俺のねーちゃんは人見知りがはげしい

ねがえり太郎

文字の大きさ
上 下
190 / 211
・番外編・お兄ちゃんは過保護【その後のお話】

47.幼馴染の気持ち 2

しおりを挟む
私達は再び腰を下ろした。
と言っても今度はラグの上に、丸いテーブルを挟んで向かい合って……なんだけど。

温かいミルクを勇気の前に、ココアを私の方に置いてひとまずコクリと飲み込んだ。
トロリと口の中に入り込んだコクのある甘さに、思わず目を閉じる。

う~ん、やはりこのココアを丁寧に練る過程を省かない……お母さんが手を掛けてくれたココアは格別だあ……!

と、思わず深い味わいに脳内で小旅行に旅立ってしまったが―――コトリと、勇気が一口飲んだマグカップをテーブルの上に置いた音で我に返る。
神妙な顔で胡坐を掻いた膝の上に手を置いて自ら置いたカップをじっと見つめて、それから視線を上げて私を真正面から見た。

……パチリと。視線が合った音がしたような気がした。静電気みたいに。

私はビクリと肩を震わせてから、諦めてマグカップをテーブルに置いたのだ。



『分かれよ!俺が1番大事にしている奴だ誰なのか……分かっているだろ?』



勇気が大事にしている人、それは。



「あの、ね?勇気……勇気が大事にしている人って、その」
「……」
「……お母さん?」



ゴンっ!

とテーブルに勇気が頭をぶつけた。
ミルクとココアがパシャリと跳ねて零れてしまった……!

「わわ……っ、ティッシュ、ティッシュ!」

私がティッシュの箱を慌てて引き寄せテーブルを拭いていると、その手首がガシリと握り込まれた。……またこのパターン??顔を上げると怖い顔をした勇気が。

え、零しておいて?それを親切に拭いている幼馴染に向かってする表情かおじゃないんですけど……。

「お前だろが」
「え……零したのは勇気……」
「違う!」

え、違わないですけど……。

「大事なのは、お前だ。凛」
「へ……」
「俺が好きなのは凛、鈴木でも蓉子さんでもない」
「え……」



えええ……っ!



「何、今さら驚いた顔してるんだよ」
「だ、だって……」

驚いたよ、驚いた。だって……

「高い遊具の上に放置されたし、滑り台で無理矢理押したりされたし……大事にされてなんか無いよ」
「いつの話をしているんだ」

最初に会った小学生の頃の話だよ。

月寒公園には子供が遊べる遊具がたくさん設置されている『森の遊び場』って場所があるんだけど、私は隣に越して来たばかりの勇気をそこへ連れて行った。そしたら、嫌だと言うのに高い遊具に無理やり連れて行かれて、置いてけぼりにされ泣いてしまった。すると暫くして戻って来た勇気は40メートルの長さがあると言うロング滑り台の上で高さに慣れろと引っ張って行き『やっぱ慣れだよな』なんて言って、震えている私の後ろから体当たりして来たのだ。勇気と一緒に物凄い勢いで落ちた滑り台が怖くて、結局私は更に泣き喚き、引っ越して来たばかりの勇気を置き去りにして走って帰ったのだ。

あ、今思うと私もヒドイな。

「それに頭グリグリするし」
「撫でてるって言え」
「扱いが雑だよ、他の女の子には優しいのに」
「お前、俺の交友関係にそんなに関心あったっけ?別に優しくなんてしていない、ちゃんと距離を取っているだけだ」

そうなの?!

「だって、私勇気の好みと違う……」
「は?何だ?俺の好みって……」
「トラクエの『ププリポ』大好きじゃん!私あんなに小柄じゃない。どっちかって言うと女子マネ1年の田口さんの方がドストライクじゃない??」

そうなんだ、田口さんって何かに似てると思ったら、RPGゲーム『トラクエ』の2頭身キャラ、可愛らしい『ププリポ』に似ているんだ……!見た目で言ったら、きっと勇気のドストライクな筈!だって勇気、ププリポ大好きだもん!

「お、ま、えは~~」
「ぎゃっ!いったー!」

頭を思いっきりグリグリされた。
いたたた。髪の毛もぐっちゃぐちゃだっ!

「な、なにすんの!」

頭を抱えて、思いっきり体を引き勇気を睨みつけた。
すると勇気がフンッと腕組みをしてふんぞり返り―――私を睨みつけた。

「―――『大事』にしてやったんだろ!」

はああ?!

勇気の『大事にする』って、謎。
全く意味わかんない……!

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

だってわたくし、悪女ですもの

さくたろう
恋愛
 妹に毒を盛ったとして王子との婚約を破棄された令嬢メイベルは、あっさりとその罪を認め、罰として城を追放、おまけにこれ以上罪を犯さないように叔父の使用人である平民ウィリアムと結婚させられてしまった。  しかしメイベルは少しも落ち込んでいなかった。敵対視してくる妹も、婚約破棄後の傷心に言い寄ってくる男も華麗に躱しながら、のびやかに幸せを掴み取っていく。 小説家になろう様にも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

悪役令嬢のビフォーアフター

すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。 腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ! とりあえずダイエットしなきゃ! そんな中、 あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・ そんな私に新たに出会いが!! 婚約者さん何気に嫉妬してない?

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?

との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」 結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。 夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、 えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。 どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに? ーーーーーー 完結、予約投稿済みです。 R15は、今回も念の為

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました

さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。 私との約束なんかなかったかのように… それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。 そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね… 分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

処理中です...