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太っちょのポンちゃん 社会人編5
ポンちゃんと、キャビンアテンダント 6(★)
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※別サイトとは内容が異なります。
―――――――――――――――――――――――――――
慌てた私はトイレのドアをバンッ!と開け、彼の危機を防ぐべくサッと勢いよく部屋の中へ飛び出した……!
……が、扉を出たところは部屋の玄関スペースにあたる行き止まりだった。そして気合と相反して、造りのシッカリした扉は音もたてずに開いていた。既に部屋の奥に移動しているらしい彼等から、私は死角にいることになる―――と、いうことは……
先ほど尋ねて無遠慮に入り込んで来た女性と本田さんは。
ベッドのあるスペースに二人切り……?
妙に静かな向こう側を、壁の角から恐る恐る窺う。
汗がじんわりと額に浮かぶ。何故、話声すら聞こえないのだろうか?
先ほど出入口で行った本田さんとの遣り取りを思い出す。
『あの、違うんです。今ちょっと……良いですか?』
『今ですか?えーと……』
困ったように強張った顔。もしかすると。
ひょっとして……誰かがここに来る予定だった?いや、それにしては驚いたようなリアクションだった。ドキドキザラザラと胸が煩い。もしかして私の想像通りのことがこの壁の向こうで起こってしまって、あんな風に本田さんが強引に迫られていたりとか?そしてそのヒロインはここにいる私ではなくて……。
いやまさか、そんなハズ。だって私がいるんだよ?トイレに。
まさか夢中になるあまり私の存在を忘れるなんてそんなこと―――本田さんに限って。
目をギュッと瞑ってから腹を決め、そっと顔をのぞかせた。そこに見えたものは―――
「―――!―――」
私は口を押えて言葉を飲み込んだ。
本田さんが、まるで押されてつい倒れてしまったというようにベッドに腰を付いていて、その膝の上にふわりとした栗色の髪の女性が体をぴったりと寄せて腰掛けていたのだ。
その体勢は……私がトイレで想像していた通りのもので。
彼はそれ以上体が倒れるのを堪えるように、片手をベッドに付いている。そしてもう一方の手は、その女性の体を支えるように添えられていた。
顔の見えない彼女の両腕は本田さんの首を絡めとるように捉えていて……その腕に引き寄せられるように、本田さんの顔が近づいて行く。
え?え?え?!まさか!
と目の前の光景を受け入れられずにいる私の目の前で―――本田さんが、彼女にキスをした。あまりの事に凍り付く私。しかしその唇は案外直ぐに離れたのだ。
するとキスされた彼女が、楽し気にクスクスと笑いだした。
「なんで笑うの?」
本田さんが拗ねたように彼女を見つめて、こう呟く。
「えー?だって……」
続けようとした言葉が、吸い込まれるように途切れた。
本田さんが彼女に顔を寄せて口を塞いだからだ。
それからその口付けが徐々に濃厚なものに……
そして本田さんの両手が、彼女の体を柔らかく包み込み……そのままゆっくりと反転するようにベッドに押し付けた。
わ!わわわっ……!
そこで我に返った私は、慌てて壁の向こうに体を引っ込める。
壁に肩を預け胸を押さえて大きく息を吐く―――もちろん声を漏らさないように細心の注意を払って。
どどど……どうしよう?!
始まっちゃった……!始まっちゃったよ、これ!
本田さん、かんっぜんに私の存在―――忘れているらしい。
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慌てた私はトイレのドアをバンッ!と開け、彼の危機を防ぐべくサッと勢いよく部屋の中へ飛び出した……!
……が、扉を出たところは部屋の玄関スペースにあたる行き止まりだった。そして気合と相反して、造りのシッカリした扉は音もたてずに開いていた。既に部屋の奥に移動しているらしい彼等から、私は死角にいることになる―――と、いうことは……
先ほど尋ねて無遠慮に入り込んで来た女性と本田さんは。
ベッドのあるスペースに二人切り……?
妙に静かな向こう側を、壁の角から恐る恐る窺う。
汗がじんわりと額に浮かぶ。何故、話声すら聞こえないのだろうか?
先ほど出入口で行った本田さんとの遣り取りを思い出す。
『あの、違うんです。今ちょっと……良いですか?』
『今ですか?えーと……』
困ったように強張った顔。もしかすると。
ひょっとして……誰かがここに来る予定だった?いや、それにしては驚いたようなリアクションだった。ドキドキザラザラと胸が煩い。もしかして私の想像通りのことがこの壁の向こうで起こってしまって、あんな風に本田さんが強引に迫られていたりとか?そしてそのヒロインはここにいる私ではなくて……。
いやまさか、そんなハズ。だって私がいるんだよ?トイレに。
まさか夢中になるあまり私の存在を忘れるなんてそんなこと―――本田さんに限って。
目をギュッと瞑ってから腹を決め、そっと顔をのぞかせた。そこに見えたものは―――
「―――!―――」
私は口を押えて言葉を飲み込んだ。
本田さんが、まるで押されてつい倒れてしまったというようにベッドに腰を付いていて、その膝の上にふわりとした栗色の髪の女性が体をぴったりと寄せて腰掛けていたのだ。
その体勢は……私がトイレで想像していた通りのもので。
彼はそれ以上体が倒れるのを堪えるように、片手をベッドに付いている。そしてもう一方の手は、その女性の体を支えるように添えられていた。
顔の見えない彼女の両腕は本田さんの首を絡めとるように捉えていて……その腕に引き寄せられるように、本田さんの顔が近づいて行く。
え?え?え?!まさか!
と目の前の光景を受け入れられずにいる私の目の前で―――本田さんが、彼女にキスをした。あまりの事に凍り付く私。しかしその唇は案外直ぐに離れたのだ。
するとキスされた彼女が、楽し気にクスクスと笑いだした。
「なんで笑うの?」
本田さんが拗ねたように彼女を見つめて、こう呟く。
「えー?だって……」
続けようとした言葉が、吸い込まれるように途切れた。
本田さんが彼女に顔を寄せて口を塞いだからだ。
それからその口付けが徐々に濃厚なものに……
そして本田さんの両手が、彼女の体を柔らかく包み込み……そのままゆっくりと反転するようにベッドに押し付けた。
わ!わわわっ……!
そこで我に返った私は、慌てて壁の向こうに体を引っ込める。
壁に肩を預け胸を押さえて大きく息を吐く―――もちろん声を漏らさないように細心の注意を払って。
どどど……どうしよう?!
始まっちゃった……!始まっちゃったよ、これ!
本田さん、かんっぜんに私の存在―――忘れているらしい。
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