異世界のヒーローは皆んなイケメンだって誰が言った!

コロ星人

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瀕死のルイ

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  その日、私は食パン作りをやっていた

 パン生地をこねるのって、結構力がいるんだよね~

 多分、お願いチート発動すればこねるのも一瞬で終わっちゃうかもしれないんだけど、私ってば頑固に100%手作りってのにこだわってるんだ

 いつも私は自分の好きな物よりも先に、ルイの好きなものを優先させてしまって、結局今日もルイの好きなフレンチトーストやサンドイッチを作ってあげたくて、頑張っているのであります

 そのルイは、さっき狩に出かけて行って留守にしている

 今日はどんな獲物を狩ってくるのか楽しみだ

 そうだ!後でバンズを作ってハンバーガーにしてもいいかもしれない、なんて呑気に考えてたら、崖下の柵の中にいるコカトリスから、念話が入ってきた

 《マスター!ルイさんが、ルイさんが大変です!直ぐに下に降りてきてください!》

 《は~い、直ぐ行きま~す》

 私は"のし"のタオルで手を拭きながら、コカトリスの柵の中に直ぐに転移した

 「何か、あった?ルイが何かしたの?」

 《マスター!あれ!ルイさんが……》

 「え?ルイ?」


 私はコカトリスの視線の先に目をやって、息を飲んだ

 そこには血だらけになったルイが倒れていたのだ


 「ルイ!!」

 
 私は柵を飛び越えて、ルイに駆け寄った

 真っ青になったルイの顔を見た瞬間、私は周りの音すら何も聞こえなくなった

 私はそれ程取り乱していたのだ

 涙が止めどなく溢れてくる


ーー 落ちつかなければ……落ちつかなければ……私の馬鹿!泣いている暇なんかないのに……直ぐにルイを助けなければ……お願い!ルイを助けて!私、ルイが居なくなったら、ここで行きていけない!お願いだから、ルイを元の元気なルイに戻して!ーー


 私は血だらけのルイに縋って、泣きじゃくった

 ルイは背中に大きな傷を負っていた

 どこでこんな大怪我を負ったのか知らないが、この傷でよくぞここまで戻って来たと思う

 ルイは瀕死の状態だった


 「ルイ……ルイ!死んじゃやだ!私を1人にしちゃやだ!」

 「ヒロ……もう……大丈夫……だから……」

 「ルイ!」


 ルイは私のお願いチートで傷が塞がり、一命をとりとめた

 だけど失った血が多過ぎて、口を開くのも辛そうだった

 私はルイの手を握って崖の上の我が家へ一緒に転移しようとして、ルイの腕の中に小さな子犬が3匹いる事に気がついた

 「もしかして、この子達を助けたから自分が怪我しちゃったとか言わないよね?」

 「……へへ………」


 どうやら、図星のようである

 とりあえず、私はルイの体に手を触れた状態のまま、崖の上の我が家に転移した

 直ぐに藁の寝床にルイを寝かせると、血だらけになって汚れていた体をクリーンをかけて綺麗にしてから、腕の中にいる子犬を受け取った

 ルイには暫く眠って少しでも早く回復するようにさせたいと思ったからだ

 子犬はとても人懐こく、大人しく私の腕に抱かれてくれている
 
 
ーー とりあえず、この子達をどうしようかなぁ……ルイが命がけで助けてここまで連れてきたって事は、多分孤児君達だと思うんだよね。まだ小さいし、暫くは保護が必要だよね。この子達の種族はわからないけど、多分ルイの領分の子達だと思うんだよ。だから、私とは従魔契約は出来そうにないけど、ダメ元でやってみようかな ーー


 「ねえ、君達、私の従魔になってくれない?ルイが居ない時に私の護衛をしてくれたら嬉しいんだけど、ダメかな?毎日のご飯と安全は保証するよ。寝床も可愛いのを作ってあげるし、ダメかな?」

 子犬達は、尻尾をちぎれんばかりにふって私の顔を舐めてきた

 「OKしてくれたと思っていいかな?」

 名前は、見たままで付けちゃえ

 私は順番にそれぞれの頭に手を置き名前を付けていく

 「私の名はヒロ。私の従魔になって私を護ってね。君はクロ、君はシロ、君はブチ。これからよろしくね」

 無事に従魔契約できたか心配だったけど、なんとかなった、かな?

 
 すると急に頭の中に可愛い片言が響いてきた

 《ましゅたー、ぼく、くろれしゅ。これから、よろちくれしゅ。はやくおおきくなって、ましゅたーまもれるように、なりましゅ》

 《ましゅたー。わたち、ちろれちゅ。よろちくね》

 《ましゅた。ぼく、ぶち。よろちく》


ーー か、可愛い~~!何、この可愛さ!これ反則だよ!さっきルイと一緒にクリーンかけたら、すっごいもふもふになってるし、もうそれだけで護衛なんかしなくてもいいレベルだよ。ルイ、瀕死になっちゃったけどグッジョブ!ーー

 私はルイと可愛い子犬達のために暖かいスープとカラメルソースなしのプリンを作った

 だけど、ルイはそれから3日間目覚めることはなかったんだ

 でも作った食事は私と子犬達でしっかり食べましたからご心配なく!

 ふ、ふ、ふ。。。牛乳を冷やすために洞窟内の一部屋を丸ごと冷蔵庫にしちゃったのだよ

 それも棚の上下で冷凍と冷蔵に分かれている優れもの

 だからプリンも冷たくして頂きました

 子犬達にもプリンは大好評で、お陰で子犬達は常に私の後を付いてくるようになってしまって、片時も離れなくなっちゃった

 これってルイが目覚めてこれを見たら、機嫌が悪くなってスキンシップに拍車がかかりそうな気がするのは私の考えすぎだろうか

 


 ルイが瀕死の重傷を負って眠りについてから3日経った

 私が子犬達を連れて、朝ごはんの暖かいスープを持って藁の寝床に眠るルイの傍に行き、顔を覗きこんで見ていると、スープの匂いに誘われたのか、ルイの目がゆっくりと開いて私と目があった

 「ヒロ、おはよ」

 「うん、ルイ、おはよう。具合いはどう?」

 言うや否や、私はルイに抱きしめられていた

 「ヒロ……ヒロ………オレ…オレ…ヒロ、泣かせた。ごめん。オレ、もっと、つよくなって、ヒロ、泣かないよう、に、する、から、ゆるして」

 「ルイの嘘つき!私とずっと一緒にいてくれるって、言ったくせに!私、1人になるかもって、怖かったんだから」


 久しぶりに2人しておいおい泣いた


 ルイは朝ごはんに作ったスープをほぼ1人で平らげたあと、プリンもおかわりしてやっと落ち着いたようだ

 その後、ルイが寝ている間に子犬達を私の従魔にして名前を付けたことを知らせると、ルイが怪我をした経緯を話し始めた




 かいつまんでその話をまとめると、どうやらこの子犬達は魔狼らしい

 親子でいるところをケルベロスに襲われ、父親と母親が子犬達を護って戦い死んでしまった

 周囲の違和感や気配から異常を察したルイが駆けつけた時は、既に子犬達がケルベロスに襲われて爪で引き裂かれる寸前だったそうだ

 魔法でケルベロスを吹き飛ばすと子犬達まで巻き込まれると咄嗟に判断したルイは、身体強化をかけて子犬達を抱きあげ庇って逃げようとしたが、爪が振り下ろされる方が早くて、背中に瀕死の重傷を負ってしまった。

 その後直ぐに魔法でケルベロスを吹き飛ばしたが、思ったより傷が深く、やっとの思いで崖下まで逃げてきて、ヒロに助けられた………と言うことだった


 もう二度とこんな無茶なことはしないと、ルイに約束させても私の機嫌はなかなかなおらず、それからルイは「オレ、ヒロ、好き。オレ、ヒロ、好き」って言うのが口癖になってしまった。もちろんいつものスキンシップが増えて、それまでにも増して私の身動きが取れなくなってしまったことは言うまでもありません

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