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*** 13 悪魔の大饗宴(サバト)の主祭…… ***

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 その日の夕食後、俺はまた大精霊たちにデザートを振舞っていた。
 いろんなお菓子を食べてもらってきていたが、けっきょく彼らはいちごのショートケーキが一番のお気に入りのようだ。刷り込みが強すぎたのかな?

 でも……
 今日は水の大精霊ウンディーネが、ケーキを前にしてためらっていたんだよ。

「どうしたんだ? お腹いっぱいなのか?」

「…………」

 俺が聞いてもウンディーネはもじもじしているだけだった。
 でもふよふよとシスティのところに飛んで行って、耳元で何か言っているようだ。

「ふふ、あのねサトル。
 ウンディーネは、配下の水の精霊たちにもケーキを食べさせてあげたいから、このケーキを持って帰ってもいいか、って聞いているのよ。だから……」

「ああ、ウンディーネの配下の水の精霊たちって何人いるんだ?」

「…… 100人いるの ……」

「だったらそうだな。
 いっぺんに来ると仕事が止まるだろうから、来週50人連れておいで。
 それでその次の週には後50人を連れてくればいいよ。
 みんなにひとつずつケーキをご馳走しよう。
『ケーキ会』は、毎週開催することにするか。
 だから2週間に1度はお腹いっぱいケーキを食べられるぞ」

(ケーキ100個って言ってもせいぜい4万円ぐらいだからな……)

「…… い、いいの? ……」

「もちろん!
 キミにはお世話になってるし、キミの配下の子たちだってこの世界の為に働いてくれているんだろ?」

「う、うん……」

 はは、火の大精霊サラマンダー土の大精霊ノームがびっくりしたような顔をしてこっちを見てるわ。

「もちろんおまえたちの配下も呼んでいいぞ」

「あ、あの…… 
 オラの配下には、土の精霊100人と、植物の精霊も100人おるだども……」

「もちろんかまわんさ。その子たちも呼びなよ」

「あ、ありがとうごじゃります、使徒さまぁ……」

 サラマンダーもぺこぺこお辞儀してるわ。
 それにひきかえ…… 約2名はケーキに顔突っ込んでいて聞いてねぇよ。

「ああ、後でその2人にも伝えておいてくれな」

 ウンディーネがため息をついて頷いた……


 俺はベギラルムを振り返った。
「なあ、ベギラルム。
 お前やお前の仲間たちも何かお礼がしたいんだけど、何がいいかな?」

「は? い、いえいえ! お礼なぞとんでもございません!」

「いや、遠慮しないでくれよ。
 俺、お前たちのおかげでかなり儲かっちゃったから、お礼のプレゼントを贈りたいんだ。
 カネで買えるモノだったらなんでもいいからさ。
 取りあえずお前は何が欲しい?」

「そ、そそそ、そのようなことを申し上げては、エルダリーナさまよりお咎めが……」

「ああ、大丈夫だよ。エルダさまからの了解は、もう貰ってるから……」

「!!」

「だからお礼は何がいいかな?」

「じ、じじじ、実は…… そ、そそそ、それがし、か、かねてより所望のものが……
 しっ、しかし、あまりにも高額の上、維持費も高くて諦めており申した……」

「ナニが欲しかったの?」

「…………」

「聞えないよ」

「すっ、すすす、スマホでござりまするっ!」

(…… 悪魔がスマホ ……)

「も、ももも、申しわけござりませぬっ!
 中悪魔ごときがそのような大それた望みなどっ!」

「スマホって悪魔さんたちに人気なの?」

「は、はい。恥ずかしながら……
 食も切り詰めて貯めた給料で、既に買っておる者も少数おりますが……」

「ベギラルムの仲間って何人いるの?」

「はっ! 小悪魔から大悪魔様まで全部で98名ほど……」

「じゃあさ。明日から何日か休暇を取ってあっちの世界に帰ってさ。
 俺の口座からカネ下ろして、スマホ98台買っていいよ。
 ついでに通信料金も、取りあえず3年分下ろして使ってよ。
 ああ、もうスマホ買っちゃったひととかには、その分の現金渡してあげてね」

「!!!!!!」

「ああ、それからアプリだのアクセサリーだのも買いたいだろうから、さらに全員に3万円ずつ渡しておいてよ。
 それでもってみんなに『ありがとう』って言っておいてくれないかな」

「うっ…… うううううっ…… ぐぅおおおおおおおおおおおおおおおおお~っ!
 さ、サトルさまぁ!!!」

「はは、そう泣くなって…… みんなによろしくな……」



 2日後の夜。

「うううううう……」

「ど、どうしたの! サトル!」

「な、なんか悪寒がするんだ……」

「まあ! き、キュア! キュア! ハイキュア! グランドキュア! ハイパーキュア! エンゼルキュア!」

(な、なんか俺の体が光りまくってるんだけどシスティさん……
 こ、これはこれで気が遠くなって来たんだけど……)


 翌日。
 ベギラルムくんがスキップしながら帰って来た。

「いやサトルさま! 悪魔一同ちょー大喜びでございましたぞ!
 女性悪魔などは皆サトルさまのお慈悲に触れてわんわん泣いておりましたし、男どもも大半が号泣しておりました!」

(スマホで号泣…… 悪魔さんたちって……)

「皆喜びと感謝のあまりカネを出し合いましての!
 生きた子羊を買い求めまして、昨晩首を落としまして。
 その血をサトルさまに捧げて、その後サトルさまを讃える『悪魔の大饗宴サバト』を開催させて頂いたのですよっ!
 みんなで捧げた後の子羊の血を浴びて、朝まで踊り狂いました!
 いやあれほど盛り上がったサバトは100年ぶりでございました!
 我々のサトルさまへの感謝の祈りは届きましたでしょうか?」

 怖いからヤメテっ!!!



 その日の夜。
 いつものように魔法をぶっ放して気絶した俺は、ベッドに運び込まれていた。
 通常ならシスティのマナ補給は最小限にして、そのまま朝まで放置されることでより魔力をレベルアップさせるんだが……

 何故かその日は、システィが大量のマナを注ぎ込んでくれて俺は目が覚めたんだ。
 システィは、いつものように唇を俺の頬に当てて、マナを注ぎ込んでくれたままでいた。
 そうして、少しだけ唇を離して潤んだ目で言ったんだ。

「サトルって……
 自分にはあれほど厳しい訓練を課すのに、仲間にはとっても優しいのね……
 そんなサトル…… とってもステキよ♡……」

 俺…… 思わずシスティの頭の後ろに手を当てちゃってさ。
 そうして顔を動かして、システィの唇にキスしちゃったんだ。

 そしたらさ……
 システィはちょっとだけびっくりした後、すぐに俺の頭を抱きかかえて目を閉じて……
 そうしてシスティの方からも唇を押しつけてくれたんだよ。
 こんなに嬉しかったことは人生初めてだ……
 ああ…… 好きな子とキスするって、こんなに素晴らしいものだったんだな……


「ぴろりろり~ん 任務遂行意欲がレベルアップしました!」
「ぴろりろり~ん 任務遂行意欲がレベルアップしました!」
「ぴろりろり~ん 任務遂行意欲がレベルアップしました!」
「ぴろりろり~ん 任務遂行意欲がレベルアップしました!」
「ぴろりろり~ん 任務遂行意欲がレベルアップしました!」
「ぴろりろり~ん 任務遂行意欲がレベルアップしました!」
「ぴろりろり~ん 任務遂行意欲がレベルアップしました!」
「ぴろりろり~ん 任務遂行意欲がレベルアップしました!」

(なあ…… このアナウンス、邪魔だから今は止めてくれないかな……)


「ぴろりろ………… 爆ぜろ …………」


(なっ! なになになに? 今なんか言った?)



 ………… そうだ! 盛大に爆ぜるのだ! …………


 

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 名前:サトル
 種族:ヒト族
 年齢:16歳
 総合Lv:22(+4)
 幸福ハピネスポイント:206(+98)
 増加分内訳:悪魔達のスマホ愛
 罪業カルマポイント:0

 加護
 初級天使システィフィーナの加護

 称号:
 創造天使システィフィーナの使徒(初級)
 創造天使システィフィーナの心の支え
 創造天使システィフィーナの想い人(LvUP!)
 悪魔の忠誠心(半分)を持つ男
 悪魔の大饗宴サバトの主祭
 水の大精霊の尊敬
 火の大精霊の尊敬
 土の大精霊の尊敬
 風の大精霊の標的
 光の大精霊の標的

 権限:ガイア世界の管理権限

 各種Lv
 E階梯 地球基準6.5
 IQ 地球基準160

 体力系
 総合体力(HP) Lv20(+9)
 内訳
 防御 Lv22(+7)
 攻撃 Lv17(+15)
 俊敏 Lv18(+6)
 器用 Lv20(+5)

 魔法系
 総合魔力(MP) Lv25(+8)
 内訳
 マナ保有力 Lv29(+6)
 マナ操作力 Lv2
 マナ放出力 Lv2

 天使力スキル(管理権限)
 『管理システム(アダム)アクセス』
 『管理空間内移動』『管理空間内物質保管』『管理空間内物質認識』
 『鑑定』

 神授スキル 
『マナ使用権限(初級)』 『能力上昇上限撤廃』 『能力上昇促進』
『不老長寿100年』

 行使可能魔法
『水球(中)』 
『火球(中)』 
『風球(中)』 
『土球(中)』 
『光球(中)』 
『治癒(キュア)(中)』 


 精神系
 任務遂行意欲 Lv15,832 (+6,810)
 不屈の闘志 Lv3(+2)

 資産
 約3億1,000万円(+1億9,000万円)


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