異世界のヒーローは皆んなイケメンだって誰が言った!

コロ星人

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ルイ、魔狼の子供に嫉妬する

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 最近、我が家は色々騒がしい

 ルイが私を抱きしめたり、頬ずりをしたりするのは通常運転なんだけど、そこに魔狼の子達が参戦するようになったから、さあ大変!

 上を下への大騒ぎになってしまっている

 ルイの子供っぽさがここぞとばかりにフルで発揮されて、子狼達とほぼ同じ目線で言い合いをしている

 おまけに互いに一歩も引く気は無いようで、間に立つ私は、朝からグッタリだ



 ーー それがねーー



 ここ数日、私は日中ずっと頭の上にクロ、膝の上にシロ、肩の上にブチを乗せて(何度降ろしても乗ってくるのだ)、後ろからルイに抱きしめられて、とにかく暑苦しくて身動きできないでいる

 それだけでも疲れるのに

 「ヒロは、オレの。お前達、ヒロに、触るな。ヒロ、触って、いいの、オレだけ。お前達、あっち、いけ」

 「ぼくたち、ましゅたーのごえい。いつもいっちょ、あたりまえ」

 「オレが、いる時、オレが、ヒロ、護る。お前達、いらない」

 「ましゅた、みんな、かわいい、いってくれる。だから、ちょば、いていい」

 とか、毎日常に言い合っているのだ

 本当にうんざりする
 


 子狼達を従魔にした時に、何となく嫌な予感はしてたんだけど、まさかルイがこんなに嫉妬深いとは思わなかった

 「あああ~~~!!もう、うるさい!!これ以上うだうだ言ったら、みんな今日のご飯抜きだから!!」

 私はとうとうキレた

 子狼達が一瞬で私の上から飛び降り、ルイが思わず腕を離す

 私はその隙に、一度岩山の頂上に転移してから、山の裏手の森に再度転移する

 実は岩山の反対側に森があるのは知ってたんだけど、今まで、行ったことがなかったんだよね

 だから一度行ってみたかったんだよ

 この際だから、今日は裏の森をたっぷりと堪能させてもらおう


ーー 私がいなくなって、みんな慌てればいいんだ!少しは反省しろってんだ ーー



 その頃、急にヒロの姿が消えて、残されたルイと子狼達は焦ってあたふたしながら

 「ヒロ!どこ?帰ってきて!ヒロ!ヒロ!」

 《どこいったの?ましゅたー》

 《ましゅたー、どこなの?》

 《ましゅた、ましゅた》


 思いつくまま、手当たり次第闇雲に辺りを探し回った 

 まだ幼い子狼達は洞窟の中を、ルイは森の中を

 しかし流石のルイも、2度も転移したヒロの気配を探れなかったのだ

 それに、まさか今まで一度も行ったことのない岩山の裏手の森に行ってしまったとは、夢にも思わなかったのである


 「ヒロ、どこ?ヒロ………ごめんね………謝るから、帰って、きて」

 ルイは泣きながら、ヒロを探して森のあちこちを走り回ったが、肝心のヒロは忽然と姿を消したまま、その気配すら追えなかった

 「ヒロ、嫌だ。いなくなったら、嫌だ」

 ルイは、初めてヒロに出会った時のことを思い出していた。10日間、この世界からその存在が消えてしまった時の事を…

 涙で前が見えなくなる

 とうとう歩くこともままならなくなり、ルイはその場に膝をついたまま動かなくなってしまった




 その頃、岩山の裏手の森に転移したヒロは、初めて見る風景にテンションが上がり、色んな野菜やハーブを探索して見つけては、無限収納に次々と入れていった

 そこでとうとう見つけたのだ!米を!そして魅惑のスパイス達を!

 日本人なら、米でしょ!で、スパイス使ってカレーなんて最高じゃない?

 ここにはブラックペッパー、ホワイトペッパー、クミンシード、コリアンダー、ターメリック、クローブなど、至る所にあったのだ

 もう!パラダイスだよ!

 ここ数日ずっとストレスの塊になっていたヒロは、そこから解消された嬉しさと、米やスパイスを発見できた嬉しさで今までになくハイテンションになり、つい周りの警戒を怠ってしまった

 だからそれに気づくのが遅れてしまったのだ

 ヒロがそれに気づいたのは、今迄にない強烈な臭いが漂ってきたから

 そういえば、ルイも昔はこんな感じだったなぁ、なんて思い出に浸っている場合ではなかった


 それは既にそこにいた

 グルルルルルル………

 それはこの間ルイに瀕死の重傷を負わせたケルベロスだった

 あの時、瀕死のルイの反撃に遭い、本来なら3つあるはずの頭が2つしかないが、確かにケルベロスだ

 戦闘能力のないヒロは転移して逃げる事を考えた

 ここは今日初めて足を踏み入れた所で、ヒロが転移するために認識できる場所は皆無に等しい

 落ち着いていれば、岩山の我が家か最低でも岩山の頂上を選択していただろう。でも焦っていたヒロは、咄嗟に先程ハーブを採っていた場所を思い浮かべてしまう

 ヒロが転移したそこは、ケルベロスのいる場所からさほど離れていなかった

 戦闘力皆無のヒロには、そこがケルベロスには容易くヒロの気配を追える場所だったことに全く気づかなかった

 転移して直ぐに顔を上げたヒロの目に映ったのは、自分に向かって爆走するケルベロスの姿だった


 「ルイ……助けて………お願い!!ルイ!!助けて!!」

 お願いチートが発動し、泣き顔のルイが怯えて震えるヒロの目の前に現れる

 「ヒロ?」

 「ル、ルイ!!助けて!!」

 「えっ?」

 ルイは慌てて振り返り、一瞬で今の状況を理解する

 ルイの体が闘気で膨れ上がり、全身の毛が逆立つ


ーー よくも、オレの、ヒロに……許さない ーー


 ヒロが瞬きをする間に、ルイの体が轟音と共に消えて、気付けばその体はケルベロスの胴体の下に潜り込み、いま正に拳を突き上げようとするところだった


 ドオオオオオオーーーーン!!


 何が起こったのかわからなかった

 返り血を浴び、ゆっくりと起き上がったルイの手には、大きな魔石が握られていた


 ヒロは言葉を失って呆然と見ていた

 ルイがゆっくりヒロのもとに戻ってくる

 「ヒロ、怪我、してない?大丈夫?オレ、いっぱい、心配、したよ。あ!クリーン、かけて?」

 「うん、クリーン……ルイ…助けてくれて、ありがとう」

 クリーンで綺麗になったルイが、ゆっくりとヒロを抱きしめる

 「無事で、よかった……」



 

 
 


 
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