【完結】弱虫だったはずの兄と、負けず嫌いな僕。『if』

ロマネスコ葵

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 まるで、別人が兄の心を乗っ取ってるんじゃないかと思った。

「だ、だから……なんで僕の行動に制限をかけようとする――あっ!!」

 こんな時に、僕の足を捲るように上げて、一生懸命舐めた物を僕の中に挿れようとしてくる。

「っねえ! 話はまだ……っ!」
「話す必要ある?」
「っ!! うっ!?」

 は……挿入って……る……。
 ずぷ、ずぷって。奥をこじ開けるように、来てる、来てるう……!!

「ぁ……!! あっ!!」

 卑猥な粘着音と一緒に、奥まで挿入りこんでる。僕の唾液に塗れたせいか、あっさりと到達してしまった気がする。そして初めての感覚に、全身がガクガクと痙攣を起こす。

「も、だめ……だめえっ! 兄さ、あんっ!」
「可愛いルーツ様、俺だけのルーツ様。他の奴らに挿れられたりしてないよな? こんなキッツキツなんだから、あるわけないよなぁ?」
「な、ない……! ないないない……!! ないよぉ……!! んっ」
「だよな、そんな訳ないよな。知ってたけど」

 僕のがもっとおっきくなって、今にもはちきれそうになる。激しいピストンが終わらない。初めてなのに容赦なく、欲望のままにされちゃうの無理、無理ぃ……! ――出そう、また、またイッちゃう……!!
 
「っく……兄さっ……ベル兄さんんっ……!! イく、イク……!」

 じゅるっ……と貪るように強引なキスが始まる。パン、パン、と音が立ちながら、夢中になって兄さんの舌を味わう。

「る、ルーツ、好き、んっ、好き……好き、好き」

 僕の頭を撫でて、僕の口周りを唾液まみれにさせながら、びゅ、びゅっと僕の中で波打たせた。

「んっ……中、やめて、やぁっ……!!」

 長い長い射精。そして僕も兄の腹部に目掛けて噴射させてしまった。更に、稀に起きる魔力の漏れ。僕もよくやらかしてしまう事があった。理性がぶっ飛んで身も心も快楽に堕ちた時、魔力の制御が儘ならず起きてしまう現象。
 それが兄に発生したのが、感覚で分かってしまった。紛れもなくこの僕が全てを受け止めてしまう事になり、恐らく兄の理想を描いた呪いが僕の体中を蝕んていく。
 あーー、好き、好き、兄さん大好き……。兄さんしかいない。兄さんが居なきゃ生きていけない。なんで今まで女と遊んでたんだろ。兄さんに癒やしてもらえば良かった。気持ちいい、兄さんの竿なしじゃもう無理ぃ……!!

 漸く、お互いに射精が終わると、動きが止まって、唇も離れてしまった。
 もう何もかも終わったはずなのに、僕の体はビクビクと過敏に反応が続いた。

「はぁ、はぁ……ルーツ、返事は?」
「えっ……」
「好き?」
「……好き。僕も、兄さんの事が好き」

 口が勝手に動いてしまう。
 今の僕の状態では、兄と呪力には勝てそうにない。
 そう確信した瞬間だった。


***


 朝、目が覚めると、僕一人だけが意識を取り戻していたのが分かった。
 起きたばかりだからかな……? でも、兄に対する悔しさや妬みは、昨日よりも薄れてきている気がした。怒りや憎しみの負の感情は、相手の存在が遠ざかっていく度に、気持ちを通り越して虚無へと変わるものだと思う。兄が僕より先の道を歩んで、追いつけなくなるくらい離れていくのが怖くなった。
 うーん……なんだか。
 兄は物理的な距離に恐怖を感じ、僕は逆の恐怖を感じてる。……ある意味似た者同士? なのかな。
  
「ん……おはよ、ルーツ」
「兄さん……」

 横でぐっすりと気持ちよさそうに寝ていた兄が、目を擦りながら大きなあくびをした。

「……兄さん、朝から言うのもなんだけど、僕と一緒に居ていいの? 代理団長でしょ? 仲間は?」
「ふあ……全員消えた」
「え?」
「ま、申し訳ないことしたかもな。ルーツがいなくなって、俺も皆に対して疑心暗鬼になって迷惑かけたし」

 ふーん……。絶縁っぽい? 全員と?
 そんな簡単に切れるものか?
 
「……じゃあ、もう皆と会えないって事?」
「会えないな」

 悩むことなく断言する兄。

「ま、どっかで見守ってくれてるよ」
「見守るって……変な話」


 結局、この後も兄さんを説得してなんとか外には出してもらうようお許しを得た。けど条件は、外に出るなら兄も連れてく事。上官になんて説明すればいいんだよと悩まされたが、外面は良い兄だったので、僕の信頼もあってか周りも兄を受け入れ始めていった。

 それから二ヶ月、三ヶ月の月日を経て、兄ももう立派な即戦力となってた。体力有り余る兄には毎晩体を求められた。僕も性欲が余るほどある方だと思うので、途中でついていけなくなったり――とかは無かったな。最初はやっぱり嫌々だったけど、魔力のおかげで精神の負担も多少は安定した。というか、兄がいるから最近女とも会えてない!! ……困ったな。
 連絡もつかないから……今頃、どうしてるんだろう。
 ていうか僕の上官も最近、見ないな。この僕が心配するなんて滅多にない話だけど、多少気にはなっている。

「ルーツ様~早く寝よ?」

 ベッドも毎日二人で使ってる。誘いはいつも兄から。

「その呼び方やめて……」
「なんで? いいじゃん。さ、気持ち良い魔法かけてあげるから」
「くそ……僕ばっかり。なんで兄さんには僕の魔力が効かないんだよ……!」
「無理だよ。何度も言うけど、ルーツ様は俺に勝てないって」

 そうニッコリと微笑む兄は、相も変わらず狂気を感じた。

「ルーツは将来、俺と結婚するんだからな」
「兄弟じゃできないでしょ……。あっ!!」

 また、頭がクラクラしてくる。
 魔力だ。これは兄さんの魔力に違いない。
 また……また……!! いつもいつも催眠のように!!

「僕だって……!!」

 対抗しようとするけど、兄は僕の魔力に何一つ顔色を変えない。
 
「っう……!!」

 だめだ。僕が目眩してきた。

「…………する」
「うん?」
「兄さんと結婚する……愛してるよ。兄さん……いつもの、シて……? いっぱいしたい……」

 そう涙ぐんでお願いすると、僕はいつもの深いキスに墜ちていった。

「俺もルーツが好き……。ずっと一緒。誰にも渡さない。もう逃がさない」
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