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*** 6 ラーメン、旨ぇよ…… ***

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 システィは完全にRPGにハマっていた。
 食事と入浴の時間以外はほとんどPCの前に座っている。
 あ! コイツ、横のテーブルにポテチとコーラ置いてる!
 う~ん……
 このまま放置してると『ひもの天使』になりそうだわ……
 もしくは『駄(目)天使』とか……

「なあシスティ。そんなにゲームにハマってると『駄天使』になっちゃうぞ……」

「ひ、酷いわサトル! わ、わたし、堕天使なんかじゃないもん!」

「字が違う。駄目な天使、略して『駄天使』だ……」

「ううう…… だってこのRPGゲームって面白過ぎるんだもの」

「それは知っている。
 特にずっと病院にいた俺にとっては最高の友だったからなあ……」

「それって……」

「そうだ。
 男の子が冒険に出る。そして努力してレベルを上げて仲間を作って……
 そして女の子に出会って子供も作り、最後にはみんなで目的を達成する……
 つまりゲームって人生の疑似体験なんだよ。
 ろくに動けずにずっと病院にいた俺でも、人生を疑似体験出来たんだ……」

「安全な場所で安全に人生を疑似体験出来たのね……」

「ああ、しかも心も傷つかないで済むんだ。
 実際の人生だと、見た目がブサイクでモテないとか友達が出来ないとか入試に失敗するとか就職出来ないとか、そうした挫折にさらされるからな。
 でもゲーム内ではそうした挫折のリスクはゼロなんだよ。
 それでもゲームの中で発達欲求や闘争本能や殺戮衝動は昇華させられるんだ。
 最近のあっちの世界で現実の戦争行為が減って来たのって、ゲームやラノベが広まったからじゃないかって思えるほどだよ」

「地球にも、未だに部族闘争や軍備や恫喝に明け暮れてる国も少しはあるみたいだけど……」

「ああ、でももうシスティも気づいてるだろ。
 そうした国々には、ゲームや小説なんかの娯楽がほとんど無いんだ。
 一般人は誰もスポーツなんかやってないしな。
 だから闘争本能を発散させるには、リアルな戦闘とかテロに走るしか無くなっているんだろう」

「だから貧しい国ほど過激なのね……」

「これで俺たちの国造りの方向性も見えて来たな。
 もっともまずは平和な国を作ることに成功してからの話だが……」

「うん。闘争本能を抑え込むんじゃあなくって、いろいろな娯楽で発散させてあげればいいのね……」


「それでシスティ。『魔法』については理解したか?」

「ええ。よくわかったわ」

「俺は、俺たちの目標に絶対に必要なのは、まず『土魔法』だと思うんだ。
 敵勢力を殺さずに無力化するには最適だし、国に必要なインフラ整備にも使えるからな」

「あの…… 似たようなことは出来るけどね。
 実際には『魔法』じゃあなくって『神法』っていうべきものかしら。
 ラノベの世界みたいな『魔素』はこの世界ガイアには無くって、あるのは『神素マナ』だから……
 それにわたしたちは、単に『天使力の行使』って呼んでるんだけどね」

「効果が同じなら問題は無いぞ。
 この世界の『神素マナ』は、ラノベ世界の『魔素』とほぼ似たようなもんなんだな」

「そうね。マナは物質にもエネルギーにもなるし」

「ああ、前世でも物質とエネルギーは等価だったよ。E=MC2とか……」

「基本的な物理法則は、この世界ガイアもサトルの前世も変わらないようね」

「じゃあ、こっちでは『魔法』じゃあなくって、『神法』もしくは『天使法』って呼ぶべきなのか…… なんか馴染みが無いな」

「あら。マナを使うんだから『マ法』でいいんじゃないかしら?」

「はは、『マ法』か…… じゃあ俺は『魔法』って言うけどかまわないか?」

「ええ、サトルの好きなように定義していいわよ。
 実際に魔法を使うのはサトルだし」

「それで俺を高度な『魔法使い』にすることって出来るのか?」


 システィがやや伏し目がちになった。
「それがね、最初から『使徒』にそういう天使並みの高度なマナ使用権限を与えるには、150ポイントもの『管理用ポイント』が必要なんですって……
 実際にはマナを体内に蓄える力の大幅な拡充なの。
 それ以外にもマナ操作力やマナ放出力とかっていう力はあるみたいなんだけど、こっちはほとんど意識したことは無いわね」


「『マナを蓄える力』と『マナ操作力』ってなにが違うんだ?」

「マナを蓄える力は『マナ保有力』って言うんだけど。
 これは体内に蓄えておけるマナエネルギーの総量のことで、『マナ操作能力』はそのマナを使って物質に変えたり事象を起こしたりする力のことらしいわ」

「なるほど、エネルギーとそれを使いこなす力のことか。
 それにしても150ポイントかぁ。
 それじゃああんまり余裕が無くなるな……
 しかもそれって、『魔法』に関してだけだろ。
 それだけじゃあ体力だとか戦闘力は上がらないだろうし……」

「でっ、でも、簡単な『マナ使用権限(超初級)』だったらわたしの許可があれば得られるわ……」

「おお!
 それって練習すればするほど能力が上がったりするのか?」

「え~っと……
 どうやら使えば使うほど能力は上がるみたいよ。
 どっちも使い過ぎると気絶しちゃうみたいだけど」

「気絶で済むならありがたいな。
 それじゃあ『能力上昇上限撤廃』と『能力上昇促進』はどうだ?」

「それは各20ポイントね。
 しかもそれって、天使力だけじゃあなくって体力や戦闘力にもかかるみたい……」

「それもありがたい。
 あとは俺の努力次第っていうことか……
 あ、ところで魔法の種類についてはどうなんだ?
 光魔法とか火魔法とか風魔法とか……
 それも取得するのにポイント要るのか?」

「この世界では本質的にそういう区別は無いのよ。
 だって、全部マナを使って必要な事象を起こさせるものなんだから」

「なるほどな。
 それじゃあまず俺に、『マナ使用権限(超初級)』と『能力上昇上限撤廃』と『能力上昇促進』を授けてもらえないか。
 ついでに『不老長寿』100年分も」

「ええ、いいわよ」

 途端に俺の頭の中にチャイムと声が響いた。

「ぴろりろり~ん。マナ使用権限(超初級)を取得しました」
「ぴろりろり~ん。能力上昇上限撤廃を取得しました」
「ぴろりろり~ん。能力上昇促進を取得しました」
「ぴろりろり~ん。不老長寿100年分を取得しました」


「おお…… な、なんか体に入ってきたぞ!
 こ、これで俺も魔法使いか……」

「うふふ、サトル嬉しそう……」

「ああ、男の子、い、いや女の子も含めて子供の夢だからな。
 それでこれ、どう使ったらいいんだ?」

「実際の練習は明日にしましょ。そろそろお風呂と食事の時間よ」


 俺とシスティはまた一緒に風呂に入った。
 ああ、なんだか最高のご褒美だよ。
 毎日こんなに幸せでいいんだろうか……
 それにしてもシスティ、どんどん色っぽくなって来てないか?
 気のせいか胸も少しずつ大きくなって来ているような……

(あ、サトル、私が胸を大きくしてるのに気づいたみたい……
 うふふ。ラノベに書いてあった男の子の願望通りになってあげようと思ったんだけど。
 サトルも嬉しそうだわ。よかった……
 それにしても、サトルってわたしの裸や大きい胸とか見ると嬉しそうになるんだけど…… 
 なんでなのかしら?
 こんなものでいいんだったら、いくらでも見せてあげるんだけど……)


 夕食にはラーメンとチャーハンを頼んだ。
 俺の病気では塩分過多はご法度だったんで、俺はラーメンもチャーハンも生まれて初めて喰った。
 ちくしょう…… 旨ぇや……
 ラーメンってこんなに旨いものだったんだ……
 涙が滲んでラーメンがよく見えないよ。

 システィはそんな俺を天使の微笑みで見ていた。
 あ、実際に天使だったか……




 夕食後のコーヒーを頂きながら、俺たちはまた魔法について語り合った。

「ところでマナを使って、『空間魔法』って行使出来るのかな?」

「それって具体的にはどんなものなの?」

「そうだな。
 まずは長距離瞬間移動だ。
 意識した場所から場所へ瞬時に移動できる魔法だ。
 ラノベでは、『一度行ったことのある場所』、もしくは転移魔方陣が必要だったりすることが多いが。

 それから空間収納と空間把握だ。
 空間収納は大量の物資を重量を無視して運べる能力だな。
 ラノベでは『アイテムボックス』って言われることが多いけど。
 その中では時間が経過しないことが多いんだ。
 だから料理とかも保存出来て、いつも熱いまま食べられるんだよ。
 空間把握は、地形や自分や敵の位置を正確に知る能力のことだ。
 戦闘行為には絶対に必要な索敵能力だよ」

「そういう能力だったら、サトルはもう似たようなものは持ってるわよ」

「えっ……」

「だってサトルはもうわたしの『使徒』になってくれて、『天使力』行使権限も少し持ってて、この世界の管理権限も分けてあげたんだもの。
 アダムさんに頼めばこの世界ガイアのどこにでも瞬時に行くことが出来るわ。
 だから大陸の端から端まで行きたくなったら、いったんこのわたしの領域まで帰って来て、それからまた希望する場所に飛べばいいのよ。
 場所の認識も簡単よ。だって地図があるんだもの」

「そ、そうか……」

「それから空間収納だったら、運びたいモノを一旦ここに持ってくればいいわ。
 アダムさんに言えば、この領域なら食べ物は変質させない部屋も作ることが出来るし。
 それから空間把握も全部やってくれるわよ。
 アダムさんのスクリーンはサトルの脳内にいつでもディスプレイ出来るから。
 周囲の詳細な地図を表示して、そこに生命反応をプロットすることも出来るし」

「す、すげえな、管理権限……」

「だって創造天使が持つ、生命創造した世界の管理権限ですもの。当然よ」


 俺は自然と笑みが漏れた。
 こんだけ条件が揃えば、後は俺の努力と知力だけじゃねえか。
 これなら『勝利条件』を達成して、システィを喜ばせてやることが出来るかも知らん。
 もし達成出来たら、成功報酬はシスティと……

 い、いかんいかん! トラタヌキになるところだった。
 まずは努力と準備か……

「ふふ…… サトルなんだか嬉しそう……」

「ああ、なんだか任務達成にメドが立ったような気がしてな。
 後は俺の努力次第だろう」

「頼りにしてるわ、わたしの使徒さん♡」

 や、やべえ…… システィの笑顔ちょー可愛い……


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