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アルタリア王国へ
閑話 豚の王様
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《今回はむなくそです》
今から数ヶ月前、アルタリア王国の執務室には、この国の王であるバジルと同国宰相のエドモン、王立魔術師団長ジョルジュが集まって秘密の会議の真っ最中だった
まず、国王であるバジルが鼻息荒くまくし立てる
「もうそろそろ、いい頃合いだろう。ここまで待ったのだ。守備に抜かりはないな?」
「はっ!国軍は国王の命令が下り次第、明日にでもフローレンスへ向けて出発できます!」
宰相のエドモンがすかさず答える
「して、イザベラは首尾よくやっているのであろうな」
「間者からの報告では、滞りなく万事上手く行っているようです」
「あの時、貴様が王太子は呪いでいいだろうなどと言い出すから、儂はこの日を10年も待ったのだぞ。国王と共に毒殺しておれば、時を待たずしてあの国を我が手にできたものを!」
「それは以前も重ねて申し上げましたが、それではフローレンスの国王を毒殺したのが我が国であると公言するようなもの。やはりここは時をみて事を成す方が得策かと。国王毒殺の罪もマジョール出身の王妃に無事被せることができましたし、それを理由にマジョールを攻めることもできますれば、それこそ一石二鳥かと。そろそろあの第二王子だった今の国王も、父親と同じ毒薬を飲んで死ぬ事になっておりますゆえ」
「イザベラに前回と同じように速やかに実行せよと伝えよ。イザベラも好きでもない男の子供を産んでまで、事の成功のために頑張ったのであるからな。まさか国王も自分の母親に親子共々毒殺されるとは、夢にも思うまい。ふはははは」
「ジョルジュ、あの王太子の方は未だに獣のままか?」
ずっと聞き役になっていたジョルジュにエドモンが聞いた
「この私の一番弟子をわざわざあの国の宰相に据えたのです。奴は死ぬまで獣です。まぁ、10年経った今も生きているとは思えませんが」
それを聞いたバジルがほくそ笑む
「フローレンスの次はマジョールだ。くくく……どう料理してくれようか」
「実に楽しみですな。全てがうまくいった暁には、是非とも、このエドモンにマジョール領を任せてはいただけまいか、我王よ」
「エドモン!それはお主だけの働きではあるまい?魔術師団長である私にも、もっと活躍できるような………」
ブヒブヒブヒブフォー!!
その時、急に執務室の中で豚の鳴き声のようなものが聞こえてきた
「えっ!……」
国王バジルは思わず書類に落としていた目をあげた
確かに今まで自分の前には、エドモンとジョルジュがいたはずである
しかし、彼等がそこにいるはずの場所にいたのは醜いオークだった
そう、醜いオークが国王の執務室に二体もいたのだ
ブヒブヒ鳴きながら、手当たり次第に手に触れたものを破壊している
ーー 一体何が起きているのだ ーー
バジルは気が動転してしまい、執務室の中を逃げ回る
そして逃げ回るその最中に自分の手が目に入った
「こ、これは何だ!!」
そして、恐る恐る執務室にある鏡を見た
そこには、太った醜い オークがいた
ーー 何故だ!!何故儂がオークになっている!いったい何が起こったのだ! ーー
時を同じくして、アルタリアの王妃とその子供達、及びその孫などの国王一族、そしてエドモンとジョルジュの一族、加えてフローレンス国王暗殺と王太子に呪いをかけた実行犯とその一族、その全てが瞬き一つするうちにオークかゴブリンになってしまったのである
城内にいた人々は驚愕して逃げ回り、アルタリア城内は騒然となった
しかし国王のバジルだけは、体は醜いオークになってはいるが、まだ人として言葉を話し、思考もまだ人の時と同じく変わらず考えることができたのだ
先ほどまでエドモンとジョルジュだったオークも、王妃や王子、王女だったオークもバジルの手で無情にも地下牢へと追いやられ、やっと城内は平静を取り戻す
その後、国王の執務室には豪華な服を着たオークが激を飛ばしていた
「何故、儂がこの様な姿になったのか、誰でもよい!!調べて、早々に戻れるよう手配しろ!!」
「「「「「「「「はっ!!」」」」」」」」
それから数ヶ月、家臣たちが血眼になって、バジルがオークになった原因を調べ、治療法を探し回ったが、いっこうにその手掛かりすら掴めなかったのである。そんなある日、フローレンスへ潜入していた間者が戻ってきた
そして、バジルがオークになったと同時期に、フローレンスの国王とその母のイザベラ、宰相のユダとその一族がオークとゴブリンに変わってしまったことを伝えたのである
その時バジルは、この一連の悲劇がフローレンス王太子へかけた呪いが解呪された事による呪詛返しである事に気が付いた
ーー フローレンス王太子の呪いが解けたということは、彼奴は必ずこのアルタリアにやってくるに違いない ーー
ーー 首謀者である儂の首を獲るために ーー
ーー 忌々しい……儂が手をこまねいて見ているだけの能無しだなどとは思わないことだ。そっちから来る前に、こちらから行ってやる!お前の首を獲りにな!ーー
その後、直ぐにアルタリアからフローレンスへ向けて、国王の期待を一身に背負った最新の不沈艦隊が出港して行った
そしてその1ヶ月後、再びフローレンスへ潜入していた間者から、驚きの念話が入った
アルタリアの不沈艦隊がフローレンス、デュポン領の沖2キロの海上で全て沈没したと
そして国王となったルイが、このアルタリアに向けて従魔と共にデュポンの港から飛び立ったことを知る
「な……何だと⁉︎あの……この儂自慢の不沈艦隊がやられただと⁉︎まさか…そんなことが……。おのれ!!あの若造めが!!このアルタリアへ足を踏み入れたが最後、生きて帰れると思うなよ!!儂をオークに変えた怨み、倍にして返してくれる!」
バジルの死へのカウントダウンが静かに始まった
今から数ヶ月前、アルタリア王国の執務室には、この国の王であるバジルと同国宰相のエドモン、王立魔術師団長ジョルジュが集まって秘密の会議の真っ最中だった
まず、国王であるバジルが鼻息荒くまくし立てる
「もうそろそろ、いい頃合いだろう。ここまで待ったのだ。守備に抜かりはないな?」
「はっ!国軍は国王の命令が下り次第、明日にでもフローレンスへ向けて出発できます!」
宰相のエドモンがすかさず答える
「して、イザベラは首尾よくやっているのであろうな」
「間者からの報告では、滞りなく万事上手く行っているようです」
「あの時、貴様が王太子は呪いでいいだろうなどと言い出すから、儂はこの日を10年も待ったのだぞ。国王と共に毒殺しておれば、時を待たずしてあの国を我が手にできたものを!」
「それは以前も重ねて申し上げましたが、それではフローレンスの国王を毒殺したのが我が国であると公言するようなもの。やはりここは時をみて事を成す方が得策かと。国王毒殺の罪もマジョール出身の王妃に無事被せることができましたし、それを理由にマジョールを攻めることもできますれば、それこそ一石二鳥かと。そろそろあの第二王子だった今の国王も、父親と同じ毒薬を飲んで死ぬ事になっておりますゆえ」
「イザベラに前回と同じように速やかに実行せよと伝えよ。イザベラも好きでもない男の子供を産んでまで、事の成功のために頑張ったのであるからな。まさか国王も自分の母親に親子共々毒殺されるとは、夢にも思うまい。ふはははは」
「ジョルジュ、あの王太子の方は未だに獣のままか?」
ずっと聞き役になっていたジョルジュにエドモンが聞いた
「この私の一番弟子をわざわざあの国の宰相に据えたのです。奴は死ぬまで獣です。まぁ、10年経った今も生きているとは思えませんが」
それを聞いたバジルがほくそ笑む
「フローレンスの次はマジョールだ。くくく……どう料理してくれようか」
「実に楽しみですな。全てがうまくいった暁には、是非とも、このエドモンにマジョール領を任せてはいただけまいか、我王よ」
「エドモン!それはお主だけの働きではあるまい?魔術師団長である私にも、もっと活躍できるような………」
ブヒブヒブヒブフォー!!
その時、急に執務室の中で豚の鳴き声のようなものが聞こえてきた
「えっ!……」
国王バジルは思わず書類に落としていた目をあげた
確かに今まで自分の前には、エドモンとジョルジュがいたはずである
しかし、彼等がそこにいるはずの場所にいたのは醜いオークだった
そう、醜いオークが国王の執務室に二体もいたのだ
ブヒブヒ鳴きながら、手当たり次第に手に触れたものを破壊している
ーー 一体何が起きているのだ ーー
バジルは気が動転してしまい、執務室の中を逃げ回る
そして逃げ回るその最中に自分の手が目に入った
「こ、これは何だ!!」
そして、恐る恐る執務室にある鏡を見た
そこには、太った醜い オークがいた
ーー 何故だ!!何故儂がオークになっている!いったい何が起こったのだ! ーー
時を同じくして、アルタリアの王妃とその子供達、及びその孫などの国王一族、そしてエドモンとジョルジュの一族、加えてフローレンス国王暗殺と王太子に呪いをかけた実行犯とその一族、その全てが瞬き一つするうちにオークかゴブリンになってしまったのである
城内にいた人々は驚愕して逃げ回り、アルタリア城内は騒然となった
しかし国王のバジルだけは、体は醜いオークになってはいるが、まだ人として言葉を話し、思考もまだ人の時と同じく変わらず考えることができたのだ
先ほどまでエドモンとジョルジュだったオークも、王妃や王子、王女だったオークもバジルの手で無情にも地下牢へと追いやられ、やっと城内は平静を取り戻す
その後、国王の執務室には豪華な服を着たオークが激を飛ばしていた
「何故、儂がこの様な姿になったのか、誰でもよい!!調べて、早々に戻れるよう手配しろ!!」
「「「「「「「「はっ!!」」」」」」」」
それから数ヶ月、家臣たちが血眼になって、バジルがオークになった原因を調べ、治療法を探し回ったが、いっこうにその手掛かりすら掴めなかったのである。そんなある日、フローレンスへ潜入していた間者が戻ってきた
そして、バジルがオークになったと同時期に、フローレンスの国王とその母のイザベラ、宰相のユダとその一族がオークとゴブリンに変わってしまったことを伝えたのである
その時バジルは、この一連の悲劇がフローレンス王太子へかけた呪いが解呪された事による呪詛返しである事に気が付いた
ーー フローレンス王太子の呪いが解けたということは、彼奴は必ずこのアルタリアにやってくるに違いない ーー
ーー 首謀者である儂の首を獲るために ーー
ーー 忌々しい……儂が手をこまねいて見ているだけの能無しだなどとは思わないことだ。そっちから来る前に、こちらから行ってやる!お前の首を獲りにな!ーー
その後、直ぐにアルタリアからフローレンスへ向けて、国王の期待を一身に背負った最新の不沈艦隊が出港して行った
そしてその1ヶ月後、再びフローレンスへ潜入していた間者から、驚きの念話が入った
アルタリアの不沈艦隊がフローレンス、デュポン領の沖2キロの海上で全て沈没したと
そして国王となったルイが、このアルタリアに向けて従魔と共にデュポンの港から飛び立ったことを知る
「な……何だと⁉︎あの……この儂自慢の不沈艦隊がやられただと⁉︎まさか…そんなことが……。おのれ!!あの若造めが!!このアルタリアへ足を踏み入れたが最後、生きて帰れると思うなよ!!儂をオークに変えた怨み、倍にして返してくれる!」
バジルの死へのカウントダウンが静かに始まった
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