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第1章『開店営業編』

第3話『ビールと冷蔵庫を売ろう』

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「押さないでください。まだ、品物の在庫はたくさんありますから」
「調味料5点セットで銀貨3枚になります。…はい、丁度お預かりします」
「またのお越しをお待ちしております」

 店頭販売を始めて2時間でこの賑わいである。
 始めの1時間は人っ子一人寄り付かなかった。なので戦略を変えてみたのだ。
 『試食販売』を試みたのだ。まあ、『実演販売』とも言うのだが…。
 俺が作ったのは『味噌汁』と『味噌焼き飯』、『お浸し』に『餃子』だ。味噌と砂糖と醤油と酢とラー油を使うので良いと考えてのチョイスだ。
 ま、チョットした定食っぽくなってしまったが、効果は覿面だった。いや、効果あり過ぎで、急遽料理レシピを作成する羽目になったり、味噌汁を作る際、カツオ出汁の素を使ったことで販売をすることになったり、味噌焼き飯に『七輪』を使ったらそれも売ってくれと言う風になり、わずか1時間の間に行列が出来上がったと言うわけだ。
 本来ならバラ売りだけのつもりだったのだが、あまりにも5種類買いが多いことから急遽5点セット売りもしたのだが、さらに火が点き我も我もと押しかけてきたと言うわけだ。
 ちなみ俺は試食作りと発注にかかりっきりになっている。

 結局、夕方まで行列は続いた。
 お客が引いたときはもう暗くなっていた。

「ご苦労様です。二人とも」
「疲れました~」
「こんなに忙しく働いたのは初めてですよ」

 丸椅子に座りグッタリしている2人。
 まあ、無理もない。4時間は働きっぱなしだったもんな。

「丁度夕ご飯の時間になりますし、何か食べませんか?」
「私、餃子が食べたいです」
「僕も」
「了解」

 餃子を焼くために店内の冷蔵室に取りに行く。ついでに冷やしておいたある物・・・・も一緒に持って行く。ついでに発注機で『カップラーメン』をお取り寄せしておく。
 やっぱ、餃子にラーメンに白飯は不動のセットだからな。
 餃子を焼き、お湯を沸かす。カップラーメンにお湯を注ぎ、白飯を盛る。そして…。

「…ケーイチロウ君、これは?」
「これはビールと言うお酒です。このフタをこのようにして開けます。で、コップに注ぐと…」
「おおっ!エールですね」
「でも、冷えてますよ。これは美味そうです」
「やあやあ、良いところに来たようですね」
「クリスさんも一緒にいかがです?」
「ご相伴になります」

 急いでクリスの分を用意する。

「それでは、開店祝いと店の大盛況を祝って――」
「「乾杯!!」」

 乾杯の挨拶の後でグイッとビールを飲む。

「美味い!」
「何これ!?エールじゃないわ」
「エールなんて比べ物にならないくらい美味い!」
「冷えているのが、特に良いわ」
「この咽喉越し、この『シュワシュワ』がたまりません」
「餃子の後に飲むとまた…組み合わせが良い~」

 う~ん…やっぱ、ビールは『スーパーCoolクール』に限るな。『あびす』や『黄龍』も捨てがたいが辛口でキリっとした咽喉越しが俺的には好みだ。

「これは売れるのか?」
「え、ええ…売れますよ」
「ぜひ、売ろう」

 クリスの一言でビールの販売即決。

「ここは冷蔵庫はあるのかな?」
「冷蔵庫?」
「簡単に説明すると物を冷やす箱…だな」
「そう言う物はないな」
「やっぱり…か。冷蔵庫も売ってみるか…」
「それは高いのか?」
「え~と…金貨5枚くらいから高いものだと金貨40枚くらいのまであるな」
「それは結構幅があるわね」
「明日の朝までに用意しておくから確かめて販売できるか決めてくれるかい?」
「了解したわ。じゃあ、難しい話は明日にして、今日は飲むわよー」
「……飲み過ぎないようにね」

 大いに飲んで食べて俺は2階の管理人室で寝た。
 もしかしたらこれは長い夢だったかもしれないと思いながら…。


 ◆◆◇◆◆◇◆◆


「…夢じゃなかったか……」

 そうそう都合のいい話はないか。
 俺は、発注機で朝食を取りよせ食べる。パソコンで動画を見ながらの朝食も悪くない。しかも、最新動画が見られると言うことは、ドラマや映画なんかも登録すれば観られるわけだ。

「さて、とりあえず冷蔵庫の確認だな」

 『こちらで使える』かが1番重要だからな。

 俺は箱物置き場で発注機を使って冷蔵庫を取り寄せる。

「…これ、すでに動いてる?」

 コンセントは…やっぱり無いな。
 しかし、扉を開けてみると冷気が出ている。
 …ん?


 ◆◆◇◆◆◇◆◆


 魔導冷蔵庫(小型)

 紫の魔晶石で動く冷蔵庫。1つの紫の魔晶石で5年間使用可能。
 冷蔵庫の右下に魔晶石をハメ込める魔晶入れがある。


 ◆◆◇◆◆◇◆◆


 おおっ。なんだかよく分からんが、冷蔵庫を凝視していたら説明文が冷蔵庫に浮かび上がった。
 もしかして、これが『鑑定<超絶>』の能力なのか?
 便利なもんだなー…。

「にしても、魔晶石か…」

 発注機で調べると、あった。
 『異世界宝石』の欄に魔晶石の数々が載っていた。魔晶石の相場は金貨1枚くらいだ。
 これなら売れるかもしれないな。

「それじゃあ、幾つか種類を発注しますか…」

 と、その前に『今日のチャージ』をしておく。
 …ぐッ。やっぱHPを持って行かれるのはツライな。
 俺はポーションを飲んでみる。

「――お。辛くなくなった」

 心なしか身体が軽く感じる。
 これは、チャージ後のポーションはワンセットになるな。

 チャージも済んだので魔導冷蔵庫を揃えていく。
 業務用魔導冷蔵庫は金貨80枚もした。売値なら金貨130枚くらいが相場か?
 それにしても、デカいなぁ。食堂とかようにしても場所を取りそうだ。

「ケーイチロウ、来たわよ」
「おはようございます。こちらが、魔導冷蔵庫です」
「結構、種類があるのね」
「1番小さいので売値が金貨8枚ですね」
「この1番大きいのは?」
「金貨130枚です。まあ、業務用なので食堂とかで使うのが良いかと…」
「解体屋でも使えるわね」
「解体屋?」
「冒険者が狩ってきたモンスターを食肉と素材に解体するところよ。解体した者を冷やしたりできれば長持ちするでしょう?」
「なるほどね」

 そうなると業務用魔導冷蔵庫も結構売れるかもしれないな。

「それにしてもこんな『魔道具』があったとはねぇ…」
「他にも色々あるけどね…」
「何か言ったかい?」
「いえ。何も……」

 とりあえず今は人手も無いので自重しよう。
 色々販売しても対処できないしな。

「問題は売っても運ぶ手間が無いことかな…」
「アイテムボックス持ちを雇うのが良いわね」
「アイテムボックス?」
「空間収納庫のことよ。まあ、色々と制限のあるスキルだけど有るのと無いのとでは雲泥の差があるわ。アイテムボックスのスキル持ちはそれだけで生活に困らないのよ」
「理由は分かったけど、そんなに希少なスキルなのか?」
「100人に1人ってところね」

 そこそこアイテムボックス持ちはいるみたいだな。
 大型商品の運び屋として専属の人を雇うは良い判断だな。
 とりあえずアイテムボックス持ち人を2~3人探してもらうことにして、俺は開店準備にかかる。

 ビールも数種類を店の飲料用冷蔵庫に入れて置く。
 店頭に昨日と同じ商品を並べていく。
 ナフィとジョルジュが昨日に引き続き手伝いに来てくれた。
 試食と試飲の用意もでき、開店することにした。

「さあ、今日も1日頑張ろう!」
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