異世界のヒーローは皆んなイケメンだって誰が言った!

コロ星人

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アルタリア王国へ

総力戦②

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 次の日、ひろはルイの腕の中で目覚めた

 ルイの規則正しい寝息が聞こえてくる

 いつもの通りまつ毛が長い

 鼻筋も通っていて、精悍な顔つきのイケメンだ

 こんな素敵な人が10年以上も猿人類だったなんて信じられない

 お父様も殺されてしまって、その生い立ちは壮絶過ぎてなんと声をかければ良いのかわからないほどだ

 今日は、影に隠れて全てを指示していた黒幕と決着をつけなければならない

 多分、ルイ達からやらなくても、呪詛返しが起こったことに腹を立て、あちらから仕掛けてくることは先日の海戦を見れば火を見るよりも明らかだ

 ルイとひろができることは、フローレンス国民のために母国が戦場にならないようにするだけだ

 だから、頑張らなければならない

 ひろがそんな事を思いながら、ルイの顔を見つめていると、ゆっくりとルイの目が開いた

 「うう……ん?」

 少し目をこすってから、穏やかに微笑んでおはようのキスをした

 「ひろ、おはよう」

 「おはよう、ルイ」

 「飯食ったら行く⁉︎」

 「うん」

 「今朝はデュポン邸でもらってきたやつですまそう。従魔達にも振る舞うといい。景気付けだ」

 「うん、わかった。きっとみんな喜ぶよ」

 ルイとひろは結界石を収納してから、シーラを除く従魔達と一緒に朝食を囲んだ

 従魔達とは初めて一緒にとる食事だ
 
 それはデュポン邸のコックが腕によりをかけて作ったもので、お世辞抜きで美味しい。従魔達は口も聞かずに一心不乱に食べていた。凄く美味しかったらしいので、ひろは自分が作ったものでよければ、ご馳走しようかなと思ったのだった

 シーラには、漁港で買った遠洋物のでかい魚をあげた

 寝床や食器を片付けて、バーストに乗って出発する

 ジャックの情報では港に既に戦力が集まっているらしいので、そこまで全力で行く

 途中で海軍が仕掛けてきたら、指示がなくともシーラに出動をお願いすることにした

 さあ!出陣だ!!




 バーストに乗って行くこと半日、 はるか遠くに陸地らしきものが確認できた

 すると、その前の海上を移動して来る黒い船影が少しずつわかるようになってくる

 まだ砲弾は届かない位置にあるが、暫くすれば仕掛けてくるだろうと思っていたら、なんだか様子がおかしいことに気づいた

 荒波が立ち始めているのだ

 大きな渦も確認できた。船が引き摺り込まれているのがわかる

 すると小型の巡洋艦が急に海上から跳ね上がった

 おそらくシーラが下から突き上げたのだろうが、凄い力である

 またシーラは時に海上に尾を出し、船体に打ち付けている。大きな戦艦に穴が開き、船体が傾くと、それは渦に巻き込まれていく

 船隊が照準を上空のバーストやジャックに向けるべきか、それとも海中のシーラに向けるべきか考えあぐねている隙をついて、シーラが畳み掛けたのだ

 既に動き始めていたシーラの作戦勝ちである

 任せて安心の驚異の新人だ

 ひろはシーラに念話を送っておく

 《シーラ、凄いね!その調子で頑張って!》

 《恐れ入ります、マスター》



 次第に陸地がはっきりと見えてきた

 陸地に人だかりがあるせいだろう。陸地が鎧色に染まっている

 既に皆さんお揃いのようだ

 陸地からワイバーン部隊が飛び立ち、こちらに向かってくる

 それをジャックとバースト、そしてルイが魔法で先制する。先手必勝だ

 ワイバーン部隊は左右に折れて散開する

 その隙にバーストが一段階ギアを上げて陸地を目指す

 それをさせまいと追いかけるワイバーン部隊にジャックが闇魔法で応戦する

 ルイは後ろを振り向いて後方から迫り来るワイバーンに雷撃魔法をしかける

 魔法の乱れ撃ちだ

 前方に陸地が近づいて槍や矢が飛んでくる中をバーストが炎の咆哮で一閃すると、そこに空いたスペースに降りたった

 周囲を取り巻く兵士達は、炎龍に恐れをなして思わず後ずさってしまう

 直ぐにルイとひろが降りたのを確認すると、バーストはワイバーン部隊に向かって飛び立っていった

 二人は直ぐに自分の従魔を呼び出すと、未だに動けないままでいる兵士達を尻目に、指示の確認をしていく

 「メシアとボスは騎馬隊を、他は全て歩兵部隊だ。グアンナがぶちかまして、その後、コカトリスと魔狼がとどめをさせ!よし!!行け!!ひろは、適当なところで待機!」

 「はい!ルイには身体強化、物理攻撃無効、全魔法攻撃無効、全毒物無効、重力操作全てかけたからね。頑張って」

 ルイがひろを見て、僅かに微笑んでから、歩兵部隊へと突入して行った

 ひろは港の端で罠付き結界を張ってお留守番だ

 歩兵部隊担当の従魔のうち、初めて戦闘に参加したグアンナは予想に反してとにかく凄かった

 闘気を纏ったぶちかましは、1回で大体20名くらいの兵士の体を跳ね飛ばす事が出来た。そしてそれを連続しながら駆け抜けているのだ

 吹き飛んだ兵士の息の根を魔狼の兄弟が噛みちぎりと引っ掻きで止めていく。コカトリス達も負けずに嘴で突いてはとどめを刺している

 「さぁ、俺の挨拶がわりの一発だ、ありがたく受け取れ!!スーパーノヴァ!!」
 
 物凄い業火がルイの両手から放たれ、急に周りの温度が上がったと思ったら、ルイが手をかざした先にあったはずのものが全て黒くえぐれて、プスプスといく筋もの煙が立ち上る黒い一本道のようになった。そして暫くすると、遠くからドォーン!という音が遅れて聞こえてきた。

 アルタリア軍の動きが止まった

 そして黒い道の先端に立つ、一人の男に目が釘付けになる

 「我が名はルイ・フローレンス!!父の仇を取りに来た!!降伏するならよし!かかってくるなら容赦はしない!!さあ!どうする!!」

 一瞬場が静まり返った

 その静寂を破って、歩兵部隊の隊長と思われる、いかにも偉そうな一際目立つ鎧を着た男が、顎を突き出して見るからに馬鹿にした態度で吐き捨てるように応える

 「貴様一人!!何を恐れることがある!!無論、返り討ちにしてくれる!!!」

 「それは残念だ!それでは遠慮なくいかせてもらおう!いざ!!参る!!」

 ルイのMPは♾だ。魔力切れなど考える必要もない。やりたい放題のルイはスーパーノヴァを再度両手で撃つと、ひろが洞窟の鉱石で作った剣を両手に持ち、スーパーノヴァの連発で約三分の一にまで減った兵士の中に躍り出る

 ルイが持つ剣から放たれる闘気と衝撃で 、一気に20名以上の兵士が一瞬でその場に倒れ臥す

 ルイの動きが速すぎて、目で追うより速く斬り伏せられた兵士が、無残にも数名が一つの塊のようになって、同時に倒れていく

 ルイの無双が始まった
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