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*** 155 更なるヒト化と長命化実験 ***
しおりを挟む或る日、システィの神域での夕食後、俺は気になっていたことを聞いてみたんだ。
「なあフェミーナ。お前ってヒト化が進んでないか?」
「え、ええ、なんだか最近指が長くなって来たような気がします」
「おー、ほんとだな。
それに爪も前みたいに鋭くなくなって、ヒトの爪みたいになってきてるぞ。
そうだ、ちょっとシャツ脱いで背中見せてくれるか?」
「はい♡」
なぜ俺を向いたままシャツを脱ぐんだフェミーナよ……
俺が見せてくれと言ったのは、背中であって胸ではないのだ……
あ、でもなんか胸も大きくなってるような……
あーっ!
スカートは脱がんでいいのだ!
ぱ、パンツもだ!
「な、なぜここで裸になるのだフェミーナよ!」
「だってサトルさんに喜んでいただきたいな、って思って……」
「お前どんな学習してるんだよ!」
「だ、だってだって!
前にフェンリルの姿のときには、いくらわたしが体を擦りつけてもぜんぜん反応してくださらなかったのに、ワ―フェンリルになってからは服を脱ぐとサトルさんもフェロモン出してくださるんですもの。
それが嬉しくって……」
お、俺、そんなもん出してたんか……
「今はまだ駄目だ。
このガイアを平和に出来たら、そのときはたっぷり見せてもらうから、今はパンツを穿いて背中を向けろ」
「はーい♡」
あ……
よく見ればこいつのパンツって、相当なローライズなんだよな……
ま、まあしっぽがあるから仕方ないんだけどさ。
それにしてもエロいわぁ…… あとちょっとで見えそう……
で、でも今はがまんだ!
ガイアの統一が終わったらいくらでも見せてくれるだろうし……
「お、やっぱりそうか。
前は首のうしろにも背中にかけて毛があって、まるでたてがみみたいだったんだけど、今はすっかり無くなってる……
なあシスティ、またフェミーナに『変身』の能力を重ね掛けしてやったのか?」
「いえ、してないわよ?」
「だったらなんでこんなにヒト化が進んでるんだ?
アダム、なんでだと思う?」
(そうですね……
これはあくまで仮説なのですが、サトルさまは神になられてから周囲に相当に神威を溢れさせていらっしゃいます。
おそらく体内マナや魔力そのものが大きいからなのでしょうが。
ですからフェミーナさまも、サトルさまの身近にいらっしゃるために、その神威を浴び続けてヒト化が進まれたのではないでしょうか)
「そういうこともありうるのか……」
「うっ、うえええぇぇぇぇ~ん……」
「フェミーナよ、なぜ泣く!」
「だ、だって……
わ、わたし、サトルさんの近くにいてカラダが変わるなんて……
も、もっともっと変わってサトルさんの好みの女になりたい……」
(ま、まさかフェミーナの胸が大きくなったのって……)
「え、エルダさま。そういうことって有り得るんでしょうか?」
「うむ。大いにあり得るの。
お前は私の使い魔の女性悪魔たちが、男性悪魔に比べて天使族の姿に近いのには気づいておるか?」
「は、はい……」
「彼女たちはずっとわたしの世話係だったからの。
もちろん風呂にも一緒に入って私の背を流しておったりもしたのだ。
それゆえ、私の姿に似て来たのではないかと言われておる。
悪魔界にいる女性達は、もっとベギラルムに近い姿をしておるぞ」
「そ、そうだったんですか……」
翌日俺は植物の精霊たちを呼んで聞いてみたんだ。
「なあ、例の俺たちの入ったあとの風呂の残り湯なんだが……
あれ俺たちが神になってからの湯も、薄めて植物たちにかけてやってるのか?」
「いえ、まだです。
以前の水がまだたっぷりと残っていますから」
「そうか……」
それで俺、その日の夜に風呂に入ったときに、湯船で翼を出してみたんだよ。
でもって、少し力を込めて、こう『神威』をぐわって出してみたんだ。
そしたらさ。
驚いたことにお湯が金色に輝き始めちゃったんだわ。
なんだこりゃ?
湯船の水は、翌日になってもまだ光輝いていた。
それで俺、その水を1000倍に薄めてアダムに倉庫に溜めてもらって、また世界樹のところに行ってみたんだよ。
「やあ世界樹、元気でやってるか?」
「おおおお…… こ、これはこれはサトルさま。
神へのご就任、誠におめでとうございました。
おかげさまですこぶる元気に過ごさせていただいておりますわい」
「それはよかった。
それでな。
なんか俺、神になったら少し体質が変わっちゃったらしくってさ。
ほらお前って、以前システィの力のこもった水で元気になったことがあったろ。
だから俺が『神威』を込めた水も味わってもらって、違いがあるかどうか比べてみて欲しいんだよ」
「それはそれは……
ありがたいことでございます……」
「それじゃあ今お前の根元に水播いてみるぞ」
「はい……」
それで俺、まだかすかに金色に光る1000倍希釈液を1000リットルほど世界樹の根元にかけてみたんだわ。
そしたら……
「ふ、ふおおおおおおおおおおーっ!
な、なんだこの水はっ!
力が…… 力が溢れ出すっ!」
おいおい世界樹、なんかわさわさ葉が茂り始めたぞ!
だ、だいじょうぶか?
あ、花まで咲き始めた……
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ……
さ、サトルさま、こ、この水は強烈過ぎます……
も、もしよろしければ、もう100倍程薄めたものをかけてみていただけませんでしょうか……」
「お、おう……」
「ふう…… 素晴らしい……
なんという神気溢れる水でありましょうか……
この水をかけてやれば、どんな植物であろうとも、たちどころに元気になりましょうぞ。
たぶん、相当に寿命も延びることでございましょう」
「そ、そうか…… 寿命も延びるんか……」
それで俺は、次の『族長会議』のときに提案してみたんだ。
「それではみんな。
俺から提案と言うかお願いがあるんだ。
聞いてくれないか?」
「サトル神さまのご施策は、すべて素晴らしいものばかりでございました。
なんなりとお申し付けくださいませ……」
あー、みんなうんうん頷いちゃってるわ……
「い、いや俺だって失敗はするからな。
だからあんまり信じ込まないでくれよ」
「はは、神が自分を信じるななどと仰られるとは……」
「い、いや、今度ばかりはみんなの暮らしや命にかかわることかもしれないからな」
「…… 伺いましょう ……」
それで俺、みんなに説明したんだわ。
俺たちと一緒に暮らしてるフェミーナのヒト化が進んだこととか、世界樹が言ったこととかを。
「ふーむ。
サトル神さまは、我々の姿がさらにヒト化することを望まれておられるのですか?」
「いや違う。
俺はむしろみんなには今まで通りの姿でいて欲しいと思っている。
俺が望んでいるのは、みんなの寿命を延ばすことなんだ」
「寿命…… でございますか……」
「ああ、ドラゴン族だのベヒーモス族だのフェンリル族だのはいい。
もともと凄まじく長い寿命を持っているからな。
だがそれ以外の種族の寿命はさほどでもないだろう。
特に体が小さい種族ほど寿命が短いようだ」
兎人族の族長が発言した。
「確かに我々の平均寿命は30年ほどですが、さほど短いとは感じておりませんが……」
鶏人族の族長も言う。
「私どもの平均寿命は25年ほどですが、卵を生めなくなったり有精卵に出来なくなってからも長生きするなど……」
「いや是非もっと長生きして欲しいんだ。
それも健康で子孫を残せる状態のまま。
俺が目標とするのは、子孫を残せる年齢は40歳まで、寿命は少なくとも60歳だ」
会議室がザワついた。
「そ、それは確かに素晴らしいことでしょうが……
そ、そんなことになったら増え過ぎた子供たちの食べ物が……」
「みんなあのポテータの収穫を見ただろう。
来年のポテータ畑は今年の3倍にするつもりだ。
その翌年はさらに3倍だ。
みんなの寿命が60歳になって、人口が100倍になっても必要な食料は絶対に確保してみせよう。
実はすでに2500万人の60年分の食料は用意してあるんだ。
最近ちょっとカネが集まったんで、他の世界の余ってる食料を買わせてもらっているからな」
「あ、相変わらず凄まじいお力ですなぁ……」
「それにさ、みんなちょっと考えてみてくれよ。
ここにいるみんなだったらもう孫もいるだろ。
60歳まで生きられたら、孫もたくさん増えていて、その孫の子もたくさんいるかもしれないじゃないか。
そうしてみんなが寿命で死ぬときには、周りに何十人もの孫やひ孫たちがいるんだ。
その子たちが全員涙を流しながら、みんなを看取ってくれるんだよ。
こんな幸せな死に方もないぞ」
「うむ。
今までの我らにとって最も価値ある死に方とは、子や孫や種族を守って戦って死ぬことであり申したが、サトル神さまのおかげでもうそのような必要は無うなり申した。
この上はたくさんの子孫に囲まれたまま、天寿を全うして死にたいものですの。
ですがサトル神さま。
今さら、我らの寿命など延ばせるものでしょうかの?」
「うん。残念ながらここにいるみんなの寿命はもうそんなには延ばせないかもしれない。
せいぜい数年だろう。
でも俺は、みんなの子供や孫たちの寿命を延ばしてやりたいんだ。
30年後、50年後に、みんなの子孫たちがみんなに感謝しながら、長くなった寿命を全うした後に死んでいけるように……」
みんなの顔が綻んだ。
「なるほど。よう分かり申した。
『一族の寿命を延ばし、かつ数も大幅に増やした族長』……
これこそは族長として最高の誉れでありますなあ……
死して天に昇った後も、歴代の族長たちに激賞されること間違いなしでございましょう」
はは、みんな嬉しそうにこくこく頷いてるわ。
「それでサトル神さま。
我々は具体的にどのようなことをすればよろしいのですかな?」
「ああ、まずは実験をしてみたいんだ。
それで各種族から、子供を1人選んで欲しい。
出来ればなるべく小さな子が望ましいが、もう親がいなくても夜寝られる位の子を。
それからその子の付き添いの大人もだ。
その22人の子たちは、週に2日、中央街に造る邸で俺と一緒に風呂に入ったり同じ部屋で寝て貰いたい。
それを3カ月ほど続けてみて、子供たちの姿や成長の度合いに変化が有るかどうか見てみたいんだよ」
「その子たちは全員、将来のサトル神さまの『側室』候補にして頂けるのですかな?」
「いや違うってばオーガ・キング!
俺はハーレムや、まして幼児ハーレムを作る気は毛頭無いってば!
あくまで成長や寿命の実験だって言ったろ!」
あー、なんか族長たちみんな目がギラギラし始めたわ……
「これだけはお分かり頂きたいのですがの。
我ら種族にサトル神さまの血が入るのは、種族全体の悲願なのですぞ」
「だからしないってば! そんなもん悲願にすんなよ!
なんでそうみんな俺の子を欲しがるかなあ……」
「それはあれだけの超絶大強者であり、かつ神と言う尊いお立場であれば当然のことかと……」
「その発想は実に危険なんだぞ。
前にも言ったが、そんなことになればその子やその子孫がそれからの族長になるだろう。
世襲制というのは諸悪の根源なんだ。
あの洞窟ドワーフ族の族長一族の酷さを見ただろうに。
俺が生きているうちはまだいいが、俺がいなくなったら、お前たちみんなヒト族みたいになっちゃうぞ。
だから選抜して貰う子供たちの男女の比率は半々だ。
どの種族が男の子を出して、どの種族が女の子を出すかは族長同士の話し合いで決めてくれ。
まあ3カ月経ったら別の性別の子を選べばいいだろう」
こうして俺は、週に2日、中央街の邸で子供たちと一緒に風呂に入ったり寝ることにしたんだよ。
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