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後日談 黛家の新婚さん2

(58)情けは人の為ならず(★)

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(57)話の後のお話。補足なので短いです。

※なろうには掲載しておりません。

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朝昼兼用御飯の後、ソファに並んでテレビを見ていると黛がボソリと呟いた。

「じゃあ、お風呂入ろうか」
「こんな明るいうちから?今?」
「うん、今」
「じゃあ、お湯溜めて来るね」
「ありがとう」

お湯が溜まった合図の音が聞こえたので、七海は隣に座る黛の肩を叩いた。

「じゃあ、入るか」

スクッと立ち上がった黛が、七海の前に手を出した。

「?」

何気なくその手を握ると、ぎゅっと掴まれてグンっと引っ張り上げられた。
勢いよく七海もソファから立ち上がる事になる。
見上げると黛が蠱惑的な笑みを漏らしている。

(あ、これ何か企んでる時の顔だ……)

七海の頭の中で警鐘が鳴る。

「じゃあ、入るか?」
「え……」

漸く黛の言っている意味を理解する。

「いや、私後で入るよ」
「入ろう」
「お義父さん帰って来る……」
「帰って来るのは六時過ぎだ。大丈夫だ、それまでには終わらせるから」

まだ二時だった。
七海は真っ赤になって逃げ場を探した。
黛はガシっと七海の両二の腕を掴んで、彼女を満面の笑顔で見下ろした。
目がキラキラと光っている。彼の体からワクワクと言う音がしそうなくらい、楽しそうな気配が伝わって来た。



「『何でも』やってくれるんだよな?」
「あ……うぅ……」



反論できない七海は、黛に手を引かれてサクサクと浴室に連行されたのだった。



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「『情けは人の為ならず』だな!」
「……うう……ちょっと違うと思う……」

妻への労わりが巡り巡って『一緒にお風呂』と言う特典となって返って来た、と黛は得意げに主張しますが、一般的にはもっと遠回りに親切が自分に戻って来るって意味なのでは……と七海は思いました。

ちなみに皆さんご存知とは思いますが、ここで黛が使った諺の意味は『情けを掛けると人の為にならない』じゃなくて本来の『他人に情けを掛けると巡り巡って自分の元に返って来るから、他人には親切にね!』の意の方です。

お読みいただき、有難うございました。
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