異世界のヒーローは皆んなイケメンだって誰が言った!

コロ星人

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動乱

マジョール城にて②

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 「まさかと思った。ここに入ってきた時にちらりと見えたその左腕にある赤い蔦の紋様。それこそが王の証だ。フローレンス王家の正当な王位継承者となる者には、代々その左腕に蔦の紋様が刻まれている。その色は皇太子が緑、国王になるとそれが赤に変わるのだ。そしてルイには赤い蔦の紋様がある。ということは、ルイこそがフローレンス王国の正当な国王だということだ。ルイの母は、両国の友好のためにこのマジョールから嫁いでいった、我が妹のマリアだ。つまり、ルイは私の甥になる」

 「では、今のフローレンス国王は……」

 「正当な継承者ではない第2王子が、無理やり玉座に付いている。ルイ、何があったのだ?」

 「俺が10歳になった頃、父上が毒殺され、それと同時に母上にその毒殺の容疑がかかって幽閉された。俺はその事を、偶然聞いてしまった。俺が勉強が嫌で部屋を抜け出し、隠れていた部屋に当時の宰相と、公爵と、第2側妃が入ってきて悪事の相談を始めたんだ………」

 ルイはその時聞いた事を、ぽつりぽつりと話し始めた



 『国王は万事上手く毒殺できた。王妃もマジョールから送り込まれた暗殺者だと偽り、手筈通り幽閉できた。後は皇太子を始末するだけだ』

 『して、イザベラ様、母国のアルタリアの方は無事に進んでいるのであろうな?』

 『もちろんですわ。私を誰だと思っているの?私はアルタリアの王女よ。この私を差し置いて、マジョールの者を正妻にするなど、ありえませんわ』

 『ふふふ……早くアルタリアと手を組み、マジョールを叩き潰してやらねば、我の気持ちがおさまらん!』
 
 『まあまあ、公爵様、事は順調に運んでおりますゆえ、そう焦らずとも……』



 「俺はそれを狭い家具の隙間に隠れて聞いていた。奴らの顔も見てしまったんだ。涙が溢れて仕方なかった。両親の事を思うとどうしても堪えきれず、不覚にも思わず漏れた嗚咽を奴等に気づかれてしまったんだ。その後俺は直ぐに呪いをかけられて、猿人類に変えられ短剣を一本持たされただけで、死の森に捨てられてしまった。猿人類に変えられた後は、自分が人間であった時のことを全て忘れてしまって、とにかく生きることしか考えられなかった。ハイネ神様がそんな俺を哀れんで、異世界から妻のひろを俺のもとに連れてきてくれたんだ。ひろのおかげで俺は人間に戻ることができた。俺が人間に戻ったのはほんの数日前だ。そしてフローレンス王家の紋章が付いたゴーレムが森を焼き払いにきた。おそらく、呪詛返しが起こり、俺が解呪された事に気付いた首謀者一味がやった事だと考えるのが自然だろう。ひろはハイネ神様の愛し子だ。俺はひろと一緒にハイネ様に会って、母上が今、フローレンス城の北の塔に幽閉されていること知った。マジョールの女王よ。我に力を貸してはくれまいか。母上を助け出したい」

 気づけばエリザベス女王はルイの側で泣いていた

 「そんな事が………さぞかし辛かったであろう……おのれイザベラめ!我が妹に罪を着せるなど、言語道断!!フローレンスもろとも叩き潰してやる!シーザー!急ぎ議会の招集をせよ!フローレンスへ戦線布告じゃ!!間者を放て!!目にものを見せてくれる!」

 エリザベス女王の怒号が響き渡る

 シーザー団長が「はっ!」と叫ぶとものすごい勢いで部屋を出ていった

 「女王よ。なんと礼を言ってよいのかわからない。俺はひろと一緒に母上を助けに行きたいと思っている。女王には、イザベラの息のかかった者どもの一掃をお願いしたい」

 「ルイ!二人で城に乗り込む気か!」

 「ああ。俺達は二人で一人だ。ハイネ様の加護を得て、俺は強くなった。それに俺達には、頼もしい従魔がいる。後ろに控えるバーストは炎龍、そして今俺の膝の上にいるメシアはフェンリルだ。他にも2体いる」

 「ジャックもここにいるよ。見えるようにしても大丈夫?」

 「女王。ひろがこう言っているが、大丈夫か?」

 「ああ、かまわない」

 「ジャック、大丈夫みたいだよ」

 ひろがそう言うと、ひろの陰から、すっとグリフィンが姿を現した

 「!!!!!!」

 流石は女王である。悲鳴だけはあげなかった

 「まだ、他にも従魔はいるんだけど、大きくてここに出せないだけです。ジャック、悪いんだけどフローレンスへ行って、今のフローレンスの状況を掴んできてもらえるかな?」

 「任せろ!バースト、マスターを頼んだぞ!では、また……」

 ジャックの姿が霧のように消えた

 「………………すごいな……グリフィンなぞ始めて見たわ……」

 「ジャックはオールラウンダーですから、こういった役目はお手の物だと思います。任せておけば大丈夫かと……」

 「ルイの奥方はしっかりした、良き伴侶であるな」

 「ああ、ひろは美しく優しくて賢い。おまけに料理もうまい、俺の自慢の妻だ」

 そう言うと、ルイは急に私の顎を持ち上げキスをした

ーー もう!女王様の前なのに ーー

 「女王、俺が母上を助けたら、マジョールで保護してもらえないだろうか?俺はフローレンスの奴等を叩き潰した後、イザベラの後ろで糸を引いているアルタリアに乗り込んで、父上の仇をとりたい」 

 「ルイ…………」

 女王がルイの目を真剣にそして強く見つめた後、溜め息をついて呟いた

 「もう決めたのであろう?止めても引き下がるつもりはないとみたが、フローレンスはどうするつもりだ⁈此度の事で、フローレンスの重鎮は一掃されるはずだ。現在の王も含めてな。政に関わる者が殆どいなくなったフローレンスは、悪がのさばる無法地帯になるやもしれん。それをおいてまで、アルタリアに行くのか!」

 「何を心配がする事がある?マジョールの女王が付いているではないか。俺が居らずとも、フローレンスを託せる立派な女王がな」

 「まさか、王位を放棄するつもりか!」

 「そのまさかだと言ったらどうする?」
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