辺境伯爵令息は婚約者である王子殿下を溺愛する

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知らされた真実※

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 ノックの音に目が覚めて、ドアを開けるとそこにはレオンハルト様が立っていた。

「どうされたのですか?」

「‥‥‥婚約者の部屋へお休みの挨拶に来るのは、おかしいだろうか?」

「いえ、そんな事は‥‥‥。ただ、私はハリス殿下ではありませんし‥‥‥」

「その事なんだが、少し話がある。中へ入ってもいいか?」

「‥‥‥どうぞ」

 こんな夜更けに何の話だろう? 私は訝しみながらもレオンハルト様を応接スペースにあるソファーへと案内した。

「ああ、そうだ。これを‥‥‥」

 レオンハルト様の手にはオレンジ色のバラの花束が握られていた。私は受け取ると礼を言い、花瓶に花を生けた。

「きれいですね‥‥‥」

「君のほうが綺麗だ」

 振り向くと、レオンハルト様はソファーから立ち上がり、私の横に立っていた。ゼロ距離で見つめられ、息が出来なくなってしまう。

「あの、私は雑貨屋の店主で‥‥‥」

「知っている。私の側近に調べさせた。君の素性もね」

「それなら‥‥‥」

「やられたな。ハリス殿下に謀られたんだよ」

「??」

「君は間違いなく、ハリス殿下の双子の片割れだよ。亡くなったと聞いていたけれどね」

「何を言って‥‥‥」

「これが証拠さ」

 レオンハルト様は私を抱き寄せると、私の上着をめくり、肩と背中の間を指で押した。レオンハルト様の手が素肌に当たる感触に、そこにカサブタみたいなものがあることに気がついた。

「王家の紋章さ‥‥‥。王族の子は攫われることもあるから、成人するまでは肌に魔術刻印をつけるんだよ。知らなかっただろう?」

「まさか?! 私の父と母は、確かに平民でした。私が王子であるはずがありません」

「それなんだ。ハリス殿下の母上は既に亡くなっているが、隣国から嫁いできた花嫁でね‥‥‥。隣国の風習で双子が産まれたら、災が起きるという言い伝えがあったらしいんだ。だから‥‥‥。その事を気に病んだ王妃様は、ハリス殿下の兄である君を処分しようとしたんだ」

 私は本当に自分自身の話なのか、半信半疑のまま話を聞いていた。

「本来なら2番目に産まれた子を処分するはずが、君がオメガ性だという理由だけで、処分対象にされてしまったんだ」

「え? 何を言っているんですか? 私はβベータですよ」

「それが‥‥‥。どういう訳か、君は呪いを掛けられている。今日採寸したときに、背中を見せてもらったんだが、魔法陣が小さく描かれていた。成人して、婚約者や好きな人が現れるまで発情しないという、呪いの魔法陣が描かれていたよ。誰が何のために描いたのかは、さすがに分からないけれど‥‥‥」

「婚約者‥‥‥。まさか?!」

「君は私の本当の婚約者では無かった。だから、私と一緒にいても大丈夫だったんだろう。君の母親は18年前まで、王妃の専属メイドだったという記録が残っている。でも何故か、君が産まれた後に姿を消してしまっていた」

「‥‥‥」

 私はレオンハルト様の話を聞くうちに、自分が置かれている立場が、危ういものではないかと思い始めていた。

「こんなに綺麗な男性がβな訳、無いだろう?」

 レオンハルト様は私の顎を掴むと、近距離で私を見つめていた。

「や、やめてください。んっ‥‥‥」

 レオンハルト様は唇を重ね合わせるようにキスをすると、私に覆いかぶさる様に抱きしめてきた。

「私と結婚してくれないか?」


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