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・後日談・ 俺とねーちゃんのその後の話
29.ボーダーライン <高坂>
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高坂視点です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
C判定だ。
模試の結果を見て、意外な結果に驚いた。
滑り止めの私学はC判定でB判定を取ることはあっても、現在本命としているT大はD判定しか取ったことがなかった。高校から真面目に勉強し始めたと言っても部活と両立するのは中々の難易度だったから。
これは、晶ちゃんに触発されたお陰かもしれない。ひょっとしたら、来年同級生になれるかも?そう考えるとなんだかソワソワしてしまった。
** ** **
俺はつい最近、自分が晶ちゃんを好きだと本格的に自覚した。だけど同時に、晶ちゃんがまだ清美を好きだという気持ちを本人から聞き出してしまった。
ほんとーに今度ばかりは、自分の察しの良さに嫌気がさした。
だからつい清美に発破を掛けるようなことを言っちまった。
「じゃ、そういう事だから。あんまり晶ちゃんを苛めないで、優しくしてやって?大事な『おねーちゃん』が頑張っているんだから、邪魔しないで大人しく応援してやってよ、可愛い『弟』としてさ」
恋敵の幼さを黙って見過ごす事が、本来俺の希望にとって最善の策だと思う。清美がぼんやりと晶ちゃんの有難さに気付かず、子供っぽい独占欲と執着心に振り回されたまま同じところをウロウロしていれば、2人の距離はこのまま縮まらないだろう。それが一番、俺にとっては都合が良い。
けれども晶ちゃんの潤んだ瞳と赤くなった目尻を思い出すと、どうにも黙っていられなくなってしまったのだ。
俺の台詞に与えられたダメージから起き上がれず、清美が諦めてしまえば―――俺の一番の障害が消える。でももし清美の意識に改善の余地があって、晶ちゃんへの甘えを捨てて、彼女を支える気構えを持てるくらい成長できるなら―――晶ちゃんにとってはこれ以上良いことはないだろう。
正直言ってどちらに転ぶのか、俺には判らない。
俺の行動の結果が、俺にとって都合の良い結末を運んでくるのか、それとも清美が晶ちゃんと一緒にいられる未来を手に掴む布石になってしまうのか。
どっちみちあれだけ言っても奮起できないようなら、本当に清美に晶ちゃんをまかせることはできない。そうなったとしたら―――宣言した通り、俺が『晶ちゃんを甘やかして、大事に大事に大切にして、必ず幸せに』したい。いや、させて貰うよう全力で努力する。
清美の気持ちも、晶ちゃんの気持ちも、俺の手の内にはない。
どっちに転ぶか……それこそ予想なんかできやしない。
今俺にできることと言ったら―――そう、勉強しかない。
まずは今後4年間晶ちゃんの近くにいられる権利を確保すること。そして彼女に身近に感じて貰えるよう、努力すること。一緒に暮らしてきた『弟』以上に近くは、どうやったってなれないかもしれないけど。
晶ちゃんに清美と腹を割って話し合うように言ったのは、彼女に以前の俺みたいに燻って後悔して欲しくないから。
俺の助言の結果、蟠りが氷解して2人が『恋人』同士に戻っても、スッキリしてただの『姉弟』に戻ることになっても―――どちらにしても晶ちゃんの心にかかる霧が晴れて、あんなふうに目を赤くせずにいられるなら。
彼女を縛る重い枷から解き放つ手伝いになるなら―――こんな嬉しいことは無い。
** ** **
『遠距離恋愛 成功率』をネットで検索してみた。
成功率は2割。
更に『全体の9割が2年以内に破局する』……らしい。
すれ違いがあるにせよ、今あの2人は両想い。
だけど統計からすれば、もし今回晶ちゃんと清美が和解することができたとしても9割の確率で別れる可能性がある。
なんだ。
見込みのほとんど無かった『初恋』に比べれば、大した障害では無いじゃないか。
なんてね。
恋愛に模試があったら、まさに今の俺の判定結果はC判定だろう。
さてさて……どっちに転ぶかな。
『合格』か『不合格』か。
取り合えず、これまで頼ったことのない神頼みでもしてみよう。
―――でも、チャンスは1度きりじゃない。
俺って、結構ポジティブだな。
2度目の恋によって、俺は意外な自分の性質に気付かされたのだった。
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C判定だ。
模試の結果を見て、意外な結果に驚いた。
滑り止めの私学はC判定でB判定を取ることはあっても、現在本命としているT大はD判定しか取ったことがなかった。高校から真面目に勉強し始めたと言っても部活と両立するのは中々の難易度だったから。
これは、晶ちゃんに触発されたお陰かもしれない。ひょっとしたら、来年同級生になれるかも?そう考えるとなんだかソワソワしてしまった。
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俺はつい最近、自分が晶ちゃんを好きだと本格的に自覚した。だけど同時に、晶ちゃんがまだ清美を好きだという気持ちを本人から聞き出してしまった。
ほんとーに今度ばかりは、自分の察しの良さに嫌気がさした。
だからつい清美に発破を掛けるようなことを言っちまった。
「じゃ、そういう事だから。あんまり晶ちゃんを苛めないで、優しくしてやって?大事な『おねーちゃん』が頑張っているんだから、邪魔しないで大人しく応援してやってよ、可愛い『弟』としてさ」
恋敵の幼さを黙って見過ごす事が、本来俺の希望にとって最善の策だと思う。清美がぼんやりと晶ちゃんの有難さに気付かず、子供っぽい独占欲と執着心に振り回されたまま同じところをウロウロしていれば、2人の距離はこのまま縮まらないだろう。それが一番、俺にとっては都合が良い。
けれども晶ちゃんの潤んだ瞳と赤くなった目尻を思い出すと、どうにも黙っていられなくなってしまったのだ。
俺の台詞に与えられたダメージから起き上がれず、清美が諦めてしまえば―――俺の一番の障害が消える。でももし清美の意識に改善の余地があって、晶ちゃんへの甘えを捨てて、彼女を支える気構えを持てるくらい成長できるなら―――晶ちゃんにとってはこれ以上良いことはないだろう。
正直言ってどちらに転ぶのか、俺には判らない。
俺の行動の結果が、俺にとって都合の良い結末を運んでくるのか、それとも清美が晶ちゃんと一緒にいられる未来を手に掴む布石になってしまうのか。
どっちみちあれだけ言っても奮起できないようなら、本当に清美に晶ちゃんをまかせることはできない。そうなったとしたら―――宣言した通り、俺が『晶ちゃんを甘やかして、大事に大事に大切にして、必ず幸せに』したい。いや、させて貰うよう全力で努力する。
清美の気持ちも、晶ちゃんの気持ちも、俺の手の内にはない。
どっちに転ぶか……それこそ予想なんかできやしない。
今俺にできることと言ったら―――そう、勉強しかない。
まずは今後4年間晶ちゃんの近くにいられる権利を確保すること。そして彼女に身近に感じて貰えるよう、努力すること。一緒に暮らしてきた『弟』以上に近くは、どうやったってなれないかもしれないけど。
晶ちゃんに清美と腹を割って話し合うように言ったのは、彼女に以前の俺みたいに燻って後悔して欲しくないから。
俺の助言の結果、蟠りが氷解して2人が『恋人』同士に戻っても、スッキリしてただの『姉弟』に戻ることになっても―――どちらにしても晶ちゃんの心にかかる霧が晴れて、あんなふうに目を赤くせずにいられるなら。
彼女を縛る重い枷から解き放つ手伝いになるなら―――こんな嬉しいことは無い。
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『遠距離恋愛 成功率』をネットで検索してみた。
成功率は2割。
更に『全体の9割が2年以内に破局する』……らしい。
すれ違いがあるにせよ、今あの2人は両想い。
だけど統計からすれば、もし今回晶ちゃんと清美が和解することができたとしても9割の確率で別れる可能性がある。
なんだ。
見込みのほとんど無かった『初恋』に比べれば、大した障害では無いじゃないか。
なんてね。
恋愛に模試があったら、まさに今の俺の判定結果はC判定だろう。
さてさて……どっちに転ぶかな。
『合格』か『不合格』か。
取り合えず、これまで頼ったことのない神頼みでもしてみよう。
―――でも、チャンスは1度きりじゃない。
俺って、結構ポジティブだな。
2度目の恋によって、俺は意外な自分の性質に気付かされたのだった。
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