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魔族の掟
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身体が熱くて、夜中に目が覚めた。ベッドから起き上がると、ソファーでファビエルくんが寝ていた。
ファビエルくんは、僕が起きたのに気がつくとベッドの側に駆け寄ってきた。
「どう? 身体の具合は?」
「‥‥‥熱いよ」
「やっぱり、ダメだったか」
「やっぱり?」
「いや、すまない。事前に説明しておけば良かったんだが‥‥‥。魔族領で魔力の無い人族は、基本的に生きていけないんだ」
「えっ‥‥‥」
「でも、多少の魔力はあるから1ヶ月くらいは保つだろうと、さっき医者に言われたんだ。不安にさせたくないから黙ってた‥‥‥。ごめん」
「そんな‥‥‥。僕は、ここで死ぬってこと?」
「そんな事には、俺がさせない。だから、今夜は我慢してほしい」
「我慢?」
「俺の魔力をリューンへ注ぐ」
「そんな事出来るの?」
「‥‥‥ああ」
「どうかしたの?」
ファビエルくんは、気まずそうに俯き、何かを言おうとしては、また俯いていた。
「その‥‥‥。身体を繋げなければならないんだ。契りを交わせば、魔力を注ぐことは可能だ」
「魔力を注ぐ? それって‥‥‥。ファビエルくんは、僕でいいの?」
「本当の事を言うと、ちゃんと手順を踏みたかったんだ。レイル伯爵には、君との結婚を打診をしている‥‥‥。はぐらかされてしまっているが、もう少し大人になったら考えてみるとは言われていたんだ‥‥‥」
「ファビエルくんって、もしかして‥‥‥」
「俺は、この国の魔王領の領主の息子だ。ゆくゆくは、領主の地位を継いで、叔父である魔王の補佐をする事になっている」
「魔王‥‥‥。それなら、僕じゃなくても」
「いや、君じゃなきゃダメなんだ。俺は君以外の人は好きになることが出来なかった。魔族領の掟では、好きな人と結婚するのが決まりになっている」
「でも、僕は子供が産めないよ?」
「関係ない。魔族領では、魔術によって男性でも子供が普通に産めるからね‥‥‥。魔族領では、男性と女性が結婚するという概念はないんだよ」
「でも‥‥‥」
「リューン‥‥‥。俺は、君を失いたくない。もし嫌になったら、実家に帰って貰っても構わない。命だけは助けさせてくれないか?」
ファビエルくんの真剣な瞳に、僕は頷かざるを得なかった。
ファビエルくんは、僕が起きたのに気がつくとベッドの側に駆け寄ってきた。
「どう? 身体の具合は?」
「‥‥‥熱いよ」
「やっぱり、ダメだったか」
「やっぱり?」
「いや、すまない。事前に説明しておけば良かったんだが‥‥‥。魔族領で魔力の無い人族は、基本的に生きていけないんだ」
「えっ‥‥‥」
「でも、多少の魔力はあるから1ヶ月くらいは保つだろうと、さっき医者に言われたんだ。不安にさせたくないから黙ってた‥‥‥。ごめん」
「そんな‥‥‥。僕は、ここで死ぬってこと?」
「そんな事には、俺がさせない。だから、今夜は我慢してほしい」
「我慢?」
「俺の魔力をリューンへ注ぐ」
「そんな事出来るの?」
「‥‥‥ああ」
「どうかしたの?」
ファビエルくんは、気まずそうに俯き、何かを言おうとしては、また俯いていた。
「その‥‥‥。身体を繋げなければならないんだ。契りを交わせば、魔力を注ぐことは可能だ」
「魔力を注ぐ? それって‥‥‥。ファビエルくんは、僕でいいの?」
「本当の事を言うと、ちゃんと手順を踏みたかったんだ。レイル伯爵には、君との結婚を打診をしている‥‥‥。はぐらかされてしまっているが、もう少し大人になったら考えてみるとは言われていたんだ‥‥‥」
「ファビエルくんって、もしかして‥‥‥」
「俺は、この国の魔王領の領主の息子だ。ゆくゆくは、領主の地位を継いで、叔父である魔王の補佐をする事になっている」
「魔王‥‥‥。それなら、僕じゃなくても」
「いや、君じゃなきゃダメなんだ。俺は君以外の人は好きになることが出来なかった。魔族領の掟では、好きな人と結婚するのが決まりになっている」
「でも、僕は子供が産めないよ?」
「関係ない。魔族領では、魔術によって男性でも子供が普通に産めるからね‥‥‥。魔族領では、男性と女性が結婚するという概念はないんだよ」
「でも‥‥‥」
「リューン‥‥‥。俺は、君を失いたくない。もし嫌になったら、実家に帰って貰っても構わない。命だけは助けさせてくれないか?」
ファビエルくんの真剣な瞳に、僕は頷かざるを得なかった。
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