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28.優しい微睡み
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「それは大変だね。あまり話が通じない人と夜遅くまで話すなんて、すごく疲れるだろ?あなたは本当によく頑張っているよ、エドワード」
「……ありがとう」
労わるように肩を撫でると、彼は強ばっていた表情を和らげて微笑む。
「でも、国王陛下も王妃様も彼女の行動を容認なさっているとなると、今の状況を変えるのは少し難しいのか」
「あぁ。あと三週間は耐えるしかないと思う」
「俺もあなたのために何かしてあげたいな……そうだ!豊穣祭が終わるまで、放課後に学園で仮眠を取るのはどう?俺の膝で良ければ貸すよ。もし本気で寝ちゃっても、王宮から迎えが来る時間になったらちゃんと起こすし。どうかな?」
名案だ!と思いながら提案してみたところ、エドワードはアイスブルーの瞳をぱちぱちと瞬かせてから破顔した。
「うん、良い案だな。お願いするよ。私のためを思ってくれてありがとう。膝枕なんてしてもらったら、君に密かに想いを寄せている生徒たちに嫉妬されてしまいそうだ」
「誰が俺を好いてくれているとしても、俺が好きなのはあなただけだよ。人の目が気になるなら、プライベートサロンを使おうか」
「ふふ……そうだな」
エドワードが頷いてくれたので、俺たちは豊穣祭の間、放課後はプライベートサロンでゆったりと過ごすことにした。
最初のうちはガチの仮眠っていうより、膝枕していちゃいちゃしながらのんびりする日も多かったんだけど、最近は寝不足が悪化してるみたいで膝枕して頭を撫でてあげてるとすぐに眠ってしまうようになった。ストレスと寝不足で疲れ果てて、あんまり体調も良くなさそうなんだよね。本当に心配だ。
豊穣祭が終わるまで、あと一週間。
セシリアの猛攻は過激化していく一方で、昨日なんて手首をつかまれて寝台に連れていかれそうになったと言っていた。
好きになってくれないならいっそ既成事実を作っちゃおうって思ったのかな。
俺はそれを聞いたとき、腸が煮えくり返りそうになった。エドワードはそんな扱いが許される人ではないし、そもそも俺の大切な恋人だ。
苛立ちと同時にどうすることもできない歯痒さを感じながら、俺は今日もエドワードの手を引いてプライベートサロンに向かっている。
「おいで、エディ」
サロンのドアを閉めてから防音魔法をかけ、ソファーの端っこに腰掛ける。ふわふわの優しい声で呼びかけると、エドワードは少し泣きそうな顔をして近付いてきた。
彼は靴を脱いでソファーに寝転び、俺の膝に頭をそっと乗せた。星を散りばめたような髪を優しく撫でながら、もう片方の手で少し痩せてしまった頬に触れる。
「リアム……」
エドワードは甘えるように俺の手に擦り寄り、隠し切れない疲労を窺わせる顔で微笑んだ。目の下の隈は日を追う事に濃くなっていき、それがなんとも痛々しい。
「せめて俺とふたりきりのときは、安心してゆっくり休んで。何があっても俺があなたを守るから心配いらないよ」
「うん……ありがとう。リアム、愛してる」
とろりと甘い声で囁くと、エドワードは俺を見上げてあどけなく笑った。
「おやすみ、エディ。良い夢を」
慈しむような手つきで髪を撫で続けていたら、すぐに小さな寝息が聞こえてくる。あんまり眠りが深くないみたいで、物音を立てたら起こしちゃうからなるべく静かにしてないと。
寝入ってしまった恋人のぬくもりを感じながら、俺は来週提出予定のレポートの参考にするために本を読むことにした。
ちなみに、エドワードは本当に頑張り屋だから、こんなに体調悪そうなのに課題とかも全部完璧にこなしてる。
すごいと思うし純粋に人として尊敬してるけど、やっぱり自分の心と体をもっと大切にしてほしいなぁって思ったりもする。放っとくとこうやって限界まで無理するから、俺ができるだけたくさん甘やかしてあげたい。
「……ありがとう」
労わるように肩を撫でると、彼は強ばっていた表情を和らげて微笑む。
「でも、国王陛下も王妃様も彼女の行動を容認なさっているとなると、今の状況を変えるのは少し難しいのか」
「あぁ。あと三週間は耐えるしかないと思う」
「俺もあなたのために何かしてあげたいな……そうだ!豊穣祭が終わるまで、放課後に学園で仮眠を取るのはどう?俺の膝で良ければ貸すよ。もし本気で寝ちゃっても、王宮から迎えが来る時間になったらちゃんと起こすし。どうかな?」
名案だ!と思いながら提案してみたところ、エドワードはアイスブルーの瞳をぱちぱちと瞬かせてから破顔した。
「うん、良い案だな。お願いするよ。私のためを思ってくれてありがとう。膝枕なんてしてもらったら、君に密かに想いを寄せている生徒たちに嫉妬されてしまいそうだ」
「誰が俺を好いてくれているとしても、俺が好きなのはあなただけだよ。人の目が気になるなら、プライベートサロンを使おうか」
「ふふ……そうだな」
エドワードが頷いてくれたので、俺たちは豊穣祭の間、放課後はプライベートサロンでゆったりと過ごすことにした。
最初のうちはガチの仮眠っていうより、膝枕していちゃいちゃしながらのんびりする日も多かったんだけど、最近は寝不足が悪化してるみたいで膝枕して頭を撫でてあげてるとすぐに眠ってしまうようになった。ストレスと寝不足で疲れ果てて、あんまり体調も良くなさそうなんだよね。本当に心配だ。
豊穣祭が終わるまで、あと一週間。
セシリアの猛攻は過激化していく一方で、昨日なんて手首をつかまれて寝台に連れていかれそうになったと言っていた。
好きになってくれないならいっそ既成事実を作っちゃおうって思ったのかな。
俺はそれを聞いたとき、腸が煮えくり返りそうになった。エドワードはそんな扱いが許される人ではないし、そもそも俺の大切な恋人だ。
苛立ちと同時にどうすることもできない歯痒さを感じながら、俺は今日もエドワードの手を引いてプライベートサロンに向かっている。
「おいで、エディ」
サロンのドアを閉めてから防音魔法をかけ、ソファーの端っこに腰掛ける。ふわふわの優しい声で呼びかけると、エドワードは少し泣きそうな顔をして近付いてきた。
彼は靴を脱いでソファーに寝転び、俺の膝に頭をそっと乗せた。星を散りばめたような髪を優しく撫でながら、もう片方の手で少し痩せてしまった頬に触れる。
「リアム……」
エドワードは甘えるように俺の手に擦り寄り、隠し切れない疲労を窺わせる顔で微笑んだ。目の下の隈は日を追う事に濃くなっていき、それがなんとも痛々しい。
「せめて俺とふたりきりのときは、安心してゆっくり休んで。何があっても俺があなたを守るから心配いらないよ」
「うん……ありがとう。リアム、愛してる」
とろりと甘い声で囁くと、エドワードは俺を見上げてあどけなく笑った。
「おやすみ、エディ。良い夢を」
慈しむような手つきで髪を撫で続けていたら、すぐに小さな寝息が聞こえてくる。あんまり眠りが深くないみたいで、物音を立てたら起こしちゃうからなるべく静かにしてないと。
寝入ってしまった恋人のぬくもりを感じながら、俺は来週提出予定のレポートの参考にするために本を読むことにした。
ちなみに、エドワードは本当に頑張り屋だから、こんなに体調悪そうなのに課題とかも全部完璧にこなしてる。
すごいと思うし純粋に人として尊敬してるけど、やっぱり自分の心と体をもっと大切にしてほしいなぁって思ったりもする。放っとくとこうやって限界まで無理するから、俺ができるだけたくさん甘やかしてあげたい。
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