異世界のヒーローは皆んなイケメンだって誰が言った!

コロ星人

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動乱

決戦そして再会

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 《第三者目線》



 ミノタウルスは力で押すタイプだ

 しかし見方によっては噛みつき以外はウロボロスも力で押すタイプである

 ボスは大振りをするミノタウルスの拳を避けてスッと伸び上がり後ろに回ると、すかさずミノタウルスの背を辿って首に噛みつき、それを噛みちぎった

 その隙に近づいてきたもう一体のミノタウルスの胴体に自分の身体を飛ばして巻きつけ、ものすごい力で締め上げる

 ミノタウルスがその太い腕でボスを引き離そうとするが、締め付ける力は増す一方でとうとうミノタウルスは絶命した


 キマイラとメシアは火と氷、対極に位置する

 先程からキマイラに対峙しているメシアはそのすばしこいスピードと必殺の氷結魔法で2体のキマイラを翻弄する

 キマイラも得意の火魔法で多彩な攻撃を仕掛けてくるが、双頭であることが逆に災いし、そこまで早く動けるわけではないようだ

 二つの頭のやる事が揃わず動きが止まってしまったその一瞬の隙を突かれ、キマイラはメシアの氷結魔法で凍ってしまう

 そこをメシアに体当たりされ、氷像になったキマイラが壊れ絶命する

 もう一体はメシアに体当たりを食らわせ噛みつきと火魔法を組み合わせてくる。遠近自在、多彩な攻撃で善戦しているが、飛びかかろうとして伸び上がった、その一瞬をつかれ、素早く体をキマイラの下に潜り込ませたメシアの氷結魔法をお腹に浴び、もう一体と同じ運命をたどる

 

 次に先程から氷龍と対峙しているジャックは、巧みに実像と霧を使い分け、氷龍に容易に狙いを定めることをさせない

 氷龍の咆哮に気をつけながらも逆に距離を取ると不利になると踏んだジャックは、小回りが利くその体をいかしてその懐へ飛び込むと、龍が咆哮をあげようと口を大きく開いたその隙を逃さず、素早くその口の中に火炎魔法を叩き込む

 氷龍の胴体が一瞬膨れたと思ったら、中から大爆発が巻き起こり、頑丈な氷龍の体が一瞬にして砕け散った



 氷龍対炎龍

 相対する2体の死闘が始まった

 バーストは氷の咆哮を炎の咆哮で打ち消す

 同時に尻尾で叩いたり体当たりをして、お互いに一歩も譲らない

 「これでは埒があきませんね」

 バーストは作戦を変える

 氷龍の上を取ると人型に変化して、氷龍の後頭部に張り付く

 氷龍がバーストを見失って動きを止めたその一瞬が勝負を決めた

 龍に戻ったバーストが氷龍の角を掴んで至近距離からその頭に炎の咆哮を叩きこむ
 
 さすがの氷龍も、堪らずもがくが、不覚にもその隙に見せたお腹に、再び炎の咆哮を浴びて勝負がついた


 「さあ、北の塔へ急ぎましょう」

 ボスの一言で、全ての従魔が一団となって北の塔へ向かった



 ルイは焦っていた

 いくら自分が強くても、災害級の魔物を3体も同時に相手にするのは、さすがに分が悪い

 今は重力操作をして、自分の周りだけ重力を小さくしている

 それによってアラクネの糸は自分には届かないのであるが、八本足の素早さにルイは決定打を放てずにいた

 そう言えば、戦いが始まる前に、ひろが自分が張った結界には近づくなと言っていたな

ーー あれはどう言う意味だったんだろうか。試してみるか ーー

 ルイはひろ達が避難する結界に向かってアラクネを魔法で巧みに追い込み誘導する

 アラクネが結界を足場にしてルイに飛びかかろうとするが、アラクネの足が結界に貼り付き、身動きが取れなくなってしまう

 次の瞬間、空から雷が落ちて、アラクネの体を貫いた

 アラクネの体が黒く焦げ付き、脚だけを結界に貼り付けたまま、未だ煙の上がる体がポトリと落ちた

 それを結界の中から見ていたひろは

 「わぉ!Gホイホイ作戦、成功だね!やったぁ~!!」

 などと、中で騒いでいる

 ルイは結界を上手く使えば、勝機ありと一人ほくそ笑む

 ルイは重力操作でアラクネの糸を無力化し、全毒物無効の魔法でアラクネの毒を物ともせず果敢に近づくと、その体に火魔法を撃ち込む

 アラクネが瞬時に逃げるがそれを風魔法で吹き飛ばし、結界にぶつける

 2体目のアラクネも雷の餌食になった

 
 「さてと、後は土龍だけだな。どう料理してくれようか」

 土龍は先程から地震を起こしては、足下辺りをざわざわ動き回って、体勢を崩した隙に攻撃する機会を伺っているようだった

 それならばと、重力操作をして、ルイは結界の上空に舞い上がる

 「ひろ!結界の強度を限界まで上げろ!急げ!」

 「はいいい!!了解です!」

 ひろは慌てふためき同じ結界魔法を五つも重ねがけしてしまう

 そのせいで、雷の威力も五割り増しになったとも気付かずに

 上空に舞い上がるルイを追って地面から尻尾を出して叩き落とそうとする土龍だが、ルイがよけてそれを交わしたために、尻尾は空振りルイの思惑どおり結界の上に落ちてしまう

 その刹那、ひろがうっかり五割り増しにした特大の雷が落ちて土龍がもんどりうつと、雷の衝撃に驚いた体が地表に姿を表す。それは空高く伸び上がり結界の上で反り返ると、それが再び結界の上に落ちて身動き取れなくなる。そしてまたそこに雷が落ちるという土龍には最悪のシナリオとなった

 二度目の落雷で光と共に土龍の体に大きな穴が空き、焦げてプスプスいっている

 凄いや。

 この結界最高だよ

 Gホイホイ作戦ぱねえ



 ひろは結界を解くとルイのもとに駆け寄った

 「ひろのおかげで勝てたようなもんだな。お前、攻撃魔法はからきしダメなはずなのに、あのえげつない雷はどうして起こしてるんだ?」

 「ああ、あれは静電誘導を起こしてやってるから元は攻撃魔法ではないんだよ。メカニズムは面倒くさいから言わないけどね」

 「俺の嫁はすごいな。お前と結婚して良かったよ」

 ルイがひろに短いキスをしてくる

 そこに死闘を終えた従魔達が、戻ってきた

 「そっちも無事に終わったようだな。それでは行くか⁈」

 ひろとルイは塔の中に入っていった

 従魔達には下で警戒してもらうことにする



 塔の中は螺旋階段になっていて、途中に部屋は見当たらない。ずっと周囲の壁に沿って階段が続いているだけである

 ルイとひろの二人はやっと最上階にある部屋の扉の前まで辿り着いた

 そこには簡単な錠前がかかっており、ルイは難なくそれを引きちぎる

 厚みのある扉がゆっくりと開き、中の様子が露わになった

 そこには、簡易ベッドと質素な卓に背もたれのない椅子が一脚だけあった

 窓はなく白い壁が少し煤けているのが如何にも囚人の為に用意された部屋であることを物語っている

 部屋の中には洗いざらしの質素な服装をした髪の長い優しい雰囲気の女性がベッドの端に静かに座っていた

 ルイが部屋の中に入っていくと、中にいた女性がゆっくりと立ち上がった

 女性の目が少し捲れた左袖から覗く赤い蔦の紋様を追っている

 「ル……ルイですか?」

 その女性が震える声で尋ねる

 「はい!お迎えが遅くなって申し訳ありません、母上」

 「ルイ!!」

 「母上!」

 二人は互いを確かめるようにしっかりと抱き合い、そして10年以上募った思いを押し流すように声を上げて泣いた


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