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動乱
城内へ
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ひとしきり泣いた後、ルイは後ろに控える私を自分の母親に紹介してくれた
「母上、俺の妻のひろだ。彼女は俺を助けるために異世界からやって来たハイネ神様の愛し子だ。俺がこうして今ここにいられるのは、全てこのひろのお陰だ」
「ルイったら、恥ずかしいからやめて」
「なにを恥ずかしがる必要がある。お前に会わなければ、俺は人ですらなかったのだから」
「えっ?ルイ、城でなにがあったのです!?」
「あれから……父上が毒殺され、母上がここに幽閉されてから、私は呪いをかけられ獣に変えられて死の森に捨てられました。人であったことも、人としての尊厳も全て忘れ、身も心も獣になって日々生きることしか考えられなくなりました。ひろと出会って、たどたどしくも言葉も話せるようになり、どんどん人としての生活をするようになって、そしてひろと結ばれました。ひろと結ばれる事で、私の呪いは解け、私はまた人に戻る事ができました。私を獣に変えた輩と、そしてそれに関わった全ての輩とその一族もろとも同じく呪詛返しにあい、今王都は人の心を持たぬ貴族の服を着た魔物で溢れかえっております。父上を毒殺し母上をここに幽閉した輩も、漏れなくその中に含まれているかと」
「な………なんということ………」
「呪詛返しにあってもなお、邪悪な心を持っていた宰相が、俺が解呪された事に気付き俺を亡き者にしようと、かつて俺を捨てた死の森にゴーレムを使って火を放ち、その一部が隣国マジョールへと侵攻したため、今、マジョール軍が母上の解放とフローレンスの不可侵の領域への侵攻を理由に、戦線布告をして領内にて交戦中であります」
「マジョールが……姉上にお会いしたの?」
「はい、全てを話しました。それを聞いた女王は嘆き、大層ご立腹され、そして私に協力してくださると約束してくださいました」
「姉上様………」
「母上、まずはここから出ましょう。私はまだ城には入っておりません。中が気になります。母上の事は必ずお守りしますので、安心して付いてきてください」
「母上様、私にお任せください。私には強力な守護魔法があります。従魔もおりますので、必ずお護りいたします」
「ひろ、母上に結界を」
「はい。…もうこれで大丈夫ですよ。特別強力な結界で包みましたから」
「それでは、参りましょう」
ルイはそういうと、母上様を抱き上げて扉を潜り、重力操作をして一気に塔の入り口まで降りていった
「もう!私は置いてけぼりなのね。後で覚えてろよ!」
私は後を追って塔の入り口まで転移した
「母上は城までこのまま私が運ぶ。魔物は、メシア頼んだぞ」
「ボス達もお願いね」
「「「「承知!!」」」」
「ひっ………」
初めて従魔達を見た母上様は、驚いて声も出ないようだった
うん、これが普通の反応だと思う
それから私達は城内へと移動した
城内はジャックの報告通り、貴族の服を着た魔物が跋扈する異様な空間になっていた
魔物が出てくるたびに、従魔達が蹴散らしている
城の実務を行うエリアに入った時、そこを抜刀した騎士が守っているのに気がついた
「ここは……。実務エリアにはほぼ貴族はいなかったはず。おい!ここにはまだ人が残っているのか!」
後ろに続く魔物に怯えながらも騎士は気丈に答える
「き、貴様は誰だ!ここから先へは、何人たりとも通す事はできん!これ以上進むなら、覚悟せよ!」
「お前、名はなんと申す?この赤い蔦の紋様に思うところはないか⁈」
「そ、それは………まさか、ルイ……へ、陛下………」
「そう、ルイだ。最後までよく城を守ってくれたね。この先には誰がいる?」
「ルイ……陛下が生きておられた……王妃様もご無事で……」
「おい!聞こえなかったか?この先には誰がいる!?」
「はっ!申し訳ございません!この先には先の宰相様と同じく先の侍従長様がいらっしゃいます!」
「なんと!イーサンとジェイコブが中にいるのか⁈」
「イーサンとジェイコブは無事だったのですね」
「はい!王妃様…ご案内致します。こちらへどうぞ」
「さぁ、行くぞ!」
私達は侍従長の執務室に案内された
「イーサン様!お客様でございます」
「何?王都にはもう人は残っていないはずだが……」
ルイが王妃様と共に強引に中に入っていった
「イーサン、ジェイコブ、久しいな。息災であったか?」
イーサンとジェイコブの目がルイの左腕に釘付けになる
「その腕の紋様は……まさか………ルイ様か!」
「まさか………ルイ様が………生きていらした……」
「おい!俺を幽霊みたいに言うな!俺は元気だぞ!そう、俺は間違いなくルイだ」
「「ルイ様~~!!」」
老年の二人はそう叫ぶと、立ち上がりルイの足元に跪いた
「ルイ様」
「ルイ様、ルイ様」
二人はそう言いながら、号泣する
それから二人が泣き止むまで暫くかかったが、平静を取り戻した二人は、ルイが城を離れた日から何があったのかを話し始めた
第二王子以外の王族が全ていなくなってから、城はイザベラの息のかかった者以外は出入り禁止となったこと。前国王派の貴族は全て下位の爵位へと繰り下げられ、一切、国政から排除されてしまったこと。そのため、心ある前国王派の貴族は王都を捨て、それぞれの治める領地へと皆戻ってしまったこと。そして第二王子が王位に就いたが、それはイザベラの傀儡に過ぎず、フローレンスの実権は実家のアルタリアと繋がったイザベラが握っていたこと。国政は乱れ民は重税を課され、皆疲弊してしまった。そんなある日、城の中にいた貴族と、その家族、およびそれに繋がって甘い汁を吸ってきた者達が全て魔物に変わってしまった。国の危機を感じたイーサンとジェイコブは老体に鞭打ち城に参上し、信頼できる者達に守られながら、今のフローレンスの危機を乗り越えようとしていたことなど、それは想像以上に衝撃的な内容だった
「よくぞ頑張ってくれた。して、イザベラや第二王子だったジョンはどうしている?」
「わかりません。魔物になってからは、中身も魔物に成り下がってしまわれましたからな。今魔物が着ている服で判別するしか手はないかと」
「魔物達は俺の呪詛返しであのような姿に変わってしまったのだ。もう再び人に戻ることはない。良質の服を着ていても、彼奴等は皆魔物なのだ。城内と王都内を跋扈する魔物は、早々に始末する以外ないであろうな。それと、前の国王派の貴族をここへ呼びもどそう。全てまた一からこの国を立て直さねばなるまい。それには信頼できる優秀な人材が必要だ。イーサンもジェイコブも昔と同じように頑張って欲しい」
「ありがたきお言葉。このイーサン、老体に鞭打って頑張る所存でございます」
「このジェイコブも一命を賭してルイ様とマリア様にお仕え致します」
この日からフローレンス復興に向けた新国王の怒涛の日々が始まった
********************
体調不良のため、明日の更新はお休みしますm(_ _)m
「母上、俺の妻のひろだ。彼女は俺を助けるために異世界からやって来たハイネ神様の愛し子だ。俺がこうして今ここにいられるのは、全てこのひろのお陰だ」
「ルイったら、恥ずかしいからやめて」
「なにを恥ずかしがる必要がある。お前に会わなければ、俺は人ですらなかったのだから」
「えっ?ルイ、城でなにがあったのです!?」
「あれから……父上が毒殺され、母上がここに幽閉されてから、私は呪いをかけられ獣に変えられて死の森に捨てられました。人であったことも、人としての尊厳も全て忘れ、身も心も獣になって日々生きることしか考えられなくなりました。ひろと出会って、たどたどしくも言葉も話せるようになり、どんどん人としての生活をするようになって、そしてひろと結ばれました。ひろと結ばれる事で、私の呪いは解け、私はまた人に戻る事ができました。私を獣に変えた輩と、そしてそれに関わった全ての輩とその一族もろとも同じく呪詛返しにあい、今王都は人の心を持たぬ貴族の服を着た魔物で溢れかえっております。父上を毒殺し母上をここに幽閉した輩も、漏れなくその中に含まれているかと」
「な………なんということ………」
「呪詛返しにあってもなお、邪悪な心を持っていた宰相が、俺が解呪された事に気付き俺を亡き者にしようと、かつて俺を捨てた死の森にゴーレムを使って火を放ち、その一部が隣国マジョールへと侵攻したため、今、マジョール軍が母上の解放とフローレンスの不可侵の領域への侵攻を理由に、戦線布告をして領内にて交戦中であります」
「マジョールが……姉上にお会いしたの?」
「はい、全てを話しました。それを聞いた女王は嘆き、大層ご立腹され、そして私に協力してくださると約束してくださいました」
「姉上様………」
「母上、まずはここから出ましょう。私はまだ城には入っておりません。中が気になります。母上の事は必ずお守りしますので、安心して付いてきてください」
「母上様、私にお任せください。私には強力な守護魔法があります。従魔もおりますので、必ずお護りいたします」
「ひろ、母上に結界を」
「はい。…もうこれで大丈夫ですよ。特別強力な結界で包みましたから」
「それでは、参りましょう」
ルイはそういうと、母上様を抱き上げて扉を潜り、重力操作をして一気に塔の入り口まで降りていった
「もう!私は置いてけぼりなのね。後で覚えてろよ!」
私は後を追って塔の入り口まで転移した
「母上は城までこのまま私が運ぶ。魔物は、メシア頼んだぞ」
「ボス達もお願いね」
「「「「承知!!」」」」
「ひっ………」
初めて従魔達を見た母上様は、驚いて声も出ないようだった
うん、これが普通の反応だと思う
それから私達は城内へと移動した
城内はジャックの報告通り、貴族の服を着た魔物が跋扈する異様な空間になっていた
魔物が出てくるたびに、従魔達が蹴散らしている
城の実務を行うエリアに入った時、そこを抜刀した騎士が守っているのに気がついた
「ここは……。実務エリアにはほぼ貴族はいなかったはず。おい!ここにはまだ人が残っているのか!」
後ろに続く魔物に怯えながらも騎士は気丈に答える
「き、貴様は誰だ!ここから先へは、何人たりとも通す事はできん!これ以上進むなら、覚悟せよ!」
「お前、名はなんと申す?この赤い蔦の紋様に思うところはないか⁈」
「そ、それは………まさか、ルイ……へ、陛下………」
「そう、ルイだ。最後までよく城を守ってくれたね。この先には誰がいる?」
「ルイ……陛下が生きておられた……王妃様もご無事で……」
「おい!聞こえなかったか?この先には誰がいる!?」
「はっ!申し訳ございません!この先には先の宰相様と同じく先の侍従長様がいらっしゃいます!」
「なんと!イーサンとジェイコブが中にいるのか⁈」
「イーサンとジェイコブは無事だったのですね」
「はい!王妃様…ご案内致します。こちらへどうぞ」
「さぁ、行くぞ!」
私達は侍従長の執務室に案内された
「イーサン様!お客様でございます」
「何?王都にはもう人は残っていないはずだが……」
ルイが王妃様と共に強引に中に入っていった
「イーサン、ジェイコブ、久しいな。息災であったか?」
イーサンとジェイコブの目がルイの左腕に釘付けになる
「その腕の紋様は……まさか………ルイ様か!」
「まさか………ルイ様が………生きていらした……」
「おい!俺を幽霊みたいに言うな!俺は元気だぞ!そう、俺は間違いなくルイだ」
「「ルイ様~~!!」」
老年の二人はそう叫ぶと、立ち上がりルイの足元に跪いた
「ルイ様」
「ルイ様、ルイ様」
二人はそう言いながら、号泣する
それから二人が泣き止むまで暫くかかったが、平静を取り戻した二人は、ルイが城を離れた日から何があったのかを話し始めた
第二王子以外の王族が全ていなくなってから、城はイザベラの息のかかった者以外は出入り禁止となったこと。前国王派の貴族は全て下位の爵位へと繰り下げられ、一切、国政から排除されてしまったこと。そのため、心ある前国王派の貴族は王都を捨て、それぞれの治める領地へと皆戻ってしまったこと。そして第二王子が王位に就いたが、それはイザベラの傀儡に過ぎず、フローレンスの実権は実家のアルタリアと繋がったイザベラが握っていたこと。国政は乱れ民は重税を課され、皆疲弊してしまった。そんなある日、城の中にいた貴族と、その家族、およびそれに繋がって甘い汁を吸ってきた者達が全て魔物に変わってしまった。国の危機を感じたイーサンとジェイコブは老体に鞭打ち城に参上し、信頼できる者達に守られながら、今のフローレンスの危機を乗り越えようとしていたことなど、それは想像以上に衝撃的な内容だった
「よくぞ頑張ってくれた。して、イザベラや第二王子だったジョンはどうしている?」
「わかりません。魔物になってからは、中身も魔物に成り下がってしまわれましたからな。今魔物が着ている服で判別するしか手はないかと」
「魔物達は俺の呪詛返しであのような姿に変わってしまったのだ。もう再び人に戻ることはない。良質の服を着ていても、彼奴等は皆魔物なのだ。城内と王都内を跋扈する魔物は、早々に始末する以外ないであろうな。それと、前の国王派の貴族をここへ呼びもどそう。全てまた一からこの国を立て直さねばなるまい。それには信頼できる優秀な人材が必要だ。イーサンもジェイコブも昔と同じように頑張って欲しい」
「ありがたきお言葉。このイーサン、老体に鞭打って頑張る所存でございます」
「このジェイコブも一命を賭してルイ様とマリア様にお仕え致します」
この日からフローレンス復興に向けた新国王の怒涛の日々が始まった
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