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太っちょのポンちゃん 社会人編5
ポンちゃんと、キャビンアテンダント おまけ ★
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『ポンちゃんと、キャビンアテンダント』ポンちゃん視点のおまけ話です。
※別サイトとは内容が異なる予定です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
鈍いノックの音がしたのは、切りの良い所まで辿り着いて読んでいた資料から一旦目を離し、凝り固まってしまった肩を回していた時だった。
豊田さんのいる脱衣室の方からじゃない、部屋の扉の方からだ。今日はやけに訪問者が多い日だなぁ。俺は溜息を吐いて机から立ち上がった。
U字ロックを掛けたまま扉を開ける。
「はい?」
するとその隙間から響いて来たのは、聞き覚えのある声。
「お客様、お届け物です」
ヒョコリと十センチほどの空間の向こうから顔を出したのは、なんと俺の妻である唯ちゃんだ。
「えっ」
驚きのあまり一瞬頭が真っ白になる。
何故ここに、唯ちゃんが?!
隙間から笑顔を見せる唯ちゃんはヒラヒラと手を振り、囁き声で『あ・け・て~』とU字ロックを指差した。ビックリし過ぎて声も出せない俺は、慌ててロックを外して扉を開ける。
「どうして……」
東京にいる筈の妻が、何故ここにいるのか。
そして来るなら来るで何故一言連絡を入れてくれなかったのか。連絡をくれれば―――迎えにだって行けたし、美味しい食事処を調べて予約だって入れられたのに。
呆気に取られて二の句も継げない俺の前を、スタスタと小柄な唯ちゃんが通り過ぎる。それからクルリと立ち止まり、小さな箱を俺の前に差し出した。
「ケーキをお持ちしました!」
「えっ?」
そしてニコリと飛び切りの笑顔で見上げて来る。
「あ……!」
そうか!漸く合点が行った。
唯ちゃんが箱を持ったまま俺に一歩近寄り、爪先立って囁いた。
「ポンちゃん、誕生日おめでとう」
なんと素敵なサプライズだろう……!
感激のあまり俺は彼女に抱き着―――
「?」
―――こうとした瞬間、唯ちゃんはサササッと後退ってしまった。俺の両腕が空を掴む。
「なんで……」
俺は彼女の後を追うように部屋の奥へと進んだ。唯ちゃんは眉を寄せてムッとした表情で抗議する。
「せっかくのケーキが、潰れちゃう」
感激で頭に血が上って、小箱の存在を忘れてしまっていた。唯ちゃんは手に持っていたそれをテーブルの上にそっと置き、こちらに向き直ると今度こそ両手を広げてくれた。
漸く了解の合図を貰えた俺は、引き寄せられるようにフラフラとその腕の中に歩み寄る。
柔らかな体に辿り着いて、ギュッと今度こそしっかりと抱き寄せた。
「……吃驚した……」
吐息と共に言葉を吐き出すと、唯ちゃんがフフっと笑う声がする。
「サプライズだもん。驚かせようとして準備したんだから、吃驚して貰えて嬉しいよ?」
胸がキュッと苦しくなる。両腕にギュッと力を込めて、彼女の栗色のふわふわとした髪の毛に頬を寄せる。まだ東京に帰る手段は無いわけじゃない。だけどきっと唯ちゃんはそんな事は言わないはずだ。俺は半ば確信を込めてこう尋ねた。
「今日は……泊って行けるんだよね?」
「うん、部屋取ってるから」
「……この部屋に泊まるよね?」
「どうしようかな?」
クスクス笑って揶揄うように言うから、今度は俺の方がムッとしてしまう。
抗議の意味も込めてグイッと力を込めて彼女の体を引き寄せ、そのままベッドに腰を下ろした。小柄な唯ちゃんの体は勢いのまま、ストンと俺の膝に収まってしまう。
「俺がそっちの部屋に泊っても良いんだよ?」
細い腰を抑えて、逃げられないように捕まえる。唯ちゃんは捕らわれた瞬間、少し驚いた表情を浮かべたが、俺がそう言うと真面目な表情で眉を寄せた。
「うーん、私の部屋のベッドで寝たらポンちゃん、はみ出ちゃうと思う……」
「なら、決まり。このまま泊って行って」
唯ちゃんの腕が、楽し気に俺の首に絡みついた。
「実は最初から、そのつもりだったりして?」
小首を傾げて舌を出す彼女が可愛すぎて、堪らなくなってしまう。
―――意地悪を言う口は、塞いでしまおう。
俺はその柔らかそうな口元に、そっと唇を寄せた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
オシゴトの宿泊だから、本来は奥さんを(CAさんも?)部屋に泊めちゃ駄目かもしれません。。。
いつもなら唯ちゃんは東京で大人しく留守番していますので、今回はイレギュラーと言う事でお許しを!<(_ _)>
お読みいただき、ありがとうございました!
※別サイトとは内容が異なる予定です。
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鈍いノックの音がしたのは、切りの良い所まで辿り着いて読んでいた資料から一旦目を離し、凝り固まってしまった肩を回していた時だった。
豊田さんのいる脱衣室の方からじゃない、部屋の扉の方からだ。今日はやけに訪問者が多い日だなぁ。俺は溜息を吐いて机から立ち上がった。
U字ロックを掛けたまま扉を開ける。
「はい?」
するとその隙間から響いて来たのは、聞き覚えのある声。
「お客様、お届け物です」
ヒョコリと十センチほどの空間の向こうから顔を出したのは、なんと俺の妻である唯ちゃんだ。
「えっ」
驚きのあまり一瞬頭が真っ白になる。
何故ここに、唯ちゃんが?!
隙間から笑顔を見せる唯ちゃんはヒラヒラと手を振り、囁き声で『あ・け・て~』とU字ロックを指差した。ビックリし過ぎて声も出せない俺は、慌ててロックを外して扉を開ける。
「どうして……」
東京にいる筈の妻が、何故ここにいるのか。
そして来るなら来るで何故一言連絡を入れてくれなかったのか。連絡をくれれば―――迎えにだって行けたし、美味しい食事処を調べて予約だって入れられたのに。
呆気に取られて二の句も継げない俺の前を、スタスタと小柄な唯ちゃんが通り過ぎる。それからクルリと立ち止まり、小さな箱を俺の前に差し出した。
「ケーキをお持ちしました!」
「えっ?」
そしてニコリと飛び切りの笑顔で見上げて来る。
「あ……!」
そうか!漸く合点が行った。
唯ちゃんが箱を持ったまま俺に一歩近寄り、爪先立って囁いた。
「ポンちゃん、誕生日おめでとう」
なんと素敵なサプライズだろう……!
感激のあまり俺は彼女に抱き着―――
「?」
―――こうとした瞬間、唯ちゃんはサササッと後退ってしまった。俺の両腕が空を掴む。
「なんで……」
俺は彼女の後を追うように部屋の奥へと進んだ。唯ちゃんは眉を寄せてムッとした表情で抗議する。
「せっかくのケーキが、潰れちゃう」
感激で頭に血が上って、小箱の存在を忘れてしまっていた。唯ちゃんは手に持っていたそれをテーブルの上にそっと置き、こちらに向き直ると今度こそ両手を広げてくれた。
漸く了解の合図を貰えた俺は、引き寄せられるようにフラフラとその腕の中に歩み寄る。
柔らかな体に辿り着いて、ギュッと今度こそしっかりと抱き寄せた。
「……吃驚した……」
吐息と共に言葉を吐き出すと、唯ちゃんがフフっと笑う声がする。
「サプライズだもん。驚かせようとして準備したんだから、吃驚して貰えて嬉しいよ?」
胸がキュッと苦しくなる。両腕にギュッと力を込めて、彼女の栗色のふわふわとした髪の毛に頬を寄せる。まだ東京に帰る手段は無いわけじゃない。だけどきっと唯ちゃんはそんな事は言わないはずだ。俺は半ば確信を込めてこう尋ねた。
「今日は……泊って行けるんだよね?」
「うん、部屋取ってるから」
「……この部屋に泊まるよね?」
「どうしようかな?」
クスクス笑って揶揄うように言うから、今度は俺の方がムッとしてしまう。
抗議の意味も込めてグイッと力を込めて彼女の体を引き寄せ、そのままベッドに腰を下ろした。小柄な唯ちゃんの体は勢いのまま、ストンと俺の膝に収まってしまう。
「俺がそっちの部屋に泊っても良いんだよ?」
細い腰を抑えて、逃げられないように捕まえる。唯ちゃんは捕らわれた瞬間、少し驚いた表情を浮かべたが、俺がそう言うと真面目な表情で眉を寄せた。
「うーん、私の部屋のベッドで寝たらポンちゃん、はみ出ちゃうと思う……」
「なら、決まり。このまま泊って行って」
唯ちゃんの腕が、楽し気に俺の首に絡みついた。
「実は最初から、そのつもりだったりして?」
小首を傾げて舌を出す彼女が可愛すぎて、堪らなくなってしまう。
―――意地悪を言う口は、塞いでしまおう。
俺はその柔らかそうな口元に、そっと唇を寄せた。
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オシゴトの宿泊だから、本来は奥さんを(CAさんも?)部屋に泊めちゃ駄目かもしれません。。。
いつもなら唯ちゃんは東京で大人しく留守番していますので、今回はイレギュラーと言う事でお許しを!<(_ _)>
お読みいただき、ありがとうございました!
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