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25話 終わって、始まる
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速報、速報。私の妹は、とても可愛いツンデレだということが判明した!!
ぎゅっと私に抱きついているアイティラは、天使かと思うほどに可愛い。上目遣いに、お姉さまと言ってくるアイティラは、ものすごく可愛い。
原作では、意地悪な妹だと書かれていたけれど、それは、“ツンデレ“だから!!前世では、男子がツンデレは神だと言っていたけど、本当そうだわ。我が妹は神よ!!
ああ。こんなに可愛いのだったら、いっそ私が誘拐しちゃおうかしら?いや、ダメか。それは。
なら、よし。決めた。
私、シスコンになる!!
「お姉さま」
「お姉さま!!」
「あ、なあに?」
「本当に今まで、なにをしていらしたのですか?」
「ああ。それはね__」
私は、家出をしようと決心した理由、そして、今まで、どこでなにをしていたか。なぜ、今になって絶縁を申し込みにきたのかをアイティラに包み隠さず全て話した。ただ、妖精姫であること、そして、前世の記憶を持っていることは隠したけれど。
話し終えた後、アイティラは、顔面蒼白といった感じで、そんなことを、と一言。そして、私にまたぎゅっと抱きついてきた。
ああ。やはり。私の妹は可愛い!!あの人たちのせいでアイティラが不幸になるなんて許さない!!
よし。やっぱり私、シスコンに転身しよう!!
と固く決心した瞬間、バッターンと扉が激しく開く音がした。
「ソフィア!!帰ってきてくれたのね!!」
部屋に駆け込んできたおばさんとおじさん。おじさんの方は白毛だらけで随分とやつれている。おばさんもやつれてはいるけれど、化粧が濃い。随分と濃い。
「えっと・・・・・・誰?」
互いに抱き合っている私とアイティラを見て、目を丸くしている。
「あなたのお母さまよ!!」
ああ。お義母さまか。じゃあ、そっちのおじさんは、お父さま?
お義母さまは、アイティラをドーンと突き飛ばして、私に抱きついてくる。
「ああ!!私のために帰ってきてくれたのね!!」
ゾワッと鳥肌がたった。昔は、私には無関心で、私のことを恨んでいたはずなのに。私は、ただ、お義母さまの不満の吐口でしかなかったのに。
私は、離れていて、とアイティラに耳打ちし、正面から2人に向き合う。今まで、逃げていた分。後回しにしていた分。私は、今、彼らにちゃんと向き合わなければならない。
「お父さま、お義母さま。私と、絶縁してください」
「・・・・・・は?」
お父さまは、びっくりしていて、声も出ないようだ。お義母さまは、は?の口のまま固まっている。左目が、吊り上がっている。ピクピクしている。
「私、ラビンス王国へ行きたいんです。だから、私と、縁を切ってください」
「・・・・・・は?は、は、は。な、な、なにを言って・・・・・・」
「ラファエルさまのことは元々そこまで好きじゃないですし、私と絶縁しても、状況は今と変わらないでしょう?」
「なにを言っているのよ!?あ、あなたがいなくなったせいで、私がどんな目にあったと思っているの!?」
私が、ねえ。
「私たちが、なんで、あなたを養ってきてあげたと!?あなたがラファエルさまの、王太子さまの婚約者だからよ!?」
「・・・・・・一つだけ、勘違いしているようですが。私は、好きで、ラファエルさまの婚約者になったわけじゃないです」
「そ、それでも、あなたがラファエルさまの婚約者というのは変わりないでしょう!?」
ああ、はいはい。
「そもそも。呪い子であるあなたを、早々に殺さなかったのが悪いのよ。いいえ。あなたを産んだあの憎い女を殺しとけば・・・・・・」
「カミラ!」
「え。あ、あなた?」
「いくらお前でも、ファティマを悪くいうのは、許さない」
「あ。ち、違います。それは、言葉のあやですわ」
「そうか」
今まで、沈黙を守ってきたお父さまが、口を開いたかと思えば、私のお母さまを弁護するためなのね。お母さまの悪口は御法度なのか。私のはいいのね。
お母さま。私の、お母さま。悪役令嬢の、お母さま。顔も、声も、なにも知らない、お母さま。名前は、ファティマという。貴族だったのか。平民だったのか。なぜ、お父さまと結婚したのかは、分からない。ミアも知らないらしい。原作漫画でも、ゲームでも、映画でも。ファンブックにさえも、その情報は載せられていなかった。リュカに続く、謎の人物だ。
ただ、金色の髪の毛に、燃えるような赤い瞳の、それはそれは、とても美しい女性だったそうだ。
体は生まれつき弱かったらしく、私を産んですぐに亡くなったそうだけど。
「それで、私と、縁を切る許可を。一応、私はまだ、ライトフォード家の長女であるので」
「あ、あなたが、ラファエルさまの元へ戻ったら、私たちは元通りになれるのよ?ま、また、幸せに暮らせるのよ?」
わかっていない。わかっていない。私が、私が幸せだったのは、リュカと、ミアと、エイデンと。スイや、ライや、リーゼたちと、一緒に、あの森で、暮らしていた時だった。
たわいのない話をして、ご飯を食べて、街へ出掛けに行って。リュカに稽古をつけてもらって。リュカが、みんなが、笑っていて。
「私は、ここにいても、幸せにはなれないわ」
「王太子さまの婚約者となって、いずれは王太子妃よ?豪華な暮らしができるのよ!?」
「私を、あなたと一緒にしないで」
「なっ!?」
スゥと息を吸って、吐いて。
「私は、美しい鳥籠の中にいる、美しい鳥にはなりたくない。自由な世界で、羽ばたいていたい。籠の中の生活が、どれだけ豪華だったとしても。私は、ただ。幸せに、なりたいだけ」
そう。私は、ただ、幸せになりたい。初めは、死にたくない、それだけだったけど。でも、それでも、生きているからには、この世界を楽しまないと。幸せにならないと。前世で、できなかった分。悪役令嬢であるソフィアが、できなかった分。
「お、お父さま?」
なぜか、お父さまが、涙を流して、泣いていた。
「あ、あなた?」
お義母さまも、アイティラも、困惑している。
「そうか。そうだったな。ファティマ。あの子は、お前の、娘だったな」
「お、お父さま?」
「ファティマも、結婚するときに、言ったんだよ。自由に生きたいと。幸せになりたいだけだと」
こんなに、優しい顔をするお父さまを、私はみたことがない。こんな話を、私としたことなんて、多分、一度もない。
お母さまは、ファティマという人は、どんな人だったのだろう。お父さまに愛されて、愛されて。幸せだったのだろうか。お母さまは、私のことを、覚えてくれているのだろうか。
「いいだろう。2度と、この家の敷居を踏むんじゃない。お前は、もう、この家の娘ではない。私も、お前のことを、娘だと呼ぶことはない。お前も、私のことを父と呼ぶことはない。これからなにがあっても、お前は、1人で生きていくことになる。それでも、いいのだな?」
「ええ。もちろんです」
「そうか、わかった」
「あ、あなた!?な、なにを言っているんですか!?」
お父さまは、静かに、唱える。解消の儀式。
私と、お父さまの足元に、魔法陣ができる。魔法陣が、光って、回って、私たちを包み込む。
「これで、お前は、貴族令嬢ではなくなった。早く去れ。お前はただの平民だ。私たちと話すことも、会うことも烏滸がましい平民」
「ええ。ありがとうございました。今まで。最後に、一つだけ、質問をしても?」
「・・・・・・なんだ?」
「私の母は、幸せ、でしたか?」
お父さまは、目を見開いて、そして、ああ、と一言。
「そう。でしたか。ありがとうございました。では、さようなら」
貴族令嬢らしく、お辞儀をして、私は、前を向いて、扉に向かって、歩いていく。
後ろで、お義母さまが、いえ。カミラさまが床にへたり込んでいる。それを、多分。アイティラやセシルさまが慰めでもするのだろう。
この後、ライトフォード家がどうなっていくのかはわからない。お家没落は避けられないだろう。でも、アイティラは男爵家で生きていくだろうし、カミラさまやセシルさまは、大切なものを思い出してほしいと思う。
機会があれば、アイティラにも会いに行こう~っと。
でも、これで終わりじゃない。終わったのは、ソフィア・ライトフォードとしての終わりだ。
これは、始まりだ。私の、ソフィアとしての人生の。
ぎゅっと私に抱きついているアイティラは、天使かと思うほどに可愛い。上目遣いに、お姉さまと言ってくるアイティラは、ものすごく可愛い。
原作では、意地悪な妹だと書かれていたけれど、それは、“ツンデレ“だから!!前世では、男子がツンデレは神だと言っていたけど、本当そうだわ。我が妹は神よ!!
ああ。こんなに可愛いのだったら、いっそ私が誘拐しちゃおうかしら?いや、ダメか。それは。
なら、よし。決めた。
私、シスコンになる!!
「お姉さま」
「お姉さま!!」
「あ、なあに?」
「本当に今まで、なにをしていらしたのですか?」
「ああ。それはね__」
私は、家出をしようと決心した理由、そして、今まで、どこでなにをしていたか。なぜ、今になって絶縁を申し込みにきたのかをアイティラに包み隠さず全て話した。ただ、妖精姫であること、そして、前世の記憶を持っていることは隠したけれど。
話し終えた後、アイティラは、顔面蒼白といった感じで、そんなことを、と一言。そして、私にまたぎゅっと抱きついてきた。
ああ。やはり。私の妹は可愛い!!あの人たちのせいでアイティラが不幸になるなんて許さない!!
よし。やっぱり私、シスコンに転身しよう!!
と固く決心した瞬間、バッターンと扉が激しく開く音がした。
「ソフィア!!帰ってきてくれたのね!!」
部屋に駆け込んできたおばさんとおじさん。おじさんの方は白毛だらけで随分とやつれている。おばさんもやつれてはいるけれど、化粧が濃い。随分と濃い。
「えっと・・・・・・誰?」
互いに抱き合っている私とアイティラを見て、目を丸くしている。
「あなたのお母さまよ!!」
ああ。お義母さまか。じゃあ、そっちのおじさんは、お父さま?
お義母さまは、アイティラをドーンと突き飛ばして、私に抱きついてくる。
「ああ!!私のために帰ってきてくれたのね!!」
ゾワッと鳥肌がたった。昔は、私には無関心で、私のことを恨んでいたはずなのに。私は、ただ、お義母さまの不満の吐口でしかなかったのに。
私は、離れていて、とアイティラに耳打ちし、正面から2人に向き合う。今まで、逃げていた分。後回しにしていた分。私は、今、彼らにちゃんと向き合わなければならない。
「お父さま、お義母さま。私と、絶縁してください」
「・・・・・・は?」
お父さまは、びっくりしていて、声も出ないようだ。お義母さまは、は?の口のまま固まっている。左目が、吊り上がっている。ピクピクしている。
「私、ラビンス王国へ行きたいんです。だから、私と、縁を切ってください」
「・・・・・・は?は、は、は。な、な、なにを言って・・・・・・」
「ラファエルさまのことは元々そこまで好きじゃないですし、私と絶縁しても、状況は今と変わらないでしょう?」
「なにを言っているのよ!?あ、あなたがいなくなったせいで、私がどんな目にあったと思っているの!?」
私が、ねえ。
「私たちが、なんで、あなたを養ってきてあげたと!?あなたがラファエルさまの、王太子さまの婚約者だからよ!?」
「・・・・・・一つだけ、勘違いしているようですが。私は、好きで、ラファエルさまの婚約者になったわけじゃないです」
「そ、それでも、あなたがラファエルさまの婚約者というのは変わりないでしょう!?」
ああ、はいはい。
「そもそも。呪い子であるあなたを、早々に殺さなかったのが悪いのよ。いいえ。あなたを産んだあの憎い女を殺しとけば・・・・・・」
「カミラ!」
「え。あ、あなた?」
「いくらお前でも、ファティマを悪くいうのは、許さない」
「あ。ち、違います。それは、言葉のあやですわ」
「そうか」
今まで、沈黙を守ってきたお父さまが、口を開いたかと思えば、私のお母さまを弁護するためなのね。お母さまの悪口は御法度なのか。私のはいいのね。
お母さま。私の、お母さま。悪役令嬢の、お母さま。顔も、声も、なにも知らない、お母さま。名前は、ファティマという。貴族だったのか。平民だったのか。なぜ、お父さまと結婚したのかは、分からない。ミアも知らないらしい。原作漫画でも、ゲームでも、映画でも。ファンブックにさえも、その情報は載せられていなかった。リュカに続く、謎の人物だ。
ただ、金色の髪の毛に、燃えるような赤い瞳の、それはそれは、とても美しい女性だったそうだ。
体は生まれつき弱かったらしく、私を産んですぐに亡くなったそうだけど。
「それで、私と、縁を切る許可を。一応、私はまだ、ライトフォード家の長女であるので」
「あ、あなたが、ラファエルさまの元へ戻ったら、私たちは元通りになれるのよ?ま、また、幸せに暮らせるのよ?」
わかっていない。わかっていない。私が、私が幸せだったのは、リュカと、ミアと、エイデンと。スイや、ライや、リーゼたちと、一緒に、あの森で、暮らしていた時だった。
たわいのない話をして、ご飯を食べて、街へ出掛けに行って。リュカに稽古をつけてもらって。リュカが、みんなが、笑っていて。
「私は、ここにいても、幸せにはなれないわ」
「王太子さまの婚約者となって、いずれは王太子妃よ?豪華な暮らしができるのよ!?」
「私を、あなたと一緒にしないで」
「なっ!?」
スゥと息を吸って、吐いて。
「私は、美しい鳥籠の中にいる、美しい鳥にはなりたくない。自由な世界で、羽ばたいていたい。籠の中の生活が、どれだけ豪華だったとしても。私は、ただ。幸せに、なりたいだけ」
そう。私は、ただ、幸せになりたい。初めは、死にたくない、それだけだったけど。でも、それでも、生きているからには、この世界を楽しまないと。幸せにならないと。前世で、できなかった分。悪役令嬢であるソフィアが、できなかった分。
「お、お父さま?」
なぜか、お父さまが、涙を流して、泣いていた。
「あ、あなた?」
お義母さまも、アイティラも、困惑している。
「そうか。そうだったな。ファティマ。あの子は、お前の、娘だったな」
「お、お父さま?」
「ファティマも、結婚するときに、言ったんだよ。自由に生きたいと。幸せになりたいだけだと」
こんなに、優しい顔をするお父さまを、私はみたことがない。こんな話を、私としたことなんて、多分、一度もない。
お母さまは、ファティマという人は、どんな人だったのだろう。お父さまに愛されて、愛されて。幸せだったのだろうか。お母さまは、私のことを、覚えてくれているのだろうか。
「いいだろう。2度と、この家の敷居を踏むんじゃない。お前は、もう、この家の娘ではない。私も、お前のことを、娘だと呼ぶことはない。お前も、私のことを父と呼ぶことはない。これからなにがあっても、お前は、1人で生きていくことになる。それでも、いいのだな?」
「ええ。もちろんです」
「そうか、わかった」
「あ、あなた!?な、なにを言っているんですか!?」
お父さまは、静かに、唱える。解消の儀式。
私と、お父さまの足元に、魔法陣ができる。魔法陣が、光って、回って、私たちを包み込む。
「これで、お前は、貴族令嬢ではなくなった。早く去れ。お前はただの平民だ。私たちと話すことも、会うことも烏滸がましい平民」
「ええ。ありがとうございました。今まで。最後に、一つだけ、質問をしても?」
「・・・・・・なんだ?」
「私の母は、幸せ、でしたか?」
お父さまは、目を見開いて、そして、ああ、と一言。
「そう。でしたか。ありがとうございました。では、さようなら」
貴族令嬢らしく、お辞儀をして、私は、前を向いて、扉に向かって、歩いていく。
後ろで、お義母さまが、いえ。カミラさまが床にへたり込んでいる。それを、多分。アイティラやセシルさまが慰めでもするのだろう。
この後、ライトフォード家がどうなっていくのかはわからない。お家没落は避けられないだろう。でも、アイティラは男爵家で生きていくだろうし、カミラさまやセシルさまは、大切なものを思い出してほしいと思う。
機会があれば、アイティラにも会いに行こう~っと。
でも、これで終わりじゃない。終わったのは、ソフィア・ライトフォードとしての終わりだ。
これは、始まりだ。私の、ソフィアとしての人生の。
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