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アルタリア王国へ
総力戦①
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ルイとひろは、アルタリアへの道中1泊する予定の無人島にゆっくりと降り立った
ひろは無限収納から結界石を出して等間隔においていき、その中に死の森の洞窟で使っていた藁の寝床を出して魔法で地面を均してからそこに置いた。そして周りにあった適当な大きさの石で竃を作り、その側に鍋や木の実の殻の食器やお玉などを並べると、懐かしい洞窟での暮らしが蘇ってくる
まだあそこから出て一年も経ってないのに、とても懐かしい感じがした
ルイもひろも、外見だけは貴族になったが、中身だけはまだあの時のままだ
本当は王位なんていらない。二人で暮らす小さな家さえあれば、それで十分なのだ。食料は森に行きさえすれば自分達だけで、幾らでも調達できる
生活用品だって、狩りに使う武器だって、ひろが何とかしてしまう
二人だけでも十分満たされるのだ
しかしルイに流れる血が、それを許さない
二人はもう逃げられない立場になってしまった
だからこそ、こんな細やかな二人の時間を大切にして、自分らしさを失いたくない
デュポン邸でもらってきた調理済みの食料があるにもかかわらず、わざわざひろが作ってくれた料理に、その気持ちが込められていることを、ルイも気づいている
「ひろ、凄く美味しいよ。俺にとってはひろが作ってくれたものが、この世で一番美味いと感じる」
「うん、ルイ、ありがと」
その日のルイは何度もおかわりをして、洞窟にいた時の彼がまだまだ健在であることを知ったひろが、嬉しそうに笑っている
そこへ、一足先にアルタリアへ偵察に行っていたジャックが姿を現した
「マスター、今戻った」
「あっ!ジャックおかえり~。大丈夫だった?」
「オレ様に手抜かりがあるはずがない」
「うん、それで、あっちの様子はどう?」
「ああ、ジャックが戻ったのか。何か面白いものでもあったか?」
「クククク……今、アルタリアの玉座には豚が座って怒鳴り散らかしてるぞ。王以外の王族と、宰相と魔術師団長の一族と、その他の実行犯の一族も皆、オークやゴブリンに変身して暴れまくった挙句、その殆どの者が処分された。王族と宰相と魔術師団長だけは地下牢に入れられたが、ほとぼりが冷めた頃、消される運命だと、一人だけ正気を保っている豚の王様が言っていたぞ。あいつにとっては自分以外は駒の一つにしか過ぎない、どうでもいいもののようだ。正しく屑だな。あのデュポン沖海戦で全滅したことに腹を立て、頭に血が上っているようで、ルイ王が攻めてくると知って全力で返り討ちにしてやると、ほざいていやがった」
「俺達が行くのを今か今かと待っていてくれているとは、張り切ってその期待にお応えしないとな。どんな歓迎が待っているのか、楽しみだ」
さっきとガラリと表情の変わったルイが、静かにほくそ笑む
ルイ君、悪い顔になってるよ
ルイはひろとバースト、ジャック、メシア、ボスそして海からシーラに顔をのぞかせてもらって、明日からの決戦についての相談を始めた
「ジャック、あっちの戦力についてはどうだ」
「ああ、この間沈んだのは最新式だったが、まだアルタリアの軍港には旧式の第一級戦艦が2と巡洋艦が15あったぞ。それにワイバーン部隊がある。ワイバーンの数は30だな。それと騎馬部隊が5つ。それぞれ20騎で1部隊になる。その他には歩兵部隊がざっと10000だ。先の海戦で海軍の司令官がなくなり、代わったばかりだ。王よ、どうする?」
「そうだな。海の方は、シーラに一任する」
《シーラ、お願いして大丈夫かな?》
《お任せください》
「ワイバーン部隊はバースト、ジャックで頼む」
「バースト、ジャックお願いね」
「ひろ様の仰せとあれば」
「おお、任せとけ」
「騎馬隊はメシアとボスでやってくれ」
「主人、承知した」
「ボスも、お願いね」
「お任せください」
「残る歩兵部隊は俺がやる」
「え?ルイが一人で相手するの?」
「ひろの魔狼の兄弟と、牛のグアンナ、コカトリスも、俺のところに入ってもらう予定だ」
「文字通り、総力戦だね」
「ああ、ここで負けるわけにはいかない。奴らはアルタリアの港で迎え撃つつもりだろうが、それはこちらにも好都合だ。戦場が街から遠い所にある内に終わらせないと、何の罪もない民に迷惑がかかる。それだけは避けたい。そこが片付いたら、本命のいる城へ行くぞ」
ひろは念話で魔狼の兄弟と、グアンナ達とコカトリス達に総力戦への参加をお願いする
みんな前回のマリア様救出作戦では、メンバーには入っていたが戦いには参加できなかったため、これが初めての実戦で腕がなると張り切っていた
「ひろは、離れたところで、結界張ってみんなの活躍を応援しててくれ」
「はい、邪魔にならないように、例の罠付き結界を張って頑張ります」
「あれは最強だけど、用心するに越したことはないからな」
その後、明日の朝が早いため、会議は早々に終わらせた
明日この島を離れたらアルタリアに向かって一直線だ
向こうに着けば、直ぐに初めての対人戦に突入することになるだろう
戦いに参加できない非戦闘職のひろは、全員の無事を祈らずには居れなかった
ひろはその夜もルイに抱きしめられて、ぐっすり眠った
ひろは無限収納から結界石を出して等間隔においていき、その中に死の森の洞窟で使っていた藁の寝床を出して魔法で地面を均してからそこに置いた。そして周りにあった適当な大きさの石で竃を作り、その側に鍋や木の実の殻の食器やお玉などを並べると、懐かしい洞窟での暮らしが蘇ってくる
まだあそこから出て一年も経ってないのに、とても懐かしい感じがした
ルイもひろも、外見だけは貴族になったが、中身だけはまだあの時のままだ
本当は王位なんていらない。二人で暮らす小さな家さえあれば、それで十分なのだ。食料は森に行きさえすれば自分達だけで、幾らでも調達できる
生活用品だって、狩りに使う武器だって、ひろが何とかしてしまう
二人だけでも十分満たされるのだ
しかしルイに流れる血が、それを許さない
二人はもう逃げられない立場になってしまった
だからこそ、こんな細やかな二人の時間を大切にして、自分らしさを失いたくない
デュポン邸でもらってきた調理済みの食料があるにもかかわらず、わざわざひろが作ってくれた料理に、その気持ちが込められていることを、ルイも気づいている
「ひろ、凄く美味しいよ。俺にとってはひろが作ってくれたものが、この世で一番美味いと感じる」
「うん、ルイ、ありがと」
その日のルイは何度もおかわりをして、洞窟にいた時の彼がまだまだ健在であることを知ったひろが、嬉しそうに笑っている
そこへ、一足先にアルタリアへ偵察に行っていたジャックが姿を現した
「マスター、今戻った」
「あっ!ジャックおかえり~。大丈夫だった?」
「オレ様に手抜かりがあるはずがない」
「うん、それで、あっちの様子はどう?」
「ああ、ジャックが戻ったのか。何か面白いものでもあったか?」
「クククク……今、アルタリアの玉座には豚が座って怒鳴り散らかしてるぞ。王以外の王族と、宰相と魔術師団長の一族と、その他の実行犯の一族も皆、オークやゴブリンに変身して暴れまくった挙句、その殆どの者が処分された。王族と宰相と魔術師団長だけは地下牢に入れられたが、ほとぼりが冷めた頃、消される運命だと、一人だけ正気を保っている豚の王様が言っていたぞ。あいつにとっては自分以外は駒の一つにしか過ぎない、どうでもいいもののようだ。正しく屑だな。あのデュポン沖海戦で全滅したことに腹を立て、頭に血が上っているようで、ルイ王が攻めてくると知って全力で返り討ちにしてやると、ほざいていやがった」
「俺達が行くのを今か今かと待っていてくれているとは、張り切ってその期待にお応えしないとな。どんな歓迎が待っているのか、楽しみだ」
さっきとガラリと表情の変わったルイが、静かにほくそ笑む
ルイ君、悪い顔になってるよ
ルイはひろとバースト、ジャック、メシア、ボスそして海からシーラに顔をのぞかせてもらって、明日からの決戦についての相談を始めた
「ジャック、あっちの戦力についてはどうだ」
「ああ、この間沈んだのは最新式だったが、まだアルタリアの軍港には旧式の第一級戦艦が2と巡洋艦が15あったぞ。それにワイバーン部隊がある。ワイバーンの数は30だな。それと騎馬部隊が5つ。それぞれ20騎で1部隊になる。その他には歩兵部隊がざっと10000だ。先の海戦で海軍の司令官がなくなり、代わったばかりだ。王よ、どうする?」
「そうだな。海の方は、シーラに一任する」
《シーラ、お願いして大丈夫かな?》
《お任せください》
「ワイバーン部隊はバースト、ジャックで頼む」
「バースト、ジャックお願いね」
「ひろ様の仰せとあれば」
「おお、任せとけ」
「騎馬隊はメシアとボスでやってくれ」
「主人、承知した」
「ボスも、お願いね」
「お任せください」
「残る歩兵部隊は俺がやる」
「え?ルイが一人で相手するの?」
「ひろの魔狼の兄弟と、牛のグアンナ、コカトリスも、俺のところに入ってもらう予定だ」
「文字通り、総力戦だね」
「ああ、ここで負けるわけにはいかない。奴らはアルタリアの港で迎え撃つつもりだろうが、それはこちらにも好都合だ。戦場が街から遠い所にある内に終わらせないと、何の罪もない民に迷惑がかかる。それだけは避けたい。そこが片付いたら、本命のいる城へ行くぞ」
ひろは念話で魔狼の兄弟と、グアンナ達とコカトリス達に総力戦への参加をお願いする
みんな前回のマリア様救出作戦では、メンバーには入っていたが戦いには参加できなかったため、これが初めての実戦で腕がなると張り切っていた
「ひろは、離れたところで、結界張ってみんなの活躍を応援しててくれ」
「はい、邪魔にならないように、例の罠付き結界を張って頑張ります」
「あれは最強だけど、用心するに越したことはないからな」
その後、明日の朝が早いため、会議は早々に終わらせた
明日この島を離れたらアルタリアに向かって一直線だ
向こうに着けば、直ぐに初めての対人戦に突入することになるだろう
戦いに参加できない非戦闘職のひろは、全員の無事を祈らずには居れなかった
ひろはその夜もルイに抱きしめられて、ぐっすり眠った
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