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・後日談 俺とねーちゃんのその後の話のおまけ1・

結婚しました <清美> (★)

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主人公・清美視点のおまけ話を投稿します。

後日談『結婚しようよ』の翌朝のお話です。以前別作品として投稿していた作品を改稿しました。かなり大人っぽい表現がありますので苦手な方は閲覧を回避していただくようよろしくお願い致します。規定内容まで至らないとは思いますが、念のためR15設定と致します。

※なろう版と一部内容が異なります。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


寝てしまった―――!



気付いたら結婚式の翌日だった。
両親が用意してくれた、駅に併設されたタワーホテルの34階スイートルームの1室。2つあるベッドはどちらもゆうに2人分眠れるスペースがあるくらい大きかった。

体を起こすと、羽毛布団が俺の隣だけポッコリと膨らんでいる。

寄り添うように膨らんだそこには……幸せのカタマリが詰まっているハズ。その膨らみに布団の上から頬を寄せると、静かに息づいている気配が伝わって来た。
そっと布団を捲り覗き込む。昨日は随分無理をして疲れたであろう……グッスリと熟睡してスヤスヤと寝息を立てている彼女の、プリッとした大福のような頬にそっと唇を寄せてから―――のっそりとベッドを這い出した。



「うお……すげー……」



ベッドルームに直結したバスルームはとにかく広かった。
ドアを開けると正面一面が鏡張りの洗面台だった。左手に丸みを帯びだバスタブが有り、左手にはガラス扉でそれぞれ区切られたトイレとシャワー室がある。

「なんつー贅沢な造りだ」

昨日潰れてしまわなければ……ひょっとしてこの浴槽でのんびりイチャイチャ出来たんじゃないだろうか……?!
妄想がモヤモヤと湧いて来てしまい、思わずプルプルと首を振った。

「とりあえず風呂だ」

乱暴に服を脱ぎ捨てシャワールームに飛び込む。頭からお湯をザっと浴びて備え付けのソープで頭と体をガシガシ洗った。バスローブを羽織りタオルで頭を拭いつつ歯ブラシで歯を磨くと―――やっと幾分スッキリして生き返った心地を取り戻した。

昨日は先に浴室に入った彼女を待っている内に意識を失ってしまった。
何故頼み込んで一緒に浴室に入らなかった……!と自分を責めるが、今更だ。






北海道神宮で神前結婚式を挙げた後、ホテルで親族だけのディナーに向かった。続けてススキノで結婚祝賀会という名の飲み会を経て―――そして、素晴らしい夜景が見下ろせるタワーホテルのスイートルームへ辿り着いた……のに。

ショックだ。―――せっかくの初夜(比喩では無い)を不意にしてしまった。

飲み過ぎ&寝落ち。最後まで残念過ぎる男、それが俺だ。
ハハハ……。乾いた笑いしか出てこない。



結婚祝賀会の参加者に囲まれて、しこたま酒を飲まされた。きっと明らかに意図を持ってそうしたのだろう―――その意図通り潰されてしまった自分に腹が立つやら悔しいやら。

高坂先輩と王子。
この2人にはこれでもかという程、強い酒を押し付けられた。

普通、新郎にテキーラ一気飲みを勧めるか?!
明らかに『お祝い』では無く、単なる『虐め』だろう。

だけど受けて立たない訳には行かない。そして正面から対峙した結果―――この有りさまだ。相手の望んだ(呪った?)通りの結果になっちまった。

苛立ちを籠めて更にガシガシと強めに頭を拭いながら、ベッドへ戻る。
けれども柔らかな大福のような膨らみが目に入ると、苛立ちは一瞬で吹き飛んだ。タオルを肩から掛けたままベッドに上がり、その膨らみを羽布団ごと包み込むように抱きしめた。



この光景には覚えがある……既視感の元を伝って行くと、ある記憶に辿り着いた。晶が東京の大学に合格して、札幌を離れる少し前に家族四人で言った定山渓温泉。大福みたいに膨らんだ布団の中に―――愛しい彼女が居た。
あの時かーちゃんの豪快な寝言に邪魔されなければ、最後まで触れる事が出来たかもしれない。
未遂で終わった触れ合いから4年。2年前に彼女を追い掛けて東京へ行き思いを通じ合わせた迄は良かったが―――父親との男同士の約束を破れなかった俺は、煩悩を抑えあらゆる艱難辛苦を乗り越えて……昨日と言う日、漸く『彼女に触れる権利』を獲得したのだと言うのに。



今すぐ目を覚ましてほしい。だけどこのまま柔らかい温かさを堪能し続けるのも、贅沢だなぁ……と思う。彼女のフクフクとした幸せな眠りを妨げるのも―――何だか勿体無いような気がしてしまう。



すると俺の気持ちを汲んだように。
頬を寄せて堪能していた温かな膨らみが、モゾモゾと身じろぎをし始めた。

羽毛布団の端っこから、寝惚けまなこの小さな頭がピョコリと飛び出して。
大きな黒曜石の瞳が―――何度かパシパシと瞬きを繰り返し何かを探す様に彷徨った。そしてピタリと俺の顔の上で、彷徨っていた視線が止まる。

ギュッと鷲掴みされたように、胸がドキンと大きく跳ねた。俺を見つけた彼女が―――パッと華が咲いたように微笑んだからだ。それから晶はふわぁ、と欠伸をしそうになって小さな掌で口を塞ぐ。目尻に涙の粒を浮かべたまま、ほにゃりと笑った。

「おはよ」

黒曜石の瞳がウルウルしてとても綺麗だ。

「おはよう」

俺はそのぷるりとした唇にチュッと吸い付いた。
顔を離すと……頬に朱みが差している様子が見て取れて、胸が躍ってしまう。

「具合……どう?」

頬を染めながらも、心配そうに彼女は俺の顔を見上げた。

「うん、大丈夫。……昨日ゴメンね、酔っぱらっちゃって」
「ううん。元気なら良かったよ」

初夜に寝落ちしてしまった残念な夫に対して、彼女は何と優しい言葉を掛けるのだろう。

「ねーちゃん、優しい……」

あ、嬉しさの余り呼び名が戻ってしまった。

頭の端でそれに気が付いたけれども流れを止める余裕は最早残っておらず、俺は彼女の唇をんだ。ちゅっちゅっと軽く角度を変える。最初は優しく啄み―――徐々に深く、噛みつくように唇を合わせる。

「……き、きよみ……ちょっと待って、んぅ……」
「ん……」

制止の声に、返事をする余裕も無い。吐息だけで答えて、ただ貪る事だけに集中する。砂漠をうろついた先に辿り着いたオアシスで、水を貪るように晶の柔らかい唇を味わった。

ここに辿り着くまで―――本当に長かった。

昨日神宮の廊下で晶の白無垢姿に撃ち抜かれてから、ずっと自分を持て余したまま……親族のみの食事会を終え、続いて友人の祝賀会に出席した。念願かなってスイートルームに到着したのに―――晶がお風呂に入っている間に俺は寝入ってしまっていたのだ。ペットボトルの水を飲み干し、かろうじて服を脱ぎ捨てボクサーパンツ一枚でベッドに倒れ込んだまでは覚えているのだが。

本当は、一緒にお風呂に入りたかったんだよな。
ちょっとその提案を口にしてみたら、真っ赤になってブンブン首を振って拒否されちまった。

そこで記憶が途切れている……目を覚ましたら朝だった。

きちんと布団を被ってベッドに納まっている自分にガックリ来た。
姉に恋をしていると自覚したのは中1の時。それから10年、様々な困難と距離を乗り越えて―――やっとここまで辿り着いたのに結果が―――『寝落ち』。

だけどずっと抑えて来た欲望を、解禁できる日がやっと訪れたんだ……!『待て』と言われて待てる訳が無い。

「あの……んっ、ぷはっ……清美っ!」

俺が一瞬息継ぎをした瞬間に逃れた唇から、溺れそうになった人みたいに大きく息を吸って晶が小さく叫んだ。

「その、朝ごはんの時間とか……」
「まだ6時だよ、大丈夫」

真顔で答えてから、額に吸い付いた。吸い付いた対象から「ひゃっ」と驚いた声が上がる。
気の所為せいだろうか―――なんだか甘いように感じるのは。
布団の中に手を伸ばして、パジャマ越しに晶の柔らかい体に触れた。お腹の辺りにからゆっくりと手を這わせると、ふやっと奇跡のように柔らかい感触に辿り着いた。

「……!……」

吃驚したような顔で俺を見るから、おかしくなって笑ってしまう。

「清美……あのっ……汗かいたから……」

視線を彷徨わせてシドロモドロになっているのが、ますます可愛い。俺は意地悪くニヤリと笑った。

「昨日お風呂入ったでしょ?」
「んっ……でも顔も洗ってない……し……」

そう言って、起き上がろうとする晶の体を体重を掛けて注意深く抑え込んだ。
それから気付かれないようにパジャマのボタンをそっと外し始める。うん、ボタンはちょうど良い堅さで外しやすい。

「大丈夫、綺麗だよ。美味しかったし」
「なっ……嘘―――清美、変な事言わないで~!」

真っ赤になってジタバタ暴れる彼女が、可愛くて仕方が無い。唇に気を取られていた所為か、幸い俺がパジャマのボタンを全部外してしまった事には気付いていないらしい。達成感に思わず口元が緩む。無駄に発達した運動神経と器用さが―――今初めて役に立ったような気がした。

「『変な事』って……正直に言っただけなんだけどなー」

俺がとぼけると、ムゥっと口をひき結んで睨みつけて来る。

全く迫力が無いって、分ってるのかな?

どんなに睨まれたって嫌われていないって言う前提があれば、ワクワクさせられるだけなのに。逆にもっと揶揄って困らせたくなる。

俺はニンマリ笑った。
笑った理由に見当が付かないのか、晶は少し肩透かしを食ったような表情で目を丸くした。

「汗かいたんだ?」
「うん、だからシャワー……」
「ちょっと確認させて」
「え」

触れていた手を外したついでに、ガバっと晶を守っていた羽毛布団をはぎ取った。
瞬発力皆無の晶は、一瞬何が起こったか分かっていなかったようだ。ポカンと固まったまま、ボンヤリと自分の体を見た。

次の瞬間。

「きゃー!」

と叫んで、ホテル備え付けのツルツルした白いパジャマの前を掻き合わせた。
そしてクルリと俺から背を向けて、布団に突っ伏してしまう。

「いっいつの間に~~!?」
「器用でしょ?」

思春期真っ盛りの弟の目の前でタンクトップ一枚で目の前をウロウロしていたくせにね、と俺はかつての苦い片想い時代を思い起こす。
付き合う事になってから羞恥心を覚え始めた彼女は―――薄着で俺の目の前を歩き回る事を止めてしまった。特に東京まで俺が追いかけて行った後の守りディフェンスの堅さったら、インハイのトップチーム並み……いやそれ以上だった。

きっと再会した日にグイグイ迫ったから警戒させちゃったんだよね。
確かにコワーイ父親の制止があっても、目の前の恋人の守りが緩ければ俺のグズグズの自制心はアッサリ崩壊していただろう。

でも俺は鉄(?)の意志で、血の涙を流しながら約束を守ったんだ。

今更彼女が恥ずかしかろうが、泣こうが止めるつもりは無い。……いや、流石に泣かれたら止めるけど……もう結婚式も上げたし、恋敵の洗礼もクリアしたんだ。この日の為に色々勉強もした。センパイ達にこっそり教えを乞い、出来る限り晶に優しく出来るよう準備はした。……実践経験は積んでないから自信満々とは言えないけど……。

そう、もう夫婦なんだから誰に遠慮する必要も無いんだ。
俺は恥ずかしがってパジャマの合わせを掴んでいる彼女の手首を取って、パタンと仰向けに体を開かせる。もう片方の手首も掴んでフカフカのベッドに縫い付けた。
真っ赤になっている晶が可愛らしくて、今すぐ乱暴に事に及びたい衝動が込み上げてしまう。

我慢……我慢……と唱えて、ニッコリと微笑んで彼女に優しく口付けた。



「もう、諦めて。俺もー我慢の限界。ね?いーでしょ、『ねーちゃん』」



つい奥の手を使ってしまう。
可愛子ぶって懇願する俺に『ねーちゃん』は弱い。

「うぅ……」と唸って目をキョロキョロさせていたけど、やがてゆっくりと頷いた。

了解さえ得られれば、もうこっちのもの!拘束していた手首を解放してモチモチした頬に手を伸ばし唇を食む。最初は浅く、徐々にまた口付けを深くしながら徐々に掌を首筋から鎖骨へと下ろして行った。それからツルリとしたパジャマの合わせ目を割って―――その柔らかな膨らみに再び手を伸ばす。
何となくだが……昔よりは少し大きくなった気がする。高校生の頃衝動的に押し倒してしまった時に比べて、身長は変わらないのに手触りがタップリしているような。
目立って大きいという訳では決してない。けれども極上なホイップクリームみたいに柔らかくって、いつまでも触っていたい手触りだった。

ムニムニと遊ぶように弄んでいると、だんだんと晶の息が上がって来るのが分かる。溜息のような声に煽られて、俺の下半身にも熱が籠り始めた。ゆっくりと唇を首筋に這わせ、両手で掬い上げて寄せた頂きに吸い付いた。

「!……ふっ……ん」

苦しそうな息が晶の口から洩れる。
感じてくれているのかな、と思うと嬉しくなって益々熱心になってしまう。おろそかになっている方の膨らみに手を伸ばす。すると組み敷いている小柄な体がモジモジと揺れ始めた。
正しい反応がある事に、胸が躍る。初めて感じる種類の達成感だ。もっともっと彼女の期待に応えたくなる……きっとそんな事口に出したら真っ赤になって逃げだしちゃうんだろうなって思うけど。

「……気持ちいい?」
「わ……かんないよ……」

息を荒げながら必死で答える姿に、ますます胸が高鳴ってしまう。
朝の光に、白くて柔らかい美しい肢体が眩しく映る。

こんな極上のご褒美が貰えるんだ、頑張って良かった……!―――心からそう思った。

晶の体はシミひとつ無い。インドア生活の賜物だろう。
それは俺にとっては僥倖以外の何物でもない。

獰猛な衝動をなんとか抑えながら、俺は下着に手を掛けた。
ビクリと小さな体が震えるのが伝わって来たから、見上げて来る不安げな瞳に向かって労わる様に微笑んで見せる。
正直俺だってかなり不安だ。だけど俺が不安を滲ませてしまったら、流れが止まってしまうような気がする。それだけは断固として阻止せねばならない。

ゆっくりと下着を抜き取りつつ、落ち着かせるように額に口付ける。すると詰めていた息を吐き出しながら、彼女が体の力を僅かに緩ませたように感じた。
腹を括って手を伸ばす。すると観念したように晶が瞼を閉じたので、もう一度額に口付けてから瞼にそっと吸い付いた。

「う……」と呻き声がしたので、心配になって「痛い?」と尋ねると「ちょっと痛いかも……」と言って涙目になる。

やっぱり。

俺はちょっと考えて。
一度開きかけた扉のノブから手を離す事にした。

改めて華奢な彼女の体を、ギュッと抱き込む。
小さな掌が俺の背に回り―――キュッと抱きしめ返して来た。

彼女は俺自身を怖がっている訳では無い。それが分かって改めてホッとする。
艶々した髪の毛を梳くように撫で、時折チュッと口付けると腕で囲った小さな体の緊張が解れて力が抜けて行くのが分かる。

それから再び彼女の唇を奪った。十分に深く口付けて―――息が上がった所で解放し、首筋にキスを落とす。鎖骨、胸の谷間、臍の横……と軌跡を描いて目的地を目指す。

指は痛いんだよな。

俺はゴクリと唾を飲み込むと、左手を彼女の膝裏に当てて持ち上げ、思い切って広げた。

「……っ!」

突然の俺の行動に晶の体が緊張で再び固まってしまう。
俺は逸る心を抑えできるだけ真面目に聞こえるように落ち着いた口調を心掛けた。

「痛くないようにしたいから……ちょっとだけ、我慢してね」

そう言って持ち上げた彼女の内腿に、チュッとひとつキスを落とす。

「ひゃあ!」

するとビクリと体を震わせて、晶が小さな手でガシリと俺の栗色の頭を掴んだ。
ついさっきまで力を入れる事も難しいと言うように弛緩し投げ出されていた体が、急に力を取り戻す。彼女は咄嗟に上半身をガバっと起こし、俺を阻止しようと抵抗し始めた。

「だっだめ!なにするの!」

グイッと押されて近づけていた顔を離される。
本当は非力な晶の抵抗なんて簡単に無かった事にできる。だけど、一応俺はちゃんと押し退けられてあげた。

「何って……ナニ?」

ニヤリとすると、俺の頭を掴んだまま晶は真っ赤になって言った。

「そっそんな所にキスしなくてもできるでしょお……!」

あ、それくらいは知ってるのか。

恋愛小説も漫画も映画も見ない人だから、色恋事のデータが圧倒的に少ない。きっと情事に関しての情報はもっと少ない筈だった。でもそっか、保健体育くらいの知識はあるよね、晶にだって。

「できるっちゃ、できるけど……怪我するかも。プールに入る前も準備運動をしないと心臓麻痺を起こしたり足が釣ったりするでしょ?それと同じだよ、事前に色々体を慣らさないと」
「……そんなに、大変なの……?」

晶はフルリと震えて表情を強張らせた。やっぱり怖いのかな?俺もちょっと怖い。ちゃんと彼女をリードできるのか、こっちも初めてだし―――やっぱり不安は拭い切れない。

慣れてる人だとこういう時、どうするんだろう?こんな直接的な事言わないでアッと言う間に女の子を快楽に落として翻弄しちゃって、いつの間にか気持ち良くなって相手が訳わかんないまま最後まで……って事も在り得るのかな?

それって俺にとっては、もう一種のファンタジーだ。

どちらにせよ晶とやる前に経験を積むなんて、精神的にも体力的にも無理なんだけどね。晶と会う時間だって足りないのに他の子に会いたいなんて思えないし、時間があってもまずそんな気になれないし―――それに例えば……あり得ないけど『練習』とか言って浮気なんかしたら、きっと速攻で振られるに決まってる。全部了解したような表情で「幸せになってね」って身を引かれる所が安易に想像できてしまう。それで待ってました!とばかりに控えていた高坂先輩が彼女を掻っ攫ってしまうだろう。

もし小学校の時に姉弟きょうだいとして出会わずに、高校とか大学時代に先輩・後輩として出会っていたら……事前に経験を積んでから付き合ったり出来たのかな?
あ、でもそうなると―――交友関係の少ない人見知りの晶と親しくなる可能性、完全に消えるな。趣味も行動範囲も全く異なっているし……。

フッと息を吐いて、俺はちょっと頭を切り替える事にした。

晶の手をとり、ベッドの上で一旦体を起こしてやる。向かい合って右手を左手、左手を右手で優しく握って落ち着かせるように揺すってみる。

しかし本当はギリギリもギリギリ、臨界間近なんですけど……。本当に俺、要領悪いよなぁ。でも仕方ない、晶を怖がらせたまま自分だけ気持ち良くなるワケには行かないから。
……とは言っても結局、何をどうやっても晶は痛いばっかりで俺だけ気持ち良くなっちゃうかもしれないけど。そしてそれが暫く続くかもしれないけど。一体何回くらいしたら、女の人も慣れて来たりするのかな?



恋愛が成就する時も、全くスムーズでは無かった。
結婚するまでもドタバタしていて。
今更初夜だけ、漫画みたいスンナリ進むワケないよね。



全くカッコ悪い。本当に俺は何処までも残念な男だが―――きっとそれでも晶は……『ねーちゃん』は、おとうとを見放さないって、知っている。だからみっとも無くても、本気で向き合おうと思えるんだ。

「最初は大変……ていうか、けっこう痛いと思うけど―――なるべく晶が痛くならないように、俺勉強したから」
「勉強……?」

晶は目を丸くして俺を見上げた。

「恥ずかしいかもしれないけど……晶も頑張ってちょっと我慢して欲しい。たぶん痛いとは思うけど、いろいろ事前に準備をすれば多分少しはマシなはずなんだ。それに経験を重ねて行くうちに段々痛みは減るんだって。―――だから俺に任せてくれないかな?」
「……」

黒曜石の瞳に俺が映っている。
晶は真剣な表情で押し黙っていたが―――直ぐに唇をキュッと引き締めて神妙な表情かおでコクリと頷いた。

「清美、ありがとう」

そして一呼吸おいて、息を吸い込みこう宣言した。

「……恥ずかしがってばかりいないで、私も頑張るよ!」

頬を紅潮させて使命感を滲ませ、白い小さな手で決意を籠めて俺の手をキュッと握る。
内心「あれ?そんな反応……?」と、スポ根みたいな展開に戸惑ったが。―――次に彼女の口から出て来た台詞を聞いて、色んな物が吹き飛んでしまった。



「だから清美―――私にいろいろ教えてね?」



首をコテンと傾げて上目遣いでオネダリされた。



『ねーちゃん』―――君は俺を萌え殺す気ですか?!



自覚なく俺を煽るだけ煽ってくれたお返しは―――はい、しっかりとさせていただきました。この続き?結果?うーん……それは具体的には言えないな、二人だけの秘密だから。



でも、うん……『大変美味しかった』とだけ、言っておこう。それだけは確実に言える。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ずーっとお預け状態の清美でしたが、やっと煩悩を解放する事が出来ました。
あまりにも不遇な扱いが気の毒になり、彼の魂を供養(まだ死んでませんが)するつもりで作ったほとんど自己満足が目的のおまけ話ですが、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

お読みいただき、誠に有難うございました。

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