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第3王子

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「彼は、先王の息子である第11王子の息子です」

「そういや、子供の頃は王子がいっぱいいたな。で? 何で、その息子がここにいるんだ? 第11王子って言えば、市井に下ってあきないをしていたハズだろ?」

「それが、12年前に元王子が商売をしていた店で火事がありまして‥‥‥。フェイ殿下は、たまたま近所に遊びに行っていて助かったのですが、元王子とその奥様は亡くなってしまわれたのです」

「‥‥‥」

「スミス様、この髪色を見て何か思い出しませんか?」

「髪色‥‥‥。あ、もしかして副団長の事件の時の子か?」

「はい。あの日、奴隷商に誘拐され、城に保護されたと見せかけて、副団長に監禁されていたのが、ここにいるフェイ殿下だったのです」

「じゃあ‥‥‥。引き取ったんだな? 王家が」

「ええ‥‥‥。髪色が珍しく、また誘拐されてしまうかもしれないのと、殿下がオメガ性でいらっしゃいますので、孤児院にいては、そのうち暮らしづらくなるだろうと、陛下がそう仰いまして‥‥‥」

「オメガ性って、俺の親友ぐらいかと思ってたよ」

「王弟殿下の奥様‥‥‥。クリス妃ですね? 聞きおよんでおります。今の時代、オメガ性は少ないですからね‥‥‥。そういう方が側にいれば、殿下も少なからず、心強いことでしょう」

「で? 何で穴が掘ってあるんだ?」

「それは、その‥‥‥。近々、植林の予定があるので、先に穴を掘っていたんです。昨日、殿下とクリス様で掘っていらっしゃいましたから‥‥‥」

「久々に城に来たら、こんな‥‥‥。俺は公爵家で公爵の仕事だけしていたいんだが」

「それは、陛下に言ってください。それに、狭い中庭を突っ切る貴族なんて、いると思わないじゃないですか」

「‥‥‥」

 俺が閉口していると、水色の髪をした青年‥‥‥。フェイ殿下が、俺へ手を差し出していた。長い前髪と肩まで伸びた髪で顔が隠れていて、今まで顔が良く分からなかったが、手を掴んで引っ張り上げられる時になってから気がついた。

「なんだ、クリス以上に美人じゃないか」

「ちょっと、ちょっと。殿下に触れないでくださいよ? 婿入り前なんですから」

「え‥‥‥。あ、ああ」

 フェイ殿下は、水色のハンカチをポケットから取り出すと俺に差し出していた。前髪から覗く綺麗なアメジストの瞳に見つめられ、俺は子供の前で何をやっているのだろうと、少し恥ずかしくなった。

「ありがとな」

「‥‥‥はい」

 俺はそのハンカチでズボンの泥を払うと、そのまま執務室へ向かったのだった。


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