13 / 15
馬鹿な父親が“産まれてくる子の寿命”を知るとこうなる
第二話
しおりを挟む
しばらくタナスを交えて勝負していた貴族達は、彼の引きの強さに度肝を抜かれていた。
「またタナスの勝ちか! 凄いなお前!」
「いえいえ……運が良かっただけですよ」
その後もタナスが勝ち続け、気付けばルシアノの手元の賭け金が尽きてしまっているではないか。誰もが潮時かと思われたが、相当酔っているルシアノは一歩も引こうとしない。
「いやいや、こんなところでお開きにはさせまいぞ~!」
舞い上がる彼に対し、タナスが“ボソッ”と「賭けるお金はどうされるのですか?」と尋ねる。
「そんなもの何でもよい! 負けたらいくらでもくれてやるから続けるぞ!」
「……本当に宜しいのですか?」
「男に二言はなーい! ――」
一瞬――タナスが不敵な笑みを浮かべたのを、隊長だけは見逃さなかった。
しかし、やはり負けを取り返そうと大穴に賭けてしまったルシアノが敗れてタナスが勝利すると。
「くぁ~、今日は完敗だ……負けを認めよう! タナス、お前には好きなもんをくれてやる!」
両手を挙げてそうルシアノが微笑むと、タナスは席から立ち上がってハットを被った。
「では、カリナ様の腹にいるお子様から“寿命”を頂くことに致しますか」
「……何だと?」
「実は私……“冥王の化身”なんですよ」
と、一体全体何を言い出すんだと思えたタナスに対して「何馬鹿なことを言っている……」とルシアノは怪訝な顔をして信じようとはしなかった。
ところが、タナスが離れた席に座る一人の男を見遣ると。
「あそこの席に座るアーロン卿は、一週間以内に病で倒れて命を落としてしまうでしょう。もしこの予言が外れたら、私のことは煮るなり焼くなりして構いません」
と予告した。どこか水を差すようなタナスの発言に気を悪くしたルシアノだったが。
「ならば、もし私の子供の寿命をお前が奪ったら……どうなると言うのだ?」
「貴方様の御子息様は五歳の誕生日を迎える日に死んでしまわれます。恨むならご自分の行いを恨んで頂きたい」
余りにも奇妙な雰囲気を醸し出すタナスを目の前に、その場にいた全員が固まってしまう。
隊長は“侮辱とも取れるタナスを捕えるべきだ”と判断したが、その不気味な恐ろしさに縛られているせいなのか、身体が前に出ない。
「とても有意義な時間を過ごすことが出来ました。では……私はこれで失礼致します」
そう言い残したタナスは、静まり返る夜会から何食わぬ顔をして、ゆっくりと去って行った――。
「またタナスの勝ちか! 凄いなお前!」
「いえいえ……運が良かっただけですよ」
その後もタナスが勝ち続け、気付けばルシアノの手元の賭け金が尽きてしまっているではないか。誰もが潮時かと思われたが、相当酔っているルシアノは一歩も引こうとしない。
「いやいや、こんなところでお開きにはさせまいぞ~!」
舞い上がる彼に対し、タナスが“ボソッ”と「賭けるお金はどうされるのですか?」と尋ねる。
「そんなもの何でもよい! 負けたらいくらでもくれてやるから続けるぞ!」
「……本当に宜しいのですか?」
「男に二言はなーい! ――」
一瞬――タナスが不敵な笑みを浮かべたのを、隊長だけは見逃さなかった。
しかし、やはり負けを取り返そうと大穴に賭けてしまったルシアノが敗れてタナスが勝利すると。
「くぁ~、今日は完敗だ……負けを認めよう! タナス、お前には好きなもんをくれてやる!」
両手を挙げてそうルシアノが微笑むと、タナスは席から立ち上がってハットを被った。
「では、カリナ様の腹にいるお子様から“寿命”を頂くことに致しますか」
「……何だと?」
「実は私……“冥王の化身”なんですよ」
と、一体全体何を言い出すんだと思えたタナスに対して「何馬鹿なことを言っている……」とルシアノは怪訝な顔をして信じようとはしなかった。
ところが、タナスが離れた席に座る一人の男を見遣ると。
「あそこの席に座るアーロン卿は、一週間以内に病で倒れて命を落としてしまうでしょう。もしこの予言が外れたら、私のことは煮るなり焼くなりして構いません」
と予告した。どこか水を差すようなタナスの発言に気を悪くしたルシアノだったが。
「ならば、もし私の子供の寿命をお前が奪ったら……どうなると言うのだ?」
「貴方様の御子息様は五歳の誕生日を迎える日に死んでしまわれます。恨むならご自分の行いを恨んで頂きたい」
余りにも奇妙な雰囲気を醸し出すタナスを目の前に、その場にいた全員が固まってしまう。
隊長は“侮辱とも取れるタナスを捕えるべきだ”と判断したが、その不気味な恐ろしさに縛られているせいなのか、身体が前に出ない。
「とても有意義な時間を過ごすことが出来ました。では……私はこれで失礼致します」
そう言い残したタナスは、静まり返る夜会から何食わぬ顔をして、ゆっくりと去って行った――。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
【完結】私の恋が冷めた日短編集
暁
恋愛
人の恋は千差万別。
しかし、その中でも『恋に冷める瞬間』は誰しもが経験する。
これは、色んな人のそんな瞬間を収めた短編集である――。
※
・当方気を付けておりますが、誤字脱字を発見されましたらご遠慮なくご指摘のほど宜しくお願い致します。
・作者のストレスを発散するかのようにかなり誇張した表現で描かれておりますが、作中の人物名は超適当です。もし同姓同名の方がいらしたら申し訳ございません。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
王太子さま、側室さまがご懐妊です
家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。
愛する彼女を妃としたい王太子。
本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。
そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。
あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる