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身代わり
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「‥‥‥今、何ておっしゃいましたか?」
「だから、その‥‥‥。いなくなったハリス殿下の代わりをお願いしたいと思っております」
「殿下? 殿下って、あの第3王子のハリス殿下ですか?」
「はい。あの殿下です」
第3王子のハリス殿下は、問題を起こす事で有名な王子だという噂を聞いたことがある。
「いえ、それは流石に無理が‥‥‥。所作だって出来ませんし、殿下にお会いしたこともないのにフリなどと‥‥‥」
「貴方様には、この間と今日しかお会いしておりませんが、所作は殿下より出来るているので、問題ないでしょう。辺境伯爵令息がいらっしゃる2週間の間でいいのです。実際に伯爵令息にお会いすることもありませんし、2週間、城で過ごしていただければ家に帰っていただいても問題ありません。謝礼は後ほどタップリ致しますので‥‥‥」
「謝礼?」
「はい。最低でもこれくらいは考えております」
男性は右手を出すと、手のひらを見せ指を広げた。
「50‥‥‥。金貨50枚ということですか?」
「いえ、500枚でございます。まずは手付金にこちらをどうぞ」
眼の前に差し出された小さな麻袋には、金貨50枚が入っていた。これがあれば、木箱の代金を支払った後に、店の立て直しが出来ると思ってしまう。
「すみません。有り難いお話なのですが、店を閉める訳にもいきませんし‥‥‥」
「そうお考えになられると思いまして、商業ギルドから10人ほど人を雇い入れまして、連れて参りました。また、城から経営ノウハウに詳しい人間を1人追加する予定です」
「えっ‥‥‥」
あまりの用意周到さ加減に、恐ろしくなってしまう。
「2週間。2週間だけでいいので‥‥‥。どうか、お願い致します」
初老の男性の、あまりにも必死な様子に、私はそれ以上、何も言えなくなってしまっていた。
「2週間だけですよね?!」
「はい。2週間経って家に帰れない状況になった場合、ご自分で家に帰られても、誰も文句は言いません。お約束致します」
「分かりました。よろしくお願い致します」
私が頭を下げると、男性は飛び上がる様にして喜んだ。
「申し遅れました。私、ハリス殿下の侍従をしております、トルネスと申します」
「エドワードです。よろしくお願い致します」
「‥‥‥さっそくで申し訳ありませんが、馬車を店の前に停めてありますので、そちらで城までお願い致します」
「馬車?! 今日でないとダメなんでしょうか?色々と準備が‥‥‥」
「明日の朝、辺境伯爵令息のレオンハルト様がいらっしゃいます。城にいなければ、怪しまれるでしょう」
「えっ、明日ですか?」
「はい。明日からの2週間、レオンハルト様は城に滞在する予定でございます。必要な生活必需品は城で全てご用意させていただきますので、ご安心ください」
家のことが気になりつつも、階段を降りていくと、店の中には10名の若者達がいた。
「これって‥‥‥」
「店長、留守の間のことはお任せください」
若者達に取り囲まれている祖父は、にこやかに手を振っていた。
「エディ。しばらくの間、城で商談があるんだろう?私の事は気にせず、行ってきなさい」
『城で商談がある』どうやら、祖父にはそう説明したらしかった。
「‥‥‥じいちゃん、行ってくるよ。2週間なんてあっという間だからさ、すぐに戻ってくるよ」
「ああ、行っといで。後でどんな事があったか教えてくれ」
本当のことを話したら、じいちゃんは目玉が飛び出るくらいびっくりして反対するだろう。
「‥‥‥うん、分かった」
私は家の前に停めてあった馬車へそのまま乗り込むと、城へ向かったのだった。
「だから、その‥‥‥。いなくなったハリス殿下の代わりをお願いしたいと思っております」
「殿下? 殿下って、あの第3王子のハリス殿下ですか?」
「はい。あの殿下です」
第3王子のハリス殿下は、問題を起こす事で有名な王子だという噂を聞いたことがある。
「いえ、それは流石に無理が‥‥‥。所作だって出来ませんし、殿下にお会いしたこともないのにフリなどと‥‥‥」
「貴方様には、この間と今日しかお会いしておりませんが、所作は殿下より出来るているので、問題ないでしょう。辺境伯爵令息がいらっしゃる2週間の間でいいのです。実際に伯爵令息にお会いすることもありませんし、2週間、城で過ごしていただければ家に帰っていただいても問題ありません。謝礼は後ほどタップリ致しますので‥‥‥」
「謝礼?」
「はい。最低でもこれくらいは考えております」
男性は右手を出すと、手のひらを見せ指を広げた。
「50‥‥‥。金貨50枚ということですか?」
「いえ、500枚でございます。まずは手付金にこちらをどうぞ」
眼の前に差し出された小さな麻袋には、金貨50枚が入っていた。これがあれば、木箱の代金を支払った後に、店の立て直しが出来ると思ってしまう。
「すみません。有り難いお話なのですが、店を閉める訳にもいきませんし‥‥‥」
「そうお考えになられると思いまして、商業ギルドから10人ほど人を雇い入れまして、連れて参りました。また、城から経営ノウハウに詳しい人間を1人追加する予定です」
「えっ‥‥‥」
あまりの用意周到さ加減に、恐ろしくなってしまう。
「2週間。2週間だけでいいので‥‥‥。どうか、お願い致します」
初老の男性の、あまりにも必死な様子に、私はそれ以上、何も言えなくなってしまっていた。
「2週間だけですよね?!」
「はい。2週間経って家に帰れない状況になった場合、ご自分で家に帰られても、誰も文句は言いません。お約束致します」
「分かりました。よろしくお願い致します」
私が頭を下げると、男性は飛び上がる様にして喜んだ。
「申し遅れました。私、ハリス殿下の侍従をしております、トルネスと申します」
「エドワードです。よろしくお願い致します」
「‥‥‥さっそくで申し訳ありませんが、馬車を店の前に停めてありますので、そちらで城までお願い致します」
「馬車?! 今日でないとダメなんでしょうか?色々と準備が‥‥‥」
「明日の朝、辺境伯爵令息のレオンハルト様がいらっしゃいます。城にいなければ、怪しまれるでしょう」
「えっ、明日ですか?」
「はい。明日からの2週間、レオンハルト様は城に滞在する予定でございます。必要な生活必需品は城で全てご用意させていただきますので、ご安心ください」
家のことが気になりつつも、階段を降りていくと、店の中には10名の若者達がいた。
「これって‥‥‥」
「店長、留守の間のことはお任せください」
若者達に取り囲まれている祖父は、にこやかに手を振っていた。
「エディ。しばらくの間、城で商談があるんだろう?私の事は気にせず、行ってきなさい」
『城で商談がある』どうやら、祖父にはそう説明したらしかった。
「‥‥‥じいちゃん、行ってくるよ。2週間なんてあっという間だからさ、すぐに戻ってくるよ」
「ああ、行っといで。後でどんな事があったか教えてくれ」
本当のことを話したら、じいちゃんは目玉が飛び出るくらいびっくりして反対するだろう。
「‥‥‥うん、分かった」
私は家の前に停めてあった馬車へそのまま乗り込むと、城へ向かったのだった。
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