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アルタリア王国へ
新生アルタリア
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「「「「「えっ⁉︎」」」」」
ルイが予想外の事を言い出して、そこにいた者達が皆驚きの声をあげた
「お前、一人ではないよな。一人でここまで来れる訳がない。誰か手引きをした奴が何処かにいる筈だ」
少年が急に黙り込み顔を伏せた
少年は口を破る気はないようだ
「お待ちください!どうかお慈悲を!」
謁見の間の柱の陰から、地味で目立たない印象の陰の薄い男が走り出てきた
走り出てきた男は自分はこの国の暗部の者で、この少年が生まれた時から、ずっと監視してきたと言った
どうやら国王の御落胤と言うのは事実らしい
そして国王にこの少年の情報を流したのも自分だと言った
国王が貧しいこの少年を保護してくれる事を願っての事だったらしいが、意に反して国王は母親を殺し、この少年の存在すら抹殺しようとした
責任を感じた男は、少年を殺したと嘘の報告をし、少年をスラムに隠す事で、その存在を消し命を守ったのだ
ここへ少年を連れてきたのは、どうしても母親の仇をとりたいという少年の希望を叶えてやりたいと思ったのと、男も国王を許せなかった所為だと言った
国王は暗部の者達を人だと思っていなかった。それは酷い扱いだったそうだ
自分以外の人間には、国王は誰にでもそうであったらしい。男は、嘘だと思うならこの城で働く者に聞いてみればいいと啖呵を切った
「だから、この子を、この子をお助けください」
「お前、名は何という?」
ルイが少年に尋ねた
「アベル……アベルって言うんだ」
やっと少年が喋った
「そうか。多分、もう王の血族はお前しか残っていないみたいだぞ。なぁ、お前、スラムで暮らしてみてどう思った?あそこでしか見えないものってのがあるだろう」
「彼処は人間の暮らすところじゃない。彼処は地獄だ」
「お前が国王になったら、スラムの人間を助けることができるかもしれないぞ。それは国王にしかできない事だ。そしてお前はその国王になれる正当な資格を持っている。どうだ。勇気を出してやってみないか?」
「俺、何にも知らないし……何の力もない。無理だよ……」
「だったら、お前の力になってくれる奴がそばにいれば、どうだ?」
「そんな奴いないし」
「俺が探してやるよ。とびきり優秀な奴をな。それならいいだろう?」
「ちょ、ちょっと、ルイ!そんな安請け合いして大丈夫なの?」
ひろが、間に割って入った
「一人いるじゃないか!うってつけの奴が!もう後継も育って、その身を持て余している奴が!」
「それって、イーサン?」
「そう、イーサン」
「本人の承諾なしに、そんな大事な事決めちゃダメだよ!まず、本人に聞いてみなきゃ!」
「じゃあ、今から聞いてくる。ひろ、城に繋げてくれ」
「ルイ!勝手に決めないでよ!」
「ひろ!早くしろ!」
「もう、言い出したらきかないんだから」
仕方なくひろは、ルイをフローレンス城に転移させた後、自分はアルタリア城に残って、少年と話をする
「ねえ、君は年いくつなのかな?」
「10歳」
「そう……ルイがお父様を殺されて、ここの王様に猿人類になる呪いをかけられて死の森に捨てられたのが10歳なんだよ」
「それ、本当なんだ」
「うん、今では解呪されてるけど、解呪されたのだって、ついこの間だからね。それまではずっと猿人類で独りきりだったんだよ。話をする人もいなかったしね。死の森で10年も生きていたことが奇跡だから」
「俺……俺……王様なんて、みんなこの国の王様みたいな奴だと思ってた。あの人はいい人なのか?」
「多分、いい人だと思うよ。本当は王様になりたくなかったんだけど、めちゃくちゃになった国を見捨てられなくて、国民を放っておけなくて、みんなを幸せにしたいと思ったから王様になったんだよ。因みにフローレンスをめちゃくちゃにしたの、この豚ね」
「俺に王様なんて出来ると思う?」
「ルイは10歳から10年間猿人類だったから、王様になった時、まだ中身は10歳のままだったんだ。それでも、今まで王様として頑張ってきたんだよ。さっきだって、立派な王様に見えたでしょ?」
「うん、凄い王様に見えた。………俺も、なれるかな。あんな王様に………」
「なれるよ。きっとね。困ったことがあったら、ルイもいるし私もいるよ。何でも言って?相談にのるから、ね?」
「う、うん」
それから暫くして従魔経由でルイからひろに連絡が入った
イーサンを連れて、こちらに来るらしい
ーー 一応、顔合わせをしてみてから決めたいって、イーサンから言われたんだって。まあ、当たり前かな?ーー
ということで、ひろはルイとイーサンをこちら側に転移させた
「おう!!坊主、連れてきたぞ!」
そう口にするルイの後ろに、穏やかに微笑むイーサンがいた
「あなたがアベル様ですか?私はイーサンと言います。ルイ様のお父上の代に宰相として仕えておりました。今は息子が宰相の職につき、私は隠居の身なのですが、ルイ様たってのご希望で、こちらの国を立て直してほしいと仰られますものですから…」
「イーサン、口上はもうそのくらいにしとけ。それでどうだ?会ってみた印象は?」
「俺、生まれも育ちも悪いから……」
少年ことアベルがフイと顔を背ける
「何を仰います!あなた様は、今や、この国の王家の血を継ぐ、唯一のお方ではありませんか!そのようなお方が生まれも育ちも悪いなぞと口になさるなど、何と嘆かわしい!まずは、王族としての心得から叩き込まなければなりませんね。ようございます!このイーサン、命に代えましても、アベル様をどこに出しても恥ずかしくない、立派な国王様に育ててみせましょう」
この時から、かつてフローレンスの宰相であったイーサンは、故郷から遠く離れたこのアルタリアの地で王を支える宰相となり、その命がつきるまで、その姿は常にアベル国王の側にあったと言う
そしてまだまだ国内事情が不安定なため、ひろの従魔の中からまだ若い国王とこの国を守る守護獣にするようにとのハイネ様からの依頼を快く引き受けたひろが、隠密行動から本格的な戦闘まで器用にこなすジャックとの従魔契約を解き、快く送り出したのは、また別の話
そしてこのアベル国王の時代からデザインが変わったアルタリアの国旗と王家の紋章の中にグリフィンが描かれるようになったのだった
ルイが予想外の事を言い出して、そこにいた者達が皆驚きの声をあげた
「お前、一人ではないよな。一人でここまで来れる訳がない。誰か手引きをした奴が何処かにいる筈だ」
少年が急に黙り込み顔を伏せた
少年は口を破る気はないようだ
「お待ちください!どうかお慈悲を!」
謁見の間の柱の陰から、地味で目立たない印象の陰の薄い男が走り出てきた
走り出てきた男は自分はこの国の暗部の者で、この少年が生まれた時から、ずっと監視してきたと言った
どうやら国王の御落胤と言うのは事実らしい
そして国王にこの少年の情報を流したのも自分だと言った
国王が貧しいこの少年を保護してくれる事を願っての事だったらしいが、意に反して国王は母親を殺し、この少年の存在すら抹殺しようとした
責任を感じた男は、少年を殺したと嘘の報告をし、少年をスラムに隠す事で、その存在を消し命を守ったのだ
ここへ少年を連れてきたのは、どうしても母親の仇をとりたいという少年の希望を叶えてやりたいと思ったのと、男も国王を許せなかった所為だと言った
国王は暗部の者達を人だと思っていなかった。それは酷い扱いだったそうだ
自分以外の人間には、国王は誰にでもそうであったらしい。男は、嘘だと思うならこの城で働く者に聞いてみればいいと啖呵を切った
「だから、この子を、この子をお助けください」
「お前、名は何という?」
ルイが少年に尋ねた
「アベル……アベルって言うんだ」
やっと少年が喋った
「そうか。多分、もう王の血族はお前しか残っていないみたいだぞ。なぁ、お前、スラムで暮らしてみてどう思った?あそこでしか見えないものってのがあるだろう」
「彼処は人間の暮らすところじゃない。彼処は地獄だ」
「お前が国王になったら、スラムの人間を助けることができるかもしれないぞ。それは国王にしかできない事だ。そしてお前はその国王になれる正当な資格を持っている。どうだ。勇気を出してやってみないか?」
「俺、何にも知らないし……何の力もない。無理だよ……」
「だったら、お前の力になってくれる奴がそばにいれば、どうだ?」
「そんな奴いないし」
「俺が探してやるよ。とびきり優秀な奴をな。それならいいだろう?」
「ちょ、ちょっと、ルイ!そんな安請け合いして大丈夫なの?」
ひろが、間に割って入った
「一人いるじゃないか!うってつけの奴が!もう後継も育って、その身を持て余している奴が!」
「それって、イーサン?」
「そう、イーサン」
「本人の承諾なしに、そんな大事な事決めちゃダメだよ!まず、本人に聞いてみなきゃ!」
「じゃあ、今から聞いてくる。ひろ、城に繋げてくれ」
「ルイ!勝手に決めないでよ!」
「ひろ!早くしろ!」
「もう、言い出したらきかないんだから」
仕方なくひろは、ルイをフローレンス城に転移させた後、自分はアルタリア城に残って、少年と話をする
「ねえ、君は年いくつなのかな?」
「10歳」
「そう……ルイがお父様を殺されて、ここの王様に猿人類になる呪いをかけられて死の森に捨てられたのが10歳なんだよ」
「それ、本当なんだ」
「うん、今では解呪されてるけど、解呪されたのだって、ついこの間だからね。それまではずっと猿人類で独りきりだったんだよ。話をする人もいなかったしね。死の森で10年も生きていたことが奇跡だから」
「俺……俺……王様なんて、みんなこの国の王様みたいな奴だと思ってた。あの人はいい人なのか?」
「多分、いい人だと思うよ。本当は王様になりたくなかったんだけど、めちゃくちゃになった国を見捨てられなくて、国民を放っておけなくて、みんなを幸せにしたいと思ったから王様になったんだよ。因みにフローレンスをめちゃくちゃにしたの、この豚ね」
「俺に王様なんて出来ると思う?」
「ルイは10歳から10年間猿人類だったから、王様になった時、まだ中身は10歳のままだったんだ。それでも、今まで王様として頑張ってきたんだよ。さっきだって、立派な王様に見えたでしょ?」
「うん、凄い王様に見えた。………俺も、なれるかな。あんな王様に………」
「なれるよ。きっとね。困ったことがあったら、ルイもいるし私もいるよ。何でも言って?相談にのるから、ね?」
「う、うん」
それから暫くして従魔経由でルイからひろに連絡が入った
イーサンを連れて、こちらに来るらしい
ーー 一応、顔合わせをしてみてから決めたいって、イーサンから言われたんだって。まあ、当たり前かな?ーー
ということで、ひろはルイとイーサンをこちら側に転移させた
「おう!!坊主、連れてきたぞ!」
そう口にするルイの後ろに、穏やかに微笑むイーサンがいた
「あなたがアベル様ですか?私はイーサンと言います。ルイ様のお父上の代に宰相として仕えておりました。今は息子が宰相の職につき、私は隠居の身なのですが、ルイ様たってのご希望で、こちらの国を立て直してほしいと仰られますものですから…」
「イーサン、口上はもうそのくらいにしとけ。それでどうだ?会ってみた印象は?」
「俺、生まれも育ちも悪いから……」
少年ことアベルがフイと顔を背ける
「何を仰います!あなた様は、今や、この国の王家の血を継ぐ、唯一のお方ではありませんか!そのようなお方が生まれも育ちも悪いなぞと口になさるなど、何と嘆かわしい!まずは、王族としての心得から叩き込まなければなりませんね。ようございます!このイーサン、命に代えましても、アベル様をどこに出しても恥ずかしくない、立派な国王様に育ててみせましょう」
この時から、かつてフローレンスの宰相であったイーサンは、故郷から遠く離れたこのアルタリアの地で王を支える宰相となり、その命がつきるまで、その姿は常にアベル国王の側にあったと言う
そしてまだまだ国内事情が不安定なため、ひろの従魔の中からまだ若い国王とこの国を守る守護獣にするようにとのハイネ様からの依頼を快く引き受けたひろが、隠密行動から本格的な戦闘まで器用にこなすジャックとの従魔契約を解き、快く送り出したのは、また別の話
そしてこのアベル国王の時代からデザインが変わったアルタリアの国旗と王家の紋章の中にグリフィンが描かれるようになったのだった
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