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後日談 黛先生の婚約者
(3)初めてのお泊り?(★)
しおりを挟むR表現はありませんが、男性の生理現象に関する表現がありますので苦手な方は閲覧を回避願います。
※なろう版には掲載しておりません。
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明日は休日と言うある日、黛に合わせて七海が休みを取ってくれた。
と言う訳で、初めてのお泊りである。
玲子の知合いでサックスプレーヤーのメグが黛のマンションに泊まった(本当に宿泊しただけだが)事があると聞いて少しだけ焼きもちを焼いてくれたのを感じた黛は、さり気なくダメ元で「お前も泊まるか?」と聞いてみた。
するとそれまであまり乗り気でなかった七海が、頷いてくれたのだ。
お互いの両親に報告を済ませたれっきとした婚約者同士となったのだ。
今夜父親は学会に出席するため九州へ行っており、ここへは帰って来ない。
黛としては待ちに待ったこの機会を絶対に逃すつもりは無かった。
風呂を勧めたが、七海は後に入りたいと言う。
仕方なく先に浴室に入り体を洗う。湯船に浸かると色々と妄想が逞しくなってしまい、序でにこっそり一度自分を慰めておく事にした。
実は黛はこれまで自分から夜の誘いを掛けた事が無い。七海に断られたあの時が初めての経験だ。アッサリと断られ、頭突きと腹蹴りをお見舞いされて撃退されてしまったが。
その上今までの相手は経験者ばかりで、処女を相手にした事は無かった。
勿論色々と医学的な知識はある。そしてネットでも情報を集めて予習をしてみた。
あまりガッツいて乱暴にするのはご法度で事前に抜いて置く方が良い、とウエブ上のある先輩が自信あり気に投稿していた。そんなに処女相手の経験が豊富な人がいるものなのだろうか……と訝しく思いつつもつい縋ってしまう。
幼馴染の本田には距離が近すぎて、何となく聞けなかった。
どんなに落ち着こうと努力しても、ガッツいてしまう予感がヒシヒシとしてしまう。もしかしたら、逆に起たないかもしれない―――などと柄にも無く不安になった。
色々思い悩んでいたら、すっかりのぼせてしまった。
何しろ長い長い片思いが漸く成就したのだ。あれこれ考えてしまうのはしょうがないかもしれない―――と黛はやっと風呂から出る決心を固めたのだった。
ハーフパンツとTシャツを身に着け、七海に風呂を勧める。
七海が着替えを持って少し恥ずかしそうに脱衣場に消えるのを眺めつつ、缶ビールをプシッと開けて落ち着かない心を静めるように、ゴクゴクと一気に飲み干した。
テレビを見ながらソワソワと待っていると、やがて脱衣場の扉が開く。
その音にどくりと心臓が跳ねた。
風呂上りの七海は大きめのパジャマにしっかりと身を包んでいる。
ホカホカと湯気が立っていて何とも美味しそうだ。既に髪の毛もだいたい乾かし終わっているようで、このまま直ぐに部屋に連れて行けそうだと黛はゴクリと唾を飲み込んだ。
しかし焦りは禁物と―――念仏のように唱え、飲み物をまず勧めた。
ペットボトルのお茶を飲んで、ホッと息を吐いたのを見定めてから、黛は漸く「じゃ、寝るか」と口を開いた。
立ち上がって七海を見下ろすと、意外と落ち着いた瞳と目が合う。
「私はどの部屋に寝たら良い?」
と聞かれて愕然とした。
あまりの台詞に口を聞けずにいると、七海が勝手に了解したと言うように頷いた。
「客間で良かった?お布団あるよね。じゃあ―――おやすみなさい」
そう言うとペコリと頭を下げて、勝手に部屋に下がってしまった。
暫く氷像のようにその場に固まる黛を置き去りにして。
「冗談じゃねえ……!」
意識を取り戻して、慌てて黛は七海の後を追ったのだった。
※なろう版には掲載しておりません。
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明日は休日と言うある日、黛に合わせて七海が休みを取ってくれた。
と言う訳で、初めてのお泊りである。
玲子の知合いでサックスプレーヤーのメグが黛のマンションに泊まった(本当に宿泊しただけだが)事があると聞いて少しだけ焼きもちを焼いてくれたのを感じた黛は、さり気なくダメ元で「お前も泊まるか?」と聞いてみた。
するとそれまであまり乗り気でなかった七海が、頷いてくれたのだ。
お互いの両親に報告を済ませたれっきとした婚約者同士となったのだ。
今夜父親は学会に出席するため九州へ行っており、ここへは帰って来ない。
黛としては待ちに待ったこの機会を絶対に逃すつもりは無かった。
風呂を勧めたが、七海は後に入りたいと言う。
仕方なく先に浴室に入り体を洗う。湯船に浸かると色々と妄想が逞しくなってしまい、序でにこっそり一度自分を慰めておく事にした。
実は黛はこれまで自分から夜の誘いを掛けた事が無い。七海に断られたあの時が初めての経験だ。アッサリと断られ、頭突きと腹蹴りをお見舞いされて撃退されてしまったが。
その上今までの相手は経験者ばかりで、処女を相手にした事は無かった。
勿論色々と医学的な知識はある。そしてネットでも情報を集めて予習をしてみた。
あまりガッツいて乱暴にするのはご法度で事前に抜いて置く方が良い、とウエブ上のある先輩が自信あり気に投稿していた。そんなに処女相手の経験が豊富な人がいるものなのだろうか……と訝しく思いつつもつい縋ってしまう。
幼馴染の本田には距離が近すぎて、何となく聞けなかった。
どんなに落ち着こうと努力しても、ガッツいてしまう予感がヒシヒシとしてしまう。もしかしたら、逆に起たないかもしれない―――などと柄にも無く不安になった。
色々思い悩んでいたら、すっかりのぼせてしまった。
何しろ長い長い片思いが漸く成就したのだ。あれこれ考えてしまうのはしょうがないかもしれない―――と黛はやっと風呂から出る決心を固めたのだった。
ハーフパンツとTシャツを身に着け、七海に風呂を勧める。
七海が着替えを持って少し恥ずかしそうに脱衣場に消えるのを眺めつつ、缶ビールをプシッと開けて落ち着かない心を静めるように、ゴクゴクと一気に飲み干した。
テレビを見ながらソワソワと待っていると、やがて脱衣場の扉が開く。
その音にどくりと心臓が跳ねた。
風呂上りの七海は大きめのパジャマにしっかりと身を包んでいる。
ホカホカと湯気が立っていて何とも美味しそうだ。既に髪の毛もだいたい乾かし終わっているようで、このまま直ぐに部屋に連れて行けそうだと黛はゴクリと唾を飲み込んだ。
しかし焦りは禁物と―――念仏のように唱え、飲み物をまず勧めた。
ペットボトルのお茶を飲んで、ホッと息を吐いたのを見定めてから、黛は漸く「じゃ、寝るか」と口を開いた。
立ち上がって七海を見下ろすと、意外と落ち着いた瞳と目が合う。
「私はどの部屋に寝たら良い?」
と聞かれて愕然とした。
あまりの台詞に口を聞けずにいると、七海が勝手に了解したと言うように頷いた。
「客間で良かった?お布団あるよね。じゃあ―――おやすみなさい」
そう言うとペコリと頭を下げて、勝手に部屋に下がってしまった。
暫く氷像のようにその場に固まる黛を置き去りにして。
「冗談じゃねえ……!」
意識を取り戻して、慌てて黛は七海の後を追ったのだった。
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