の友人で最も信頼できる同志となったが、彼らの友情はすぐに築かれたものではなかった。共に戦った数々の戦闘、個人的な苦難、様々な窮地を共有するうちに、それが稀有である傭兵の世界で、互いに信頼し合うようになり、友情が生まれていった。
ロリアンはアンドレイより10歳ほど年上の老練な傭兵で、長年傭兵生活を送っていた。彼は鋭い言葉と皮肉たっぷりのユーモアを持ち、虚飾を嫌う生き方をしていた。アンドレイがロリアンの傭兵団に加わった当初、ロリアンは彼に対して懐疑的だった。ドラン師匠の指導と矯正を受けたアンドレイの立ち居振る舞いは、乱雑で実践的な傭兵の生き方とは明らかにかけ離れていたからだ。
アンドレイの静かな厳しさや顕な理想主義は、ロリアンの目には未経験な若者のもののように見えた。彼らが戦っているカオスのような戦場には相応しくないアンドレイの貴族的な雰囲気を揶揄し、彼を「王子」と呼んで冷やかし、訓練された剣技をからかった。
しかし、アンドレイはロリアンの挑発には乗らず、ドラン師匠から学んだ通り、冷静に毅然として受け流していた。この反応にロリアンは興味を持った。傭兵団では、若い戦士たちが些細な鞘当てに殴りかかったり、挑発に乗って食ってかかったりするのを見慣れていたロリアンにとって、アンドレイの姿勢は異例だった。
烏峠の戦い
二人の関係が変化し始めたのは、烏峠での戦いのときだった。彼らの傭兵団は、山岳地帯にある要塞を守るために雇われて、侵略してきた略奪者の軍団と対峙していた。地形は険しく、彼らの軍勢は数では劣っていたが、守備に有利な高所を確保していた。
戦闘の最中、アンドレイとロリアンは峠の特に危険な箇所で共に戦うことになった。一時彼らは他の仲間から引き離され、略奪者たちが攻め込んでくる峡谷を二人で守り抜かなければならなくなった。戦いは熾烈で、アンドレイとロリアンは何度も命の危機に直面した。
戦闘の中で、ロリアンは特にアグレッシブな略奪者の攻撃を受け、地面に倒れ込んだ。敵が最期の一撃を加える寸前、アンドレイが素早く入り込み、ドラン師匠から学んだ、流れるような剣技のタイミングを計った一振りで敵の一撃をかわし、ロリアンを救った。
ロリアンは息を切らし、傷だらけになりながらアンドレイを見上げ、驚きとともに感謝の意を示した。「なかなかやるじゃないか、王子」と彼は呟いて起き上がった。アンドレイは手を差し伸べ、ロリアンを引き起こしながら静かに言った。「あなたもなかなかだ」この瞬間、二人の関係は大きく変わった。
この日以来、ロリアンのアンドレイに対する態度が軟化した。互いの命を預け合ったことで、言葉にならない連帯が生まれた。傭兵の世界では忠誠は稀有だが、誰かに命を救われればその恩義は忘れられず残る。
その後、数々の戦闘や危機を共にくぐり抜ける中で、アンドレイとロリアンは戦場外でも話を交わすようになった。戦闘の合間や夜のキャンプファイヤーや次の仕事の準備で武器の手入れをしているときなどに、彼らは互いの過去について語り合い、次第に心を開いていった。
ロリアンは、普段は見せない複雑な側面をアンドレイに見せた。彼もまた、かつては小さな貴族の家系に属していたが、家が没落し、全てを失った過去があった。彼の貴族嫌いは、金持ちの貴族たちが苦しむ彼の家族の援助願いを無視したことから生まれたものだった。ロリアンが傭兵としての道を選んだのは、生き延びるため、そして二度と無力になりたくないという願望のためだった。彼は多くの裏切りや持ち逃げを見て、容易に人を信じなくなり、自分の尺度で人生を築いてきた。
アンドレイもまた、自分の過去について語った。だが、国王の息子であるという正体を明かさず、彼はただ父の期待や自分の失敗の重さから逃げたことを話した。洞察力があるロリアンは、それ以上のことは追及しなかった。
ある夜、何人かの仲間を失ったとりわけ危険な仕事の後、ロリアンは、アンドレイの心に残る言葉を言った。「俺たちは、みんな何かから逃げているんだ、アンドレイ。その中の何人かは、他の者より必死で逃げているのさ」
そのとき初めてロリアンはアンドレイを「王子」や他のからかう渾名では呼ばず、名前で呼んだ。その瞬間アンドレイは、自分が打ち明けた以上にロリアンが彼を理解していることが分かった。彼らは、二人とも、何か不確かなものを探して、逃げていた。共にそれを受け止めることで、二人の絆は深まった。
雇い主への反抗
二人の友情が最も強固なものとなったのは、ある胡散臭い任務に挑んだ時だった。彼らは腐敗した領主の依頼を受け、係争中の地域を通る武器の輸送を護衛することになった。しかし、任務遂行中に分かったのだが、その武器は奴隷商人に渡り、近隣の村々を襲撃するために使われるものだった。
傭兵団のメンバーは、二つに分かれ、一方は、荷物の目的は彼らには関係なく、彼らは単に護衛するために雇われたのであり、任務を続けるべきだと主張した。アンドレイを含む他方は、倫理的に忌わしいことに加担することを拒絶した。
普段実用的で生き延びることを重視するロリアンが後者側に立ったので、アンドレイは驚いた。ロリアンは、どんなに報酬がよくても、奴隷商人のための任務には加われないと断言した。二人は、同じ志を持つ仲間を集め、静かに隊商を離れ、血が流れない形で武器の輸送を妨害し、荷物が意図する行先に届かないよう図った。
この行動は、彼らを危険に晒すものであった。二人は、この先領主に狙われることを覚悟したが、それは問題ではなかった。このとき、二人は金銭ではなく、それよりも尊い何かを支持する立場を明らかにした。お互いに相手の性格の本質を見て、彼らの友情が決定づけられた。この時から、二人の間に深いリスペクトが生まれた。
相互信頼と忠誠
年月が経つにつれ、アンドレイとロリアンの絆はますます強くなった。彼らは数え切れないほどの戦いを共にし、互いに暗黙のうちに信頼し合った。裏切りや変わり身が当たり前の傭兵の世界で、彼らの友情は珍しく不変だった。
戦場では、互いの動きを瞬時に察知し、無言のうちに支え合うことが出来るようになった。戦闘以外の場面でも、この世界では滅多に経験できない安心感を分け合った。交渉がうまく運ばないときや傭兵仲間の上下関係で摩擦が生じたとき、常に背後を守って助け合った。
ロリアンの最期
アンドレイとロリアンの友情は、傭兵生活の中で揺るぎないものとなったが、それは最終的にロリアンの悲劇的な死で終わりを迎える。彼らがある領主の依頼を受けて要塞を守っていた時、激しい戦闘が勃発した。筋書どおりとでも言うように敵軍の数は圧倒的で、傭兵団は守勢に回ることを余儀なくされる。
その戦いの中、アンドレイとロリアンは要塞の北門を守る重要な任務を任された。いつものように彼らは少人数で敵の猛攻を防いでいたが、敵が圧倒的に多く、次第に追い詰められてしまう。アンドレイは、状況が絶望的であることを読んでいたが、それでもロリアンと共に最後まで戦うことを決意する。
戦闘の終盤、敵が門を突破しそうになった瞬間、ロリアンは最後の賭けに出た。彼は自ら囮となり、敵の注意を引くことで、アンドレイにわずかな突破口を与えたのだ。ロリアンは致命傷を負いながらも奮闘し、アンドレイが守備を整える時間を稼ぐことに成功した。しかし、その代償としてロリアンは命を落とすことになった。
アンドレイは、最も信頼していた友人を失ったことで深い悲しみと罪悪感に襲われた。ロリアンは、命を賭してアンドレイを助けたが、その犠牲はアンドレイにとってあまりにも重かった。彼はロリアンの死を受け入れることができず、しばらくの間、自分を責め続けた。
しかし、苦悶の中でアンドレイが知らされたのは、友情とは単なる戦場での結束ではなく、時に命を掛けた選択をする覚悟を持つことであり、互いの信頼を裏切らないことだった。アンドレイはその教えを胸に抱き、彼の犠牲を無駄にしないためにも、自分の道を歩み続ける決意を固めた。
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