異世界のヒーローは皆んなイケメンだって誰が言った!

コロ星人

文字の大きさ
上 下
7 / 49

孤独な子

しおりを挟む
 次の日の朝目覚めたら、まだルイに抱きしめられたままだった

 ルイは腕、痺れないのかな?

 猿人類って丈夫なのかな?そういえば私と出会って強くなったって言ってたし……

 そんな事を考えながら私が目を開けると、直ぐそばにあったルイの目に思わずたじろぐ

 「ひっ!…………ル、、ルイ、おはよう(噛んじゃった)」

 「ヒロ、おはよ」


 ルイは満面の笑顔で私を抱きしめ直し、そして頬ずりをした。驚いて叫び声をあげなかった私を褒めてあげたい

 ルイは暫く私に頬ずりをして気がすんだらしく、やっと私を離してくれた


ーー 頬ずりされちゃった。ひょっとしてこれって猿人類のキス?かな?わぁ~~困るよぉ~~~ーー


 「あ、あの……ルイ、朝ご飯食べよう?」

 「うん、オレ、肉が、いい」


ーー 朝から肉とか、猿人類は普通なのかな?私、無理かも ーー

 結局、ルイは朝から昨夜と同じ肉の串焼きを、私は"のし"の実を食べました





 「ヒロ、今日、何する?」

 「今日は野菜を探しに行きたいなぁ。お肉ばっかり食べてると、体に悪いしね。でも、これからずっと一緒にいるんだったら、出かける前にちょっとだけ自分の事を話さない?」

 「自分の、事?」

 「うん。だって私達お互いに名前しか知らないでしょ?」


 「あ!あ!あ!そうだ!ヒロ!ヒロは、神様の、御使?」

 「え?神様の御使?」

 「うん、御使、なの?だって、不思議な、力、使う」

 「御使ではないよ。私はね、異世界人なの。神様にこっちの世界に連れてきてもらったの」

 「異世界、人?」

 「うん、ここではない違う世界から来たの。前の世界ではいらない子だったから………お父さんからもお母さんからも、小さい時から毎日いらないって言われてきてたしね。だから、ずっと何処かに行きたかったんだよ。私の事を誰も知らない所に、一人で………そして誰かに必要とされる自分になりたかったんだよ……ずっとそう思ってた……」


 ヒロを見るルイの目に涙がどんどん溜まって、やがて決壊した

 「ヒロ……ヒロ………オレ、ヒロの事、要る、ヒロが、要る、ヒロ、大事」


 ルイは泣きながら私を抱きしめて、顔をぐちゃぐちゃにして泣いた


ーー ルイは私のために泣いてくれた。いらない子の私のために …こんなつまらない私のためにーー

 「ルイ………私のために…泣いてくれて……ありがとう」


 気がつくと私も泣いていた

 暫く、私とルイは声をあげて泣いた

 それは互いの傷を舐め合うような、とても優しい時間だった


 「ルイは?……ルイの事も…私に教えて?」

 「オレ、気が、ついたら、ここに、いた。剣だけ、持ってた。それまでの、事、わからない。ずっと、一人、だった。ヒロと、話せて、嬉し、かった」

 「ルイ………」


ーー 私達は似た者同士なんだ。そこにいることを否定された子とそこにいる事すら認識されない子。2人とも、淋しくて辛くて………だから、お互いを大事にしたくて一緒にいたいのかもしれない。きっと神様が可哀想に思って私達を会わせてくれたんじゃないかな?そんな気がする ーー


 私達は、それから暫く抱き合って泣いていた




 ひとしきり泣いた後、2人は涙でぐちゃぐちゃになった顔を見て笑いあった

 「あははは………涙で酷い顔になっちゃったね」

 「ヒロも、顔、ぐちゃぐちゃ」





 そして涙と笑いがおさまった頃、私達は今日の予定を決める事にする


 「あの……ヒロ……オレ、野菜、わからない」

 「え?ルイ、野菜の事知らないの?見たことない?」

 「森、葉っぱ、いっぱい、ある。でも、野菜、わからない」

 「えっと、どれが野菜か見分けがつかないって事?」

 「うん、野菜、知らない。食べた、ことない」

 「う~ん………じゃぁ、とりあえず一緒に行ってみる?それで一緒に覚えよう?そしたらルイも狩の合間に見つけた野菜を収穫できるし。あ!そうだ!収穫したり狩った獲物を収納する入れ物があればいいよね。"のし"から布ができたら作ってみようね。とにかく2人で野菜を探して種類とか生えてる所とか、色々覚えよう」

 「うん、オレ、ヒロ、連れて、行く」


 言うや否や、ルイはまた私をお姫様抱っこして洞窟前の広場から、100m以上下にある森に飛び降りる。またもやリアルバンジージャンプである


 「ひえ~~~!!!」


 これは何度経験しても慣れそうもないと思った




 私達は先ず、飛び降りた所から近い所をぐるりと廻って探してみた


 「あちらの世界にあった野菜と同じ食べられる植物を教えて」

 私は野菜を教えて欲しいとお願いしてみる

 ここは全く手付かずの森なので、生い茂る雑草に混ざって、ちょっと虫食いしてるけど元気の良い無農薬の有機野菜が、あちこちに生えている

 例えば、ほうれん草や水菜、レタス、トマト、オクラ、小松菜、青ねぎ、にんにく、ミョウガ等、結構な種類が収穫の季節を無視してそこかしこにあった

 雑草に紛れて生えているので、量的には少ないが、いろんな種類があるっていうのに思わずテンションが上がる

 どうせ2人しかいないんだし、量はあまり考えなくてもいいかもしれないけど、ルイがどれくらい食べるのか、ちょっと想像できないので、試しに食べてもらって量の把握をしたいと思った

 昨夜、ルイが食べた肉の量を思い出すと、なんだか怖くなるけど、何とかしなきゃと前向きに考える

 それにまだ葉物野菜しか見つかっていない

 やっぱり人参や大根、芋類などの根菜類は欲しいよね

 でも、この辺りにはないみたいなんだよ

 昨日、川に浸けた"のし"の様子も見たいし、川辺に移動してからもう一度探してみることにした



 昨日、川に浸けておいた"のし"は、分厚い葉肉が溶け始めて、中の葉脈が見えるようになっていた

 これからどうなるのか楽しみだ

 
ーー 布ができるまで4日かかるってピンポンさんが言ってたから、これからどうなるのかなぁ。ちょっとワクワクしてきたぞ ーー



 それから川の周囲で野菜を探してみた。ここでは玉ねぎが見つかった。玉ねぎは何としても欲しかったので、今の私は超ご機嫌である

 おまけにこの辺りで、梨に似た果物と、苺に似た果物を発見した


ーー わ~い!これで果物の種類が増えた!後は砂糖か蜂蜜、小麦に卵があればなぁ ーー


 なんてぶつぶつ独り言を言いながら果物を収穫していると、またもや背中に何かを背負ったルイがひょいと現れた


 「あ!ルイ!それって……もしかしてまた狩をしてたの?」

 「うん、これ、狩って来た。ハイランドオーク。すごく、美味しい」

 「それも凄く大きいね。でも昨日のボアちゃんがまだたっぷり残ってるよ。まあ、無限収納に入れとけば腐らないけど」

 「オレ、頑張って、食べる」

 「え?そんなに頑張らなくても大丈夫だよ。腐らないから。とりあえず、今夜はどちらのお肉を食べるの?」

 「今日は、オークが、いい」

 「りょうか~い!」


 
 その日の夜はにんにくと岩塩を使って焼いたオークの肉を堪能しました

 ルイはまた「美味しい」と涙を流して食べていました

 以前はずっと消し炭を食べてたんだもんね

 それから私はずっと気になっていた事をルイに聞いてみた


 「ねえ、ルイ。ルイっていう名前は自分で付けたの?」

 「うううん、違う。オレ、自分の、名前、だけ、覚えてた」

 「名前だけ覚えてた、か………」


 ルイにも自分の知らない秘密がありそうな気がした

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界修学旅行で人狼になりました。

ていぞう
ファンタジー
修学旅行中の飛行機が不時着。 かろうじて生きながらえた学生達。 遭難場所の海岸で夜空を見上げれば、そこには二つの月が。 ここはどこだろう? 異世界に漂着した主人公は、とあることをきっかけに、人狼へと変化を遂げる。 魔法の力に目覚め、仲間を増やし自らの国を作り上げる。 はたして主人公は帰ることができるのだろうか? はるか遠くの地球へ。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...