1 / 12
大捕物
しおりを挟む
「スミス様、こちらですっ‥‥‥」
俺は見慣れた城の中の回廊を走り回り、息が上がっていた‥‥‥。急がなければ、少年の命がないという。
「本当なのか? 今日、人体実験が行われるというのはっ‥‥‥」
俺が息も絶え絶えに騎士に質問すると、一緒に来ていた騎士は、自信ありげに答えていた。
「間違いありません‥‥‥。あの方は、早く仕事を切り上げておられましたし、実験室の鍵も持ち出された事が、確認されています」
「そうか‥‥‥」
魔術師団の団長が反逆罪の罪で捉えられてから半年‥‥‥。団長の座は未だに空席だった。今の魔術師団は、よくない噂しか耳にしない。現に──今、向かっている魔術師団、副団長のイーリヤは、経費を誤魔化して私腹を肥やし、奴隷商から奴隷を引き取っては、人体実験を行っているという。
「人体実験か‥‥‥。何を考えてるんだか」
俺は先日、叔父から公爵の地位を譲り受け、今の職場を今月末で退職する予定だったが、どういう訳か『大捕物』に参加させられていた。
俺の城での所属は、魔術師団長が捕まった時に新しく設置された『監視管理団』だった。
その名の通り、城内で規律の乱れがないか、若しくは不正が行われていないかを『監視・管理』をする仕事だ。
プレイボーイだと思われている俺には、1番向いてない職場だった。
「スミスは、ああ見えて真面目だからなぁ。いいと思うよ」
メンバーの選定に困っていた宰相閣下は、陛下のひと言で、俺の所属先を決めてしまった。確かに俺は『ちゃらんぽらん』に見えて実は真面目だ‥‥‥。だが、違うだろ。
実験室の前に辿り着いと、部屋の中から啜り泣く声が聞こえ、悲鳴が上がった。
「監視管理団第一部隊所属のスミス・サクフォンだ‥‥‥。ドアを開けろ。でなけりゃ蹴破るぞ」
「スミス様、もっとお手柔らかに~」
騎士が何か言っているが、小声すぎて聞こえなかった。中で物を退かしたりする音を聞いて、証拠を消されては不味いと思い、ドアを蹴破った。
「なっ‥‥‥。お前は!!」
水色の髪をした少年が鎖に繋がれているのが目に入った瞬間、俺はイーリヤ副団長を張り倒していた。
「す、スミス様~やり過ぎです。その人、死んじゃいます!!」
騎士が俺の手を掴んで、ハッとした‥‥‥。頭を掌で掴み、床に叩きつけていたのだ。
俺は掴んでいた頭を床へ放り投げると、少年の元へ走った。6才くらいに見えるその子供は、両手に手錠を掛けられ、全裸でベットの上で蹲っていた。俺は着ていた上着を少年に着せると、抱え込むように抱きしめていた。
「怖かったな‥‥‥。もう大丈夫だ」
震える少年を抱きしめ、俺は少年の背中を撫で続けた。
「良かった。この人、死んでなかったですよ、スミス様‥‥‥。もう!! 管理団の仕事は、皆に規律を守らせることが仕事なんですよ? 何やってるんですか?」
「すまん。俺は来月、退職予定だし‥‥‥。後は、お前に任せた」
「はあぁ?! 聞いてませんけど!! しかも、俺は騎士団所属だし!!」
「俺の方から、叔父上に推薦しとくよ」
俺は少年を優しく抱え上げると、「ギャーピー」うるさい騎士を現場に残して、少年を医務室へ運んだのだった。
俺は見慣れた城の中の回廊を走り回り、息が上がっていた‥‥‥。急がなければ、少年の命がないという。
「本当なのか? 今日、人体実験が行われるというのはっ‥‥‥」
俺が息も絶え絶えに騎士に質問すると、一緒に来ていた騎士は、自信ありげに答えていた。
「間違いありません‥‥‥。あの方は、早く仕事を切り上げておられましたし、実験室の鍵も持ち出された事が、確認されています」
「そうか‥‥‥」
魔術師団の団長が反逆罪の罪で捉えられてから半年‥‥‥。団長の座は未だに空席だった。今の魔術師団は、よくない噂しか耳にしない。現に──今、向かっている魔術師団、副団長のイーリヤは、経費を誤魔化して私腹を肥やし、奴隷商から奴隷を引き取っては、人体実験を行っているという。
「人体実験か‥‥‥。何を考えてるんだか」
俺は先日、叔父から公爵の地位を譲り受け、今の職場を今月末で退職する予定だったが、どういう訳か『大捕物』に参加させられていた。
俺の城での所属は、魔術師団長が捕まった時に新しく設置された『監視管理団』だった。
その名の通り、城内で規律の乱れがないか、若しくは不正が行われていないかを『監視・管理』をする仕事だ。
プレイボーイだと思われている俺には、1番向いてない職場だった。
「スミスは、ああ見えて真面目だからなぁ。いいと思うよ」
メンバーの選定に困っていた宰相閣下は、陛下のひと言で、俺の所属先を決めてしまった。確かに俺は『ちゃらんぽらん』に見えて実は真面目だ‥‥‥。だが、違うだろ。
実験室の前に辿り着いと、部屋の中から啜り泣く声が聞こえ、悲鳴が上がった。
「監視管理団第一部隊所属のスミス・サクフォンだ‥‥‥。ドアを開けろ。でなけりゃ蹴破るぞ」
「スミス様、もっとお手柔らかに~」
騎士が何か言っているが、小声すぎて聞こえなかった。中で物を退かしたりする音を聞いて、証拠を消されては不味いと思い、ドアを蹴破った。
「なっ‥‥‥。お前は!!」
水色の髪をした少年が鎖に繋がれているのが目に入った瞬間、俺はイーリヤ副団長を張り倒していた。
「す、スミス様~やり過ぎです。その人、死んじゃいます!!」
騎士が俺の手を掴んで、ハッとした‥‥‥。頭を掌で掴み、床に叩きつけていたのだ。
俺は掴んでいた頭を床へ放り投げると、少年の元へ走った。6才くらいに見えるその子供は、両手に手錠を掛けられ、全裸でベットの上で蹲っていた。俺は着ていた上着を少年に着せると、抱え込むように抱きしめていた。
「怖かったな‥‥‥。もう大丈夫だ」
震える少年を抱きしめ、俺は少年の背中を撫で続けた。
「良かった。この人、死んでなかったですよ、スミス様‥‥‥。もう!! 管理団の仕事は、皆に規律を守らせることが仕事なんですよ? 何やってるんですか?」
「すまん。俺は来月、退職予定だし‥‥‥。後は、お前に任せた」
「はあぁ?! 聞いてませんけど!! しかも、俺は騎士団所属だし!!」
「俺の方から、叔父上に推薦しとくよ」
俺は少年を優しく抱え上げると、「ギャーピー」うるさい騎士を現場に残して、少年を医務室へ運んだのだった。
38
お気に入りに追加
145
あなたにおすすめの小説
嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う
hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。
それはビッチングによるものだった。
幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。
国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。
※不定期更新になります。
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる