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王様のルイと私(回想)
国王ルイ様の日常 side ノア
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私の名はノアと言います
私は、先先代の宰相で現在のアルタリア王国宰相であるイーサンを父に持ち、その父の後を継いで現在はこの国フローレンスで宰相を任されております
現在、私がお仕えするルイ様は、救国の英雄であり、建国以来の賢王として、国内はもとより近隣諸国にも、その名を轟かせておられます
そのようなお方にお仕えすることが出来て、宰相冥利につきると申しますか、私は幸せ者にございます
さて、我が王のルイ様ですが、それはもう素晴らしい為政者で、ルイ様の御代になってからフローレンスの王都からスラムが消えました
これは王都だけでなく、フローレンス国内の至る所で起こっている奇跡でございます
ルイ様の奥方様は異世界人でいらっしゃいますが、その奥方様発案の缶詰を利用した保存食の商品化と輸出、かつ他国が缶詰を作る場合はその特許料を徴収する事で、現在フローレンスは建国以来の活況にわいております
缶詰の普及で、それまで兵士や冒険者の携帯食と言えば乾パンに干し肉くらいだったのが、様々な食品や調理品を保存食として誰でも持ち歩けるようになり、健康的な生活を送れるようになったと、各国の政府や冒険者ギルドから感謝状を頂き、その上我が国も潤うと言う素晴らしい事業で、正に奇跡としか言いようがありません
そのルイ様の奥方様ですが、それはもう素晴らしい方でいらっしゃいます
おまけに国内の貴族や平民などの身分を問わず、物凄い人気でございます
国王のルイ様は、それはそれは奥方のひろ様を愛しておいでで、本当に大切にされていらっしゃいます
それはもう、殊の外大切に思っておいでですが、ひろ様への愛が深過ぎると言いましょうか、ひろ様が好き過ぎて偶に問題を起こされる事がございまして、それこそが、他には火の打ち所のないルイ様の唯一の欠点でございます
例えば、例年フローレンス王家は、代々約一ヶ月の日程で国王が国内視察に行く事になっていたのでございます。例の動乱以降、国内情勢も不安定でその立て直しに全力を注がなければならず、それまでの恒例行事もお休みせざるを得なかったのですが、それをこの度復活させる事になったのです。そこで、私の方からルイ様にその旨をお伝えしたところ……
「えっ?国内視察?それっていつからだ?早くひろに知らせないと、女って準備が大変だろ?」
「いえ、ルイ様。視察にはルイ様一人で行っていただきます。ルイ様のお世話は侍従長と侍女頭が付き添って行きますので……」
「待て!何それ!ひろは?ひろは行かないのか?」
「はい、これはご公務でございますので、ひろ様はご同行なさいません」
「そんな……嫌だ!絶対に嫌だ!行かない!ひろが居ないなんて、それも一ヶ月も!ありえないよ!そんなの俺が我慢できると思う?」
「滞在先には、若くて綺麗な女性をご用意しておりますゆえ……」
「黙れ!それ以上言うとノアでも許さないよ!!ひろの代わりなんか世界のどこを探したっているわけない!俺が、俺がどんなにひろを好きか知ってるよね⁈ひろがそばにいないと眠れないし、ひろにおはようのキスとおやすみのキスをしなくちゃ、俺の中に力が湧いてこないの!ひろが俺の力の源なんだよ!だから視察にはノアが一人で行ってくればいい!!」
日頃のスマートでクールなイメージのルイ様の口調が変わって、それはもう5歳児のように駄々をこねられて、国王の執務室はなんとも言えない雰囲気になり、それを修復することもできずに、ただただ気まずい空気だけが漂っていました
そこへ、それを穏やかな笑顔でおさめてくださる救世主が現れました
なんと、気を利かせた侍従長がひろ様に連絡を入れて、国王の執務室にわざわざ連れてきてくださったのです
「ルイ~仕事してる~?お菓子作ったからちょっと休憩しない?」
「ひろ~~~!!」
ルイ様がひろ様に抱きついて、キスの嵐を降らせてから、ソファに座ってひろ様を自分の膝の上に乗せて頬ずりを繰り返されている
その様子を初めて見た執務室付きの職員や侍女は驚きを隠せない様子で、皆一様に動きが止まってしまっているのは仕方ない事だろう
「ひろ~。ノアが、ノアが俺にひろを置いて視察に行けって言うんだよ~それも一ヶ月も~。俺、絶対にひろを一人にして行かないから、ね。安心して」
「もう~~、みんな困ってるじゃない!ダメだよ、そんな子供みたいなこと言っちゃ」
結局、ひろ様が視察中のルイ様の食事を用意して視察先に転送してくださる事と、毎晩腕輪の通信機で話をしてくださる事で譲歩を勝ち取り、何とか無事におさめてくださいました
ルイ様の毎晩転移でひろ様に会いたいというわがままは、ひろ様が「それではけじめがつかない」とピシャリと拒否なさって終わりました
しかし視察に出発する朝、ルイ様がひろ様を泣いて離さず、出発の時間が大幅に遅れてしまった事は想定外でしたが
そしてこれら一連の出来事は、毎年行われる視察の前に必ず起こる恒例行事のようなものとなりました
それから無事に一ヶ月の視察から戻られたルイ様は、お出迎えの中にひろ様の姿を見つけて駆け寄ると、キスの嵐を降らせた後、泣きながらひろ様を抱きしめて「ひろ、俺、頑張ったよ、頑張ったよ」と言うのも、毎年の恒例となりました
あ!忘れておりました!ルイ様は視察から戻ると、必ずその後一週間、所謂"ひろ様休暇"を取るのも恒例となりました。そして毎年、その三ヶ月後にひろ様のご懐妊が発表されるようになったのも、恒例の一つとなりました。幸せな事に、王家では毎年お子様がお生まれになっております。はたしてひろ様は何人のお子様のお母様になられるのでしょうか
そのひろ様ですが、初めて主催したお茶会で、料理やピアノを招待客の皆様にご披露されて、そしてその後開いた城内職員出入り自由のピアノコンサートの後、王都のみならず王国全体で、その人気は揺るがぬものになっていきました
それを耳にしたルイ様は大変お喜びになり、ひろ様の話になると、どんなにひろ様が素晴らしいか、ご説明されるのに夢中になって時間を忘れておいでになるので、今では、私の方から城内職員宛に、ルイ様の前ではひろ様の話をしないよう、極秘に通達を出した次第でございます
フローレンス城は今日も平和です
「ひろ、行ってくるよ(チュッ)」
「ルイ、行ってらっしゃい、頑張ってね」
私は、先先代の宰相で現在のアルタリア王国宰相であるイーサンを父に持ち、その父の後を継いで現在はこの国フローレンスで宰相を任されております
現在、私がお仕えするルイ様は、救国の英雄であり、建国以来の賢王として、国内はもとより近隣諸国にも、その名を轟かせておられます
そのようなお方にお仕えすることが出来て、宰相冥利につきると申しますか、私は幸せ者にございます
さて、我が王のルイ様ですが、それはもう素晴らしい為政者で、ルイ様の御代になってからフローレンスの王都からスラムが消えました
これは王都だけでなく、フローレンス国内の至る所で起こっている奇跡でございます
ルイ様の奥方様は異世界人でいらっしゃいますが、その奥方様発案の缶詰を利用した保存食の商品化と輸出、かつ他国が缶詰を作る場合はその特許料を徴収する事で、現在フローレンスは建国以来の活況にわいております
缶詰の普及で、それまで兵士や冒険者の携帯食と言えば乾パンに干し肉くらいだったのが、様々な食品や調理品を保存食として誰でも持ち歩けるようになり、健康的な生活を送れるようになったと、各国の政府や冒険者ギルドから感謝状を頂き、その上我が国も潤うと言う素晴らしい事業で、正に奇跡としか言いようがありません
そのルイ様の奥方様ですが、それはもう素晴らしい方でいらっしゃいます
おまけに国内の貴族や平民などの身分を問わず、物凄い人気でございます
国王のルイ様は、それはそれは奥方のひろ様を愛しておいでで、本当に大切にされていらっしゃいます
それはもう、殊の外大切に思っておいでですが、ひろ様への愛が深過ぎると言いましょうか、ひろ様が好き過ぎて偶に問題を起こされる事がございまして、それこそが、他には火の打ち所のないルイ様の唯一の欠点でございます
例えば、例年フローレンス王家は、代々約一ヶ月の日程で国王が国内視察に行く事になっていたのでございます。例の動乱以降、国内情勢も不安定でその立て直しに全力を注がなければならず、それまでの恒例行事もお休みせざるを得なかったのですが、それをこの度復活させる事になったのです。そこで、私の方からルイ様にその旨をお伝えしたところ……
「えっ?国内視察?それっていつからだ?早くひろに知らせないと、女って準備が大変だろ?」
「いえ、ルイ様。視察にはルイ様一人で行っていただきます。ルイ様のお世話は侍従長と侍女頭が付き添って行きますので……」
「待て!何それ!ひろは?ひろは行かないのか?」
「はい、これはご公務でございますので、ひろ様はご同行なさいません」
「そんな……嫌だ!絶対に嫌だ!行かない!ひろが居ないなんて、それも一ヶ月も!ありえないよ!そんなの俺が我慢できると思う?」
「滞在先には、若くて綺麗な女性をご用意しておりますゆえ……」
「黙れ!それ以上言うとノアでも許さないよ!!ひろの代わりなんか世界のどこを探したっているわけない!俺が、俺がどんなにひろを好きか知ってるよね⁈ひろがそばにいないと眠れないし、ひろにおはようのキスとおやすみのキスをしなくちゃ、俺の中に力が湧いてこないの!ひろが俺の力の源なんだよ!だから視察にはノアが一人で行ってくればいい!!」
日頃のスマートでクールなイメージのルイ様の口調が変わって、それはもう5歳児のように駄々をこねられて、国王の執務室はなんとも言えない雰囲気になり、それを修復することもできずに、ただただ気まずい空気だけが漂っていました
そこへ、それを穏やかな笑顔でおさめてくださる救世主が現れました
なんと、気を利かせた侍従長がひろ様に連絡を入れて、国王の執務室にわざわざ連れてきてくださったのです
「ルイ~仕事してる~?お菓子作ったからちょっと休憩しない?」
「ひろ~~~!!」
ルイ様がひろ様に抱きついて、キスの嵐を降らせてから、ソファに座ってひろ様を自分の膝の上に乗せて頬ずりを繰り返されている
その様子を初めて見た執務室付きの職員や侍女は驚きを隠せない様子で、皆一様に動きが止まってしまっているのは仕方ない事だろう
「ひろ~。ノアが、ノアが俺にひろを置いて視察に行けって言うんだよ~それも一ヶ月も~。俺、絶対にひろを一人にして行かないから、ね。安心して」
「もう~~、みんな困ってるじゃない!ダメだよ、そんな子供みたいなこと言っちゃ」
結局、ひろ様が視察中のルイ様の食事を用意して視察先に転送してくださる事と、毎晩腕輪の通信機で話をしてくださる事で譲歩を勝ち取り、何とか無事におさめてくださいました
ルイ様の毎晩転移でひろ様に会いたいというわがままは、ひろ様が「それではけじめがつかない」とピシャリと拒否なさって終わりました
しかし視察に出発する朝、ルイ様がひろ様を泣いて離さず、出発の時間が大幅に遅れてしまった事は想定外でしたが
そしてこれら一連の出来事は、毎年行われる視察の前に必ず起こる恒例行事のようなものとなりました
それから無事に一ヶ月の視察から戻られたルイ様は、お出迎えの中にひろ様の姿を見つけて駆け寄ると、キスの嵐を降らせた後、泣きながらひろ様を抱きしめて「ひろ、俺、頑張ったよ、頑張ったよ」と言うのも、毎年の恒例となりました
あ!忘れておりました!ルイ様は視察から戻ると、必ずその後一週間、所謂"ひろ様休暇"を取るのも恒例となりました。そして毎年、その三ヶ月後にひろ様のご懐妊が発表されるようになったのも、恒例の一つとなりました。幸せな事に、王家では毎年お子様がお生まれになっております。はたしてひろ様は何人のお子様のお母様になられるのでしょうか
そのひろ様ですが、初めて主催したお茶会で、料理やピアノを招待客の皆様にご披露されて、そしてその後開いた城内職員出入り自由のピアノコンサートの後、王都のみならず王国全体で、その人気は揺るがぬものになっていきました
それを耳にしたルイ様は大変お喜びになり、ひろ様の話になると、どんなにひろ様が素晴らしいか、ご説明されるのに夢中になって時間を忘れておいでになるので、今では、私の方から城内職員宛に、ルイ様の前ではひろ様の話をしないよう、極秘に通達を出した次第でございます
フローレンス城は今日も平和です
「ひろ、行ってくるよ(チュッ)」
「ルイ、行ってらっしゃい、頑張ってね」
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