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捕まりました。<亀田視点>
9.そろそろ寝ます。
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大谷がすっかり仕度を整えて、浴室から出て来た。
何となく若い女性は可愛らしいパジャマを着ているのだと想像していたのだが……大谷が纏っていたのは寝巻と言うよりは部屋着。俺と色違いのスウェット上下セットだった。多分ファストファッション店で購入したのだろう……うん、ないな。ナイナイ。大谷にその気はない……!
と心の中で何度も唱えてみる。
格好だけ客観的に見たら、熟年夫婦じゃないか。それか親子か年の離れた兄弟……親戚……だよなぁ。
けれども華奢な大谷が少し大きめのメンズっぽいスウェットを着ている所は何とも可愛らしい。色っぽさとはかけ離れているが……これはこれで。うん。
イイな。
特にだぼっとしている上着が長めになっている所とか、サイズが大きいからかズボンの裾がタプタプしている所が何とも可愛らしい。何気なく手元を見ると袖から少しだけ指先が覗いている。う……俺は末期だな。こんな色気の無い格好で萌えられるなんて、末期も末期だ。
大谷はうータンのケージに布を掛け、キッチンで腕まくりをして何か後始末の作業をし始めた。
「何か手伝うか?」
と手持無沙汰なので聞いてみる。
「あ!大丈夫です、すぐ終わりますので!」
と言って、キュッと蛇口を閉めてキッチンを拭き清めた。布巾を洗って、パンっと引っ張りタオル賭けに掛けるとちょっと手を洗ってからこちらへやって来る。
……『腕まくり』って、イイよな。
特にだぼっとしたスウェットだと手首が酷く華奢に見える。あの手首に手を伸ばして掴んだら……イヤイヤイヤ!だから駄目だっつーの!
俺は自分の欲望を強く戒める事にした。
俺は石だ……これから石になる。じっと固まって雨が降っても槍が降っても沈黙を守ろう……じゃないと、本当にどうなってしまうか分からん。ミミを飼った頃から人間の女性とのプライベートでの付き合いは避けて来た。つまり二年以上……その、ご無沙汰なのだ。以来年は取ったがまだまだ三十八歳、現役である。ましてやお風呂あがりたての良い匂いのする若い女に隣にいられては……石だっ石になるぞっ、俺は……!!
「じゃあ、電気消しますね」
そんな俺の内心の葛藤を知ってか知らずか……つーか知らねーだろうなぁ……大谷はアッサリ照明のリモコンを手に取った。
お前……覚えてろよ。
カワイさ余って憎さ百倍。散々大谷の無防備さや無邪気な言動や行動に煽られた俺は―――すっかり疲弊しきってしまった。
明日……明日以降覚えてろよ、大谷。
もうこれ以上、うさぎ仲間の仮面の下でジタバタするのは辛すぎる。勘違い野郎と笑われても構わない。これ以上意味深な態度に振り回されたら―――俺は干からびて使い物にならなくなってしまう……!
もう言ってやる。俺の気持ちを告げて―――少しでも大谷に隙があれば、押し倒してやるからな……!
……違った!『押し倒す』んじゃなくて『押して押して押しまくる』だった……!
もうすっかりその事しか考えられなくなっている頭をブンブンと振って、俺はふて寝した。
石になる……今日は石になってやる……。
だけど大谷!覚悟しておけよ……!明日は逃がさないからなっ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※2017.2.17誤字修正(まさたけ様へ感謝)
何となく若い女性は可愛らしいパジャマを着ているのだと想像していたのだが……大谷が纏っていたのは寝巻と言うよりは部屋着。俺と色違いのスウェット上下セットだった。多分ファストファッション店で購入したのだろう……うん、ないな。ナイナイ。大谷にその気はない……!
と心の中で何度も唱えてみる。
格好だけ客観的に見たら、熟年夫婦じゃないか。それか親子か年の離れた兄弟……親戚……だよなぁ。
けれども華奢な大谷が少し大きめのメンズっぽいスウェットを着ている所は何とも可愛らしい。色っぽさとはかけ離れているが……これはこれで。うん。
イイな。
特にだぼっとしている上着が長めになっている所とか、サイズが大きいからかズボンの裾がタプタプしている所が何とも可愛らしい。何気なく手元を見ると袖から少しだけ指先が覗いている。う……俺は末期だな。こんな色気の無い格好で萌えられるなんて、末期も末期だ。
大谷はうータンのケージに布を掛け、キッチンで腕まくりをして何か後始末の作業をし始めた。
「何か手伝うか?」
と手持無沙汰なので聞いてみる。
「あ!大丈夫です、すぐ終わりますので!」
と言って、キュッと蛇口を閉めてキッチンを拭き清めた。布巾を洗って、パンっと引っ張りタオル賭けに掛けるとちょっと手を洗ってからこちらへやって来る。
……『腕まくり』って、イイよな。
特にだぼっとしたスウェットだと手首が酷く華奢に見える。あの手首に手を伸ばして掴んだら……イヤイヤイヤ!だから駄目だっつーの!
俺は自分の欲望を強く戒める事にした。
俺は石だ……これから石になる。じっと固まって雨が降っても槍が降っても沈黙を守ろう……じゃないと、本当にどうなってしまうか分からん。ミミを飼った頃から人間の女性とのプライベートでの付き合いは避けて来た。つまり二年以上……その、ご無沙汰なのだ。以来年は取ったがまだまだ三十八歳、現役である。ましてやお風呂あがりたての良い匂いのする若い女に隣にいられては……石だっ石になるぞっ、俺は……!!
「じゃあ、電気消しますね」
そんな俺の内心の葛藤を知ってか知らずか……つーか知らねーだろうなぁ……大谷はアッサリ照明のリモコンを手に取った。
お前……覚えてろよ。
カワイさ余って憎さ百倍。散々大谷の無防備さや無邪気な言動や行動に煽られた俺は―――すっかり疲弊しきってしまった。
明日……明日以降覚えてろよ、大谷。
もうこれ以上、うさぎ仲間の仮面の下でジタバタするのは辛すぎる。勘違い野郎と笑われても構わない。これ以上意味深な態度に振り回されたら―――俺は干からびて使い物にならなくなってしまう……!
もう言ってやる。俺の気持ちを告げて―――少しでも大谷に隙があれば、押し倒してやるからな……!
……違った!『押し倒す』んじゃなくて『押して押して押しまくる』だった……!
もうすっかりその事しか考えられなくなっている頭をブンブンと振って、俺はふて寝した。
石になる……今日は石になってやる……。
だけど大谷!覚悟しておけよ……!明日は逃がさないからなっ!
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※2017.2.17誤字修正(まさたけ様へ感謝)
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