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後日談 黛家の新婚さん2
(49)牽制球
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久し振りに遠野が出演します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「この間小学校の同級生に偶然会ってさ」
例によって遠野が控室で黛に話しかけて来た。
「地っ味~な女子児童だったんだけど、大人になっても相変わらず地味でさ。電話番号渡したのに全然、連絡来ないんだよな~。きっと連絡したくても遠慮しちゃうんだろうな、医者って敷居高く思われんのかな?」
「……」
黛が返事をしないのを、弁当に集中しているからだと受け取った遠野は、気にせず勘違い発言を続けた。
「別にナンパってワケじゃなくて、旧交を温めたいだけだって言ってやれば良かったかな?まあ旧交を温めた結果どうなるかは分からんがなーハハハ」
自分の発言に自分で笑う遠野をチラリと一瞥して、黛は食べ終わった弁当の蓋を閉めた。
「スマホのIDとか聞いとけば良かったな~。まだ実家変わってないようだから連絡先は分かるんだけど、俺から連絡するのってガッついているみたいで何か嫌だろ?別に女に困っている訳じゃなし」
「……結婚してるか、彼氏いるんじゃないか?あっちがお前に連絡したいと思ってるとは限らないだろ?」
黛は目を逸らしたまま言った。
遠野は大仰に首を振って、肩を竦めた。
「まさか!まったく男の匂いがしなかったぜ?弟の世話で忙しいんじゃないか?予防接種に付き添って来た時随分手慣れていたもんな。もともと小学校の時もあんま目立たなくてさ、男に自分から声掛けるタイプじゃなかったし、男が寄って来るタイプでも無いからきっと恋愛も何も無い味気の無い休日を過ごしている筈さ。昔も俺が色々構ってやったのに、恥ずかしがって嫌がる振りしていたからなー。素直になれない奴の寂しい生活に潤いを与えてあげようかと思ってさ」
「ふーん、そんでしつこく絡んで頭突きで撃退されたんだ」
「……え?」
調子の良い話を続けていた遠野がピタリと止まった。
「お前何でその話……」
真顔になった遠野に、黛はニッコリと笑い掛けた。
「お?もしかして当たった?お前大学でも同期の岩谷に正拳食らってたろ?やっぱ昔っから女にしつこかったのか?」
二人の同期の岩谷は小柄で大変可愛らしい容貌をしているが、幼稚園から習っている空手で黒帯なのだ。気軽に迫って仕留められた男は公式でもかなりの人数に上る。自信過剰で強引な遠野も勿論その一人である。
「女を舐めてたら痛い目みるぞ。お前の婚約者、来年ウチの大学入学するかもしれないんだろ?お前の評判聞いて何て思うだろうな?さっきの話も俺から彼女に説明してやろうか?」
「なっ……冗談だろ」
「さてねー。俺が言わなくても誰かが言うだろ?……自覚が無いって面倒な奴だな」
グサリと釘を刺し、更に最後の一言を呟くように囁いた後、黛は笑いながら控室を出た。
これで暫くは自重するだろう……少なくとも直接連絡先を知らない七海にまで粉を掛けるような真似はしない筈だと、黛は算段した。
普段から名ばかりの婚約者と公言している高校生の彼女の前で、遠野が紳士ぶっているのを黛は知っていた。自分の所業を知られて失望されるのは、かなり堪えるに違いない。
遠野が彼女に対する気持ちを早く自覚しなければ一層傷が深くなるだろう―――初めての恋に向き合うまで遠回りをした先輩としては何となく同情しないでもない。
まあ遠野が失敗しようと失恋しようと本当はどうでも良い、と黛は思った。
彼が七海に変なちょっかいを仕掛けなければ、黛としては満足なのだから。
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遠野が婚約者に泣いて謝る所を書いてみたいです(笑)
でもオチが付かないので小説にならないですねー。ハッピーエンドにするのも躊躇われますし……。
ちなみに婚約者の女の子は、真面目で可愛い子です。今は地味だけど磨けば光る原石のような。
ともあれ、密かに遠野の牽制に成功した黛でした。
お読みいただき、有難うございました。
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「この間小学校の同級生に偶然会ってさ」
例によって遠野が控室で黛に話しかけて来た。
「地っ味~な女子児童だったんだけど、大人になっても相変わらず地味でさ。電話番号渡したのに全然、連絡来ないんだよな~。きっと連絡したくても遠慮しちゃうんだろうな、医者って敷居高く思われんのかな?」
「……」
黛が返事をしないのを、弁当に集中しているからだと受け取った遠野は、気にせず勘違い発言を続けた。
「別にナンパってワケじゃなくて、旧交を温めたいだけだって言ってやれば良かったかな?まあ旧交を温めた結果どうなるかは分からんがなーハハハ」
自分の発言に自分で笑う遠野をチラリと一瞥して、黛は食べ終わった弁当の蓋を閉めた。
「スマホのIDとか聞いとけば良かったな~。まだ実家変わってないようだから連絡先は分かるんだけど、俺から連絡するのってガッついているみたいで何か嫌だろ?別に女に困っている訳じゃなし」
「……結婚してるか、彼氏いるんじゃないか?あっちがお前に連絡したいと思ってるとは限らないだろ?」
黛は目を逸らしたまま言った。
遠野は大仰に首を振って、肩を竦めた。
「まさか!まったく男の匂いがしなかったぜ?弟の世話で忙しいんじゃないか?予防接種に付き添って来た時随分手慣れていたもんな。もともと小学校の時もあんま目立たなくてさ、男に自分から声掛けるタイプじゃなかったし、男が寄って来るタイプでも無いからきっと恋愛も何も無い味気の無い休日を過ごしている筈さ。昔も俺が色々構ってやったのに、恥ずかしがって嫌がる振りしていたからなー。素直になれない奴の寂しい生活に潤いを与えてあげようかと思ってさ」
「ふーん、そんでしつこく絡んで頭突きで撃退されたんだ」
「……え?」
調子の良い話を続けていた遠野がピタリと止まった。
「お前何でその話……」
真顔になった遠野に、黛はニッコリと笑い掛けた。
「お?もしかして当たった?お前大学でも同期の岩谷に正拳食らってたろ?やっぱ昔っから女にしつこかったのか?」
二人の同期の岩谷は小柄で大変可愛らしい容貌をしているが、幼稚園から習っている空手で黒帯なのだ。気軽に迫って仕留められた男は公式でもかなりの人数に上る。自信過剰で強引な遠野も勿論その一人である。
「女を舐めてたら痛い目みるぞ。お前の婚約者、来年ウチの大学入学するかもしれないんだろ?お前の評判聞いて何て思うだろうな?さっきの話も俺から彼女に説明してやろうか?」
「なっ……冗談だろ」
「さてねー。俺が言わなくても誰かが言うだろ?……自覚が無いって面倒な奴だな」
グサリと釘を刺し、更に最後の一言を呟くように囁いた後、黛は笑いながら控室を出た。
これで暫くは自重するだろう……少なくとも直接連絡先を知らない七海にまで粉を掛けるような真似はしない筈だと、黛は算段した。
普段から名ばかりの婚約者と公言している高校生の彼女の前で、遠野が紳士ぶっているのを黛は知っていた。自分の所業を知られて失望されるのは、かなり堪えるに違いない。
遠野が彼女に対する気持ちを早く自覚しなければ一層傷が深くなるだろう―――初めての恋に向き合うまで遠回りをした先輩としては何となく同情しないでもない。
まあ遠野が失敗しようと失恋しようと本当はどうでも良い、と黛は思った。
彼が七海に変なちょっかいを仕掛けなければ、黛としては満足なのだから。
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遠野が婚約者に泣いて謝る所を書いてみたいです(笑)
でもオチが付かないので小説にならないですねー。ハッピーエンドにするのも躊躇われますし……。
ちなみに婚約者の女の子は、真面目で可愛い子です。今は地味だけど磨けば光る原石のような。
ともあれ、密かに遠野の牽制に成功した黛でした。
お読みいただき、有難うございました。
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