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続々・うさぎ小話
うさぎの好きなところ2
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続きをもう一話。またしても山もオチも無い、ごく短いおまけ話その2です。
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うーたんが再びソロリとケージから顔を出して探検の再出発をに取り掛かると、私達は安堵の溜息を漏らした。新しい縄張りの点検を確実に遂行しようと、鼻をヒクヒクさせて意気込む彼女のやる気漲る姿を、手に仕事の資料を持ったままボンヤリと見守っている丈さんにそっと尋ねた。
「丈さん?」
「ん?」
「丈さんはうータンのどんな所が一番お気に入り?」
「……」
『うさぎあるある』の話をしたくて何となく尋ねただけなんだけど、丈さんはその途端、最近私達(私とうータン)の前で滅多に見せなくなった凶悪な表情で悩み始めてしまった。
「レッキスのツッルツルの撫で心地……いや、唐突に『撫で』を要求する所か……?鼻の横にポツンとあるオレンジの模様も捨てがたい……」
軽い気持ちで投げ掛けたから、まさかそこまで悩むとは思っていなかった。私は慌てて丈さんの腕を掴んだ。
「丈さん。あの、そこまで悩まなくても」
「いや、今ならあれだろう!」
丈さんはキラン!と銀縁眼鏡を光らせた!(気がした)
「抜け毛の塊だ!束で抜けかけた浮いた部分をそっと引き抜いて―――フサっと纏めて抜けた時……!あれは相当、気持ちが良い!換毛期のアレは、やはりうさぎ飼いの特権だと思うんだが……」
もの凄い晴れ晴れとした笑顔を向けられて、私は耐えきれず彼の腕から手を離した……!
「……」
「卯月?」
口を抑えて涙目で震える私を、彼は訝し気に覗き込む。
とうとう耐えきれなくなった私は、横にあったクッションを引き寄せて顔を押し付けた。そうして声を殺して笑ったのだ……!
私も浮き上がった毛を摘まんで、それがスッと抜けた時には物凄く爽快な気分になる。わかる、わかる……!
そう言いたかったけど―――丈さんの表情のギャップがツボ過ぎて、言葉が出なかったのだ。笑いが収まった後その心情を説明したら、彼に微妙な表情を返された。
気分を害したのかと思い慌てて「でも可愛かったよ……!」とフォローしたら、ますます苦い物を食べたような顔になってしまった。
どうやら『可愛い』は彼にとっては褒め言葉にはならないらしい……。
何度となく心の中でそう思った事がある、と言う事実は暫く口にしないようにしようと、私はその時心に誓ったのだった。
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ちなみに上記の台詞は全て囁き声で交されました。『!』マークは大声表示では無く、気合の強さを表しています。
お読みいただき、有難うございました!
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うーたんが再びソロリとケージから顔を出して探検の再出発をに取り掛かると、私達は安堵の溜息を漏らした。新しい縄張りの点検を確実に遂行しようと、鼻をヒクヒクさせて意気込む彼女のやる気漲る姿を、手に仕事の資料を持ったままボンヤリと見守っている丈さんにそっと尋ねた。
「丈さん?」
「ん?」
「丈さんはうータンのどんな所が一番お気に入り?」
「……」
『うさぎあるある』の話をしたくて何となく尋ねただけなんだけど、丈さんはその途端、最近私達(私とうータン)の前で滅多に見せなくなった凶悪な表情で悩み始めてしまった。
「レッキスのツッルツルの撫で心地……いや、唐突に『撫で』を要求する所か……?鼻の横にポツンとあるオレンジの模様も捨てがたい……」
軽い気持ちで投げ掛けたから、まさかそこまで悩むとは思っていなかった。私は慌てて丈さんの腕を掴んだ。
「丈さん。あの、そこまで悩まなくても」
「いや、今ならあれだろう!」
丈さんはキラン!と銀縁眼鏡を光らせた!(気がした)
「抜け毛の塊だ!束で抜けかけた浮いた部分をそっと引き抜いて―――フサっと纏めて抜けた時……!あれは相当、気持ちが良い!換毛期のアレは、やはりうさぎ飼いの特権だと思うんだが……」
もの凄い晴れ晴れとした笑顔を向けられて、私は耐えきれず彼の腕から手を離した……!
「……」
「卯月?」
口を抑えて涙目で震える私を、彼は訝し気に覗き込む。
とうとう耐えきれなくなった私は、横にあったクッションを引き寄せて顔を押し付けた。そうして声を殺して笑ったのだ……!
私も浮き上がった毛を摘まんで、それがスッと抜けた時には物凄く爽快な気分になる。わかる、わかる……!
そう言いたかったけど―――丈さんの表情のギャップがツボ過ぎて、言葉が出なかったのだ。笑いが収まった後その心情を説明したら、彼に微妙な表情を返された。
気分を害したのかと思い慌てて「でも可愛かったよ……!」とフォローしたら、ますます苦い物を食べたような顔になってしまった。
どうやら『可愛い』は彼にとっては褒め言葉にはならないらしい……。
何度となく心の中でそう思った事がある、と言う事実は暫く口にしないようにしようと、私はその時心に誓ったのだった。
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ちなみに上記の台詞は全て囁き声で交されました。『!』マークは大声表示では無く、気合の強さを表しています。
お読みいただき、有難うございました!
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