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孤独な子
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次の日の朝目覚めたら、まだルイに抱きしめられたままだった
ルイは腕、痺れないのかな?
猿人類って丈夫なのかな?そういえば私と出会って強くなったって言ってたし……
そんな事を考えながら私が目を開けると、直ぐそばにあったルイの目に思わずたじろぐ
「ひっ!…………ル、、ルイ、おはよう(噛んじゃった)」
「ヒロ、おはよ」
ルイは満面の笑顔で私を抱きしめ直し、そして頬ずりをした。驚いて叫び声をあげなかった私を褒めてあげたい
ルイは暫く私に頬ずりをして気がすんだらしく、やっと私を離してくれた
ーー 頬ずりされちゃった。ひょっとしてこれって猿人類のキス?かな?わぁ~~困るよぉ~~~ーー
「あ、あの……ルイ、朝ご飯食べよう?」
「うん、オレ、肉が、いい」
ーー 朝から肉とか、猿人類は普通なのかな?私、無理かも ーー
結局、ルイは朝から昨夜と同じ肉の串焼きを、私は"のし"の実を食べました
「ヒロ、今日、何する?」
「今日は野菜を探しに行きたいなぁ。お肉ばっかり食べてると、体に悪いしね。でも、これからずっと一緒にいるんだったら、出かける前にちょっとだけ自分の事を話さない?」
「自分の、事?」
「うん。だって私達お互いに名前しか知らないでしょ?」
「あ!あ!あ!そうだ!ヒロ!ヒロは、神様の、御使?」
「え?神様の御使?」
「うん、御使、なの?だって、不思議な、力、使う」
「御使ではないよ。私はね、異世界人なの。神様にこっちの世界に連れてきてもらったの」
「異世界、人?」
「うん、ここではない違う世界から来たの。前の世界ではいらない子だったから………お父さんからもお母さんからも、小さい時から毎日いらないって言われてきてたしね。だから、ずっと何処かに行きたかったんだよ。私の事を誰も知らない所に、一人で………そして誰かに必要とされる自分になりたかったんだよ……ずっとそう思ってた……」
ヒロを見るルイの目に涙がどんどん溜まって、やがて決壊した
「ヒロ……ヒロ………オレ、ヒロの事、要る、ヒロが、要る、ヒロ、大事」
ルイは泣きながら私を抱きしめて、顔をぐちゃぐちゃにして泣いた
ーー ルイは私のために泣いてくれた。いらない子の私のために …こんなつまらない私のためにーー
「ルイ………私のために…泣いてくれて……ありがとう」
気がつくと私も泣いていた
暫く、私とルイは声をあげて泣いた
それは互いの傷を舐め合うような、とても優しい時間だった
「ルイは?……ルイの事も…私に教えて?」
「オレ、気が、ついたら、ここに、いた。剣だけ、持ってた。それまでの、事、わからない。ずっと、一人、だった。ヒロと、話せて、嬉し、かった」
「ルイ………」
ーー 私達は似た者同士なんだ。そこにいることを否定された子とそこにいる事すら認識されない子。2人とも、淋しくて辛くて………だから、お互いを大事にしたくて一緒にいたいのかもしれない。きっと神様が可哀想に思って私達を会わせてくれたんじゃないかな?そんな気がする ーー
私達は、それから暫く抱き合って泣いていた
ひとしきり泣いた後、2人は涙でぐちゃぐちゃになった顔を見て笑いあった
「あははは………涙で酷い顔になっちゃったね」
「ヒロも、顔、ぐちゃぐちゃ」
そして涙と笑いがおさまった頃、私達は今日の予定を決める事にする
「あの……ヒロ……オレ、野菜、わからない」
「え?ルイ、野菜の事知らないの?見たことない?」
「森、葉っぱ、いっぱい、ある。でも、野菜、わからない」
「えっと、どれが野菜か見分けがつかないって事?」
「うん、野菜、知らない。食べた、ことない」
「う~ん………じゃぁ、とりあえず一緒に行ってみる?それで一緒に覚えよう?そしたらルイも狩の合間に見つけた野菜を収穫できるし。あ!そうだ!収穫したり狩った獲物を収納する入れ物があればいいよね。"のし"から布ができたら作ってみようね。とにかく2人で野菜を探して種類とか生えてる所とか、色々覚えよう」
「うん、オレ、ヒロ、連れて、行く」
言うや否や、ルイはまた私をお姫様抱っこして洞窟前の広場から、100m以上下にある森に飛び降りる。またもやリアルバンジージャンプである
「ひえ~~~!!!」
これは何度経験しても慣れそうもないと思った
私達は先ず、飛び降りた所から近い所をぐるりと廻って探してみた
「あちらの世界にあった野菜と同じ食べられる植物を教えて」
私は野菜を教えて欲しいとお願いしてみる
ここは全く手付かずの森なので、生い茂る雑草に混ざって、ちょっと虫食いしてるけど元気の良い無農薬の有機野菜が、あちこちに生えている
例えば、ほうれん草や水菜、レタス、トマト、オクラ、小松菜、青ねぎ、にんにく、ミョウガ等、結構な種類が収穫の季節を無視してそこかしこにあった
雑草に紛れて生えているので、量的には少ないが、いろんな種類があるっていうのに思わずテンションが上がる
どうせ2人しかいないんだし、量はあまり考えなくてもいいかもしれないけど、ルイがどれくらい食べるのか、ちょっと想像できないので、試しに食べてもらって量の把握をしたいと思った
昨夜、ルイが食べた肉の量を思い出すと、なんだか怖くなるけど、何とかしなきゃと前向きに考える
それにまだ葉物野菜しか見つかっていない
やっぱり人参や大根、芋類などの根菜類は欲しいよね
でも、この辺りにはないみたいなんだよ
昨日、川に浸けた"のし"の様子も見たいし、川辺に移動してからもう一度探してみることにした
昨日、川に浸けておいた"のし"は、分厚い葉肉が溶け始めて、中の葉脈が見えるようになっていた
これからどうなるのか楽しみだ
ーー 布ができるまで4日かかるってピンポンさんが言ってたから、これからどうなるのかなぁ。ちょっとワクワクしてきたぞ ーー
それから川の周囲で野菜を探してみた。ここでは玉ねぎが見つかった。玉ねぎは何としても欲しかったので、今の私は超ご機嫌である
おまけにこの辺りで、梨に似た果物と、苺に似た果物を発見した
ーー わ~い!これで果物の種類が増えた!後は砂糖か蜂蜜、小麦に卵があればなぁ ーー
なんてぶつぶつ独り言を言いながら果物を収穫していると、またもや背中に何かを背負ったルイがひょいと現れた
「あ!ルイ!それって……もしかしてまた狩をしてたの?」
「うん、これ、狩って来た。ハイランドオーク。すごく、美味しい」
「それも凄く大きいね。でも昨日のボアちゃんがまだたっぷり残ってるよ。まあ、無限収納に入れとけば腐らないけど」
「オレ、頑張って、食べる」
「え?そんなに頑張らなくても大丈夫だよ。腐らないから。とりあえず、今夜はどちらのお肉を食べるの?」
「今日は、オークが、いい」
「りょうか~い!」
その日の夜はにんにくと岩塩を使って焼いたオークの肉を堪能しました
ルイはまた「美味しい」と涙を流して食べていました
以前はずっと消し炭を食べてたんだもんね
それから私はずっと気になっていた事をルイに聞いてみた
「ねえ、ルイ。ルイっていう名前は自分で付けたの?」
「うううん、違う。オレ、自分の、名前、だけ、覚えてた」
「名前だけ覚えてた、か………」
ルイにも自分の知らない秘密がありそうな気がした
ルイは腕、痺れないのかな?
猿人類って丈夫なのかな?そういえば私と出会って強くなったって言ってたし……
そんな事を考えながら私が目を開けると、直ぐそばにあったルイの目に思わずたじろぐ
「ひっ!…………ル、、ルイ、おはよう(噛んじゃった)」
「ヒロ、おはよ」
ルイは満面の笑顔で私を抱きしめ直し、そして頬ずりをした。驚いて叫び声をあげなかった私を褒めてあげたい
ルイは暫く私に頬ずりをして気がすんだらしく、やっと私を離してくれた
ーー 頬ずりされちゃった。ひょっとしてこれって猿人類のキス?かな?わぁ~~困るよぉ~~~ーー
「あ、あの……ルイ、朝ご飯食べよう?」
「うん、オレ、肉が、いい」
ーー 朝から肉とか、猿人類は普通なのかな?私、無理かも ーー
結局、ルイは朝から昨夜と同じ肉の串焼きを、私は"のし"の実を食べました
「ヒロ、今日、何する?」
「今日は野菜を探しに行きたいなぁ。お肉ばっかり食べてると、体に悪いしね。でも、これからずっと一緒にいるんだったら、出かける前にちょっとだけ自分の事を話さない?」
「自分の、事?」
「うん。だって私達お互いに名前しか知らないでしょ?」
「あ!あ!あ!そうだ!ヒロ!ヒロは、神様の、御使?」
「え?神様の御使?」
「うん、御使、なの?だって、不思議な、力、使う」
「御使ではないよ。私はね、異世界人なの。神様にこっちの世界に連れてきてもらったの」
「異世界、人?」
「うん、ここではない違う世界から来たの。前の世界ではいらない子だったから………お父さんからもお母さんからも、小さい時から毎日いらないって言われてきてたしね。だから、ずっと何処かに行きたかったんだよ。私の事を誰も知らない所に、一人で………そして誰かに必要とされる自分になりたかったんだよ……ずっとそう思ってた……」
ヒロを見るルイの目に涙がどんどん溜まって、やがて決壊した
「ヒロ……ヒロ………オレ、ヒロの事、要る、ヒロが、要る、ヒロ、大事」
ルイは泣きながら私を抱きしめて、顔をぐちゃぐちゃにして泣いた
ーー ルイは私のために泣いてくれた。いらない子の私のために …こんなつまらない私のためにーー
「ルイ………私のために…泣いてくれて……ありがとう」
気がつくと私も泣いていた
暫く、私とルイは声をあげて泣いた
それは互いの傷を舐め合うような、とても優しい時間だった
「ルイは?……ルイの事も…私に教えて?」
「オレ、気が、ついたら、ここに、いた。剣だけ、持ってた。それまでの、事、わからない。ずっと、一人、だった。ヒロと、話せて、嬉し、かった」
「ルイ………」
ーー 私達は似た者同士なんだ。そこにいることを否定された子とそこにいる事すら認識されない子。2人とも、淋しくて辛くて………だから、お互いを大事にしたくて一緒にいたいのかもしれない。きっと神様が可哀想に思って私達を会わせてくれたんじゃないかな?そんな気がする ーー
私達は、それから暫く抱き合って泣いていた
ひとしきり泣いた後、2人は涙でぐちゃぐちゃになった顔を見て笑いあった
「あははは………涙で酷い顔になっちゃったね」
「ヒロも、顔、ぐちゃぐちゃ」
そして涙と笑いがおさまった頃、私達は今日の予定を決める事にする
「あの……ヒロ……オレ、野菜、わからない」
「え?ルイ、野菜の事知らないの?見たことない?」
「森、葉っぱ、いっぱい、ある。でも、野菜、わからない」
「えっと、どれが野菜か見分けがつかないって事?」
「うん、野菜、知らない。食べた、ことない」
「う~ん………じゃぁ、とりあえず一緒に行ってみる?それで一緒に覚えよう?そしたらルイも狩の合間に見つけた野菜を収穫できるし。あ!そうだ!収穫したり狩った獲物を収納する入れ物があればいいよね。"のし"から布ができたら作ってみようね。とにかく2人で野菜を探して種類とか生えてる所とか、色々覚えよう」
「うん、オレ、ヒロ、連れて、行く」
言うや否や、ルイはまた私をお姫様抱っこして洞窟前の広場から、100m以上下にある森に飛び降りる。またもやリアルバンジージャンプである
「ひえ~~~!!!」
これは何度経験しても慣れそうもないと思った
私達は先ず、飛び降りた所から近い所をぐるりと廻って探してみた
「あちらの世界にあった野菜と同じ食べられる植物を教えて」
私は野菜を教えて欲しいとお願いしてみる
ここは全く手付かずの森なので、生い茂る雑草に混ざって、ちょっと虫食いしてるけど元気の良い無農薬の有機野菜が、あちこちに生えている
例えば、ほうれん草や水菜、レタス、トマト、オクラ、小松菜、青ねぎ、にんにく、ミョウガ等、結構な種類が収穫の季節を無視してそこかしこにあった
雑草に紛れて生えているので、量的には少ないが、いろんな種類があるっていうのに思わずテンションが上がる
どうせ2人しかいないんだし、量はあまり考えなくてもいいかもしれないけど、ルイがどれくらい食べるのか、ちょっと想像できないので、試しに食べてもらって量の把握をしたいと思った
昨夜、ルイが食べた肉の量を思い出すと、なんだか怖くなるけど、何とかしなきゃと前向きに考える
それにまだ葉物野菜しか見つかっていない
やっぱり人参や大根、芋類などの根菜類は欲しいよね
でも、この辺りにはないみたいなんだよ
昨日、川に浸けた"のし"の様子も見たいし、川辺に移動してからもう一度探してみることにした
昨日、川に浸けておいた"のし"は、分厚い葉肉が溶け始めて、中の葉脈が見えるようになっていた
これからどうなるのか楽しみだ
ーー 布ができるまで4日かかるってピンポンさんが言ってたから、これからどうなるのかなぁ。ちょっとワクワクしてきたぞ ーー
それから川の周囲で野菜を探してみた。ここでは玉ねぎが見つかった。玉ねぎは何としても欲しかったので、今の私は超ご機嫌である
おまけにこの辺りで、梨に似た果物と、苺に似た果物を発見した
ーー わ~い!これで果物の種類が増えた!後は砂糖か蜂蜜、小麦に卵があればなぁ ーー
なんてぶつぶつ独り言を言いながら果物を収穫していると、またもや背中に何かを背負ったルイがひょいと現れた
「あ!ルイ!それって……もしかしてまた狩をしてたの?」
「うん、これ、狩って来た。ハイランドオーク。すごく、美味しい」
「それも凄く大きいね。でも昨日のボアちゃんがまだたっぷり残ってるよ。まあ、無限収納に入れとけば腐らないけど」
「オレ、頑張って、食べる」
「え?そんなに頑張らなくても大丈夫だよ。腐らないから。とりあえず、今夜はどちらのお肉を食べるの?」
「今日は、オークが、いい」
「りょうか~い!」
その日の夜はにんにくと岩塩を使って焼いたオークの肉を堪能しました
ルイはまた「美味しい」と涙を流して食べていました
以前はずっと消し炭を食べてたんだもんね
それから私はずっと気になっていた事をルイに聞いてみた
「ねえ、ルイ。ルイっていう名前は自分で付けたの?」
「うううん、違う。オレ、自分の、名前、だけ、覚えてた」
「名前だけ覚えてた、か………」
ルイにも自分の知らない秘密がありそうな気がした
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