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第1幕 異世界転生失敗??? 悪霊 縄破螺編

悪霊

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「・・・・・・。」
 善朗は気になったあの黒いモヤを無意識に追いかけていた。


「あっ、善朗さんっ、ちょっと待ってっ。」
 後方では、走り出した善朗に驚き叫ぶ、乃華の声が聞こえる。


(・・・なんだ、この胸騒ぎ・・・一体あのモヤは・・・。)
 善朗はモヤを見失わないように追いかける。

 会場を後にするとそこは夜の闇が広がる世界だった。先ほどまで、煌々と光っていた街路灯がなぜか光を失っている。闇に溶け込むとおもいきや、不思議とその黒いモヤはハッキリ輪郭が分かり、後を追うことが容易だった。


「・・・・・・ッ?!」
 モヤを追いかける善朗の目線に何かが入り込む。
 その何かを認識する前に善朗の背中に物凄い寒気が走る。


(・・・なんだ、この感覚・・・。)
 その何かの視線はこちらからは分からないが、善朗をしっかりと視界に捕らえているのが異様なネットリとまとわりつく感覚で分かった。

「・・・・・・。」
 善朗はその何かが分からずも、見られていると思うと足が動かなくなった。

 その何かは雨が降る夜の道。
 街路灯が消えている電柱の影に潜んでいた。潜んでいたにもかかわらず、認識した瞬間から暗い闇の中にさらに暗いものが切り取られたかのように鮮明にそこに存在感を示していた。



「ちょっと、あなたっ!何をしようとしているのッ!」
「ッ?!」
 暗い何かに見られて金縛りにあっていた善朗に誰かが声をかけてきた。
 善朗はその声にも驚いたが、突然声をかけられたことより、自分を真っ直ぐ見ている同い年ぐらいの少女の視線に1番驚いた。少女の声に意識を戻されたからなのか、善朗を縛っていた金縛りは解ける。


「・・・えっ・・・みえるの?」
 善朗の当然の質問だった。

 真っ直ぐと自分を見るその少女に善朗はその事を聞かずにはいられなかった。少女は葬式に参列するためなのか、どこかの学校のセーラー服に身を包んでいたが、右手には少し仰々しい長い数珠が握られているというよりも巻き付けられている様に見える。どう考えても、数珠もそうだが、善朗を視認している時点で、普通のJKとはとても思えなかった。

「・・・見えるから聞いてるんですけど・・・見た感じ、あなた善朗君だよね?」
 彼女は数珠を巻きつけている右手を善朗の方に突きつけるように向けて、鋭い眼光で善朗を睨む。

「・・・そう・・・です・・・けど・・・。」
 余りの迫力に気圧されする善朗。

「・・・迷ってるなら、私が強制的に成仏させて上げましょうかっ?」
 少女はさらに右手を善朗に近づけて凄む。
 少女の行動からもこの数珠は霊に対して、有効なのだろうと推察できた。


「ちょっと待って、ちょっと待って、ちょっと待ってくださいッ!」
 少女と睨めっこしていると乃華がのぶえを連れて慌てて間に入ってきた。

「エッ?!・・・案内人がいるの?」
 少女は乃華を見るなり、案内人と分かるようだった。

 悪霊や怨霊の類だと善朗を見ていた少女だったが、乃華を見て困惑しているようだった。どうやら、魂の案内人というのは生前の善朗が知らないだけで、その業界では常識だったのだろう。

 そんな困惑しているJKの脇にスッと静かに姿を現した小さな人物がいた。


「・・・冥(メイ)姉ちゃん・・・お兄ちゃんは何も悪い事しないよ。」
「ッ?!」
 ドタバタしている善朗達の中、その少女の存在に善朗は度肝を抜かれる。
 善朗と乃華を見て困惑しているJKの袖を引っ張って、姉と呼んだのは紛れもないカシワデの少女、美々子だった。


「・・・美々子ッ・・・待合室で待ってなさいっていったでしょッ?」
 美々子に袖を引っ張られたJKこと、冥は安全な場所にいたと思っていた美々子の姿に驚く。

「・・・あっち・・・。」
 冥の驚きを他所に、美々子が先ほど善朗が見ていた闇を指差して一同を導く。



「・・・大層大勢で大歓迎してもらって・・・悪いな・・・。」
 少し離れているはずなのに、そのドロリとした低い声の男の小さな声は鮮明に善朗達の耳の中に入り込み、こびり付いた。



 暗い闇の道をその暗い男の姿をしたものが近付いてくる。

「うぅぅぅぅぅ・・・。」
「えぇえぇっぇえぇっ。」

 男が近付いてくると、微かに小さな子供達の泣き声が聞こえてくるような気がした。
 その声は雨が降っているのにも関わらず、善朗達の鼓膜をくすぐる様に響く。
 とても悲しく切なく、苦しみをはらんだ幼い声。
 一度聞いたら、耳から当分離れないような不快感があった。
 そんな男の存在が声と共に視認出来る位置にまで近づく


「ッ?!」
 善朗には一目で分かった。


 これが乃華が言っていた悪霊なのだと・・・。
 余りにも異質な存在。
 闇をそこから広げるようなどす黒い気配。
 関わってはいけない者だと深層心理が震えていた。







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