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第2章『ラクテリア王国進展編』

第16話『ファミリーレストラン・ビジョン開店⑯ついに開店』

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 おもちゃ屋が開店して2週間後、ついに食堂である『ファミリーレストラン・ビジョン』が開店した。

 とりあえず、庶民向けのメニューは一律銅貨70枚、ドリンクバーが銅貨20枚で飲み放題。ただし、お酒は別代金になっている。
 和・洋・中それぞれ3種類、9メニューから選べる。すべて定食にしていて、主食もご飯かパンを選べるというわけだ。
 和食のメニューは、『トンカツ定食』に『唐揚げ定食』に『魚のフライ定食』の3種。
 洋食のメニューは、『ハンバーグ定食』に『オムライス定食』と『カレーライス定食』の3種。
 中華メニューは、『ラーメン定食』と『酢豚定食』に『チャーハン定食』の3種である。

 デザートはこの世界では高価だということで、日替わりにしてみた。
 これなら、別々の日に別々のデザートを楽しめるわけだ。

 貴族向けには庶民メニューのほかにコース料理を用意した。
 コースメニューは『魚』と『肉』の2種類。

 魚のコースメニューは、焼き魚系をメインにムニエルや魚介系フライにマリネなど魚尽くしのコースだ。
 肉のコースは、ステーキをメインにバンバンジーやローストチキンや北京ダックなど肉尽くしコースとなっている

 さらに締めのデザートは、数種類の洋菓子を盛り付けたケーキタワーから選んで食べてもらえるようにしてある。
 もちろんお酒も食前酒からメインまで選べるので楽しめるだろう。
 その分お値段はおひとり様銀貨30枚と高額ではあるが……。

 一般客と同じメニューを選んだ場合、単品でメニューを3つまで追加したうえで、デザートタワーや飲み物を自由に選べて銀貨20枚となっている。


 開店オープンと同時にギルド職員が食べに来てくれたこともあって、あっという間に噂が広まり大盛況となった。

 夕食時は必ず満席となっているので儲けはかなりのものであった。

 ただし、まったく問題がないわけではない。
 一般客を優先するあまり、一部の冒険者たちなどが入店できないことに文句を言う事態に。
 まあ、行儀が悪いと強制的に退店してもらっているので、当然、多くの冒険者たちは入店拒否になってしまったわけだ。
 普通に食事をする分にはなんの問題も無いのに、どうして騒ぎを起こすのか?
 これぞ、冒険者の業というものなのだろうか。

 営業時間も午前11時から夜10時までなので酒場と違って早くに閉まるので居酒屋のような雰囲気は味わえない。
 まあ、最初からそう言うつもりのお店だったのだけど……。

「初日の売り上げが金貨7枚とは出来過ぎだな」
「ですね。値段も少し高めに設定してあるのに大盛況でした」
「味も文句が1つも出なかったのが嬉しかったです」

 レヴンとベレニーを中心に女性陣たちの働きは充分に発揮されて初日から大盛況にもかかわらず何の問題もなく(店側には)運営が出来た。


 連日、子供連れの親子が店内に溢れ、2階では貴族が会食という名の話し合いなどで集まることが多くなった。
 テレビの導入はどちら側にも評判が良く、子供連れの場合は教育番組で食事のマナーなども学べると親御さんに評判が良く、子供たちは子供向けのアニメが楽しめるので店のリーピーターは常に増えている。
 貴族側は大画面に映る自然の雄大さに心を落ち着かせて食事ができることと、話し合いで熱くなったところで音楽が流れれば落ち着きを取り戻せると好評である。
 特に音楽は温度センサーが付いており急激な温度上昇を感知するとオーケストラで優しい選曲が流れるように設定されているので、話し合いが進むということで予約で1ヶ月はいっぱいになっている。

 この景気の良さに黙ってないのが他の飲食店。
 とはいえ、客層はカブってないのだが……。

 まだまだ城塞都市では各種の調味料の使い方が広まっていないこと、あと調理法が焼くか煮るだけなので料理の種類が少ないというのが問題点なのだ。
 そこでギルドから調理講習会を開くことを提案されるようになり、週に2日商会ギルドの会議室で調理講習会が行われるようになり、店はそれぞれの店長に任せて俺は個人的に忙しくなることとなった。

 あー……のんびりしたい。

 そんな感じで商会ギルドに入り浸るようになると、後から後から余計な仕事が舞い込んでくる。
 相談と言う名の強制労働である。

 まあ、肉体的な疲れはないんですけどね。

 地球での知識がなまじあるので、軽い気持ちで相談事を解決したのがいけなかった。
 それ以降、『プロデュース』的な役回りをする羽目になったのだ。

 まずは調理講習会で料理を習っている店からの要望で最も多かったのが、売り上げの向上である。
 そこで俺が提案したのは『差別化』である。

 俺の故郷は郷土料理が多い。
 その調理法も様々で、国ごとに『〇〇料理』と名乗るほど多くある。
 俺の世界でPCを使えば料理法などアッと言う間に情報は手に入る。

 専門店ならカブることもないので、後は個人の適正でどんな専門店にするかだけだ。

 あと地味に多いのが雑貨屋だ。
 店の規模や立地場所によって質の悪い粗悪品やら、怪しげな薬品などを販売している。
 こういうところは店からでなく、住人からの陳情などで問題解決を頼まれるわけだ。

 俺のイメージでは『雑貨=便利なもの』と言う感じなので、まずは店として営業出来ているところは除外。
 粗悪品を売るところ中心に呼び出し、ここでも『差別化』を進める。
 俺が個人で作った『ポーション』を専門的に売る『ポーション屋』や、俺が趣味で作った『魔道具』を専門的に売る『魔道具屋』など。

 アイデアを出して、後はギルドにお任せと言う感じで次に次にと仕事が舞い込んでくる。

 食堂の開店から1ヶ月が経った頃になるとようやく落ち着くことが出来た。
 そんな中で、ルーファス伯爵からの呼び出しとなったのである。


 ◆◆◇◆◆◇◆◆


 ルーファス伯爵からの不穏な話もひと段落し、俺はお土産の品を渡す。

「これは俺からの土産の品です」
「ほう。これは何だい?」
「箱のは甘い菓子です。ご家族で食べてください。あとこちらは伯爵に……うちで作った『お酒』です。果実酒なので飲みやすいですよ」
「甘い菓子とは妻や娘が喜ぶよ。酒は後でゆっくり味合わせてもらう」
「気に入っていただけて良かったです」
「ははっ。ただでさえ菓子と酒と言うだけで嬉しいのに、君のところの物となれば価値が違いすぎるからね。『ビジョン』での食事もようやく予約が取れたところでね。家族からの催促がうるさくてかなわんよ」
「あー……そのうち、増築するのでお待ちください」

 貴族からの要望で食堂の増築を余儀なくされ、今まさに計画中と言う感じである。

「それで、『高級チェス盤と駒』の件なのだが……」
「もしかして個人の物ではなく、王国への献上品ということでしょうか?」
「やはり、分かってしまったか。実は国王がチェスにハマってね。ぜひ個人的な物が欲しいと……」
「お願いされたわけですね」
「そうなるね」
「分かりました。では、最高のチェス盤と駒を用意させてもらいます」

 国にかかわりを持ちたいとも思わないが、女性たちの今後のことも考えるとそうもいかない。
 使える手持ちの駒は多い方がいい。
 特にそれが国王ならなおさらである。

 俺は持てる技術を使って最高のチェス盤と駒を作ることを決意するのだった。 
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