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捕獲されまして。<大谷視点>
26.そう言う事です。
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「……と、いう訳なんです」
ペロリと亀田課長に購入していただいたオムライスを平らげ、温かいお茶を啜って落ち着いた私は、テーブルを挟んで向かい合う彼にこれまでの経緯を掻い摘んで説明した。勿論以前食堂で三好さんが課長に関して語った事や、私が勝手に推測している彼女の微妙な心理には触れなかった。ただ自販機の傍で話を聞いていたらしい彼女にバッタリ出くわした事実と、その日の帰りに彼女にお茶に誘われ問い詰められ、私が咄嗟についてしまった嘘についてだけ。つまり表面的な事しか語っていない。
「そうか……」
声は重く深刻な表情に見えるけれど、既に胡坐を掻いて座る亀田の左横にはその大きな手で撫でられデローンと長く体を伸ばすウサギが寄り添っている。いつもは夕飯を食べ終わってからケージから解放しているのだが、カツサンドを速攻で平らげソワソワしてケージを気にしている亀田を放置する事が出来なかったのだ。しかし立派なスーツのズボンにウサギの毛が付いてしまうのは、全く気にならないのかね?上着はハンガーに掛けて避難済みなんだけれども。かと言って私の部屋着を提供する気にはなれない、どうせサイズも合わないしね。
「俺は別に構わないぞ、ウサギ好きだとバレたって」
「え?」
「と、言うかどうでも良くなって来た。以前はそんな事バラしたら気味悪がられるだろうと思って敢えて口には出さなかったんだが―――気味悪がられようと何しようと……どっちにしろ、俺のミミはもうこの世にいないんだし」
「……課長……」
自嘲気味に呟く亀田。強がってはいるものの、全く吹っ切れていないのが見え見えだった。何だか自棄になっているように見える。
「全然平気そうに見えないんですけど。やっぱりミミの事話題にされるのはまだ辛いんじゃないですか?うータンが傍に居ない状況でミミの話するのって、厳しそう」
「……っ」
亀田が辛そうに眉を顰める。きっと図星だったんだろう。ミミの事を口に出す行為は、まだ痛みを伴うように見える。忙しなくうータンの白い毛皮を撫でる仕草で、何となくそれが伝わって来る。
それにしても、私も言うようになったもんだ。
前回『自分だって、相当おかしいって自覚ありますか』なんて暴言を吐いてしまって、それを聞いた亀田が馬鹿笑いした。それ以来、亀田と話す時に感じていた遠慮や緊張なんかが、吹き飛んでしまったような気がする。
しかし元はと言うとこの話の主眼は、私のやらかしちゃった事をどうするかって事であって、ドヤ顔で亀田を諫めたって何も解決はしないのだ。まさに八方塞がり、どうしようもない。それとも不審に思われても頑なにこれ以上情報を出さないよう努めるか。更に嘘を上塗りしないよう、三好さんを避け続けるとか……同じ課では難しいかなぁ。三好さんが亀田課長に直接尋ねるかもしれないし。そうなれば亀田課長にも嘘を吐かせなければならなくなる。
「でも初対面の女の子を『うータン』呼びしているって状況も……違和感ありまくりですよね。そっちの方が課長のイメージダウンが大きそう」
私が溜息を吐くと、亀田課長は何食わぬ顔で首を捻った。
「別に俺の『イメージ』が地に落ちたって問題はないがな。元々そんなに他人によく思われるような人間でも無い。女扱いは下手だし、人に気を使える人間でも無い。会社内で俺をよく思っている人間の方が少ないくらいだ。商品イメージに泥を塗るような事があるなら別だが―――今ほとんど外回りに出ない俺が若い女に振り回されているらしい……くらいの噂で、仕事に何か影響があるとは思えん。既婚者でも無いし」
「ええと、それはそうかもしれませんが―――対外的にって言うより、課内的にまずくないですか?ほら、三好さんの期待を裏切ってしまうのは……」
「?―――別に三好はそんな事は気にしないだろう?仕事に関わる事でも無いし、俺が残念な人間かどうかって事を、奴がそんなに気にするとは思えん」
ムムム……亀田課長は本人も自覚している通り、やはり女心に疎いのだろう。何処までの気持ちかは分からないが、三好さんが亀田課長に憧れの気持ちを持っていて、理想の上司、若しくは男性だと神聖視しているのは確実だろうに。だけど三好さんの乙女心(?)を私見で勝手に解説するのも、何だか気が引けるしなぁ。ハッキリ明言された部分は少ないし、何より暴露しているみたいで嫌だ。
「元々アイツ等……目黒と三好は俺の事を『コワモテ冷徹銀縁眼鏡』なんて陰で言って笑っているくらいだからな」
ムスッと横を向く亀田課長を見て、私はちょっと目を細めた。
「何ですか?それ……『コワモテれいてつ……』?」
「『コワモテ冷徹銀縁眼鏡』それが俺の渾名らしい―――お前は知らないのか」
ブッと私は思わず噴き出してしまった。
「それ……渾名ですか?確かに課長は『銀縁眼鏡』ですけど」
そうそう、私も確かに『あの強面』とか『銀縁冷徹眼鏡』って心の中で亀田を呼んでいた。皆やっぱり考える事は同じなんだなぁ。しかしピッタリ過ぎる……ククク……『コワモテ冷徹銀縁眼鏡』……ちょっと長いけど、なんてシックリ来る渾名なんだろう。
「おい、口が笑ってるぞ」
低い声に、咄嗟に私は片手でパッと口を塞いで誤魔化そうとした。
「別に『ピッタリ』なんて思っていませんよ……!」
「思ってるんだろうが」
憮然と呟く亀田が面白い。チャラいイメージについてはあまり気にしていないようだけど、『コワモテ冷徹銀縁眼鏡』は気になるのか。図星と言うか似合い過ぎているから嫌なのかな。
「まあ……よくよく考えるとこうして付き合ってもいない『若い女性』の家に上がり込んでいる状況が既に、知り合って間もない相手を渾名呼びしている事よりよっぽど微妙な話題かもしれないな」
少し冷静になった様子の亀田は考え込むようにそう言った。
やっと……やっと、その事に気付いてくれたか……!
遅過ぎるけどね!そもそも私の事『若い女性』って認識しているって事実に驚いちゃうな。これまでのその『若い女性』に対する遠慮の無さは、何だったんだって言いたくなる。まあ、ウサギ欠乏症でボロボロのズタズタでおかしくなっちゃったから、常識とか吹っ飛んでしまったのかもしれないけれど。
それにキリっと真面目顔で整然と話をしているようだけど―――左手でウサギを堪能するのは止められないみたい。何処かずれてるんだよなぁ、この人。職場ではちゃんとしているのに。
しかし亀田の言う事は、尤もだと思った。
「そうですね、ウチに遊びに来ている事を知ったら余計に三好さん―――ショックを受けるかもしれません」
「何故三好がショックを受けるんだ?呆れるならまだしも」
「それは―――ええと」
亀田課長、やっぱ全然三好さんの気持ちに気が付いて無いんだな。
私は何と言って続けて良いか分からなくなった。だから「あ、そう言えば」と言って「今日うータンのブラッシングしようと思っていたんですけど……課長やってみます?」と話を逸らした。
「え?いいのか?」
案の定パッと表情を明るくした亀田に、余計な毛を服に着けないようにいつも用意しているうータン専用のバスタオルとプラスチックコームを渡すと「おっ、やっぱレッキス種は手触りが違うな……」などと言いつつ喜々として毛づくろいに挑戦し始めた。
うーん、チョロイ。
仕事でもこうだと楽なんだけどな。
ペロリと亀田課長に購入していただいたオムライスを平らげ、温かいお茶を啜って落ち着いた私は、テーブルを挟んで向かい合う彼にこれまでの経緯を掻い摘んで説明した。勿論以前食堂で三好さんが課長に関して語った事や、私が勝手に推測している彼女の微妙な心理には触れなかった。ただ自販機の傍で話を聞いていたらしい彼女にバッタリ出くわした事実と、その日の帰りに彼女にお茶に誘われ問い詰められ、私が咄嗟についてしまった嘘についてだけ。つまり表面的な事しか語っていない。
「そうか……」
声は重く深刻な表情に見えるけれど、既に胡坐を掻いて座る亀田の左横にはその大きな手で撫でられデローンと長く体を伸ばすウサギが寄り添っている。いつもは夕飯を食べ終わってからケージから解放しているのだが、カツサンドを速攻で平らげソワソワしてケージを気にしている亀田を放置する事が出来なかったのだ。しかし立派なスーツのズボンにウサギの毛が付いてしまうのは、全く気にならないのかね?上着はハンガーに掛けて避難済みなんだけれども。かと言って私の部屋着を提供する気にはなれない、どうせサイズも合わないしね。
「俺は別に構わないぞ、ウサギ好きだとバレたって」
「え?」
「と、言うかどうでも良くなって来た。以前はそんな事バラしたら気味悪がられるだろうと思って敢えて口には出さなかったんだが―――気味悪がられようと何しようと……どっちにしろ、俺のミミはもうこの世にいないんだし」
「……課長……」
自嘲気味に呟く亀田。強がってはいるものの、全く吹っ切れていないのが見え見えだった。何だか自棄になっているように見える。
「全然平気そうに見えないんですけど。やっぱりミミの事話題にされるのはまだ辛いんじゃないですか?うータンが傍に居ない状況でミミの話するのって、厳しそう」
「……っ」
亀田が辛そうに眉を顰める。きっと図星だったんだろう。ミミの事を口に出す行為は、まだ痛みを伴うように見える。忙しなくうータンの白い毛皮を撫でる仕草で、何となくそれが伝わって来る。
それにしても、私も言うようになったもんだ。
前回『自分だって、相当おかしいって自覚ありますか』なんて暴言を吐いてしまって、それを聞いた亀田が馬鹿笑いした。それ以来、亀田と話す時に感じていた遠慮や緊張なんかが、吹き飛んでしまったような気がする。
しかし元はと言うとこの話の主眼は、私のやらかしちゃった事をどうするかって事であって、ドヤ顔で亀田を諫めたって何も解決はしないのだ。まさに八方塞がり、どうしようもない。それとも不審に思われても頑なにこれ以上情報を出さないよう努めるか。更に嘘を上塗りしないよう、三好さんを避け続けるとか……同じ課では難しいかなぁ。三好さんが亀田課長に直接尋ねるかもしれないし。そうなれば亀田課長にも嘘を吐かせなければならなくなる。
「でも初対面の女の子を『うータン』呼びしているって状況も……違和感ありまくりですよね。そっちの方が課長のイメージダウンが大きそう」
私が溜息を吐くと、亀田課長は何食わぬ顔で首を捻った。
「別に俺の『イメージ』が地に落ちたって問題はないがな。元々そんなに他人によく思われるような人間でも無い。女扱いは下手だし、人に気を使える人間でも無い。会社内で俺をよく思っている人間の方が少ないくらいだ。商品イメージに泥を塗るような事があるなら別だが―――今ほとんど外回りに出ない俺が若い女に振り回されているらしい……くらいの噂で、仕事に何か影響があるとは思えん。既婚者でも無いし」
「ええと、それはそうかもしれませんが―――対外的にって言うより、課内的にまずくないですか?ほら、三好さんの期待を裏切ってしまうのは……」
「?―――別に三好はそんな事は気にしないだろう?仕事に関わる事でも無いし、俺が残念な人間かどうかって事を、奴がそんなに気にするとは思えん」
ムムム……亀田課長は本人も自覚している通り、やはり女心に疎いのだろう。何処までの気持ちかは分からないが、三好さんが亀田課長に憧れの気持ちを持っていて、理想の上司、若しくは男性だと神聖視しているのは確実だろうに。だけど三好さんの乙女心(?)を私見で勝手に解説するのも、何だか気が引けるしなぁ。ハッキリ明言された部分は少ないし、何より暴露しているみたいで嫌だ。
「元々アイツ等……目黒と三好は俺の事を『コワモテ冷徹銀縁眼鏡』なんて陰で言って笑っているくらいだからな」
ムスッと横を向く亀田課長を見て、私はちょっと目を細めた。
「何ですか?それ……『コワモテれいてつ……』?」
「『コワモテ冷徹銀縁眼鏡』それが俺の渾名らしい―――お前は知らないのか」
ブッと私は思わず噴き出してしまった。
「それ……渾名ですか?確かに課長は『銀縁眼鏡』ですけど」
そうそう、私も確かに『あの強面』とか『銀縁冷徹眼鏡』って心の中で亀田を呼んでいた。皆やっぱり考える事は同じなんだなぁ。しかしピッタリ過ぎる……ククク……『コワモテ冷徹銀縁眼鏡』……ちょっと長いけど、なんてシックリ来る渾名なんだろう。
「おい、口が笑ってるぞ」
低い声に、咄嗟に私は片手でパッと口を塞いで誤魔化そうとした。
「別に『ピッタリ』なんて思っていませんよ……!」
「思ってるんだろうが」
憮然と呟く亀田が面白い。チャラいイメージについてはあまり気にしていないようだけど、『コワモテ冷徹銀縁眼鏡』は気になるのか。図星と言うか似合い過ぎているから嫌なのかな。
「まあ……よくよく考えるとこうして付き合ってもいない『若い女性』の家に上がり込んでいる状況が既に、知り合って間もない相手を渾名呼びしている事よりよっぽど微妙な話題かもしれないな」
少し冷静になった様子の亀田は考え込むようにそう言った。
やっと……やっと、その事に気付いてくれたか……!
遅過ぎるけどね!そもそも私の事『若い女性』って認識しているって事実に驚いちゃうな。これまでのその『若い女性』に対する遠慮の無さは、何だったんだって言いたくなる。まあ、ウサギ欠乏症でボロボロのズタズタでおかしくなっちゃったから、常識とか吹っ飛んでしまったのかもしれないけれど。
それにキリっと真面目顔で整然と話をしているようだけど―――左手でウサギを堪能するのは止められないみたい。何処かずれてるんだよなぁ、この人。職場ではちゃんとしているのに。
しかし亀田の言う事は、尤もだと思った。
「そうですね、ウチに遊びに来ている事を知ったら余計に三好さん―――ショックを受けるかもしれません」
「何故三好がショックを受けるんだ?呆れるならまだしも」
「それは―――ええと」
亀田課長、やっぱ全然三好さんの気持ちに気が付いて無いんだな。
私は何と言って続けて良いか分からなくなった。だから「あ、そう言えば」と言って「今日うータンのブラッシングしようと思っていたんですけど……課長やってみます?」と話を逸らした。
「え?いいのか?」
案の定パッと表情を明るくした亀田に、余計な毛を服に着けないようにいつも用意しているうータン専用のバスタオルとプラスチックコームを渡すと「おっ、やっぱレッキス種は手触りが違うな……」などと言いつつ喜々として毛づくろいに挑戦し始めた。
うーん、チョロイ。
仕事でもこうだと楽なんだけどな。
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