伯爵令息になった第8王子は、魔族の次期領主に溺愛される

Matcha45

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 次の日の朝。部屋の外が騒がしくて目が覚めると、ベッドから起き上がって、姿見の前で昨日の夜に手渡された洋服を着てみた。体型が隠れるワンピースみたいな服だったが、胸元に金の刺繍が施してあった。

「おはよう、リューン」

「ファビエル‥‥‥。これ、変じゃない?」

「いや、似合ってる」

 ファビエルくんは僕を抱きしめると、額にキスをした。

「額にキスをするのって魔族領での習慣?」

「いや‥‥‥。でも、キスをしておけば、誰のものか分かるし、他の奴は手を出したり出来ないと思うから」

(もしかして、城の中でも危険があるのか? それなら、あまり出歩かない方がいいかもな‥‥‥)

「危険だから、あまり出歩かない方がいい?」

「‥‥‥そうだね」

「分かった」

「リューン‥‥‥。残念なお知らせだ。昨日の雨で、伯爵領に繋がる道が、土砂崩れで通れなくなってしまっているんだ。迎えが来るのは、少し先になるかもしれない」

「えっ‥‥‥」

「しばらく、ここにいてくれて構わないから‥‥‥」

「ありがとう。でも、悪いし‥‥‥。休んだら歩いて帰るよ」

「それが生憎、通れそうな道がないんだ」

「じゃあ、申し訳ないけど‥‥‥。昨日の浮遊術だっけ? それで、送って貰うことは‥‥‥」

「ごめん。あれは、魔術以外に特別な薬が必要で‥‥‥。行商人が来る来月まで、使えないんだ」

「ごめん。そんな大切な薬を使わせてしまっていたんだね」

「いや、いいんだ。僕の大切なリューンのためだから‥‥‥」

「ありがとう」

(ファビエルくんは、何て友達思いのいい奴なんだろう)

「紹介しておくよ。侍従のシモンだ。滞在中は、彼が君の世話をしてくれる」

 ファビエルくんの後ろで控えていた青年が、こちらを見て黙礼をしていた。

「リューン様、よろしくお願い致します」

「こちらこそ、よろしくお願い致します」

 その後、シモンさんに部屋の中にある設備の説明を受けていたが、最新式の魔術具のある屋敷に住めるファビエルくんは何者だろう? という疑問が湧いていた。けれど、淡々と語るシモンさんに、僕は質問することが出来なかった。

(まあ、いいか‥‥‥。ファビエルくんに、後で直接聞いてみよう)

 運ばれてきた食事で遅めの朝食を摂ると、昨日の疲れが出たのか眠くなってきてしまい、そのあと軽く湯浴みをしてから、昼寝をしたのだった。


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