捕獲されました。

ねがえり太郎

文字の大きさ
上 下
279 / 375
新妻・卯月の仙台暮らし

3.持て余しています。

しおりを挟む
 暇を持て余した私は現在、ネット社会に暮らしています。と言うか部屋でネット探索ばかりしています。うータン不足でうさぎ日照り。失われたうさぎ成分を求めてうさぎ画像を検索する日々なのです。



「はわぁ……かわいい……」



 溜息が出るほど可愛らしい写真の数々に、思わず独り言を口走ってしまうくらいです。特に成兎になる前の子うさぎ達がっ……!もーあの愛くるしさが溜まりません!あっ見ているだけでヨダレが……。
 大人になったうータンも変わらず可愛らしいし魅力的だけど、やはり大人になる前の小振りな子は最高に可愛い!これってほぼ、ぬいぐるみじゃない?!うわーん、可愛いよぉ。ツルツルあの柔らかな毛並みを触りたいよ~!

 うさぎ成分を渇望している私は、まるで若い女子高生を眺めて目を細めるオジサンのようにジロジロと子うさぎの画像を眺める。しかしその傍ら、チラリとうータンのケージに視線を向けたりもします。たぶんハタから見たらその光景は、キッパリ振られたのに未練がましく彼女をチラ見する元カレのようなもの。こうやって他所ヨソの子を褒めていたら、ひょっとして嫉妬とかしてくれないかな?……なんて半分くらいは思ってしまうんだ。残り半分はもちろん、ただ単に本当にうさぎ画像が可愛い!って心の叫びなんだけど。

 いいなぁ、いいなぁ……!

 膝に乗せたり、抱っこしたり。ナデナデしてうっとりセクシーポーズして貰ったり……!最近全然して貰ってないよ……!せめてあのシットリとしてそれでいてツルっとしたレッキスの毛並みをひと撫でしたい。でもでもうータンに無理はさせたくないし、うータンがこの環境に慣れるのが先決だし……。と言う訳で悶々とした日々を過ごしているのです。

 うさぎ飼いさん達のブログを眺めていると、雑誌で見るよりずっと彼等の生活が近く感じられる。私はおじいちゃん以外のうさぎ飼いと接触したことが無かったから、意外とこれが新鮮な感覚だった。おじいちゃんちは昔ながらの飼い方……と言うか、どっちかと言うと小学校のうさぎ小屋で飼育しているようなイメージで、つまりうさぎはうさぎの社会があって、その場所と環境をおじいちゃんが提供しているって状態。改めて考えると、本当はそれぐらいの距離がうさぎにとっては幸せなのかも?とも思う。何より土に触れて日に当たり、風にそよそよ吹かれる暮らしって自然に近くて彼等の健康に良さそうだ。

 だけどそうは言っても、やっぱりこうして触れ合う距離で暮らすって言うのは楽しいんだよね。独り暮らしの時は本当に私はうータンに依存していた。救われたって言ってもおかしくないかも。もし彼女がいなかったら、ひょっとして心折れて潰れてしまうこともあったかもしれない。だから一緒に暮らした経験を有難く思っても、後悔はしていない。うータン自身はもし一度外暮らしを経験したら、そっちの方が断然良い!って訴えて来るかもしれないけれど。

 実際はうさぎ小屋を庭に作れる環境を手に入れるのって都会では大変なことだし、部屋でケージ飼いするは普通だと思う。だからこそ、その制約の中で出来るだけ良い環境を提供したいと思っているんだ。
 ブログを投稿している人達は、私と同じように飼っているうさぎのことを家族のように思っている人が多い気がする。食事とか運動場の工夫とか目から鱗が落ちるようなものもあるし、病気になった子や高齢で動けなくなった子のお世話に苦労しつつも愛情を持って接している様子が見て取れたり。もうこれは家族だよね、なんて画面を見ながら思わず頷いてしまう。
 おじいちゃん世代とペットとの距離感が違うのは、現実的な距離の近さが心の近さになっている所為だろうか?それともただ単に、時代が変わったと言うことなんだろうか?……なんてことをつらつら考えて過ごしていたら、ムクムクと衝動が湧き上がって来た。

 私もこんなブログを作りたい!そして可愛いうータンの写真をお披露目したい……!
 寂しく暇を持て余していた私は―――なんと、見ているだけでは飽き足らす先日思い余ってうさぎブログを開設してしまったのです……!

 だってホントに暇なんだもん。

 でもブログの写真は、ほぼ全て布を被せた四角いケージで埋められていて―――いつになったら他のうさぎ飼いさん達のように、正しいうさぎブログの形態に辿り着けるのだろうか、と遠い目をしてしまう。……せめてうータンの全身が写った写真をアップしたい。それが今のところの目標です。目標、低っ……!






 そんなこんなで何となく自宅に引き籠り気味になっていた私なのだけれど、引越の時持参したうータン用のペレットと牧草のストックがそろそろ底をつきそうな気がしたので、ペットショップに買い出しに行くことを思い立った。

 見たカンジまだまだ大丈夫そうなんだけど、うさぎごとに好みが別れるから前もってお試しでいろいろ買って試してみないと食べて貰えるかどうか分からない。だから早めに行動しないといけないのだ。もし近くのお店でうータン好みの餌が手に入らなかったらネットショップで手に入れるしかない。だけど私はなるべくお店で飼いたいのだ。
 だってね。宅配とか郵送で買い物をすると……なぜかそう言う時に限って「あ!あれ買わなきゃ!」とか思い着いて出掛けちゃったりするのよ、ホントなんでだろう?そんなうっかりで配達員さんに再配達して貰うのが申し訳ない。最近人手不足だって聞いているし。
 あとそう!包装の段ボールの処理がなにげに負担なの。無料で回収して貰えるものだけど収集日をうっかり逃して溜め込んじゃうことが多かった。全部自分がしっかりしていないのが悪いんだけど―――なかなかそう言うのが治らないので、結局店頭購入が基本になってしまった。

 と言うことで、まずスマホで市内のペットショップを検索する。

 ……えーと、近くのショッピングモールにも結構大きな店舗があるみたい。あ、ホームセンターも駅前にあるからペット用品が買えるな。うーんでも今うータンが食べているペレットはあんまり一般的なお店には置いて無いんだよね。

 検索方法を『うさぎ 牧草 餌……』と変えてみる。するとずらっと新しいリストが現れた。

 あれ?うさぎの専門店がある、しかも街なかだ。これなら歩いて行けそう!

 これって結構私にとって重要!実はママが使っていた車を譲ってくれたんだけど、私は自動車の免許を持っていない。だから公共交通機関と徒歩で、気軽に通える範囲に購入場所がある方が助かるのだ。本当は丈さんの休みに合わせて一緒に車で行った方が荷物もたくさん運べるんだけど……どんなお店なのかやっぱり雰囲気を見てみたいから、まずは私一人で偵察に行こうかな?

 ……うん、そうしよう!

 目的があると、やる気が違う。それにうさぎ専門店って、ひょっとしてひょっとしなくてもお店の中はうさぎだらけってことだよね?触るのは無理でも近くで眺めることはできるかもしれない。……クフフ、なんだか楽しみになって来た!



 よーし、うさぎ成分たっぷり補充しまくるぞ~!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

選ばれたのは美人の親友

杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

私が死ねば楽になれるのでしょう?~愛妻家の後悔~

希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令嬢オリヴィアは伯爵令息ダーフィトと婚約中。 しかし結婚準備中オリヴィアは熱病に罹り冷酷にも婚約破棄されてしまう。 それを知った幼馴染の伯爵令息リカードがオリヴィアへの愛を伝えるが…  【 ⚠ 】 ・前半は夫婦の闘病記です。合わない方は自衛のほどお願いいたします。 ・架空の猛毒です。作中の症状は抗生物質の発明以前に猛威を奮った複数の症例を参考にしています。尚、R15はこの為です。

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

【完結】捨てられ正妃は思い出す。

なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」    そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。  人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。  正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。  人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。  再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。  デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。  確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。 ––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––  他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。  前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。  彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。  

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

処理中です...