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本編 平凡地味子ですが『魔性の女』と呼ばれています。

5.不意打ちはやめてください

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 七海が駅の改札を潜ると、退屈そうに立っている背の高い男が目に入った。
 高校の頃は平均的な身長だったが、その後黛も成長した。バスケ部だった唯の彼氏ほどでは無いが、こうして離れて見るとシルエットだけで結構目立っている。
 元々顔面偏差値が高くて注目されがちなのに、こうなると更に近寄り難い。
 女の子達が振り返ってチラチラ見ているし、通りすがったオジサンがギョッとした顔で二度見したりする。あまりに整っているので芸能人か何か見覚えのある顔ではないかと、確認したくなったのだろう。

(嫌だなぁ……)

 と何となく踏み出せずにいると、七海に気が付いた黛が眉を顰めてズンズンと歩み寄って来た。

「お前なぁ、待ってるの見えてるんなら早く来いよ」
「あ、うん。ゴメン」

 確かに約束しておいて放置したのは悪かったと、七海は素直に謝った。

「おなか空いたって言ってるのに」
「……先に店に行ってればいいじゃない……」

 しかしあんまりグチグチ言うので、イラっとして弱々しく言い返した。

「本気で言ってんの……?」

 立ち止まって目を見開いた黛が、七海の二の腕を掴んだ。
 怒られる……と構えた彼女に最初の一撃が降り下ろされた。



「お前と食べたいから待ってたに決まってるじゃん!寂しい事言うなよ」



 ニヤリ……と笑う顔が格好良すぎて、思わず七海は鼻を覆った。

 掌で確認すると、どうやら鼻血は出ていないようでホッとする。



(勘弁してくれ……!!)



 真っ赤な顔でアタフタする七海を覗き込む黛の瞳に、興味深そうな色が浮かんでいる気がする。


 最近の黛はこんな目をする事が多くなった。
 以前は天然でかましていた『不意打ちイケメン行動』に、何だか意図が見え隠れしているような気がするのは気のせいだろうか……。

 どちらにせよ、こう連発されては身が持たない。
 会う機会が減って、少し寂しく思っていたがやっぱり良かったのかもしれないと考え直す。



 でも心配なので、やっぱり今度献血に行こう―――七海はそう決心した。
 血の気をちょっと薄くした方が、身のためかもしれない……。

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