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新しい恋の始まり※
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目を覚ますと、俺は王城内にある私室のベッドに寝ていた。ベッドの傍らにはフェイ殿下が椅子にもたれ掛かりながら寝ており、俺が起きると、フェイ殿下も目を覚ましたのか側に来て手を握っていた。
「スミス様、大丈夫ですか? 心配だったので、お医者様に診てもらいました。背骨にヒビが入っていて、治癒術を施したそうです。『今日から3日間は、患部を動かさず、安静にしているように』と言われています」
「そうか‥‥‥」
俺が起き上がろうとすると、フェイ殿下はすかさず、俺の腰に手を当てていた。
「聞いてましたか? 絶対安静ですよ??」
「でも、寝たきりって訳にも‥‥‥」
「僕のせいでスミス様はケガを負ってしまわれたのです。僕のせいです。回復するまで、僕に面倒を見させてください」
「そんな気にしなくても‥‥‥」
「いいえ、駄目です」
フェイ殿下は、俺を再びベッドへ寝かせると腕組みをしながら、こちらを睨むように仁王立ちで立っていた。
「分かった、お願いするから、そんなに睨まないでくれ。すまないが、水を飲みたいんだ。何処かに水は‥‥‥」
そう言うと、フェイ殿下はサイドテーブルから水差しを持ってきていた。それを、どうするつもりなのだろうか‥‥‥。と、その時の俺は漠然と考えながら、その光景を眺めていた。
「それ、コップ‥‥‥」
「必要ですよ」そう言う前に、フェイ殿下は水差しの水を口に含み、俺に口移しで水を飲ませていた。急な水分補給に咽せそうになったが、何とか水を飲み込むと、俺はフェイ殿下に文句を言った。
「おまっ‥‥‥。コップあるだろ!!」
フェイ殿下とキスをしてしまった驚きと動揺で、俺の顔は勝手に熱くなっていった。
「スミス様‥‥‥。何で顔が赤くなってるんです? 僕のこと好きなんだって、勘違いしちゃいますよ?」
「‥‥‥」
「え?」
「‥‥‥」
「それとも、恥ずかしかっただけですか?」
「‥‥‥」
「何とか言ってくださいよ、もう!!」
フェイ殿下は、何故か再び水差しの水を口に含んでいた。俺は訳が分からなくて、つい口走ってしまう。
「‥‥‥好きなんだと思う」
「え?」
声が小さすぎて聞こえなかったのか、フェイ殿下は首を傾げていた。
「いや、何でもない」
所詮、俺はオジサンだ‥‥‥。30過ぎのオッサンに新しい恋は無理なんだよ。そう思ってベッドからフェイ殿下を見上げると、フェイ殿下は水差しをサイドテーブルへ戻し、内ポケットから棒状の物を取り出していた。
フェイ殿下は、棒状の魔術具らしき物のボタンを押すと、俺の近くへ持ってきた。
『‥‥‥好きなんだと思う』
「!!」
さっき言った俺の声が、その棒状の物から聞こえてきた。
「何これ‥‥‥」
「これは、記録魔術具と言って、自分の半径1メートル以内の会話を、記録することが出来る魔術具なんですよ」
『‥‥‥好きなんだと思う』
フェイ殿下は再び俺の声を流していた。
「止めてくれ」
「止めてもいいですが、この会話の内容に異議はありますか?」
「ないです」
「じゃあ、さっそく陛下に『言質とった』って報告してきますね」
「えっ、ちょっと、まっ‥‥‥」
フェイ殿下はドアの前で一度立ち止まると振り返り、こちらへ戻ってきて俺の額にキスをした。
「愛しています。スミス様‥‥‥。今も昔も、ずっと」
「‥‥‥知ってる」
フェイ殿下は微笑むと、スキップをしそうな足取りで部屋を出ていったのだった。
「スミス様、大丈夫ですか? 心配だったので、お医者様に診てもらいました。背骨にヒビが入っていて、治癒術を施したそうです。『今日から3日間は、患部を動かさず、安静にしているように』と言われています」
「そうか‥‥‥」
俺が起き上がろうとすると、フェイ殿下はすかさず、俺の腰に手を当てていた。
「聞いてましたか? 絶対安静ですよ??」
「でも、寝たきりって訳にも‥‥‥」
「僕のせいでスミス様はケガを負ってしまわれたのです。僕のせいです。回復するまで、僕に面倒を見させてください」
「そんな気にしなくても‥‥‥」
「いいえ、駄目です」
フェイ殿下は、俺を再びベッドへ寝かせると腕組みをしながら、こちらを睨むように仁王立ちで立っていた。
「分かった、お願いするから、そんなに睨まないでくれ。すまないが、水を飲みたいんだ。何処かに水は‥‥‥」
そう言うと、フェイ殿下はサイドテーブルから水差しを持ってきていた。それを、どうするつもりなのだろうか‥‥‥。と、その時の俺は漠然と考えながら、その光景を眺めていた。
「それ、コップ‥‥‥」
「必要ですよ」そう言う前に、フェイ殿下は水差しの水を口に含み、俺に口移しで水を飲ませていた。急な水分補給に咽せそうになったが、何とか水を飲み込むと、俺はフェイ殿下に文句を言った。
「おまっ‥‥‥。コップあるだろ!!」
フェイ殿下とキスをしてしまった驚きと動揺で、俺の顔は勝手に熱くなっていった。
「スミス様‥‥‥。何で顔が赤くなってるんです? 僕のこと好きなんだって、勘違いしちゃいますよ?」
「‥‥‥」
「え?」
「‥‥‥」
「それとも、恥ずかしかっただけですか?」
「‥‥‥」
「何とか言ってくださいよ、もう!!」
フェイ殿下は、何故か再び水差しの水を口に含んでいた。俺は訳が分からなくて、つい口走ってしまう。
「‥‥‥好きなんだと思う」
「え?」
声が小さすぎて聞こえなかったのか、フェイ殿下は首を傾げていた。
「いや、何でもない」
所詮、俺はオジサンだ‥‥‥。30過ぎのオッサンに新しい恋は無理なんだよ。そう思ってベッドからフェイ殿下を見上げると、フェイ殿下は水差しをサイドテーブルへ戻し、内ポケットから棒状の物を取り出していた。
フェイ殿下は、棒状の魔術具らしき物のボタンを押すと、俺の近くへ持ってきた。
『‥‥‥好きなんだと思う』
「!!」
さっき言った俺の声が、その棒状の物から聞こえてきた。
「何これ‥‥‥」
「これは、記録魔術具と言って、自分の半径1メートル以内の会話を、記録することが出来る魔術具なんですよ」
『‥‥‥好きなんだと思う』
フェイ殿下は再び俺の声を流していた。
「止めてくれ」
「止めてもいいですが、この会話の内容に異議はありますか?」
「ないです」
「じゃあ、さっそく陛下に『言質とった』って報告してきますね」
「えっ、ちょっと、まっ‥‥‥」
フェイ殿下はドアの前で一度立ち止まると振り返り、こちらへ戻ってきて俺の額にキスをした。
「愛しています。スミス様‥‥‥。今も昔も、ずっと」
「‥‥‥知ってる」
フェイ殿下は微笑むと、スキップをしそうな足取りで部屋を出ていったのだった。
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