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卒業パーティー

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 それから何日か経つと国外で紛争が起き、両国間での話し合いの場を設けるために、仲裁役として国王陛下は出掛けていった。


 卒業式の今日、休戦協定の調印式が行われると言うことで、卒業パーティーへは国王代理でスウォン殿下が来ていた。婚約者同士で踊るパーティーへはスウォン殿下が代わりに参加してくれるとの事だった。


「一緒に踊っていただけますか?」


 スウォン殿下が、予定通り私へダンスの申し込みをしてきたので、私は微笑みながら首を傾げ、手を差し出した。


「喜んで」


 私が殿下の出してくれた手を掴むと、殿下に身体を引き寄せられ、ワルツが始まった。


「すまないね‥‥‥。陛下でなくて」


「いえ。代理で来ていただけて良かったです。卒業パーティーへ参加出来ないところでした。ありがとうございます」


 貴族の令嬢子息が通う学園では、卒業式の後にダンスパーティーがいつも行われていた。


 ダンスホールへの入場にはパートナーが必須で、社交が行われるパーティーへは貴族の参加は不可欠だった。会場の外では、まだ相手を捜している人もいる。


 1フレーズ終わると、周りで見ていたいたパーティーの参加者達も踊り出した。合図をしたかのように、みな同じタイミングで踊り出すのが、私はいつもおかしくて笑ってしまう。


「‥‥‥どうかしたの?」


「いえ‥‥‥。すみません」


 殿下は踊っている途中で、曲と曲の合間に私の顔に掛かった髪にさりげなく触れて、耳に掛けてくれていた。


「綺麗な銀髪だね‥‥‥。君は、陛下のことは好き?」


「いいえ。『好き』と『結婚』は違いますから」


「そうなの?」


「貴族ですから‥‥‥。好きな人とは、結ばれないと思っています。最初から諦めておけば、後からガッカリすることもありませんし、1年くらい辛抱して無理だったら、陛下に隠居させてもらえないか相談してみようかと思って‥‥‥。無理かもしれませんが」


「‥‥‥陛下に?」


「ええ‥‥‥。陛下に」


「無理だろうね‥‥‥」


「そうですか。やはり男児が産まれなければ、隠居は難しいですよね」


「いや、そうじゃなくて‥‥‥。こんな綺麗な子、陛下が簡単に手放す訳ないじゃないか」


「‥‥‥‥‥‥え?」


「まさか無自覚?」


「だって、私、男ですよ??」


「私は、こんなに美しい人は見たことがないと思っている」


「‥‥‥」


「‥‥‥君が17番目でなければ良かったのに」


「口説いてるんですか?」


「‥‥‥まあね」


 殿下は金髪の髪を揺らしながら優雅に踊っていた。時々流し目でこちらを見ては、微笑むのでドキドキしてしまう。


「ダンス、お上手ですね」


「ありがとう‥‥‥。出来れば、これからも、ずっと一緒に踊って欲しい」


 プロポーズに近い言葉を投げかけられ、私はダンスの途中で立ち止まってしまう。


「‥‥‥本気ですか?」


 私がホールの真ん中で立ち止まっていると、いつの間にか周りも踊るのを止めてしまい、曲が止んでいた。


 殿下は私の右手を持ち上げると、恭しく手の甲にキスをしてから言った。


「エレノア・マクレーン、一目見たときから君のことが気になっていた。陛下と正式に会う前に‥‥‥。どうか私と結婚を前提にお付き合いしていただけないだろうか?」


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