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*** 160 出城の完成と街の大増築 ***

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 それからしばらくして、『出城』も完成した。
 大城壁の南西の隅と、南東の隅に造らせていた、対ヒト族の窓口にする予定の城だ。

 いやこれもすごかったわ。
 ヒト族が侵略したがるように、リッチで豪華なものにしてくれとは頼んでいたけどさ。
 なにもここまで造り込まなくっても、っていうぐらいスゴかったよ。


 2つの城の建設を任せた『棟梁』たちが、『ガイア人が驚く豪華さとは何か?』って研究したらしいんだ。
 それでアダムに頼んでガイアにある城や地球の城を見比べた結果が、『色』だったんだよ。

 まあ、ガイアにはペンキも絵具も無いからなあ。
 もしも壁を赤くしたかったら、赤い石を見つけて来るしかないわけだ。
 ルビーみたいなコランダムかなんかだな。
 青だったらラピスラズリか。

 でも当然そんなの宝石だし、滅多に手に入るもんじゃないだろ。
 だから王国の宮殿にだってそんな壁は無いわけだ。
 有っても小さな小さな壁画ぐらいだろう。

 だからどっちの城も、地球産の高級塗料をふんだんに使って実にカラフルに作ってあったんだ。
 それでも土の精霊たちの美意識ってスゴいから、10色ぐらい使ってるのにぜんぜんケバくないんだわ。
 しかもところどころグラデーションまで入ってるし……


 南西の隅の出城のモデルになったのは、あの『ノイシュバンシュタイン城』だ。
 ただし一番高い尖塔の高さは150メートルもあるし、全体の大きさも本物の100倍ぐらいはあった。

 大きな尖塔の円錐状の屋根は、綺麗なパステルブルーだ。
 屋根の縁は本物の金細工だったし。
 小さな尖塔の屋根はパステルグリーンで、こちらの屋根の縁は銀色だ。
 建物の屋根そのものは、薄いパープルでマットに仕上げてある。
 たくさんある窓の枠は、薄いオレンジ色の地に金細工が施してあった。
 それから、本物のノイシュバンシュタイン城の門の周りの建物部分は赤いんだけど、これだと普通の赤レンガみたいだからさ。
 ここも敢えて薄いパステルレッドで仕上げてあったよ。

 なんかこう、全体の印象は『おとぎの国の城』か『お菓子の城』だな。


 南東の隅の出城のモデルになったのは、あの『ケルン大聖堂』だ。
 あの目がちかちかするぐらい細かい彫刻が施されてるやつ。
 こちらは割と現物に忠実に造ってあったんだけど、やっぱり尖塔の高さは200メートルもあって、敷地全体の大きさも本物の100倍だそうだ。

 あ、よく見ればこれ、モールディングの凹部に、黒い塗料が流し込んである!
 うーん、これ、プラモデル塗装のウエザリング技術だよな……
 これによって、彫刻が一層はっきり見えとるわ……


 もちろんどちらの出城も、城壁の門から城の門まで豪華絢爛な庭園が造ってあった。
 緑の芝生に花が咲き乱れる花壇や無数の噴水もある。
 その庭園の中を、幅30メートルの純白の道が延びてるんだ。
 あ、そうだ。
 ここに送迎用エアカ―を配置してやるか……
 ボディは、黒い艶出し塗装に、金のモールディングをつけてやろう。


 城に入ってから応接の間までの通路も強烈だ。
 どちらの城も、モデルにしたのはベルサイユ宮殿の鏡の間だそうだ。

 ガイアにもガラスは有るけど、まだ超貴重品だったんだよ。
 王侯貴族でも20センチ角ぐらいまでの鏡しか持ってないからな。
 下級貴族や裕福な商家でも銅鏡しか持ってなかったし。

 それが床から10メートル上の窓まで全部ガラスの鏡で覆われていたら、ヒト族はさぞかしびっくりするだろうなあ。
 通路の長さだって800メートルもあるし。
 もちろんこの鏡もその場で練成して作ったから、10メートル×800メートルの1枚の鏡になっているんだ。

 500メートル四方の応接間の天井高は50メートルあって、シャンデリアの直径は100メートルだそうだ。
 敷いてある絨毯も絵画調の装飾が施されてて、ブーツの踵が全部めり込むぐらい深かったな。


 それで土の精霊たちを盛大に褒めてやったんだけどさ。
 もう全員をハグして頭撫でてやって。
 そしたらやっぱりみんな泣いちゃったんだけど、ようやく泣きやんだ『棟梁』たちが、もう一度夜にも視察に来てくれって言うんだ。
 それで夕食後にみんなで行ってみたんだけど……

 こ、こいつら城のライトアップまでしとるわ!
 それも徐々に色が変わる仕様までつけて!

 あ! レーザー光線まで使うとる!
 壁面にレーザーで絵も描いとる!

 あー、庭園の木にも山ほどLED照明が点ってる……
 まるでクリスマスだわ……



 うーん、これ対ヒト族用のエサにだけ使うのもったいないわ。

 どっちもおなじもの『中央街』に作らせるか……
 超高級ホテル仕様の部屋も作って、『迎賓館』にでもするか。

 まあとりあえず、中央大神殿のライトアップだけ頼んでおいたけど。


 で、今回気づいたことがあったんだけどさ。
 精霊たちって、対抗心とかライバル心って全く持っていないんだよ。
 あいつが造ったものよりも俺が造ったものの方がいいとか、そういうことって一切考えてないんだ。
 誰かが褒められたらそれはみんなの喜びになるみたいなんだわ。

 唯一彼らが悲しむのは、俺たちがなんの仕事も頼まないときだけみたいだな。
 さすがはシスティが創った存在だよ。

 俺、なんとなく精霊たちをコキ使ってばかりで申し訳ないなとか思ってたんだけど……
 これからは、もっと仕事をお願いして、それでもっともっと褒めてあげようか……




 それから俺は、『世界樹森林公園』に10ヶ所ほど大きな水槽を作った。
 内部には大きめの転移の魔道具も設置してある。
 そうして、水の精霊たちと風の精霊たちに集まって貰ったんだ。

「君たちに仕事を頼みたいんだ」

「「「「「「 わぁーい♪ お仕事お仕事♪ 」」」」」」

 はは、やっぱり俺が仕事を頼むと喜んでくれるのか。

「実はあの世界樹森林公園にいる木たちは、けっこう弱ってるんだ。
 だから俺が魔力を込めた水を、月に1回撒いてやって欲しいんだよ。
 ああ、俺の魔力水は、アダムに言えば公園の中にある水槽に転移してもらえるからさ。
 その水を雨にして、森に撒いてあげてくれ。

 水の精霊たちは、風の精霊たちに、雨の降らせ方を教えてあげてくれるかな。
 ああ、森林公園は結構広いからたいへんな仕事だろうけど、頼んだぞ」

「「「「「 はぁ~い♪ 」」」」」

「そうそう、水をあげたら木のところに行って、よく声を聞いてごらん。
 最初は聞えないかもしれないけど、そのうちに聞えるようになるから。
 もしどうしても聞えないようだったら、植物の精霊に頼んで聞き方を教えてもらうといいだろう。
 きっと木が『ありがとー♡』ってお礼を言ってくれてるのが聞こえるはずだから」

「「「「「 うわー、楽しみぃ~♪ 」」」」」


 うん。俺が褒めてやるのもいいけど、木にお礼を言われるのも嬉しいだろうからな……



 東西の『移住勧誘部隊』たちの活動が熱を帯びて来た。
 もうかなりの種族や一族が移住して来てくれているそうだ。

 それで俺は新しい街の建設を頼まれたんだよ。
 もうそろそろ今の街がいっぱいになりそうだったから。
 だから『神界土木部』の連中のところに行ってみたんだ。


「なあガルム、『抽出』は出来るようになってきたか?」

「はっ! もう『金抽出』は皆1人で出来るようになりました!
『鉄抽出』も10人がかりならなんとか!」

「そうか…… それじゃあそろそろ実際に『街』を造ってみないか?」

「お、おおおおおおおーっ!
 ま、『街』を造らせて頂けるのでしょうか!」

「ああ、今移住者が増え続けててさ。
 まあ俺が造ってもいいんだけど、お前たちもそろそろ造ってみたいんじゃないかって思ってな」

「あ、ありがとうございますっ!」

「でも、計算してみたんだけどさ。
 まだきっと、お前たち100人全員で街ひとつ造れるぐらいだな。
 それでもいいか?」

「それでも是非お願い致します!」


 俺はまず7時街予定地に小さなギャラリースタンドを造ってやった。
 そこにはマットレスやベッドを配置して、また『治癒キュア』が使える精霊たちにも来て貰っている。
 ああ、倉庫の材料の準備も大丈夫そうだな。

「それじゃあひとりずつ順番に、『魔法マクロ【都市建設】実行』って唱えてみろ。
 それで最初の1人が唱えて気絶したら、次からは『魔法マクロ【都市建設】残実行』って言うように」

 それで土木部の若い衆の都市建設が始まったんだけどさ。
 みんな整然とマクロ名を唱えてそれから整然と気絶してるんだわ。

 そうして100人全員が気絶したんだけど……
 街はあと少しだけ未完成だったんだ。

 全員が『治癒キュア』を受けて気絶から覚めると、俺はアダムに聞いてみた。

「なあ、これ街は何%ぐらい出来たんだ?」

(およそ95%でございます)

「おー、惜しかったなあ。もう少しで完成だったのに……」

 土木部の連中もちょっと口惜しそうな顔してたよ。
 だから言ってやったんだ。

「それじゃあさ。あと少し休んで回復したら、もうひとつ街造りにチャレンジしてみるか?
 今の気絶でお前たちの能力も上がったから、今度はお前たちだけで全部造れるかもしれないぞ」

「「「「「 是非! 」」」」」


 それで今度は『6時街』建設予定地に移動して、同じように作業をさせてみたんだ。
 そしたらさ、今度はちょうど100人目が魔法マクロを唱えて気絶したところで、街が完成したんだよ。
 城壁も出来上がったんで、街全体もシスティの神威の光で白く輝いたんだ。

 もう土木部の連中は号泣よ。
 野太い男たちの暑苦しい泣き声が、そこいらじゅうに響き渡ってたぜ。
 まあ、これで親方から命じられていた、最低限の能力は身につけられたわけだからな。
 少なくとも、材料さえあってアダムの助けさえあれば、こうして『神界土木部』の若い衆だけで40万人都市をひとつ造れるようになったんだもんなあ。
 そりゃ嬉しいか……


 俺はついでに、奴らに『畑用プランター』の魔法マクロも伝授してやった。『温室プランター』のマクロもだ。
 そうして、メシも喰って回復したやつらに、1万ヘクタールの畑と1万ヘクタールの温室も造らせたんだよ。

 その日はそれで解散して休養させたんだけど、奴らずっと街の中を歩いて嬉しそうに見学してたわ。


 翌日は『5時街』を造らせた。
 今度は90人ほどが気絶したところで完成してたわ。
 それで残りの10人には、畑と温室を造らせたんだ。

 奴らもまだ余力があるようなんで、今度は『4時街』も造らせた。
 これは80人ほどで完成させてたよ。
 うーん、やっぱ気絶は最高の鍛錬だわなあ……


 こうして『4時街』も完成させると、俺たちは既にある街の外側にも街を造り始めたんだ。
 まあ『9時街Ⅱ』から始まって時計回りに『8時街Ⅱ』までの12の街を造って行ったんだな。
 ああ、『8時街Ⅱ』は、学園都市にするんで、それ用のマクロも伝授してやったけど。

 これで詰めれば800万人が住める街が完成したわけだ。
 まあ当初は空き家というか空き街だらけだけど、人口が増えて使うようになったときは、俺が『広域クリーン』の魔法をかけるから大丈夫だろう。

 それからアダムと一緒に、40万人用の街を小さく設計し直して、2万人が住めるぐらいの『村作成マクロ』も作った。
 これは農業主体の村にする予定なんで、周囲に造る1000ヘクタールほどの畑と温室プランターもセットになっている。


 そうしてまた土木部の連中と一緒に、この『村』を作っていったんだ。
 これでⅡのつく『街』の周囲に12個ずつ、計144個の村が完成した。

 大平原南部にはヒト族用の収容所が500万人分あるから、これで今のガイアの全人口の半分を収容可能な住居が出来たことになる。
 まあ、人口がさらに増え始めたら、同じようにしてもっと『街』や『村』を造ればいいだけの話だな。


 それからアダムの機能で、ガイア国全体が映ってる衛星写真を撮ってもらったんだ。
 この写真、すげえんだぜ。
 高度100キロメートルの成層圏から撮った写真に、城壁や街がはっきりと写ってるんだわ。

 地球上の構造物で宇宙空間から認識できるのは、万里の長城とエジプトのピラミッドだけなんだそうだが、ここガイアでもそれに匹敵する建物が出来たんだなあ……
 ちょっと感慨深かったよ……


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