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アルタリア王国へ
新しい子①
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ーー まだ子供ができたことはルイには黙っとこう ーー
ひろとしては、早く知らせたいのはやまやまなのだが、今からアルタリア討伐に行くのだ。妊娠を理由にお留守番させられるのは絶対に阻止したい
だから全てが片付くまでは言わないことに決めたのだ
それにひろは非戦闘員である
どうせ補助魔法をかけるくらいの事だから、チョチョイのチョイである
それにしても気になるのは"新しい子"の正体だ
見てみないとわからないが、名前は何にしよう?というのが専ら今のひろの悩み事だった
そしてひろがハイネ様のところから戻った次の日、ルイとひろは従魔達と共にデュポン辺境伯領に向けて出発した
今回は急ぐので、ルイはひろと一緒にバーストの背に乗る。ジャックはバーストの後を付いてくるらしい
他の従魔達はみんな魔空間に戻ってもらった
城の前庭でバーストに乗ったルイとひろを城の重鎮達が並んで見ている
城で働く者総出でのお見送りだ
「それでは行ってくる!ノア!イーサン!後は頼んだぞ!」
「はっ!お任せください!陛下!妃殿下!お気をつけて!」
「バースト、お願いね」
バーストはゆっくり上昇する。そして上空高く舞い上がると、一気に速度を上げて飛んで行った
馬車で10日の道程をバーストはたった一日で飛んでしまった。そのかわり物凄いスピードだったのだ。ひろが堪らず結界を張って風を防ぐ程に
以前マジョール城に行った時にもバーストに乗ったけれど、あの時はまだここまでの速さではなかったような気がしたひろは、思わずそれを口にする
「バースト!前より速くない?」
「これが私の普通です、ひろ様」
「これが通常運転なのか……凄いね!見直したよ」
「ありがたきお言葉!」
ひろは従魔を労うことも忘れない
ちょっぴり、側にいたジャックが拗ねているのは気づかないふりをしてやり過ごす事にしたひろだった
ここでの宿泊先はデュポン辺境伯邸にお願いする事になっている
ルイは幼い時に一度会っているらしいが、記憶に定かでないらしい
ひろはもちろん初対面なので、まぁ、夫婦揃って初対面と言ってもいいだろう
バーストはデュポン辺境伯邸の前庭に静かに降り立った
ルイの手に引かれ、ひろがバーストから降りると、邸の中からデュポン辺境伯と思われる人が侍従や侍女をぞろぞろ引き連れて出てきた
ひろの考えでは、貴族=太っちょの太鼓腹のイメージがあるのだが、デュポン辺境伯は立派な髭に、鍛え上げられた体のマッチョなおじ様という感じだった
「これはこれは、ルイ陛下にひろ妃殿下!遠いところを我が辺境伯領へようこそ。さぁ、お疲れでございましょう。どうぞ、中へお入り下され。暫く休んで疲れが取れた頃合いに、こちらからお伺い致しますゆえ、どうぞごゆるりとお過ごし下さい」
辺境伯は思いの外腰の低い人だった
ルイとひろは辺境伯邸の貴賓室に通され、そこで思い思いに寛いでいた
もちろんバーストは人型モードで部屋の隅に控えている
ジャックは私の陰の中だ
「ねえ、ルイ」
「ん?なんだ?もっとこっちにおいで」
気づけばひろは指定席になっているルイの膝の上にいた
ルイがひろの首筋に顔を埋める
「王都に来てからずっと忙し過ぎて、俺はひろ不足で死にそうだ。もう我慢の限界だよ。ひろ、俺を癒して?」
ーー とか言いながら、やることはちゃんとやってるくせに ーー
と思うひろだったが、口に出しては言いません。大人ですから
このままルイを野放しにしてしまうと、最後までいってしまうので、ひろはなんとかルイを引き離し、目を見つめて話し始める
「ルイ。私がちょっと前にハイネ様の所へ行ってきたの覚えてるよね?」
「ああ、寂し過ぎて死ぬかと思った」
ーー お前はウサギか?ーー
と突っ込みたくなるのを、必死で抑える
「あれはハイネ様に今度海上戦があるから、何か良い手があったら教えてくださいってお願いに行ったのね。そしたらハイネ様が新しく海上戦に相応しい従魔を下さるっておっしゃったの。それで、その従魔には海に行けば会えるって言われたんだよね。だから、とにかく一度海に行ってみようと思ってるんだけど、ルイ、付いてきてくれる?」
「当たり前だ!俺がひろを一人で行かせるはずがない!二人で行くに決まっている!」
その答えはキスの中に消えていった
その日の夜は、デュポン辺境伯邸で、ルイとひろの歓迎晩餐会があった
近隣諸侯の中に混ざって、領内の有力商人なども招かれていた
どの人もルイとひろにコネを作りたくて必死になっているのがとても滑稽だったが、それは裏を返せば、ルイとひろにコネが繋がれば、今以上の利益や立場を得ることができるかもしれないと、自分の生活向上のためにしている努力にほかならないので、無下にもできない
それらを上手くかわしながら、ほどほどの距離を保つように巧みに操るのも、国王とその妃の役割でもある
上に立つのもなかなか大変だ
晩餐会に出た料理は、港町だけあって魚が中心だった
ひろは漁港関係者にマグロや昆布がないか聞いてみた
結局、聞くよりも見た方が早いと言うことで、ひろは漁師がとってきた魚介類を見に行く約束を取り付けた
ーー 新しい子を探すついでに、漁師さんに会いに行こう ーー
海に行く楽しみが増えて、ご機嫌なひろであった
ひろとしては、早く知らせたいのはやまやまなのだが、今からアルタリア討伐に行くのだ。妊娠を理由にお留守番させられるのは絶対に阻止したい
だから全てが片付くまでは言わないことに決めたのだ
それにひろは非戦闘員である
どうせ補助魔法をかけるくらいの事だから、チョチョイのチョイである
それにしても気になるのは"新しい子"の正体だ
見てみないとわからないが、名前は何にしよう?というのが専ら今のひろの悩み事だった
そしてひろがハイネ様のところから戻った次の日、ルイとひろは従魔達と共にデュポン辺境伯領に向けて出発した
今回は急ぐので、ルイはひろと一緒にバーストの背に乗る。ジャックはバーストの後を付いてくるらしい
他の従魔達はみんな魔空間に戻ってもらった
城の前庭でバーストに乗ったルイとひろを城の重鎮達が並んで見ている
城で働く者総出でのお見送りだ
「それでは行ってくる!ノア!イーサン!後は頼んだぞ!」
「はっ!お任せください!陛下!妃殿下!お気をつけて!」
「バースト、お願いね」
バーストはゆっくり上昇する。そして上空高く舞い上がると、一気に速度を上げて飛んで行った
馬車で10日の道程をバーストはたった一日で飛んでしまった。そのかわり物凄いスピードだったのだ。ひろが堪らず結界を張って風を防ぐ程に
以前マジョール城に行った時にもバーストに乗ったけれど、あの時はまだここまでの速さではなかったような気がしたひろは、思わずそれを口にする
「バースト!前より速くない?」
「これが私の普通です、ひろ様」
「これが通常運転なのか……凄いね!見直したよ」
「ありがたきお言葉!」
ひろは従魔を労うことも忘れない
ちょっぴり、側にいたジャックが拗ねているのは気づかないふりをしてやり過ごす事にしたひろだった
ここでの宿泊先はデュポン辺境伯邸にお願いする事になっている
ルイは幼い時に一度会っているらしいが、記憶に定かでないらしい
ひろはもちろん初対面なので、まぁ、夫婦揃って初対面と言ってもいいだろう
バーストはデュポン辺境伯邸の前庭に静かに降り立った
ルイの手に引かれ、ひろがバーストから降りると、邸の中からデュポン辺境伯と思われる人が侍従や侍女をぞろぞろ引き連れて出てきた
ひろの考えでは、貴族=太っちょの太鼓腹のイメージがあるのだが、デュポン辺境伯は立派な髭に、鍛え上げられた体のマッチョなおじ様という感じだった
「これはこれは、ルイ陛下にひろ妃殿下!遠いところを我が辺境伯領へようこそ。さぁ、お疲れでございましょう。どうぞ、中へお入り下され。暫く休んで疲れが取れた頃合いに、こちらからお伺い致しますゆえ、どうぞごゆるりとお過ごし下さい」
辺境伯は思いの外腰の低い人だった
ルイとひろは辺境伯邸の貴賓室に通され、そこで思い思いに寛いでいた
もちろんバーストは人型モードで部屋の隅に控えている
ジャックは私の陰の中だ
「ねえ、ルイ」
「ん?なんだ?もっとこっちにおいで」
気づけばひろは指定席になっているルイの膝の上にいた
ルイがひろの首筋に顔を埋める
「王都に来てからずっと忙し過ぎて、俺はひろ不足で死にそうだ。もう我慢の限界だよ。ひろ、俺を癒して?」
ーー とか言いながら、やることはちゃんとやってるくせに ーー
と思うひろだったが、口に出しては言いません。大人ですから
このままルイを野放しにしてしまうと、最後までいってしまうので、ひろはなんとかルイを引き離し、目を見つめて話し始める
「ルイ。私がちょっと前にハイネ様の所へ行ってきたの覚えてるよね?」
「ああ、寂し過ぎて死ぬかと思った」
ーー お前はウサギか?ーー
と突っ込みたくなるのを、必死で抑える
「あれはハイネ様に今度海上戦があるから、何か良い手があったら教えてくださいってお願いに行ったのね。そしたらハイネ様が新しく海上戦に相応しい従魔を下さるっておっしゃったの。それで、その従魔には海に行けば会えるって言われたんだよね。だから、とにかく一度海に行ってみようと思ってるんだけど、ルイ、付いてきてくれる?」
「当たり前だ!俺がひろを一人で行かせるはずがない!二人で行くに決まっている!」
その答えはキスの中に消えていった
その日の夜は、デュポン辺境伯邸で、ルイとひろの歓迎晩餐会があった
近隣諸侯の中に混ざって、領内の有力商人なども招かれていた
どの人もルイとひろにコネを作りたくて必死になっているのがとても滑稽だったが、それは裏を返せば、ルイとひろにコネが繋がれば、今以上の利益や立場を得ることができるかもしれないと、自分の生活向上のためにしている努力にほかならないので、無下にもできない
それらを上手くかわしながら、ほどほどの距離を保つように巧みに操るのも、国王とその妃の役割でもある
上に立つのもなかなか大変だ
晩餐会に出た料理は、港町だけあって魚が中心だった
ひろは漁港関係者にマグロや昆布がないか聞いてみた
結局、聞くよりも見た方が早いと言うことで、ひろは漁師がとってきた魚介類を見に行く約束を取り付けた
ーー 新しい子を探すついでに、漁師さんに会いに行こう ーー
海に行く楽しみが増えて、ご機嫌なひろであった
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